FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
雛鳥の巣立ち 18
2010-01-06-Wed  CATEGORY: 淋しい夜
元旦の夜は親戚一同榛名家の本邸に集まるのが慣習らしい。
年末以来久し振りに見た聖は元気そうで、パーティー会場での一件を忘れてしまったかのように普段と変わらない接し方だった。千城がどう言ったのかも英人は聞かされていないが、聖の性格も合わせるときっと話し合いは問題なく済まされているのだと思える。
英人とて、嫌な事をまた掘り返したくもなかった。
聖と話をしていても、千城も以前のように目くじらを立てずにいてくれる。
身近な親戚だけを集めた元旦の集いはあまり時間をかけることなく酒宴をもつだけで、ある程度の時間が経てばそれぞれに帰路へとついた。
千城の祖父である龍之介のご機嫌伺いというのが本来の目的のようだった。時が経てば父の一世、そして千城へと受け継がれるのだろう。
皆が帰ってしまっても、千城の父の妹だという弥生が嫁いだ立川家だけは気を許したようにまだ屋敷に留まっていた。
聖の母弥生は千城の母の百合子とも仲がよろしいらしく、いつもこの屋敷に訪れているらしい。
そろそろ帰ろうという千城に促され、広々とした玄関口に佇むと、「泊まっていけばいいのに」と百合子がぽつりと呟く。
千城が滅多に実家には寄りつかないというから、母親としては淋しいのだろうとなんとなく感じられた。
千城と英人を見送るように、同じく玄関口に立った聖の両親にも並ばれて英人はどことなく照れくさかった。
車に乗り込む前に、頭を下げた英人を百合子がすっぽりと腕の中に包んだ。
女性ではあっても、華やかな着物を纏った百合子の身長は英人とほとんど変わらない。
無駄な贅肉のない肉体美や豊満さを全身に漂わせながら、英人は初めて感じる『女性』の柔肌に驚いていた。
親ですら抱きしめてもらったことなどない。
あやされるように髪を撫でられ、頬がふくよかな胸におちる。女性の肌が柔らかくて温かくて心地よいものだと、守られるような母性本能を初めて知らされた時だった。
「こんなに可愛い息子が出来たというのに…。全く寄ってもくれないんですもの。淋しい限りだわ。気兼ねなくいつでもいらっしゃいね。千城の許可など必要ないのよ」
ここが貴方の家なのだから…と百合子は英人の耳元で囁いた。

心の奥底から沸き立つ物は言葉にできなかった。込み上げる感情はぷくりと膨れる涙にしかならない。
千城の隣に居てもいいと言われた言葉。そして榛名家に認められた存在。
自分の生をどちらの親からも見放された英人は『実家』という存在を知らなかった。初めて『頼っていい』と言われたような気さえした。
百合子が英人を抱えたことに便乗して、同じく見送りに出ていた聖が流れるように英人を奪った。
それを見て千城が「おまえはっ!!」と制止にかかるものの、百合子に「それは失礼よ」と咎められて黙る。
「『ご挨拶』くらいさせてあげなさい。聖君だって英人君を大事にしてくださっているのよ」
「さすが百合子さん」
聖は得意満面の笑みを浮かべて英人をきゅっと抱きこんだ。
親の許可を得ては怖い物などない聖だった。下心があるかどうかなど百合子は感じていないのだろう。きっと感じているのは「年近い友情」だ。
「またご飯を一緒に食べに行こうね。ドライブも。千城さんにはナイショだよ」
耳元で囁かれる声はきっと周りの人にも届いている。からかいや冗談で済まされる内容と周りには思わせていても、どこか本音が零れていることを英人も感じ取っていた。だけど聖の思いに応えることなどできはしない…。
この場では社交辞令のようにうんうんと頷くしかない。
聖の両腕に囲まれながら、これがだれに対しても普通に行われる『挨拶』なのだと漠然と知った英人だった。

聖があまりにも長い間英人を拘束しようとするので、いい加減に痺れを切らした千城が奪うように英人を引き離した。
その行為を見ながら百合子がクスクスと乙女のような笑みを浮かべた。
「千城ってば…。こんな貴方を見られるなんて歓迎すべきことよ」
千城が普段、あまり感情を見せないことをいいたいらしい。
「千城も『子離れ』を覚えないとね。巣の中に閉じ込めるだけはダメよ。飛び方を教えてあげなければただ落ちるだけになってしまうわ。飛び立つのを見守るのではなく一緒に飛べばいいの。そうすれば同じ景色を共に見ることができるでしょう?」
英人は百合子の言葉をしみじみと受け止めていた。榛名家に嫁いだ百合子だからこそ出てきた言葉のような気がする。きっと百合子も慣れない環境に戸惑い一世に救われたのだろう。
共に同じ視点に立つことでお互いの状況を理解し合い近づけたのだとその言葉が語っているようだった。
英人はまだまだ教えられることがたくさんあると思った。
育った環境が違い過ぎると一言で括るのは簡単だったが、一緒に居るとは色々な壁を乗り越えることになる。千城のそばにいたいと思う気持ちは現状維持ではだめなのだと教えられているようだった。
百合子は千城に努力をしろと訴えかけているようだったが、その言葉の重さは英人にも降り注いでいた。
『一緒に飛ぶ』
少しでも千城に近付けるように自分を磨こうと英人は今年の抱負を心に刻んだ。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
トラックバック0 コメント3
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
コメントたつみきえ | URL | 2010-01-06-Wed 16:52 [編集]
MO様

>新年の御挨拶も無事に済んだようで、ほっとしています。榛名家が、英人にとって、居心地の悪い場所ではなく、暖かい場所になれるのも、近いようですね。英人も、千城も、どんな風に「一緒に飛んでいく」のか、見守りたいと思います。

こんにちは。
榛名家へのご挨拶、無事済みました~。
英人を嫌うことなく受け入れてくれる住人達、私からも頭を下げたいです。
千城ってばママンに諭されてどうなっちゃうのかな~。
お庭に滑走路を用意しないと…っ!!

いつもコメントありがとうございます。
ひーちゃんを構いたおしたい千城ママ
コメント甲斐 | URL | 2010-01-06-Wed 17:02 [編集]
英人君、千城さんの実家の方々としっかり馴染んでますね。
初めは鬼畜な千城父に壊されてしまうことを心配していましたが、やっとここまで来たって感じ。家族の愛情に恵まれていなかった分、今の状態が心地よさそうでよかったと思います。
英人君の周りには保護者になり隊(隊長は千城さん)メンバーが多くて、ひーちゃんの取り合いかもですね。
Re: ひーちゃんを構いたおしたい千城ママ
コメントたつみきえ | URL | 2010-01-06-Wed 17:27 [編集]
甲斐様

こんばんわ。

> 英人君、千城さんの実家の方々としっかり馴染んでますね。
> 初めは鬼畜な千城父に壊されてしまうことを心配していましたが、やっとここまで来たって感じ。家族の愛情に恵まれていなかった分、今の状態が心地よさそうでよかったと思います。
> 英人君の周りには保護者になり隊(隊長は千城さん)メンバーが多くて、ひーちゃんの取り合いかもですね。

榛名家の実家にすっかり馴染んだ様子です。
千城パパにはまだ抵抗があるかもしれませんが、ママンにはほだされています。
ひーちゃん取り合い…続くかもしれない修羅場…。
いっぱい美味しいものを用意して待つママンです。
フォーク?ナイフ?そんなものはいらないのよっって手づかみでも許しそうなママンです。
とりあえずあしたのデザートは…あれこれどっちそれ。みたいに。
幾種類かありそうです。
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2019/10 >>
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.