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BLの丘
淋しい夜の果て 12
2009-12-09-Wed  CATEGORY: 淋しい夜
一世が英人の体に傷をつけたことに憤りがあるはずなのに、千城はそれを少しも感じさせることはなかった。それどころか父親を蔑みたくないとまで言った。父を尊敬する部分を持ち続け、蔑ろにしたくないのだと告げているようだった。縁を切ることで英人の件を水に流そうとし、英人の傷は自分が舐めて治すと伝えていた。一世の性格を知れば英人が逆らいようがなかったのだと思っているのだろう。
「絶対に許可などしない!!」
どこまでも冷静であり続ける千城に対して、一世は激昂して座卓を叩いた。
「おまえが家を出ることだけは絶対に許可はしないっ!」
一世が座卓を叩くたびに、千城の腕の中に収まった英人がビクッと震えた。その度に千城の手が細い背中をさすり、柔らかな髪を撫でた。

千城は非常に穏やかな顔を浮かべて英人を見ていた。まるで一世の怒りなど耳に入っていないようだった。
腕の中に英人がいる…、ただそれだけで心に平穏があるようにすら見える。
一世も千城のこんな表情を目にしたことはなく、陽だまりのような目の前の光景に一瞬の怯みを見せた。
人間的にも大きく変わった千城は、今の一世の話など聞く耳をもっていないといった感じだ。
「こんな馬鹿な話があるかっ!息子を男に取られた上に離縁だとっ?!頭を冷やせっ!!」

最後にダンッ!と両手を大きく座卓に叩きつけて一世はすくっと立ち上がると大股で部屋を出て行ってしまった。
戸口が派手な音を立てて締まり、遠のいていく足音が聞こえる。
英人の緊張は千城の温かな胸に抱かれ少しずつほぐれていった。
この先、どうなってしまうのだろう…。
英人では何一つ考えることなどできない。想像できる世界が一つも頭に思い浮かばない。
グスグスと泣き続ける英人を宥める手が、英人の顔を上げさせた。
涙に濡れる睫毛の上に千城の唇が降りてくる。それから親指の腹で唇を撫でられた後、千城の唇にきつく塞がれた。
後頭部を大きな手で支えられ口腔内をこれでもかというほど蹂躙される。痺れるような動きに英人はまた涙を流した。
…失いたくない…

一世はもう戻ってこないと判断したようで、千城は長いくちづけを終えると英人を横抱きにして玄関に向かった。
三人が一世の部屋で何の話をしていたのか使用人たちはもう気付いているのだろう。
千城は隠すこともなければ堂々とした態度を崩すこともない。見送りに出てきた男性に「また明日来ると父に伝えてくれ」と言い残して車に乗り込んだ。
英人は明日もこの恐怖を味わうのかと震えた。それに気付いた千城が「英人は来なくていい」と囁いた。

マンションに辿り着いた時、心の底から込み上げてくる喜びに満たされた。帰ってこられたのだ…。
二人でゆっくりとバスタブに浸かり、穢れた体を洗ってもらった。自分の体を見るたびに悲観に暮れる英人を「英人は綺麗だ」と何度も囁かれる。
千城はいつも以上に優しく穏やかだった。英人に与えてしまった辛い経験を少しでも軽減させたいように包み込んだ。

ベッドの中で何度も愛撫を繰り返され千城のものだと体に刻まれた。
幾度抱かれても心の奥底にしこりが潜んでいることを千城は気付いている。
その膿を全て取りさらってしまおうと、千城の激しい愛が降り注がれた。
「俺の目を見ろ。全て忘れるんだ。俺だけを見ていればいい」
改めて強い意志を持った千城の瞳を見た瞬間、昨夜の悪夢が蘇った。打ち震えすぐに目を反らしてしまった英人に千城は確実に何かを感じ取ったはずだ。
「どうした?」
ずっと問われなかった。千城は何一つ英人に聞いてこなかった。一世と何があったのかも立川がどんな態度でいたのかも、きっと聞きたいことは山ほどあるはずなのに、英人を気遣って千城の中で処理されようとしていた。それがこの一瞬で脆くも崩れ去った。
「英人?何があった?たとえどんなことがあってもおまえを責めないと伝えただろう」
千城の愛は痛いほど知っている。だけど英人が他人に感じてしまったという事実を聞いても赦してくれるのだろうか。それを火種にして千城の心は変わってしまわないだろうか…。
無理矢理犯されたのならともかく、最後は英人から強請ったのだ。

