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BLの丘
淋しい夜の果て 13
2009-12-10-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
性描写があります。ご注意ください。

英人の気持ちの揺れや心に宿るものなど千城にしてみればガラス越しに見るようなものだった。
心の底に巣食う汚辱をかつて千城が全て取り去ってしまった時のように、千城は英人を闇の中から掬いあげた。
「全ては俺の責任だ。責めるのは英人の弱さではなく俺の無力さであるべきなんだ。英人は何も恐れずに堂々としていればいい。そして誰に何をされようが、今抱いているような不安を二度と持つな。俺は英人から離れない。生涯を、屍になるまで英人だけを愛し続けると誓う」
ざくっと目の奥に突き刺さるような鋭い眼光が記憶の中で重なる。
千城が自らの手で十字架を背負ったのだと悟った。父が犯した罪を罵ることもせず、それを許してくれと英人に頼んだ。英人が受けた痛手も自分の愛情を降り注ぐことで揉み消そうとした。英人を失うことを何よりも恐れ、どんな手段を使っても繋ぎとめようと必死な姿が目に焼きつく。きっと誰よりも傷を深く負っていたのは千城だったのだろう。
英人は千城を信じてやれなかったことが悔やまれた。屋敷の中で告げられた言葉の一つ一つを思い出す。
生家との繋がりを立ち切ることで家名と英人を守ったのだ。

冷たい指先が顔の輪郭を確かめるように英人の肌をたどった。額から頬、首筋、耳朶、瞼の上や鼻筋を通ってふっくらとした唇に触れる。
手負いの獣は己を癒す泉を知っている。ようやくそこにたどり着けたという安堵が瞳の中に揺らめいていた。
ゆっくりと降りてくる千城の顔を瞼の奥に焼きつけながら英人は目を閉じた。
最初は啄ばむようなキスを繰り返し、もどかしさに焦れて少しだけ口を開けば押し開くように千城の舌が差し込まれる。いつまで続くのかも分からないほど深く深くねっとりとした口付けだけで、萎えてしまった英人の中心に熱が集まった。
貪るように英人の胸の尖りが甘く噛みほぐされて肌の上を滑らかな手付きで弄られる。そのたびにぴくぴくと跳ねる体を逞しい腕に支えられて迫りくる波を何度も耐えた。
…この一度だけはどうしても一緒がいい…。

耳元で千城の息遣いを感じ、掌で心臓の音を聞いた。この音を聞いていられる限り、自分も千城を死ぬまで愛そうと思った。この音が途絶えた時、きっと自分も燃え尽きる。
苦しそうに息を弾ませる英人の分身を口に含もうとするから、それだけはダメと頑なに拒否した。そんなことをされたら一瞬で爆ぜてしまう。千城を迎え入れたいのに…。
「何故だ?」
「も、挿れて…。…耐えらんないから…」
その一言で千城は英人が何を望むのか理解してくれた。
「あぁ、わかった」
充分に解れているはずなのに潤滑剤を注ぎ足して、自分のモノにもたっぷりと塗り込めてから英人の膝裏を持ち上げた。
最初の瞬間はどうやったって辛いけど、昂ぶった体を揺す振られ与えられる刺激に悶える時は感激の極みだった。
「あ、…あぁぁ…」
雁首がツプッと入口を広げた。ゆっくりと英人に傷をつけないようにと侵入を果たしてくる。千城の形になぞらえられた内壁が蠢くように絡みつき千城の眉根を寄せた。
この時になって、英人は一つの真実を明かした。
「ここ…、ここだけは、…許してないから……、…んあっっ!」
千城の怒張が半分ほど入ったところから一気に奥まで達した。英人の紅く熟れたような体が大きく揺れて腰を強く掴まれる。
「何もなかったということか?」
呼吸すらままならない英人は頷くことだけで返事をした。『何もなかった』がどこまでを意味するのかは意識も飛びかけた英人には判断がつかなかったが、頷いてしまえば千城の「馬鹿が…」という声と胸を撫で下ろしたような表情が見えた。
「『抱かれる』とは合意の上で交わることだと思っている。触れられて反応するのは男の性だろう。よほど嫌った相手ならともかく、英人は俺と間違えたくらいだ。なんでもっと早くに言わない?」
たったそれだけで何故か千城の満足度を上げてしまったようだ。それから自分が悩んでいたことが馬鹿馬鹿しいことのように蹴散らされた。
英人の返事を待つよりも早く、ゆっくりと内壁をあてながら擦る動きが始まってしまった。ともすれば英人は何を言うよりも喘ぎ声しかあげられなくなり、ただ千城の限界まで持ちこたえようと踏ん張るのが精一杯だった。
ぎゅっと握りしめたはずの根元を千城の手にとって代わられ、自分の意思ではもうどうにもならない体にされる。
それなのに…、それなのに…、込み上げるのは喜悦と快楽の世界だった。
「ぁあっっ、も…、…っんっ…っ」
唇を熱い吐息で塞がれ、鼻から抜けるような啼き声は苦しさも混じった。
英人を握り込んだ千城の手が扱くように動き始めると千城の限界が近いのを感じる。
英人はあっという間に弾け、長く揺す振られ続けた体は至極の世界へと誘われる。ギュッと締め付けた後孔の中でも脈打つ灼熱から熱い飛沫が散った。
千城が傍にいる。千城が中にいる。
英人は自分がとても幸せなのだと感じた。


翌日の一日中、千城は書斎に居た。投げ出してきた出張先と会社との間で膨大な処理に追われていたようだったが、時差も絡み容易に事は進んでいなさそうだった。
英人は仕事に行く…というより外を歩く勇気もなく、神戸に電話をしてみれば、すでに千城の父から連絡済みだったことが判明した。最初の予定通り、千城が帰国する日まで休ませると一方的に伝言があったようで、てっきりニューヨークに行っているのだと思っていたらしい。
そしてやはり、千城が身勝手に事を進めた結果がこの惨事と聞けば、呆れてもいたし笑ってもいた。
『なんとも千城らしいね。さすが千城が打ち上げる花火は大輪だ。こっちにも火の粉が降りかかっているんだから見舞金出してくれって言っておいてよ』
神戸はカラカラと笑いながら電話を切った。本心ではないのは分かるが言葉の明るさに『千城がなんとでもしてくれるよ』と言われた気分だった。

夕方になって千城が「出掛けてくる」と声をかけた。弾かれたように英人の肩がピクンと揺れた。行き先は本邸だ。
千城がちゃんと帰って来てくれると分かっている。信じている。それでも昨日の恐怖が頭によみがえればただで済むはずがないと懸念した。英人は簡単に閉じ込められた。千城ならまだ融通のきく使用人もいるかもしれないが、英人では知らぬ世界だった。それこそもう二度と会えないのではないかと不安が広がる。
英人が瞳を曇らせれば僅かに口角を上げた千城が英人を腕の中に抱きしめた。
「大丈夫だ。何も不安に思わなくていい」
もう何度も何度も聞いた台詞。広くて大きな胸に包んで下界から切り離してしまうような力強さ。
不安もたくさんあったし何よりも恐怖心のほうが強かったけど、千城をここで待つよりも良いような気がした。千城さえいれば何からも守ってくれると信じた。口が勝手に動いた。
「俺も行く」

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