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BLの丘
雛鳥の巣立ち 21
2010-01-09-Sat  CATEGORY: 淋しい夜
遅いと思いながら、あまり千城を責めてほしくなかった英人は神戸に父の存在を明かした。
全ては英人のためを思って起こしてくれた行動なのだと理解してほしかったのだが、神戸はそんな英人の態度にもあきれ顔だった。
「英人君も充分なほど千城を甘やかしているって自覚したほうがいいよ。あのね。英人君が何も言わないでいるから千城はどんどん付け上がっていくんだよ。自分勝手な行動をこれ以上増やされちゃ困っちゃうから、英人君からもよーく言いきかせておいて。とはいえ、千城が大人しく聞くとは思えないけどね…」
神戸の言葉には充分なほど諦めが含まれていた。今更千城に何を言ったところで彼の奔放ぶりは変わらないと言いたげだった。
だから野崎を味方に付けることで被害を最低限に済ませようと予防線を張り巡らせているのだろう。
「ご、ごめんね…」
英人が小さく身を丸めれば「まぁ、慣れているからね」と神戸はクスリと笑って見せる。全てを受け入れるこの度量の大きさには本当に頭が上がらない…。


骨付きのフライドチキンなど手づかみでしか食べたことがなかった。骨までしゃぶった記憶がある。
榛名家本邸のアンティークな家具で統一されたダイニングルームで、英人は努力の末、ようやくナイフとフォークを使って骨と身を綺麗に分けることができた。
背後には教育係の更科と、彼の行動を逐一監視する千城の姿があった。
更科の厳しさに2度も挫折した英人だったが、去年の暮れから全く成長していないのを英人も感じていた。
千城はどうやったって英人を甘やかしていた。テーブルマナーなど自分が教えると言ったはずの千城ですらまともに英人に教えてくれたことなどない。新年から数度繰り返された会食の席で結局は一世の不満を募らせるだけだった。
千城の負担になるのは嫌で、「もう一度…」と一念発起した英人を、一世は喜んで迎えたし渋々ではあっても千城も許した。
でも更科と二人きりになることだけは千城は許可をせず、百合子に頼んだり自分が同行したりと更科が手をあげることがないようにと目を光らせていた。
率先してダイニングルームに身を寄せたのは聖で、だが彼も結果を見れば途中で切り上げさせ連れ出してしまうため、レッスンになどなっていない。

千城の存在は更科にも多少の影響を与えていたようだ。以前よりも口調も柔らかだったし、当然手を叩かれることもない。
「頑張りましたね。次は殻つきの魚介類にしましょう」
今日の出来具合に満足してくれて英人はホッと胸を撫で下ろしながら解放された。
そこに丈の長いワンピースを着た百合子が入り込んできた。細い体にぴったりと合っていて優雅さが全身から滲み出ている。
「せっかくなのよ。お食事にしましょう。お父様は今日は遅いと言うから英人君も気を使うことはないわ。すぐに用意してちょうだい」
百合子と共に入ってきた使用人の女性にはきはきとした声で夕食の準備を促した。大きなテーブルの上がさっさと片付けられる。
先程練習用に切り取ったチキンの出来栄えを飾っておきたいくらいだったが、真っ先に持ち去られてしまった。園児だったころ初めて描いた絵を壁に貼ってもらった時のような嬉しさが込み上げていたのに…。

百合子の登場と共に更科は姿を消し、親子水入らずの夕食の席が設けられた。
百合子は英人を気遣ってくれているのか、細かいマナーをあまり気にしなかった。家の中なのだから気を使うことはないと幾度か言われた。多少のみっともなさを披露してしまっても御愛嬌で笑って許してくれた。一世の前では夫の顔を立てたがいなければ崩した姿がある。
「人前に出た時にそれらしい対応をしてくれればいいのよ」と百合子はいつも言った。千城にも影ながら手を出して助ければいいと促していた。英人はその言葉に何度癒されたか分からない。
時折笑い話のように、百合子も色々覚えることがあって大変だったと零していた。だがその言葉は「辛かった」とは言っていなかった。愛した人と共に居られる幸せを噛みしめていたようだった。

