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病める時も 健やかなる時も 2
2013-11-20-Wed  CATEGORY: 新しい家族
 体が固まる、とはこのことを言うのだろうか。
 和紀の下で強張った体は、とても次の行為に進めはしない。

…戸籍がなかった…。
 それは、この世に存在しなかった、と今なら理解できる。
 知識がなかった幼いころとは違っている。
「わ…きく…ん?」
 見捨てられた不安は確かに和紀に伝わり、それらを拭うように和紀の手が日生の髪を撫でてくちづけを落としてくる。まるで宥められるようだ。知らぬ流れと知らされない出生。
 そのうえで和紀は日生の蔑む考えを追い払ってくれた。
「別に最初から『三隅』の籍に入れてしまったって良かったんだ。だけど、成長した時にひなが『三隅』が嫌だと言うかもしれないからと、選択肢を残しておいた…」

 周防らしいやり方だと思う。決して自分の意見を押し付けてくる人ではなかった。
 必ず日生の意見を聞いて、選択させて、そして喜んでくれた。もしかしたら、それは周防の希望するものではなかったかもしれないが、日生が決めたことに、何一つ反対してくることはなかった。
 大学に進学するかしないかでぐずった時だけだ。
『進学してほしい』と願われたのは…。

 捨てられた子供だとは随分前から理解していた。
 しかし、戸籍までなかったほど、虐げられていた子供だとは思ってもいなかった。
 辛かった時代は、三隅家が全て上書きして救いとってくれた。だから、今更何かを言う気はない。
 …ないが…。

 和紀や周防は、どこまで本当の父親のことを知っていたのだろう。そして母親のことも…。
 和紀の母親が早くに亡くなって父子家庭だというのは言われなくても気付いた。自分に父親がいた記憶だけはあったから、母親がいないことも不思議に思わなかった。
 だが、『阿武』の戸籍が作られたということは、親の記録を辿ることができたのではないか…。
 そこに、母親という存在も知られていたのではないか…。
 今更親に会いたい気持ちなどないが、出生を知りたいと言ったら、我が儘だろうか…。

 迷惑をかける気はないと、何度も思う。今がしあわせだから、このままでいいとも思う。
 それでも、生みの親を気にかけたのは何故だろう。

「ひな…」
 黙ってしまった日生を気遣うように、いつもよりもずっと優しい声が耳朶に吹きこまれた。『なにもかも、忘れろ』…」と言われているようだ。
 きっと、和紀は知るのだろう。調べた結果の、日生の両親を…。
 それは、永遠に閉ざされる内容なのだろう…。
「ひな…。俺はあの時、『阿武』でいてくれて良かったと思っている…」
 諭すように告げられることは何を意味するのか、思考を変えられた。
「どう…ぃう、こと…?」
「親父がひなを『三隅』にしていたら、ひなとはずっと『兄弟』でしかいられなかった…」
 同じ『三隅』になるのでも、現在の日生は和紀との養子縁組が組まれている。周防がまだ生きていた時に、周防の名前の下に『日生』を記すのか、和紀のもとに身を寄せるのかの選択を迫られた。
 単純に大好きな和紀と一緒に生きていく気持ちで、和紀を選んでいた。
 和紀が言うような深い意味があるとは、露ほども考えてはいなかった。

 和紀が愛でるように幾度も日生の髪を撫でる。
「聞きたいことがあるのなら、何でも聞いて…」

 導かせる口調の温かさが身にしみた。去られる不安はいつだって宿している。
 失いたくはない。何より、大事なものは変わらない。もしそこで嫌われる内容が明かされようとも。日生は受け入れられると思う。
 受け入れる覚悟だけはできていたはずだ。
 
…違う。支えてやりたい。
 苦しんだ和紀を知るから…。
 真実を知った時に、日生が離れていかないように、和紀は持てる全てを酷使しようと思っているのが肌越しに伝わる。
 環境や立場、身の置き場など、どうだっていい。日生がいることが重要だった。
 知るから日生は和紀をまた、腕で包んだ。

