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BLの丘
Present 14
2010-01-25-Mon  CATEGORY: Present
「可愛いこと言う。もう朝食なんて抜きにしてベッドの中に行きたいんっすけど」
鹿沼の声は冗談とも本気とも区別がつかなかった。雅臣の気分を変えたくて言っているのか、本当にそう思っているのか…。
昨夜も遅くまで飲み食いしていたせいもあったし、朝から不安に晒されたせいで食欲などない。
抱かれてしまえば、このまま鹿沼に溺れてしまいそうだ。身体の隅々まで愛されたら心の中に宿った気持ちを認めてしまいそうで、その先は別れることに脅える日々になるのだろうか…。

「…鹿沼なんて嫌い…」
小さな小さな声が漏れる。こんなふうに雅臣の心を奪おうとする鹿沼が怖くて、不安を持たせる鹿沼を嫌えたらいいのにと思ってしまう。
「また『鹿沼』って言った。ちゃんと名前で呼んでくださいって言ったでしょ」
「呼ばない。もう二度と呼ばない…」
諭すように言われればまた拗ねる自分がいる。
背中から抱きしめられていた雅臣を覗き込むように鹿沼の穏やかな笑みを浮かべた顔がとなりにあった。
「黙って出て行っちゃったことは謝りますから。機嫌を直してください」
「やだ…」
「こんなに可愛い拗ねかたをされたら自制心なんて吹っ飛ぶんですけど…」
俯いていた顎の先をつままれて強引に向きを変えさせられる。振り返るような体勢にされ、上から覆いかぶさるように口付けられたらもう自分を守るものはなかった。

「は…ぁ…」
唇を離すのを嫌がったのはどちらだったのか…。けど雅臣が鹿沼を求めていたことは確かだった。どれだけ舌を絡め合っても物足りない。もっと強く自分を吸いつくして欲しいと思ってしまう。どうやったら不安と言うものはなくなるのだろうか。
「りゅ…た…」
こぼれた唾液を顎のほうから舐めあげられ、そっと呟く鹿沼の名前に、何かがきれたような鹿沼が雅臣をグイッと引き寄せた。
「マジでもうダメ。ごはん、あとっ」
え?と思った時には身体が持ち上げられていることに驚く。
「ちょ、ちょっとま…っ!」
「待てません、ダメです」
穏やかだった口調が少し怒っているようでもある。
「こんな煽られ方をされて何もしなかったら男が廃る」
ベッドに戻され覆いかぶさってきた鹿沼は獣のようだった。

煽ったつもりはないが自分でも求めていたのだから同じような事なのだろう。
深い口付けを与えられ、それでもまだどこかためらいのある雅臣に気付く。
「もっと素直になって。甘えてくれていいですから。安心してください。雅臣さんを傷つけることはしません。俺のことを信じて」
真摯な瞳が雅臣を覗き込んだ。全身で雅臣を愛しているのだと訴えられるような態度に、甘えてしまいたい気持ちと後悔したくない気持ちの狭間に追い込まれた。
何も答えられずにいる雅臣に鹿沼がたたみかける。
「雅臣さんが本当に俺のことを嫌いだっていうなら諦めます。でも少しでも可能性があるのなら、このまま傍にいたい。これ以上辛い過去に縛られて明るい未来が見られない姿を見るのは耐えられない。絶対に守ってやるから、その心を開いてください」
雅臣は心を震わせた。いつかやってくる別離の時のことを考えたら怖くて仕方ないのに、グイグイと引っ張る釣り糸に引っかかってしまいたい。
自分の力だけで泳ぐことに疲れているのかもしれない。
「…こわい…」
初めて明かした心の内を鹿沼は優しく包み込んだ。
「不安になんかさせない」

たとえどれだけの言葉を浴びても、雅臣がすんなりと自分を開くのには時間がかかりそうだった。
鹿沼はそれでもいいと言ってくれている。
「雅臣さんが俺を信じてくれるまでずーっと待っていますから」
「じゃあ、ずっと信じない」
「はい。他の所にも行かせませんけどね」

休暇に入る前から鹿沼は優しかったと思う。冗談ばかり言い合っていたけれど、どこにいたって楽しかった。
楽しみがこの家にもやってきたようだった。
にぎやかな部屋もいやじゃない。朝のシーンとした静けさを振り返れば、人の温もりがどれだけ心をとかしてくれるものかと思う。
素直に鹿沼のいいなりになるのは癪に障ったが、今朝の不安もまた味わいたくない物の一つだった。

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(このまま休み明けに行ってもいいですかね…?それとも今度はSじゃない鹿沼?元旦のまた朝っぱらから…)
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