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病める時も 健やかなる時も 7
2013-11-27-Wed  CATEGORY: 新しい家族
 日生の記憶の中に残っている親といえば父親だけだった。それも酷い虐待を受けただけの記憶…。
 そばにいなかったから、母親のことはすんなりと受け入れられたのかもしれない。
 しかし、和紀の動揺と脅えは、母親に縋る危機感とは全く違うものを表していた。
 あの父に、何かがあったと、嫌でも知らされる。
「和紀、くん…?」
 絶対に聞きたくない内容が待っているのだろう。
 それでも深く踏み込んでしまったのは日生で、ここで曖昧にされたくない気持ちが湧きおこる。
「おし…えて…。生きているのか、死んでいるのかだけでもいい…。僕のお父さんは、周防さんだけだよ…。それだけは変わらない…」
 どうしてここまでこだわるのか、日生自身、理解できない心の闇があった。
 聞いたからといってどうなるわけではない。いっそのこと、死んでくれていたら、自業自得だと開き直れただろうか…。
 だが、和紀の躊躇いは、まだ生きていることを物語っていた。
 和紀自身、開き直ることなどできないのだろう。
 もう、これ以上、抱え込まなくていいとこちらが気遣ってしまう。
 日生を守るために、和紀も周防も、どれだけの労力を酷使したのだろうか…。
 その苦労が分かるから、真実を知るだけでいいと、改めて思ってしまう。

 抱きしめられる腕の力は、何かの願い…。
 抱えているものの大きさを尚、感じるから、もう和紀に堪えさせるようなことはしたくなかった。
 ずっと、背負っていかなくていい…。

 だから日生は、言葉を紡ぎ出す。
「『父』にしなかった理由があるんでしょ? 何をどうしたら、そうできるのかは分からないけれど、僕の本当のお父さんは周防さんだけだよ。それだけは、絶対に、言えるから…」
 今更、どんなツラを見せられたって嫌悪するのは確かだろう。恐怖におびえて過ごした日々が甦れば、身震いもする。
 温かくて、優しくて、厳しくても日生のためを思って手を尽くしてくれた感謝の気持ちだけは、どんなことがあっても覆ることはない。
 さっき和紀が言ってくれた『ひなは三隅家の子』というのが、何よりの絆の深さだと思える。

 小さなため息は三良坂から吐き出されたものだ。
「和紀…、もう、いいだろう? ここまで話したんだ。この世の誰が"あの男"の存在を知らなくても、今、教えてやらずに後々知ることになった時、日生君がいかに心に衝撃を負うかを考えろ…。こればかりは、和紀から教えてやった方がいい…」
 それはまるで、"兄"が"弟"を諭すようにも聞こえた。
 きっと、和紀以外の第三者は決して口を割らない。特別な領域。
 今は抱きしめて癒してくれる"和紀"という存在がある。
 和紀から聞いたことだけを、"真実"と受け止められる日生の心情を理解してくれているものだからこその発言なのか…。
 躊躇った和紀が、今日、初めてというくらいに縋る目で三良坂を伺った。
 これまでのやりとりを見ていたからなのか、和紀に返された三良坂の返事は、力強く頷くだけのものだった。

 背を押されたように、和紀が巣食っていた躊躇いを剥ぎ取る。
 でも前置きだけは忘れなかった。
「親父を…、恨まないでくれ…」
 囁くように告げられた意味が、日生には理解できない。
…恨む…? どうしたら周防を恨むことなどできようか…。
 もしも隠した酷いものがあったとしても、日生が笑って過ごせた日々を振り返ったら、そんな感情はどうひっくり返ったって芽生えることはない。
 過ぎた本当の両親よりも、ずっと『親』だった。

