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待っていたから 10
2013-10-30-Wed  CATEGORY: 待っていたから
 香春と嘉穂が自宅に帰ったことに母親は驚いたようだが、勉強が終わったのだと伝えれば納得もしてくれた。
「お友達はどうしたの?」
「置いてきた」
「あ、いや…。なんか福智さんが『勉強したい奴には教えてやるから』って…」
 母親の現状確認に、香春は冷たい言葉を発するが、嘉穂はしっかりと状況を説明してくれる。
 それに感心した眼差しを浮かべるのは、とても筑穂に似ていて、途端に『一緒に勉強してきなさい』と言われるのではないかと脅えた。
 中学校に上がってから、何かと勉強にうるさくなった。どんどんと嘉穂と離れていく成績を心配するのは分かる。この先に待ち構える『高校受験』は大げさな言い方をすると人生を分けてくれる。
 夏から塾に通わせようというのも、"より良い"環境を求めてのことなのだろう。
 当然喜ばれしことなのだが、時間を拘束される危機感の方が香春には強い。
 とりあえず、嘉穂の家に戻れと言われなかったことに心がホッとしていた。

 香春は嘉穂の背中ばかりを追い掛けて育った。そのため、どこかおろそかになった部分があったことも否めない。それらは顕著に普段の成績に表れてくれている。常に教えてくれる人が家庭内にいる津屋崎家は、学問に疎い鞍手家とは雲泥の差があるのだと知らぬ間に刷り込まされていたが…。
 香春の父親は最終学歴が"高校卒業"となっている。母親も短大卒だ。何がどう違うのか分からないが、筑穂や福智と違って簡単に問題を解いてくれない現状は、確かに香春にも伝わっていた。もし兄姉(きょうだい)がいたとして、津屋崎家のように同じく教えてもらえることがあっただろうか…。
 だから香春が嘉穂の家に遊びに行くことは、小さい頃から"許されていた"ことだった。その影には、必ず宿題が片付けられることと、筑穂並みの頭脳を求められていたことがある。
 それを意識するよりも独占欲が働いた。幼い独占欲は、何よりも嘉穂を求めていたのだ。
…そう、今日のような、小さなイザコザの解決を優先にしてしまうほど…。
 何より香春が恐れていたのは、もちろん嘉穂が自分の知らない世界に飛び立ってしまうことだった。
 先を歩く人は、一番身近で、嘉穂の兄、穂波の存在がある。彼は飲食業の仕事に就きたいと言い張って、長兄の筑穂の希望ではない道を進んだ。もちろんそれだけの意思があったから、どんなことがあってもと言いきった背景がある。最終的には筑穂が折れていた。
 香春には何があるのだろうか…。まだ何も見えてこない。
 勉強の話をされるたびに、離されていく現実を知る。胸に燻っていくものは日々大きくなるが、まだ現実のものとして降ってはこなかった。
 八女の"勉強熱心"な存在が今、尚、危機感を強めてしまったのだろうか…。
 嘉穂がただ幼馴染としてそばにいてくれる時期は、そろそろ終焉を迎えるのかもしれない。
 昨夜、嘉穂が何かとこれまでと違う行動を取った態度がまた脳裏を過る。…いつまでも、子供のままではいられない…。


 その日を境に何より一番変わってしまったことは、次の機会から嘉穂が鞍手家に泊まらなくなったことだった。
 嘉穂は食事に来たとしても、すでに身を清めた状態で、鞍手家では風呂には入らない。確かに暑くなるこの頃、真っ先に汗を流したい気持ちは充分理解できている。鞍手家の手を煩わせたくない結果だということも…。
 夕ご飯を一緒にしても、「帰る」と嘉穂は言う。平日であれば当然のことだったが、週末の宿泊も筑穂からの連絡で必要がないと伝えられた。そうなれば、鞍手家から何かを言うこともできず、大きくは出られない。
 学校の中で八女が何かと動き出していることは一切聞かなかったから、少しだけ安堵もしていた。でも教室の壁に阻まれた世界は遠い。

