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待っていたから 19
2013-11-07-Thu  CATEGORY: 待っていたから
 嘉穂の試合の日は、運良く土曜日の午後になったため、香春も授業を気にせず、応援に行くことができた。平日の場合、学校の規則で、部活関係者以外は授業をサボることができないことになっている。とはいえ、アレコレと理由をつけて、見に行く人は少なくない。会場に誰が来ていた、と分かる分、黙認されているところはある。
 これが大会が進んでいけばまた話は異なるのだが、一回戦はどこの学校も応援団は少ないのが実情だった。
 その日程が良かったのか、天気の割に観客はかなり多い。女子生徒の甲高い声が聞こえるのは、出場選手の人気度まで表しているようだ。
 当日はどんよりとした曇り空で、今にも雨が降りださんばかりの厚い雲に覆われていた。せめて試合が終わるまでは天気にがんばってもらいたいと誰もが祈るような気持ちの中、キックオフとなる。
 試合は前半で1-1の同点。嘉穂がゴールを決めた時には、香春は誰よりも興奮して笑顔を浮かべた。
 ガッツポーズをして、仲間と抱きあう光景はちょっとうらやましかったが、すぐに香春に視線を送ってきてくれたことにはドキドキとしてしまった。
 嘉穂は最初から、香春がどの席で応援しているのかを知っている。
 午後からの試合だというのに、朝早くから押しかけて、最前列を確保した。
 練習中には声までかけてくれた。
「嘉穂くんっ、がんばってねっ」
 同じように声を張り上げた人は、何人いただろうか。
 しかし、声を返してくれたのは香春一人だけだ。
「ああ。…帰り、一緒になれないけど、家で待ってて…」
 試合の後は、良かれ悪かれ、部員全員がバスに乗って一度学校に戻る。
 学校で待っててもいいのに…と、香春は解散後すぐに会えないことに不満があったが、超特急で帰ってきてくれると信じた。
 学校で待ち伏せる人もいるが、バスと同じ速度で走れる乗り物を持たない限り、中学生の足では無理の距離がある。
 今日、香春は両親と筑穂と福智で、父親の運転する五人乗りの乗用車で来ていた。どちらにせよ、嘉穂の乗るスペースは自家用車にはなく、誰かを下ろさなければならない状況にあった。

 その後はどちらも点を入れられなく、1-1のまま後半戦になる。嘉穂がゴールに近づくたびに観客席からどよめきとため息が湧いた。
 一点目はゴールまでまだ距離があるのに、ドリブルで一気に攻めて打ち放ったシュートはゴールネットを揺らした。
 誰よりも香春は大興奮で、「嘉穂くんっ、嘉穂くーんっっっ」と声を枯らすほどに叫んだものだ。一瞬でも香春を見てくれていた。その興奮をもう一度届けてほしい。
 試合は均衡のままで延長戦かと思われたが、雨が降り出したことで、ペースが乱れた。終了直前になって、チームメイトの反則から相手チームのゴールを許すことになって、惜敗した。
 その瞬間にも、香春はボロボロと涙を流す。せっかく嘉穂が得点したのに、守りきれなかったことが納得できなくて悔しかった。
 だけど全部が一人のせいではないと分かるチームメイト。全員が精一杯たたかったことを誰だって知る。
 勝敗に、誰の責任という言葉はない。
 悔しかったのはもちろん選手たちも同じ。グランドに膝をつく人や、天を仰ぐ人。それぞれが嘆きの表情を浮かべていた。
 何を思うのだろう。瞬間、その時、空を見た最後は嘉穂は思うところがあったのか。香春を見ていない。苦しさから逃れるように唇を噛みしめていただけだった。
 それを悔しがるのは間違えてると、香春も分かる。
 何を考えているのだろうか…。
 不安が…。
「嘉穂くんっっ」
 先程とは真逆の感情を胸に、香春は喉を震わせた。必死だった。
 まさか、このまま見てくれないのでは…。