「親父は、将来のひなのためを思って選択肢を残し『阿武』と名乗らせていても、あの男だけは許せなかったんだ…。父親なんていう資格はない…。だから戸籍からも血縁は抹消させた。最初から、どこかから拾ってしまった子供にしてしまえば、両父母の名前は記さなくていい。年月が経っていたから、強引にでっちあげさせた…というほうかな…。あくまでも、"たまたま育てていた期間"にしたんだ…」
 言いづらそうな発言は、嘘ではなく、日生を気遣ってのことなのだと知る。
 本当の親でなければ、虐待された過去も、血縁がないからと納得できるかと思ったからなのだろうか。日生の曖昧な記憶をうまく利用した。
 三隅家で育てられていた期間が"里親里子"というものだと知ったのもこの時だ。
 周防が戸籍を三隅に変えてほしいと慌てさせたのも、真実を知られたくなかったからなのか…。和紀と一緒になれば、余程のことがない限り、戸籍を確認することはなくなる。
「日生君がもう少し小さかったら『特別養子縁組』として完全に実親の名前を消すことができた。だけど三隅さんは『八歳』と言った君の年を信じて、年齢までは誤魔化さなかった…」
 まるで補足するように三良坂が付け加えてくれる。
 そのため、実親を想像させない『養父』という措置に収めることにした…。

 ただでさえ混乱した頭の中、難しいことまでは理解に苦しんだが、全てが日生を思ってのことだと判断するのは容易かった。
 どれほど、周りを巻き込んだ騒動だったのだろうか…。
「じゃあ…"あの人"は…?」
 今となっては、『おとうさん』と呼ぶことはできなかった。全ての人間から蔑まれた人は、本当の意味で、『父親』ではないのだろう。
 またもや躊躇った和紀がいたが、一度深く瞼を下ろして考えてから、また日生を強く抱く。
「親父を責めるなら、俺も一緒に恨んでくれていい…」
 秘密を共有した、意味でだろうか…。
 不安に震える和紀を、今度ばかりは日生が宥めた。
「僕が知りたいのは、本当のことだけ…。大事なのは、和紀くんと周防さんだけだよ…。どんなことがあっても、周防さんと和紀くんは正しかった…」

「親父は、あの男を奈義さんに引き渡したんだ…。二度とひなに会わせないために…」
 ドクンっと心臓が跳ねる。
 奈義の職業は充分なほど承知していた。きっと、人、一人処分することくらいわけもない人種だ。
「殺した…ってこと…?」
 現実の恐ろしさを震える口で問い返したら、苦笑したのは和紀で、高笑いしたのが三良坂で…、静かに視線で三良坂を睨みつけていたのが哲多だった。
「いくらなんでも、親父はそこまで落ちていないよ。ただ、日本へ渡らないように海外に出稼ぎに行かせただけだ」
「男が背負った借金を、しっかり取り立てていたってことだな。死んだら一円も取れない」
「世羅…。笑い話じゃないんだよ…」

…決して上陸させるな…。
 ほとんど、遺言のようなものだったとか…。
 奈義の監視下におくことで、言わずと行方は知れてくる。日生が会うことはない。
 父親が背負った借金のために三隅家の財産を食いつぶしたと思っていたものは、『働き口を与えて取り立てていた』と聞いてホッとしてしまったらいけないだろうか…。

 15歳というまだ少女を孕ませたことも周防には憤りとして追い打ちをかけるものでしかなかった。
 周防にしてみたら、児童虐待と一括りにしてしまえる内容だった。
 本当だったら、殺してしまいたいほど恨んでくれたのかもしれない。
 他人なのにそれだけの感情を生みだしてくれたことに心底感謝する。
 そう思うと、燻っていた日生の気持ちも、澄んで晴れ渡っていく気分になれた。
…やっぱり『親』は周防だけだ…。そして、『恋人』は和紀だけだ…。
 最後に日生は全員に頭を下げた。
「話してくれてありがとうございました」

 和紀が話したがらなかったのは周防が絡み過ぎていたからだ。周防がどんな仕打ちをしたのか、その話をすることで日生の印象が変わってしまうことを恐れたからに他ならない。
 もう、この先、和紀を悩ませたりしない。
 すっきりとした日生に、不安な表情も、燻った感情もない。
 これから先が、自分たちの全て…。
 日生の気持ちが分かるのか、胸を撫で下ろした人たちが見えた。

 玄関先でにこやかに微笑む哲多と厭味ったらしく笑う三良坂に見送られる。
「新婚旅行、楽しんできてね」
「『新婚旅行』?!」
「おまえは黙ってろっ」
 単に『旅行に行くので留守にします』と日生が伝えた内容は、詳しくを語らなくても通じてしまうのか…。
 動きが機敏なはずの体格の良い男が簡単に蹴られている風景が、やっぱり懐かしさを漂わせた。
 赤くなる日生と、堂々と立ち振る舞う和紀。
 いつまでもこの空間の中でいたい、と強く熱望する自分を知って、日生は今の幸せを噛みしめずにはいられない。

