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BLの丘
淋しい夜に泣く声 92
2009-11-22-Sun  CATEGORY: 淋しい夜
榛名に抱いてもらった最後の夜は何日前だったのだろう…。
ほんの数日しか離れていないはずなのに、心の中にぽっかりと空いてしまった穴を埋めることができずにいた。
榛名の腕に抱かれている時は何も考えずにただ安心できる。
今抱えている仕事も将来も何も気にしなくていい気がした。

結局日野をマンションに招待した。時は丑の刻に近かったが、翌日が休みであることを思えば眠気もなかった。日野も次の夜まで時間が空いている。
日野はものすごく榛名の存在を気にしていたが、別々に寝られる部屋はいくつもある。日野のワンルームマンションに転がり込むよりはずっとマシだと思う。
英人としては一人で過ごす部屋が嫌でたまらなかった。
広々としたリビングに敷かれたラグの上に日野を案内し、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと日野に渡した。
ケータリングで届けられたおかずをつまみとしてリビングテーブルの上に広げた。本日は中華がメインだったから酒のつまみには充分だ。エビのチリソースとカシューナッツの炒め物、フカヒレの姿煮込みや北京ダックとアワビの炒め物などを適当に広げると日野が「あんた、いつもこんなもの食ってるの?」と驚いていた。

確かに数年前の自分では想像もつかない世界だった。
スーパーで半額で売られている総菜を3日間に渡って食べていたり、ナイフやフォークの存在だってろくに知らなかった。
この一年で生活はガラリと変わった。
特に食生活は榛名に教育されて口にするものの大部分が過去のものとは違う。
日野の言葉は昔の生活を思い出させたが人の慣れとは怖いもので今ではこれが普通だ。

「いつも…っていうか、千城が勝手にオーダーするから。並べられたのを食べているだけ」
英人がまるで自分の意志ではないと言いかければ、日野からは盛大な溜め息が漏れるだけだった。
「俺、カップラーメン食わせたこと、すっげぇ後悔してるんだけど」
申し訳なさげに呟かれたが、日野に救って貰った時に与えられた食事は温かくて、あれはあれで美味しかったと英人は振り返った。
そんなことは気にしなくてもいいと伝えても目の前の料理と比べる日野はどこか納得いかなそうだ。
並べられるものは高級食材ばかりだが、英人はその価値を分かっていない。

もらった缶ビールのプルタブを開けながら日野はここまで連れ込まれた理由を英人に尋ねた。
「それで?なんであんなに自棄になっていたのさ」
見る生活感は一般人の枠を越えていて、不平不満があるようには思えない。バーに現れた英人はどこか投げやりだった。
それが分かるからここまで付いてきたのだと日野は言いたいらしい。
「べつに自棄になんかなってない…」
「そうかぁ?連れ去られてもいいっていう感じだったじゃん」
缶ビールを傾けた日野は英人の行動を振り返っていた。

そんなふうに無防備に振舞ったつもりはないが、人肌が恋しいと思っていたのは事実で、見抜かれていたことに驚きと羞恥が沸き起こる。
それこそこんなことを榛名に報告されるのはまっぴらごめんだった。
「なに言って…」
「黙っててやるから心配するなよ」
日野はクスッと笑っただけであとは真面目な顔つきで英人を見返してきた。英人の心の内など簡単に見透かすことができると言わんばかりだ。
『悩みがあるんだろ?』と声をかけたのは日野だ。
それに縋ったのは自分で、たぶん誰かに聞いてほしい気持ちがあったのだと思う…。

英人はこの数日間感じていた自分の中にあるわだかまりを素直に打ち明けた。
プライベートとビジネスの狭間でどうしたら良いのかが分からなくなっている。
仕事がうまくいけばいくほど榛名が離れる気がして不安でいっぱいだった。
ただでさえ、最近のすれ違った生活が追い打ちをかけている。
榛名から愛される泉にひたりその水にひたすら溺れたいのに、今はそれが叶わない。だけど榛名に寄り添えば仕事をなくすことを意味していると思った。
神戸の行動や態度は決して間違っているものではない。仕事をしている以上当然のことだと理解していたが、突然榛名との距離を取らされたようで受け止めきれていなかった。心が全く現実についていけていなかったのだ。
これまで神戸も英人に甘かったのだと思い知らされた。そして掌を返したように厳しい現実を与えられたものだからお門違いな不満が神戸に対して生まれてしまう。それを表せば神戸は英人を軽蔑するだろうし、今まで以上に榛名を責めるに違いない。
独り立ちさせようと榛名は思うかもしれないし、そしたらもっと距離が開くような気がして、余計に榛名が恋しくて仕方なかった。

「もっと旦那の気持ちを信じてやれよ。俺が知る限り、旦那って相当あんたにイカれてるぜ。あんたが自信持ってやらなきゃ旦那が可哀想だろ」
日野は、英人から榛名が離れていくなどありえないとはっきり言い放った。
そう信じたいが温もりが目の前にいないことは心に余裕など作ってくれない。

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色々とご心配、ご迷惑をおかけいたしました。
応援いただいた方々、心より感謝申し上げます。
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コメント

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おはようございます
コメントメグミ | URL | 2009-11-22-Sun 07:57 [編集]
お帰りなさいませm(_ _)m

色々と大変だったと思いますが…お疲れの出ませんように。

連載の再開お待ちしておりました~♪

日野っちが千城を『旦那』と呼ぶ感覚がとても自然でイイですね~☆

英人の不安は旦那を信じることで解消されるかな?

