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BLの丘
雛鳥の巣立ち 3 
2009-12-16-Wed  CATEGORY: 淋しい夜
千城の父には妹の(立川)弥生がおり、母百合子にはやはり妹の(藤原)理香子がいた。共にパートナーを連れ、子を連れ、会食の席には早菜香も久し振りに姿を見せた。すでに入籍は済まされ、現在は姓も変わってしまったそうだ。早菜香とすでに英人が知り合いだと耳にすれば、全員が驚いていたようだった。
だからといって、英人のボディーガードとして共に居たなどととてもではないが口に出せる内容ではない。
会食が滞りなく終わってしまえば、一世はホッと溜め息を漏らしていた。
これだけの心労をかけたことを申し訳なく思ってしまう。英人はもっと自分を磨かなければならないのだとつくづく感じた。一世の不満は全て千城に向かうのだろうから…。

心意気を新たに更科に向かったのは良いが、相変わらずの厳しさにあっという間に泣き言が漏れた。
テーブルマナーは千城に教えてもらうことになった。千城は英人の肌を叩いたという理由だけで更科を遠ざけた。
もちろん、一世は了承しなかったが、どうやっても英人を本邸には向かわせないと決めた息子の意見に一世も閉口した。
「だったら恥も何もないようにおまえが育てろっ!!」
結局のところ、千城の下で英人は教育されることになるのだが、誰もが危惧するように、英人がまともなマナーを身に付けられる日などほど遠い。

年末の榛名グループが主催した立食パーティーには数多くのゲストが訪れた。郊外に建つ建物を全館貸し切った盛大なもので、会社の重役ばかりでなく、日本を代表する政治家や世界各国の大使館の人々もいて英人は雰囲気だけで圧倒され飲みこまれていた。
正装した男性やドレスアップをした女性ばかりが揃う中、次々と千城に声がかけられる。
久し振りに見た野崎が千城のそばにぴったりとくっついてフォローにも当たり、共にゲストの相手をしていたから、英人は自然と離れ、部屋の隅の方へと流れゆく。
外国の人とでも千城は難なく会話をこなしていた。日本語を話せる人でも会話はほとんどが英語で繰り広げられていたから、英人には理解できない世界だった。

ボーイが差しだしてくれたシャンパンを貰い受けながら、手にして良いものかと悩んでいたサンドウィッチに漆黒の手が伸びた。
「タベタイデスカ?」
黒い肌に白い目と歯が輝くように見えた。英人は皿など持っていなかったが、彼は一つの卵サンドを取ると英人の前に持ってきた。
いくらか英人よりも背が高かったがほっそりとした顔にあどけなさを残した表情は自分よりも年下のようだ。
変な堅苦しさを持たない雰囲気に英人は気を許していた。
空腹の音が鳴る腹に逆らえず、英人は頷くとそのサンドウィッチを自らの指で挟んだ。
「うん、おいしいっ」
口に頬張ると同時に広がる卵とマヨネーズの味。そして数種の料理を盛り付けると用意されたテーブルへと移動した。

彼もどこかの子息なのだろう。会場の空気に馴染めないのか、手持ちぶたさはなんとなく感じた。
英人とて英語が話せるわけでもない。彼も日本語が堪能ではなかったようだ。
それでもなんとか会話の糸口を探そうとお互い片言の日本語と英語を交える世界は新鮮なものだった。
彼はジョージと名乗った。ある企業の重役の息子らしい。英人が「榛名」と苗字を告げるとひたすら驚かれただけだった。
「ウソ、マジ?アナタ、コレノハルナ?」
今日のパーティーを主催しているのが「榛名」と承知しているから、そことの繋がりは信じ難いものがあったのだろう。
驚かれる原因は分かりはしても、絶対に違うはずと言う反応を見せられてはショックもひとしおだった。
端から見ればどうしたって「榛名」の人間として見てもらえる立ち振舞いなどできていない。疑いの目を向けられたまま、英人は頷きつつも、決定的な証拠を晒せずに数分の時を過ごした。