 あの日、嘉穂と香春が福智の『勉強会』から逃げてしまった日、あとで福智に聞いたところ、八女はひたすら嘉穂の生活についてのことを聞いて帰ったそうだ。当然勉強など一つもしていない。
 その内容が何であったのか、どんな答えを言ったのかは、うまい具合にはぐらかされてしまった。香春の不安を絶対に知って、協力してくれる人だと思ったのに、肝心の部分では頼りにならない。香春はムスッとしたが、誰とて構ってはくれなかった。所詮、ただの『ガキのたわごと』なのだろう。
 津屋崎家を訪れれば、いつだって福智は不敵な笑みで迎え、帰りには筑穂が困惑気味に送りだしてくれる。最初の頃は事故を心配されているのかと思ったが、それもまた違うようだ。日が暮れれば嘉穂がついてきてくれた。嬉しいのに、義理のようで悲しい。
 まるで切り離されているようで不安だけが襲ってきた。嘉穂の地位に見合わないと思われ、すでに"幼馴染み"の領域を越えたと、見限られたのだろうか。
 津屋崎家は"学"に厳しい。自分は嘉穂にふさわしくないと、まるで宣告でもされているようだった。
 そんな中で、唯一の救いは、朝のお迎えと、放課後の逢瀬。これらは何も変わらなかった。
 サッカー部は大会に向けて、朝連も放課後の練習メニューも厳しくなっていったが、嘉穂は音を上げることなく張り切っていく。むしろ、水を得た魚だった。その姿は余計に凛々しく見えていくものになった。
 朝、筑穂は温かく出迎えてくれるし、放課後、時々香春の家で長居をしていると、筑穂か福智のどちらかがお礼を言いながら嘉穂の迎えにくることもある。
 学校の帰り、嘉穂が走り回るサッカー部の練習場の金網の外で待っていても、嘉穂の態度は変わらない。夏の大会でレギュラーになったから、下級生にもその人気は高まっていった。その中でも必ず嘉穂は香春に視線を向けてくれた。誰に言葉をかけられても軽い返事だけで、"あいさつ"するだけに留まっている。もちろんそこに八女の姿もあったが、扱いは"ただのクラスメイト"の域を越えていない。
 嘉穂と肩を並べて帰れることが、香春の中で優越感となって宿る。その仕草、態度だけが香春を"特別な存在"に押し上げてくれる。
 徐々に香春は、もっと嘉穂を独占したい欲求に見舞われ始めた。スキンシップを過度にとらない嘉穂と手をつないでみたいとか、いつかの日のようにキスをしてみたいだとか…。
 こんな自分は『インラン』なのだろうか…。胸の中に溜まっていく得も知れぬ不安感は、そばに居るはずなのに大きくなっていく一方だ。
 何か確たる証拠がほしいのに、いつの頃からか、並んで歩く距離まで間があいたような気がする。
 嘉穂の体温が、感じづらくなってきた…。
 それでももう一歩が踏み出せない。
 香春が何かを口走って、本当に嘉穂にウザイ奴と嫌われ、遠くに行ってしまったら…と、恐れるものが胸に蔓延(はびこ)った。
 無邪気に笑えなくなった、時の移ろいを肌で感じる。

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* あくまでも記述上のことで、学歴について何かをいう意味はありません。もしも不愉快になられた方がいらっしゃったならお詫び申し上げます。
私自身、そんなことより、生きていける人生の中、見方に重きを置いております。人それぞれ、感じたものが全ての糧だと思っておりますので…。
なかなか書ききれないところがありますが、お許しください。
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コメント

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拍手コメさま
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-30-Wed 07:45 [編集]
おはようございます。

> いや やっぱ世間一般は 学歴でしょ、それが イコール幸せとは 成らないって分かるのは 過ぎてからで 親は やっぱり 世間一般を望むのよね 蛙の子は蛙だとしても(笑)

そうなんですよね~。
何か特技でもあればまた違うんでしょうが、とりあえず真っ先に評価されるところがそちらでしょうか。
基礎の部分だから余計に大事にしないとね。
蛙の子だからこそ、望まれるところなのかな。
コメントありがとうございました。
思春期だもの、おおいに悩むべし d( ^ェ^ )ビシッ!
コメントけいったん | URL | 2013-10-30-Wed 11:31 [編集]
急に 一線を引き始めた嘉穂に 焦り気持ち 募る思い
だから もっともっと 欲しいと、求めてしまう 

それが 恋から愛へと 変わりつつある事♪

どうやったら 彼は 振り向いてくれるのだろう
どうしたら 彼と 話せるのだろう
どうすれば 彼は 私の気持ちに 気付いてくれるのだろう
と、よく 片思いの人を思いながら 私も 悩んだものです。

香春は、その点 2つはクリアしているんだから 楽勝だよ~♪と言いたいけど、近すぎて 側に居過ぎて 切り替えが難しいかもしれませんね。

⋇~⋇~✾ヽ(..*) 好き、嫌い、好き…ポッ

「香春~! 花瓶の花で 花占いしちゃ可哀想でしょ!」by香春ママ
Re: 思春期だもの、おおいに悩むべし d( ^ェ^ )ビシッ!
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-30-Wed 16:19 [編集]
けいったんさま こんにちは~。

> 急に 一線を引き始めた嘉穂に 焦り気持ち 募る思い
> だから もっともっと 欲しいと、求めてしまう 
>
> それが 恋から愛へと 変わりつつある事♪

変わり始めましたね~。
嘉穂も何、考えているんだか…(←)
そんな行動が香春を不安にさせ、また安心もさせ…。
不安は少しでもない方がいいと動き出すのかしら。

> どうやったら 彼は 振り向いてくれるのだろう
> どうしたら 彼と 話せるのだろう
> どうすれば 彼は 私の気持ちに 気付いてくれるのだろう
> と、よく 片思いの人を思いながら 私も 悩んだものです。

青春ですね~(#^.^#)
けいったんさまの恋のひとときを垣間見ませていただきました♪
どうしたら…。
いつだって思うことなのでしょうね。

> 香春は、その点 2つはクリアしているんだから 楽勝だよ~♪と言いたいけど、近すぎて 側に居過ぎて 切り替えが難しいかもしれませんね。
>
> ⋇~⋇~✾ヽ(..*) 好き、嫌い、好き…ポッ
>
> 「香春~! 花瓶の花で 花占いしちゃ可哀想でしょ!」by香春ママ

我が家に生えている三つ葉のクローバーでよければ、いつだって提供します!!!
最初さえ間違わなければ終わりは一緒…(それもどうなんだか…)

たぶん読者様は答えはみえているのでしょうが、そこまでの過程を書きたい(←勝手な思惑)気持ちでいます。
どうしたら恋は実るのか、私も一緒に悩んでしまいました(笑)
書けないことに悩んでもいますが、その悩みこそが、恋する時代に戻してもらっているのでしょうか。
けいったんさまには とても良い刺激をもらった気分です。
コメントも、いつもありがとうございました。
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