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BLの丘
新年の始まりは愚痴?!
2010-01-06-Wed  CATEGORY: 季節SS
新年企画。
まだ続くのか?!お正月???
思いつきです。


年始も4日にして通常営業となった。
昔ながらの味を漂わせたバーに来る客は季節感をあまり感じさせない。
日野はカウンターに座った客に注文通りのアルコールを差し出した。
「君が日野君?英人君から色々話を聞いているけど」
唐突に切り出された名前に一瞬躊躇する。
客から口にされた名前は無視するには大き過ぎた。
カウンターに座った客は縁なしの眼鏡をかけてインテリっぽいが、見た目は30歳を越えており、ぱっと見た限り専門分野で出来過ぎた人間だと感じた。ただでさえ、日野は英人に関わって以来、『デザイン』というなんだか訳の分からない世界に引っ張られている。
その世界に生きる人間をなんとなく感じていた。
「君も苦労していそうだね。英人君?千城?振り回されているんじゃないの?不満があったら教えてよ。いくらでも千城を言いくるめてあげるから」
客の言うことはどこか不思議と心に染みていた。
実際、日野が千城に対して嫌悪を示すことなどない。二人に振り回されることはあっても、心の底から嫌になることなどなかった。振り回されても好きだったのだ。英人も千城も…。『自分を頼ってくれる』何かが…。

客は日野が関わる人間関係を見通しているかのようだった。
そして榛名をわざと悪者と決めつけて英人を守るあたり、心の底から憎い関係ではないのだと自然と伺わせる。
いたずらに言葉にしたいだけなのだ…。
「二人にお詳しいようですね」
日野はあえて英人たちとの関係を言葉にしなかった。
それに焦れたように神戸から「さすがだね」と客商売の日野を気遣う言葉がこぼれた。
「あぁ、幼馴染だからね。それに英人君は大事な部下だ。でももう、彼は一人で飛んでいきそうだよ」
神戸が零した言葉は日野にも意外でしかなかった。
英人から仕事が順調だと聞かされたのは遠い昔ではない。
今、目の前に佇む男が英人の上司であり、彼を支えている人間だと思えても、その彼から『手放す』ような発言が聞かれれば日野は黙っていられなかった。
「けど彼は貴方に…」
「うん、慕ってくれている。ありがたいと思うけど、僕の下じゃもう限界なんだよ」
彼の呟く真意は日野には分からなかった。

英人の能力は神戸の想像を越えていた。
一企業で扱うよりも、榛名のような大々的な組織で芽を伸ばすのがいいと上司は感じている。
ただそれを英人も千城も望んではいなかった。
神戸が伸ばしたいとおもう芽を、二人は『この世界でいい』と上限を定めていた。
それが神戸には悔しくてたまらない。巣立つことが惜しいのではない。巣立とうとしないことが理解できない。
千城が持つ力が英人を控え目にさせていた。
ただでさえ英人は殻から抜けようとしない。現状で満足しようとするところがある。
神戸はそれが理解できなかったし、周りから助言して指し示してくれるのであれば、その力だって利用したかった。
英人が千城と同じように心を置いている日野の存在をいつの間にか知った。
神戸は騙してでも誤魔化してでも英人をもっと開けたところに導きたかったのだ。

「俺にはできません…」
神戸が答えを聞くまでもなく、日野は小さく断りを入れた。
英人が生きる道は英人が探す。だれに何を言われるよりも本人が良いと思う道筋を本人が決める…。
日野には英人の方向性を指図する意志はないときっぱりと言い放った。
それを聞いて神戸も分かったように頷いていた。
「そうだよね…」
小さく愚痴ってはみたものの、結果は神戸だって知っていたのだと思う。
日野はわざとアルコールの強い酒を提供した。
明日は仕事だと聞いている。だけどどこかでなにかをふりきりたい精神状態は理解できた。
人は何かを手に入れると共に失うのだ…。

道端で拾ってしまった仔猫はいつの間にか自分の傍にいた。飼い主に縋ろうとするのにどこかまだ抵抗があるようで時折自分の元へと逃げてくる。
それは餌の違いや撫でられ方に満足がいかないようでニャーニャーと喚いていたが、飼い主を前にすれば満足いかない何もかもが全て吹っ飛んで飼い主の腕の中でゴロゴロと啼いた。

神戸さんは名刺を置いていった。
千城さんでも自分でもどうにも収集のつかないときに連絡をくれと英人を気遣ってのことだった。
日野はこの連絡先が必要のないものだと漠然と感じていた。

…あぁ、できることなら俺の精神状態をなだめてくれよ…。
仔猫の世話は意外に疲れるものだと訴えたら理解してくれんのかな…。

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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2010-01-06-Wed 17:00 [編集]
MO様

こんにちは。連コメありがとうございます。

>新年早々、きえ様に何かあったのかと思ったら、神戸と、日野の愚痴でしたか。二人とも英人と、千城が好きで、振り回されるのに、ほっとけなくて、愚痴りたくなっちゃったんですね。神戸は、また来そうですね。ここは、仕事ができる素敵な男達が、他では見せない本音を晒せる隠れ家になりそうですね。

愚痴って私のこととか思われちゃいましたかね?!
神戸と日野のくだらない小話でした。
千城と英人に振り回されるのに放っておけないお二方です。
このお店にはいろーんな人たちが集まってくる模様ですので、いつか何か愛が…?!芽生え…????(逃げ腰)
神戸とか聖とか、愚痴を囁きに訪れそうなお店です。
日野っち、真面目に息抜きを用意してあげないと可哀想かも…?!
コメントありがとうごさいます。
らぶらぶひーちゃん&ちーちゃんの被害者同盟 初会議!!
コメント甲斐 | URL | 2010-01-06-Wed 17:12 [編集]
かわいい野良猫ちゃんのお世話も骨が折れるんですね。飼い主が見つかったのはいいけれど、一人の散歩も心配してこっそり付いて回りたいくらいに過保護だし。
英人の才能を伸ばしてもっと羽ばたかせたい神戸さんには物足りないの分りますよ。
でも、お互い忙し過ぎて見失ったり寂しい思いをしたくないって言うのもよーく分る。
日野さん、愚痴こぼせる相手が見つかってよかったじゃないですか。
Re: らぶらぶひーちゃん&ちーちゃんの被害者同盟 初会議!!
コメントたつみきえ | URL | 2010-01-06-Wed 17:36 [編集]
甲斐様

連コメありがとうございます!!

> かわいい野良猫ちゃんのお世話も骨が折れるんですね。飼い主が見つかったのはいいけれど、一人の散歩も心配してこっそり付いて回りたいくらいに過保護だし。
> 英人の才能を伸ばしてもっと羽ばたかせたい神戸さんには物足りないの分りますよ。
> でも、お互い忙し過ぎて見失ったり寂しい思いをしたくないって言うのもよーく分る。
> 日野さん、愚痴こぼせる相手が見つかってよかったじゃないですか。

骨折れていると思います。
お散歩は一人じゃさせられないのよ、ついて行くわ…みたいな日野氏。
神戸さんが零した愚痴はまぁさておき、日野も手に負えない二人の愚痴をこぼせる相手を見つけたようですね。
神戸はきっと日野の愚痴をめーっいっぱい聞いてくれると思います。
この二人、お互い気を遣いすぎてまだ本音はこぼれそうにないですね。
日野はこのお店をやめて一軒を持っても愚痴聞き係りになりそうで不憫です。

コメントありがとうございました。
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