FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
Present 17
2010-01-28-Thu  CATEGORY: Present
遅くなりましたm(__)m

これ以上何を言えというのだろう…。
今までだってこんな冗談は幾度も繰り返してきた。会社内のほぼ全員が聞いたことのある内容に等しい。
その度に笑って「また言い合っている…」と流してくれていたものが、新年を迎えてから明らかに変わった。
雅臣の皆に与える印象が大きく変わってしまったことと、鹿沼が今まで以上に親しげに雅臣に近づくこと、鹿沼に対する雅臣の扱いが引き離すものではなく受け入れる態度になったこと。
否定する要素を何一つ持たない状況に、雅臣が言い訳を口にしようが誰も信じてなどくれなかった。

「常陸さん、いいですね~。Y屋の特別室ですって~?もう私なんか、ぜーったいに行けない超高級旅館ですよ~。うらやまし~ぃ。さすが、鹿沼さん。選ぶところが違いますよね」
「うちの安月給の旦那じゃぁ、普通の客間だって一生に一度だって行けないわ」
「しかも企画部の鹿沼君がいくのよ~。どんな扱いなのかしら」
「VIP待遇ですよっ!もちろんっ!!おまけに窓口一番のエース付き!!」

窓口にくる客が途切れれば、嫌でも女同士の会話が始まる。
『私語厳禁』なんて表向きのものであって、正月明けからそう混む場所でもない。
ともなればBGMで流される曲に大人しく浸ってなどいなくて、女性陣はとにかく口が動いた。
「露天風呂付き個室ですよっ!え~っなにするんですかっ???」
「野暮なこときいちゃだめよっ!!」
窓口の女性陣は勝手な妄想を繰り広げているようだった。

否定の言葉を告げたいのだが、今となっては無駄な努力と言っていい。
雅臣は鹿沼が作った深い池の中にどっぷりと落ちていた。
はい上がろうにも陸に繋がる糸は途切れて、救援を待つような状態だ。しかも糸の先は鹿沼に繋がっている。
つまりは、全てが鹿沼のペースで進められ、雅臣の意志などないに等しい…。

鹿沼は格安プランだと言っていたが、部屋が変わればそうも言っていられない。会社名を前面に出しているのだから多少の何かはあるのだろうが、今回の”鹿沼プラン”は部長でも驚く贅沢さだった。
雅臣は聞きたくない会話を耳にしながら、途中で放置したままの仕事に取り掛かろうとした。
ちょうど店の自動扉が開いて客が入ってくる。この瞬間、ピタッと女性陣の口が閉じられるのだからたいしたものだ…。
「いらっしゃいませ」
女の子の出迎える声が響く。
入ってきたのは自分と年の変わらない男だった。客の顔を見た瞬間、雅臣は固まった。
スラリと見えるが身長があるからだろう。きちっとスーツを着こなしているから幾つか年上にも見える。目鼻立ちの整った彫の深い顔。

「久し振り。雅ってまだここで働いていたんだ。配置換えにでもなっているかと思った」
明らかに雅臣に向かって話しかけられる言葉に、その場にいた全ての視線が雅臣を振り返った。
淡々と話す口調は昔の友人のようだ。
客の相手をしろよと言うように、男が薄笑みを浮かべながら雅臣をカウンターデスクに呼んだ。

できることなら二度と会いたくなかった。
北本義哉(きたもと よしや)。雅臣を振った唯一の人間だ。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
16← →18
関連記事
トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2019/08 >>
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.