この会場には立川家や藤原家も来ていて、英人がたどたどしい会話を繰り広げているところに聖が寄ってきた。
「英人、放っておかれちゃっているんでしょ」
千城から離れている現状を見れば聖も理解しているようだ。こんな場所では聖でも見かけるだけで安心した。英人が知った顔にホッと安堵の息を漏らすとジョージも親しみを込めて挨拶をした。
ゲストの大半は年齢層の高い人たちばかりだったから、年の近そうな人には親近感が沸いてしまう。
聖は幼少の頃、海外に住んでいた時があったそうで、ジョージとは英語で会話をしていた。英人とジョージの間で通訳的存在になっている。
ジョージは何よりも英人が語った真相を知りたがっていた。「ハルナ」と頷く聖の言葉を聞いてもまだ納得できていないようだった。

「英人」
背後から愛しい人の声がしてハッと振り返る。
同じくタキシードを身に付けた姿なのに、仕上がりの雰囲気は全く異なる。いかにも主催者的なオーラを放つ圧倒的な存在に英人は駆け寄りそうになった。
「淋しい思いをさせて悪かった」
ご挨拶回りなどまだまだあるのだろう。そんな状況でも気遣ってくれることがとても嬉しい。
さすがにこの場で抱き締められることはなかったが、さりげなく頬に手を寄せられてふんわりとあやされる。千城の穏やかな笑みは何にも代えがたい安心感があった。英人は先程の異国の人を紹介しようと振り返った。
驚愕の顔が千城に向けられていた。その姿は「榛名千城」を知っていると物語っている物で…。
真丸とした白い目がよく見えた。同時に漏れ聞こえる千城を呼ぶ声。
「ァア…チシロ…」
英人の体を押しのけて千城に抱きついた彼に、弾き飛ばされた英人は呆然としてしまった…。

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コメント

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コメント甲斐 | URL | 2009-12-16-Wed 10:09 [編集]
なんだか英人君とってもカワイソウでした。
健気に頑張ってるけとすごくすごく無理してる。
千城に恥をかかせたり千城父を怒らせたくないとの一心で努力している姿が痛々しいです。
セレブなパーティーに出るマナーや社交術などはおろか、一般の躾もされていないで大きくなってしまったのだから、ここにきて無理に押し付けて千城さんの都合ばかりで英人くんが哀れに思えました。
二人ともそうは思っていないのでしょうけれど。
たった一人で食べるご飯じゃあ誰も注意もしてくれないし豊かではない生活の中で食を楽しむこともできないのですからね。
無理してどこかが破綻しなければいいと思って見守ってます。
千城さんの気づいているかな?
(ひーちゃんをうんと甘やかせたい英人君ファンクラブ会員なので英人君寄りのコメで許してくださいね。)

っで、誰?
この失礼な男は・・・。
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-16-Wed 12:14 [編集]
甲斐様

こんにちは。

> なんだか英人君とってもカワイソウでした。
> 健気に頑張ってるけとすごくすごく無理してる。

英人は千城のために頑張りたかったんですけど…。
現実は甘くありませんでした。
ステップがないのでいきなり上へとはいけませんよね。
きっと千城もその辺は分かっていることでしょうからゆっくりのんびり躾けていくんじゃないでしょうか。
辛かった代償は千城に存分に甘やかしてもらえばいいと思います。

> (ひーちゃんをうんと甘やかせたい英人君ファンクラブ会員なので英人君寄りのコメで許してくださいね。)

ファンクラブっ!!あったんですかー、そんなもの。
命名までしていただいて母が嬉しがっております。

> っで、誰?
> この失礼な男は・・・。

今度は何が起こるのかしら…と期待している読者様をあまりお待たせしないうちに出してみました。
名前はジョージ君です。フルネームは考えてません(汗)
アフリカ系アメリカ人っていう設定です。…ってこんなところで説明しなくても、ね。

いつもコメントありがとうございます!
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