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BLの丘
淋しい夜の果て 7
2009-12-04-Fri  CATEGORY: 淋しい夜
この男は誰だろう…。千城に兄弟はいないと聞いていたし、この部屋に出入りできる人は多くはないはずだ。そして先程の、人間を物のように扱う発言が気になる。
自分は人間として生きる権利を取り上げられてしまったようだった。
「寝ていたんだ。悪かったな、起こしちゃって」
口では謝りはしているが、本当に申し訳なさそうにしているとは見えない。
恐怖を感じて、身体を起こした英人は後ずさろうとしたが、部屋の隅にいた英人には逃げ道がなかった。壁に背中をつけた状態で迫りくるものを見返す。

「この傷、一世(いちよ)さんが付けたんだろ。あの人、相当怒っていたからな」
一世という人間が榛名の父であることは英人でも分かった。
英人の前に尻を付かずに座りこんだ男は、そう言いながら英人の赤くなった頬を指先でさするように撫でた。厭らしさを備えた指の動きに英人の体がビクンとはねた。
「やっ…っ!!」
人に触れられることに激しい嫌悪感がこみ上げてくる。自分は汚いものだと思ってもまだ千城のものでいたかった。それにまた反応する自分を再確認したくない。先程までの行為を振り返ったら誰にでも欲情する体に戻っているような気がした。
咄嗟に男の手を弾き飛ばしたが男は動じた様子もなく、逆に鼻で笑ったくらいだ。
「君、何をやらかしたんだ?あんなに怒った一世さんって見たことない。君くらいの器量が良い子だったら大人しくしていれば一世さんだって気に入りそうなのに」
この男は千城の父が英人をここに囲ったと思っているようだった。嫌われてお払い箱にされたとでも思っているのだろうか。
どのような説明を受けてここに来たかは分からないが、千城との繋がりは知らされていないらしい。

「どんな事情かは知らないけど、あと3日はここから出せないっていうからちょっと顔を見に寄らせてもらっただけだよ。あの人の使い古しなんて、って思っていたけど、君だったらもらってやってもいいや」
叩き飛ばされたはずの手で懲りることもなくまた英人の頬に触れた。
「すごくいい肌。白くて艶がある。顔だけじゃなくこっちも確認させる?さすがに人のうちでナニをするわけにもいかないけど見せるくらいできるだろ?」
男の手はスルリと動いて英人が着ていたバスローブの襟元に人指し指を引っかけた。強引に脱がせる手つきではなかったが、バスローブしか見に付けていない英人にしてみれば、この一枚を剥がされたら全てを晒すことになる。
英人は両腕で自分を抱き締めるようにぎゅっと前で合わせた。嫌だと激しく首を振った。
「ふん。まぁいいや。楽しみは取っておいてやるよ」
余裕そうな笑みを浮かべて、意外にもすんなりと手を引いてくれる。
英人は脱がされずに済んだことにホッとした。
「じゃ、売約済みっていうことで」
え?と思った時には唇が塞がれていた。
チュッと軽く合わせる程度のものだったが、嫌に生々しく感覚が残る。鳥肌が全身に散った。
「立川聖(たちかわ ひじり)。覚えておいて」
男は名乗ると高慢な笑みを湛えた。

ほどなくして千城の父も姿を現した。英人の為の着替えが籐の籠に入れられ、それを手渡すと奥の部屋を顎でしゃくられた。
立川がいたく英人を気に入った様子を見せるとあからさまに不機嫌な顔をしていた。
「やめなさい。そのような者に手を出すなど。薄汚い野良猫に餌をやるものではない」
「一世さんが連れてきたんじゃないの?」
「事情があって預かっただけだと言っただろう。好き勝手に物事を想像しないでくれないか」
「なーんだ、てっきり」
二人が会話する風景は親子のような和やかな雰囲気があったが、千城の父が睨みつけるように視線だけで立川を黙らせた。立川は肩をすくめて見せただけで悪びれた様子もない。言葉や仕草の端々にまだあどけなさも見え隠れした。
『薄汚い野良猫』とは随分な言われようだと思ったが言い返せる言葉など英人にはなかった。
彼から見れば英人など、貰える餌に味をしめ居座ってしまった野良猫同然なのだろう。そして次は立川に乗り換えるとでも危惧しているのか…。
立川が言いかけた言葉はなんとなく想像がつく。親子ほども年の差があるのに、また千城の父に動じもせず平然と話しかける立川は何者なのだろう…。

英人は言われるがまま脱衣所へと向かった。籠の中には真新しい下着と色物の浴衣の一式が収まっていた。
和服姿になどほとんどなったことがないため躊躇するものがあったが、着替えないわけにもいかず、身に付けて居間に戻ってみれば、座卓を挟んで座っていた千城の父と立川が英人を見るなり黙ってしまった。
何か恥ずかしいことでもしてしまったのかとすぐに視線を自分の体に落す。だが英人に何が間違っているのか分かりもしなかった。下を向くと同時に千城の父は溜め息をつき、立川はクスクスと笑った。
「まったく…。帯の結び方の一つも知らないのか」
千城の父は「呆れて物も言えない」といった態度で英人を非難した。育ちの違いを指摘されて恥ずかしさに顔が赤くなる。
脱衣所に戻ろうと踵を返した英人に「待ちなさい」と声をかけられ立ち止まってしまった。振り返れずにいる英人の前に回り込んでくると、その場でスッと英人がいい加減に巻いた帯を解き、襟元を直してからきちんと締めなおしてくれた。
近づかれた時、ドキンとするものがあった。流れるような素早い手さばきは千城にとても良く似ていると思った。

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あれ??聖の存在を明かすはずが…(;一_一) そして英人よ、君はこの父に何をされたのかもう忘れてしまったのかい???
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