次回も楽しみにしています♪
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-11-22-Sun 12:00 [編集]
S様

こんにちは。
またご訪問いただきとても嬉しく感じております。

>こんばんは。少し落ち着かれましたか?ゆっくりでいいのでまた書いてくださいね。楽しみにしています。

おかげさまで一山越えたっていう感じです。(あ、リアルがです)
ご心配おかけいたしました。
励ましてくださって心にゆとりが生まれました。

お話も終盤に向かっています。無事終えられるよう頑張ります。

コメントありがとうございました。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-11-22-Sun 12:07 [編集]
t様

こんにちは。
またお越しいただきありがとうございます。
ご心配おかけいたしました。

>どうかご無理だけは為さらないで下さいね。緩りとお待ちしてます^^只、とても読者に愛されている、という事だけ伝わって戴ければ本望です。

数多くの方からコメントを残していただいたのを見たときには本当に驚きました。
そしてとても嬉しかったです。
前回いただいたコメで『素敵なお話』とあって、もう私は「オイオイオイ…」とオロオロしてしまったくらいでした。
楽しみにしていただいてありがとうございます。
毎日更新は無理と思いますが、なんとか完結に向けて頑張ります。

コメントありがとうございました。
Re: おはようございます
コメントたつみきえ | URL | 2009-11-22-Sun 12:19 [編集]
メグミ様

こんにちは。またお越しいただきありがとうございます。

> お帰りなさいませm(_ _)m
> 色々と大変だったと思いますが…お疲れの出ませんように。

ご心配いただきましてありがとうございます。
ずっとこんな駄文を書いていたことが功を奏したのか、思わぬところで息抜きとなりました。
書くことで気分転換…って???って思ったくらい…。

> 日野っちが千城を『旦那』と呼ぶ感覚がとても自然でイイですね~☆
> 英人の不安は旦那を信じることで解消されるかな?

実際に書いてはいませんが、結構千城と日野は仲良しなんじゃないかなと思います。(←他人事ですねぇ)
日野は場慣れしているし物怖じもしないタイプなので、千城にも平気で「旦那」と声をかけていそうです。
英人のうじうじした性格はどうやったら自信を持つことができるのかしら…。
一つ手に入れると一つ失うような感覚の持ち主なので全部手に入っているということが信じられないんです。
もうあとは千城に頑張ってもらうしかない。

> 次回も楽しみにしています♪
はい。ありがとうございます。コメントいただけてとても嬉しいです。
コメント甲斐 | URL | 2009-11-22-Sun 13:55 [編集]
プライベートで忙しいのに更新に感謝です。

英人君たら、”人肌が恋しい、愛して、かまって!”オーラをそんなに無防備に撒き散らしていると、ほんとに怖い目に遭っちゃますからね。見る人が見たら『誰でもいいから抱いて・・・淋しいの』に見えちゃうじゃないの!?
日野さんにはいつもいつもウチのひーくんがお世話になって・・・とワタシがお礼したいくらいですよ。

英人にとって仕事を通しての成長と、人としての成長が連動してしまっているところが悩みどころなんでしょうね。
千城さんもホントは囲い込んで甘やかせておきたいところ、お父さんだったりお母さんだったり恋人だったりいろんな役目があるから難しいですわね。
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2009-11-22-Sun 23:37 [編集]
甲斐様

こんばんは。

> 英人君たら、”人肌が恋しい、愛して、かまって!”オーラをそんなに無防備に撒き散らしていると、ほんとに怖い目に遭っちゃますからね。見る人が見たら『誰でもいいから抱いて・・・淋しいの』に見えちゃうじゃないの!?
> 日野さんにはいつもいつもウチのひーくんがお世話になって・・・とワタシがお礼したいくらいですよ。

たぶん、スキを見せたのは日野に対して(安心しきっているので)のつもりだったんでしょうけど、周りの人にもしっかり伝わっていました。
素直な表現は可愛げがあっていいんですけどね…。
千城はきっと面と向かってお礼の言葉を述べませんので、甲斐様からのいただいたお言葉が日野にとってとても嬉しいものだと思います。

> 英人にとって仕事を通しての成長と、人としての成長が連動してしまっているところが悩みどころなんでしょうね。
> 千城さんもホントは囲い込んで甘やかせておきたいところ、お父さんだったりお母さんだったり恋人だったりいろんな役目があるから難しいですわね。

本人たちは『囲い込んでいない』『囲まれていない』と思っているようですが、日野や周りから見たらさてさて…。
まぁ、束縛度は人それぞれ感覚が違いますから基準値なんてないんですけど。
一緒にいると千城が甘やかしまくっているせいで(私の基準値では)、一向に英人のお子ちゃまな性格が成長してないんです。
だからへんてこりんな悩みを持っちゃうんですよ。
パパとしては危害が及ばないように守って、ママとしては無償の愛を教え、恋人として目一杯可愛がる、ちーちゃんも大変な役回りだなぁ。。。

コメントありがとうございました。
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