両手で顔を覆ってしまっても千城の手によってどけられた。一向に千城と顔を合わせないことに不満を表した。
「何故俺の顔が見られない?英人はやましいことなど何もしていない。父の性格は理解している。どんな結果になったとしても最初の糸口は父が作った。そうだろ?」
まるで見ていたかのような口ぶりだった。パッと視線を上げた英人の瞳を「全て分かっている」と言いたげに受け止められた。これ以上英人が悩めば千城をどんどんと苦しめてしまう。悪循環に陥るだけだった。
信じるしかない。全てを打ち明けても赦してくれると…。
英人は両腕を伸ばして千城に抱きついた。
「ごめ…っ、ごめんなさいっ」
「英人が謝ることは何もない」
「お、同じだったの…、千城の目が…、お父さんのと…。…だから、違うって思っても吸い込まれるみたいに…」
「それならば昨夜抱いたのは俺だと思えばいい」
言い訳にしかならないと分かっていても何故あんなふうになってしまったのか理由を述べてみれば、記憶をすり替えろと提言されて英人は驚愕の眼差しを向けた。
「英人は汚くも厭らしくもない。英人が負う物などないんだ。頼むから忘れてくれ。自信を持って俺だけを愛すればいい」

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コメント

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英人君を元気にしてください、千城様
コメント甲斐 | URL | 2009-12-09-Wed 09:53 [編集]
かっこよく登場した王子様は、捕らわれのお姫様を救いお城に帰還できましたね。
けど、傷ついた姫の心を癒して元の生活に戻るには時間がかかりそうですね。
やっと愛することのすばらしさや大切な人との日々に生きがいも芽生えてきたのに。これでは仕事に出かけることもできなさそう。
ううぅっ・・・・。
ひーちゃん、かわいそうです。
Re: 英人君を元気にしてください、千城様
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-09-Wed 15:05 [編集]
甲斐様

こんにちは。

> かっこよく登場した王子様は、捕らわれのお姫様を救いお城に帰還できましたね。
> けど、傷ついた姫の心を癒して元の生活に戻るには時間がかかりそうですね。
> やっと愛することのすばらしさや大切な人との日々に生きがいも芽生えてきたのに。これでは仕事に出かけることもできなさそう。
> ううぅっ・・・・。
> ひーちゃん、かわいそうです。

ひーちゃん、無事に帰れました~♪
…っていう気分でもないですかね…
順風満帆だった生活が一転、元の木阿弥ですね。
でもきっと王子にしっかりと守ってもらえるはずです。
(お出掛けの際には身体のどこかに発信機と盗聴器でも埋めておくってことで…(殴られそう)
コメントありがとうございました。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-09-Wed 15:13 [編集]
S様

こんにちは。

>千城の愛は揺るがないですね。英人こんなに愛されて幸せだなぁ。

はい、あとは英人の気持ちが安定すれば元の生活に?!
いや、まだどこまでも付いてきそうな鬼退治に行かないとなりません。
どうしてもこの子はネガティブになりがちで、ましてやあんな事件の後ですからね。
素直に受け止められないでいます。
コメントありがとうございました。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-10-Thu 07:03 [編集]
MO様

おはようございます。レス遅くなりましたm(__)m

>千城の揺ぎ無い愛情に触れて、さぞ千城パパも困惑してることでしょうね。

だから出て行っちゃったのかもしれません。
頭を冷やすのはパパのほうかも?!

>英人が負の感情を持ち、失う事を恐れてるのは、千城のようですね。今まで、何でも思い通りになってた千城が、初めて必死に守りたいと切望してるんでしょうね。頑張れ~!

うちの読者様は皆様とても読みが深くて…感心いたします。
何よりも脅えているのは千城のようです。
ずっと英人視点で書いているからなかなか千城の感情まで伝わらないと思っていたのですが…。
応援いただきありがとうございます。
最終回…とか言っておきながらなかなか進んでいません(汗)
コメントありがとうございました。
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