 淡々とした挨拶を済ませて、応援席に向かってきてくれる部員たちがいる。嘉穂が視線を合わせたとき、何もかもが吹っ飛んでいた。
 嘉穂が自分を見てくれていること…。
 香春は手を伸ばせば嘉穂に触れると思った。絶対に傷ついている心を抱きしめてあげたかった。そこで何が嘉穂を癒してやれるかは分からないけれど…。
 今にも柵から飛び出しそうな体を、母親と父親と福智の手によって止められた。上半身は完全に飛び出し、足は宙に浮いている。真っ逆さまに落っこちるだろう。落ちなかったのは福智の力があってだからこそ。
 そんな香春を、嘉穂はいつもと変わらない顔で見つめ返してくれる。
「香春、泣くなよ。何も人生最後の試合じゃないんだからさ」
 嘉穂も両手を伸ばしてきて、香春の手を掴む。抱き締めるところまではいかない。
「だって、嘉穂くんっ」
「ほら、濡れちゃうから。ちゃんと傘の下に戻って…」
 嘉穂のほうが充分濡れているというのに、どこまでも香春を気遣ってくれて、また大粒の涙を落とした。
…あともうちょっとでまだ戦えたはずなのに…っ。
 嘉穂は『負け』は『負け』として受け止めていた。
 嘉穂が伸ばした手で香春の湿った髪を撫でてくれる。
 こんな雨の中だから…と、他の選手は早々と踵を返すのに留まったのは香春が離れようとしなかったからだろうか…。
 途端に福智が叫んだ。
「嘉穂っ、ギリギリまで香春を落とすから、おまえも背伸びしろっっ」
「え?」
 誰もが驚いた時、香春の腰を強く抱いた福智の腕が、香春の体をもっと前に押し出した。
「ちょっっ、福智っ?!」
 筑穂の驚愕の声は悲鳴にも似ている。香春自身、落とされるのかと驚いたくらいだが、一層嘉穂との距離が近づいたことに、我を忘れた。
 一瞬の出来事だ。
 香春が落ち過ぎないように肩に両手を添えて、背伸びをした嘉穂の唇がが香春のものを掠めた。
 突然のことに呆然とする香春に、ニッと笑った嘉穂が香春の肩を押し戻しながら「泣きやめ」と言う。
 嘉穂からの微妙な力加減を感じとれば、香春の体は一気に引き上げられていた。
 冷たい雨の中で、一瞬だけ触れた温かさ…。
「嘉穂くんっ!!」
「すぐ帰るから」
 片手を上げて去っていく後ろ姿に叫んでいる香春の耳には、目撃してしまった人たちのざわめきは届いてこなかった。
 キャーキャー騒ぐ甲高い声と感心したようなどよめき、恨みがましい嫉妬が混じる。
 注目の的になっていることを周りにいた人間が気付かないはずもなく、鞍手家と津屋崎家は雨と視線を避けるように会場をそそくさと後にした。

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次回、最終回になるかな。
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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2013-11-07-Thu 08:46 [編集]
おはようございます。

> わぉ(//∀//)だいたん(笑)リアルでは、絶対 ムリだろうけどね…パパは腰を抜かしてない?

BLとはリアル無視です(←)
しないことができちゃうからいいのかなぁぁぁと勝手に思っていますけど。
何も知らなかったパパ(と筑穂)は、やはり相棒の手によって連れ去られたことでしょう。
パパ「香春…、香春、今おまえ、チューしていなかったか…???」
ママ「パパっ、なに座りこんでるのっ。ほら、行くわよっっ」
筑穂「嘉穂ってばっ、嘉穂ってばっ(////)」
福智「嘉穂と香春の青春だねぇ」

コメントありがとうございました。
またしても 福智 ( ≧▽≦)b Good Job!
コメントけいったん | URL | 2013-11-07-Thu 15:06 [編集]
負けて悲しい気持ちを隠す嘉穂と 嘉穂の代わりになって 泣く香春の気持ちを汲んで 素敵な サプライズですね♪

香春パパは きっと気付かず 香春ママは 驚いたものの 内心は ニヤリでしょd(≧ω≦)ネッネッ

あー そのシーンを 生で見たかったわぁ~残念(o。o;) ウゥ...


実家の母が 風邪で寝込んで 世話に行っているのですが、私の言う事を聞かないので ちょこまかと動いて 大変です(苦笑)
喉の痛み、咳、熱発と 順に来る風邪なので きえちんも気を付けて下さいね♪〇( >。< )〇 げほげほ

P.S.「村」の新着記事に無かったので 今日は 更新は お休みかな~?と思いながら 来て良かったです(o^-^o) ウヒッ♪
Re: またしても 福智 ( ≧▽≦)b Good Job!
コメントたつみきえ | URL | 2013-11-07-Thu 22:16 [編集]
けいったんさま こんばんは~。

しいたげられた福智のカッコイイところをいっぱい出しています(←)

> 負けて悲しい気持ちを隠す嘉穂と 嘉穂の代わりになって 泣く香春の気持ちを汲んで 素敵な サプライズですね♪
>
> 香春パパは きっと気付かず 香春ママは 驚いたものの 内心は ニヤリでしょd(≧ω≦)ネッネッ
>
> あー そのシーンを 生で見たかったわぁ~残念(o。o;) ウゥ...

私も見たかったぁっ。
ママは今までの作戦が実ったと満足したかしら。
堂々と表してくれた男に安心したことでしょう。

> 実家の母が 風邪で寝込んで 世話に行っているのですが、私の言う事を聞かないので ちょこまかと動いて 大変です(苦笑)
> 喉の痛み、咳、熱発と 順に来る風邪なので きえちんも気を付けて下さいね♪〇( >。< )〇 げほげほ

風邪は万病のもとですからね。
どうかけいったん様、うつりませんように。
お疲れのときが一番危険です。

> P.S.「村」の新着記事に無かったので 今日は 更新は お休みかな~?と思いながら 来て良かったです(o^-^o) ウヒッ♪

実は数日前に、間違えてupしてしまったことがあって…。
その記録が残っていたようですね。
だから新着には上がりませんでしたが、こうしてご来店してくださった方がたくさんいて嬉しかったです。
コメントありがとうございました。
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