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やっと回想編(?)が終わります。
一部の読者様からお寄せいただいた疑問点など、解消できたでしょうか。
次からは待たせに待たせた、日生と和紀の…イチャイチャ、なんですが。
今週、来週とかなりの多忙スケジュールとなっておりまして…。
そのために、アンケートの締め切りを12/10に設定し、だけど、前倒しで、ここまで書いちゃった…状態でした。
(まぁ、私の体的には余裕が出来たところもあったのですが。つか、すっかり気が抜けた…。これはイカン。)
それなので、明日以降の定時更新は、まず、ないと思っていてください。
また何か書け次第、寄らせてもらいますね。

あと、400,000hit 踏まれた方、いらっしゃったら、ご来店感謝プレゼントを差し上げたいと思います。
(ダメな方は、現在運良く"アンケート"というものが貼られているので、うまく利用してください)
毎度毎度 たくさんのお客様、本当にありがとうございます。


余談
和紀と日生が帰った後の部屋で。
世羅「新婚旅行ってなんだよ…」
美星「そのまんまだろ」
世羅「はぁぁぁ。まさに心機一転」
美星「日生君も気分は晴れたみたいだしね。有意義な時間が送れるんじゃないかな」
世羅「新婚旅行ねぇ。生涯で一番贅沢そうだな。一度は行ってみたいものだ…」
美星「おまえ、前妻とも行かなかったもんな」
世羅「俺たちも行くか?」
美星「誰に向かって言っているんだか…。そーゆー気遣う言葉を彼女に言ってやれば離婚話にならなかっただろうに」
世羅「気が進まなかったんだよ。仕事も忙しかったし」
美星「譲原君がよく頑張ってくれたと思うよ。テメェの尻拭いくらい、テメェでしろってなぁ」
世羅「人生勉強、させてやったんだろうが」
美星「後輩に押し付けるヤツの気がしれない…」
世羅「結局、財産だった事務所物件を抵当にされたんだから、アイツもまだまだだったな」
美星「慰謝料の借金抱えた奴が、『旅行』とか抜かしてんなっ」
世羅「でも、ほら。ここ、家賃、タダ同然だし。明細、少し細工して経費で…」
美星「まっとうな弁護士になりやがれっ」(蹴り)
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コメント

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なるほど~っ。その2
コメントちー | URL | 2013-11-27-Wed 03:45 [編集]
マグロ漁船に乗ってるんだよね、ひなちゃんの父親。
でー、本当に身体で支払ってる。
はい、繋がりました(笑)

そして、周防さん。
母親が15で怒ってたみたいだけど、15だろうがなんだろうが捨てたのは変わらない。
そんな年でもきちんと育てる子もいるし。
仮に置いてかなくても、父親と二人で苛めてたかもしれないしね。
本当、ひなちゃんが生きていて良かったわ。

そして、そして、あの弁護士夫婦。
夫婦だよねぇ?
しかも、望さんの先輩って(笑)
いやー、話は繋がるね♪きえちん。
佳史さんもひなちゃん達とは知らぬ仲でもないしー。
アラフォーって需要ないのー?
こんないろいろありそうなカップルなのに。
ネタにつまったら是非←諦めてないらしい

で、きえちん。
元気になったみたいだけど、またお熱出さないようにね。佳史さんは、リアルにはいません。
定時更新なんてなくても良いけど、身体にはくれぐれも注意してね。
Re: なるほど~っ。その2
コメントたつみきえ | URL | 2013-11-27-Wed 07:40 [編集]
ちー様
おはようございます。

> マグロ漁船に乗ってるんだよね、ひなちゃんの父親。
> でー、本当に身体で支払ってる。
> はい、繋がりました(笑)

どこまでも押し込みます(笑)
きっと生涯船の上で過ごすことでしょう。
女性なんていない世界でしょうからね。
良いようにお使われください。

> そして、周防さん。
> 母親が15で怒ってたみたいだけど、15だろうがなんだろうが捨てたのは変わらない。
> そんな年でもきちんと育てる子もいるし。
> 仮に置いてかなくても、父親と二人で苛めてたかもしれないしね。
> 本当、ひなちゃんが生きていて良かったわ。