英人が本邸に来るとは、滅多に実家に寄りつかない千城が訪れるということで百合子も嬉しそうだった。親子の情は薄かったと以前千城に聞かされたことがあった。
千城が育ってきた過程は普通の人間が甘え縋る状況とは異なっていた。いつでも人の上に立つことを教えられ、親子愛を教えられるよりも組織を運営する人間として育てられていた。千城は小さい頃から我が儘の一つも言わなかったそうだ。言われたように過ごし整えられたレールの上を歩き進んだ。
英人を連れた時、初めてこの家を恨み、自分を束縛する環境を呪ったと言う。

離れて分かる思いもある。
教育という愛情でしか息子を愛せなかった親は、今になって『触れられる』愛しさを噛みしめていた。英人という存在を明かし、何もかもを捨てると言った千城に初めて手を離れる恐怖を味わったようだった。
百合子は千城を愛するのと同じように英人も腕の中に抱えてくれた。
「貴方も大事な息子よ。千城が愛した人を私にも守らせて」
榛名家の中で右往左往する英人を百合子は大事にしてくれた。
まだ若いのだから…と言いながら、少しずつ色々な事を教えてくれた。必要とされるマナーだけではなかった。降り注がれる愛情を痛いほど感じた。
それは千城も同じだったようで、本邸に寄る回数が増えたとは親子の間にあった隙間が少しずつ埋められているような気がする。
どこか避け合っていた千城の家族もようやく雪解けの時を迎えたようだった。

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あと一週間以上はかかると思いますが、20000のキリ番を踏んだ方、何かのリクエストがありましたら可能な限りお答えいたします。
千城とか英人とか神戸とか日野とか聖とか野崎とか…(←充分限定しているって…汗)
でもきっと御意見がなさそうなくらい薄いところなので、前後10番くらいは可能な範囲にしてもいいかも?
『雛鳥』も間もなく終わります。
キリ番に辿り着く前に新話が登場出来んのかな…。
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コメント

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コメント甲斐 | URL | 2010-01-09-Sat 17:47 [編集]
甘えて甘やかして・・・かぁ
幸せなんですね、神戸さんも呆れるくらい。

ひーちゃん再々挑戦ですか。
頑張ったね~!
初めてのお絵かきの作品、じゃなくて、綺麗に切り取ったチキンを標本にして飾ってあげたいくらいっすよ~。

こうして家族の愛情に恵まれなかったり満たされなかった二人が出会ってお互いを愛するだけじゃなくて新しい家族として再構築されていくなんて理想だなあと思います。
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2010-01-09-Sat 20:40 [編集]
甲斐様
こんばんは。

> 甘えて甘やかして・・・かぁ
> 幸せなんですね、神戸さんも呆れるくらい。

神戸だけでなく、二人を見守る誰もが呆れていることだと思います。
二人して自覚がないところが最強ですね…。

> こうして家族の愛情に恵まれなかったり満たされなかった二人が出会ってお互いを愛するだけじゃなくて新しい家族として再構築されていくなんて理想だなあと思います。

二人だけの問題でなく、家族を絡めることでまた違う愛情を受け止めることができたのではないでしょうか。
親も色々と感じているものがあるといいです。
人の繋がりってすごいものですね。
コメントありがとうございました。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2010-01-09-Sat 23:29 [編集]
MO様
こんばんは。

>二人の出会いは、英人だけでは無く、お互いに得る物があったようですね。そして、それぞれの親達をも、幸せな気持ちにしてあげられそうですね。 素敵なキリ番リクエストの企画、ありがとうございます。色々なお話が読めるのは、とっても嬉しいです♪いつも妄想が止まりませんので、あんな話も、こんな話も読みたいと、勝手な妄想がとまりません(苦笑)

みんなが幸せになってくれること、それが一番の願いです。
ずっと辛い話だったので最後くらいHAPPYづくしにしてみました。
英人の母も天国で笑ってくれていると思います。
キリ番リク、書けんのかなぁ…(不安)
単純に自分の頭がカラッポだったので人様に縋っただけです(汗)
コメントありがとうございました。
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