 でも言葉がこぼれなかった。何かを言うべきなのだろうか…。
 日生は口をつぐんでしまう。一つ間違えたら、肉親を尋ねたいといってしまいそうだから…。
 涙をこぼしたその心の苦しさを、和紀は簡単に掬ってしまう。
「ひな…っ。ひな…。『贅沢』なんて思わなくていい。ひなは、俺の恋人なんだ…」
 好きでやっていることと和紀は言う。
 恋人として当然なのだと教えられる。
『兄弟ではない』…。特別な存在。
 三隅家が教えた"普通"がここにあった。周防もきっと、変わらない。


『むかーし、むかーし。あるところに…』
 清音が読んでくれた昔話が脳裏に浮かんだ。
 いずれ、誰でも幸せになるのだと、いつの日にか教えられた。
 自分を重ねてもいいのだろうか…。


 いつのころだろう。
 淋しがる和紀を知っていた。他では機転がきいても日生を前にしては不器用なほど怖気づく和紀も知っていた。
 日生に対してだけ、冷静さが崩れる。
 うまく、言葉にも態度にもできなくて、燻って、しかし日生を世間に触れたくないと影ながら避け続けた日々。
 ぎこちなさは和紀の愛情の溢れ方だ。
 言っては失礼な、"いじらしい"。
 危険度を和紀なりに判断していたのだろう。幾人もの男が日生の隣から去った。家庭教師が、その例だ。何かにつけ、文句を言い、睨まれて日生の隣から消えた。和紀が隣にいてくれたから、さほど気にすることではなかったが。
『過保護』…。そう言われたらそうなのかもしれないと、笑みすら浮かんで、だけど、ひとつも嫌ではない。
 淋しくて、怖くて、嫌われたくないと願った。
 和紀にだったらなんだって、して欲しかった時代がある。
 あの日々は和紀としては、後悔の嵐なのだろうが。

 甘やかしてくれるから変わらない。安心して…。そこに溺れた。
 甘やかされるから、喉奥から、疑問がこぼれた。
 今しか、聞けないこと。
 嫌がられたなら、すぐに取り返そうと思う。
 
「和紀…くんは、知ってたんだよね…」
「ひな?」
 突然の問いは動揺させるには充分だろう。
 日生だって、こんなことは言いたくも聞きたくもないと思う。
 だが、口を、ついてしまった想いは"真実"をさぐるものだった。
 隠せない…。
「僕にも、お母さんはいたの…?」

 捨てたことを恨まないし、いまのこの生活空間にいられたらいい。出来れば"親"というものは介入してほしくなかった。
 和紀が隠したなら、知らないまま、それまでだ。
 それこそ、受け入れる覚悟はできていた、かもしれない。
 なのに、聞いてしまった現実とは…、

 知りたくはない。でも、知りたかった。
 そして、生きていてほしかった。
 和紀が知る全てのなかで…。

 静かに口が開かれる。
「あぁ。いたよ…。今は、存在しない…」
 躊躇いの口がある。
 …死んだのだろうか…。
 そうであってもおかしくないと思えたのは、和紀も親を失った後だったからか…。
 人はいつか死ぬ…。
 そこまでは、問えなかった。


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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2013-11-21-Thu 07:05 [編集]
おはようございます。

> ハイ、みこっちゃんはもう別格かな。主人公でもないし完全なるサイドキャラなんですが、あのツンデレというか、恋愛に関しての不器用さがたまらない。(かつて、英人を千城のマンションから追い出してに酷いことした時はめっちゃ腹が立ったんですけどね。ああ、千城に殴られたんでしたっけ)今ではなんか目が離せないキャラなんです~。

そうなんですか~。へぇ(←)
みこっちゃんが何故に人気があるのか、さっぱりわからない作者です。
千城も手をあげましたね。
傲慢だったのは千城だけでなく、野崎も…だったのですが、今じゃあすっかり大人しくなっちゃって(笑)
不器用なところは相変わらずですが。

> それはそうと日生を生んだ人ってどんな人なんだろう。かつてちらっと出ましたっけ?あのひどいパパしか覚えてない。

お父さんだけは出てきましたね。
すぐに去ってしまいましたが。
覚えていなくてもいいくらいの存在です。
それでも日生にとっては生みの親ですからね…。
考えることがあるのでしょう。
コメントありがとうございました。
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