15歳の子を孕ませたことが気に入らなかったんでしょうね。
計画して作ったわけでもないし。
育てられる意思と意欲を少しでも持っていたなら違ったかもしれませんが。
ふたりから虐待されていたら、日生の心は本当にボロボロになっちゃってたでしょうね。

> そして、そして、あの弁護士夫婦。
> 夫婦だよねぇ?
> しかも、望さんの先輩って(笑)
> いやー、話は繋がるね♪きえちん。
> 佳史さんもひなちゃん達とは知らぬ仲でもないしー。
> アラフォーって需要ないのー?
> こんないろいろありそうなカップルなのに。
> ネタにつまったら是非←諦めてないらしい

こっちもどんどんと繋がって広がっていっております(笑)
弁護士繋がりですかねぇ。
こちらのおふたかたはどんな関係なんだか…。
想像するとキリがないので、あまり煽らないでください。
すでにワケアリな状況のアラフォー…。

> で、きえちん。
> 元気になったみたいだけど、またお熱出さないようにね。佳史さんは、リアルにはいません。
> 定時更新なんてなくても良いけど、身体にはくれぐれも注意してね。

週末からお出掛けするので、その準備とかでバタバタしているところです。
体調管理、しっかりしないとですね。
ご心配ありがとうございます。
ちー様もお気をつけください。
コメントありがとうございました。
昼寝…目が覚めたら!
コメントけいったん | URL | 2013-11-27-Wed 18:38 [編集]
日生を守りたい為 心が揺らぐ事を恐れた為 周防も和紀も ずっと隠し通すつもりだった事実
いつまでも隠せるとは 思えないので 日生が信頼し愛している和紀から 今  聞かされたのは良かったでしょう
私も スッキリィ♪(*⌒ー⌒*)ゞ

これで 晴れて 新婚旅行へと行けますね!

三良坂と哲多の関係も 何とな~く分かるSSも 書いて下さってありがとう♪

昨日は 給料日の翌日で 彼方此方の銀行へ入金と 忙しくして 疲れたいたのに 中々 寝付けなくて参りました
だからか 昼食後 睡魔に勝てず 昼寝し 起きてみれば もう4時とは!
2時間近く寝てしまって 今晩も また…(゚∀゚ ;)タラー

週末は 外出予定との事ですが、予報でも 寒さも厳しくなると言ってますので くれぐれも 風邪など引かれないように 気を付けてお過ごし下さい。
フリフリ!(*≧▽≦)ノシ行ってらっしゃい!
Re: 昼寝…目が覚めたら!
コメントたつみきえ | URL | 2013-11-27-Wed 19:11 [編集]
けいったんさま
こんばんはー。

> 日生を守りたい為 心が揺らぐ事を恐れた為 周防も和紀も ずっと隠し通すつもりだった事実
> いつまでも隠せるとは 思えないので 日生が信頼し愛している和紀から 今  聞かされたのは良かったでしょう
> 私も スッキリィ♪(*⌒ー⌒*)ゞ

私も書ききった感があって、…あぁぁぁ、そこは終着点じゃないよね と焦っております。
なにがあっても揺るがない関係 それは日生も感じとったことでしょう。
和紀から聞かされた
ということに意味がありますよね。
他の人から聞かされても、抱きしめてはくれないでしょうから。

信頼する和紀から伝えられることは意味が大きいと思います。

> これで 晴れて 新婚旅行へと行けますね!

(。・ω・。)ノぁぃ♪行きますよーっ。

> 三良坂と哲多の関係も 何とな~く分かるSSも 書いて下さってありがとう♪

ここは…。書いていいのか悩まされるとこなのですが…。
浮かんじゃうんですよー。
たったこれだけで、想像してしまった悪い癖…?!
(読者様を完璧無視しましたね…
書いていいなら、書きそうな勢い…。いらないね、アラフォー)

いやーん(/ー\*) 脳内、のぞかないでーっ。

こちらも、また風邪はご遠慮したいので、うがい、手洗いと真剣です。
たったそれだけ…と言わずに、皆様も気をつけてくださいね。
無謀美にお昼寝しないでね。かなり風邪度 危険ですよ。

皆さま ご健康でありますように。
コメントありがとうございました。
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