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待っていたから 9
2013-10-29-Tue  CATEGORY: 待っていたから
 福智と筑穂を前に宿題を仕上げ、ようやくおやつタイムとなる。筑穂が野菜ジュースをグラスに入れてくれて、二人は自分たちの部屋に引っ込んでしまった。
 自分たちの部屋、とはいっても、一階の奥の部屋だから、多少の話し声などは聞こえてしまう。
 嘉穂のために作ったのに、こうなっては八女に分けてやらないわけにもいかない。しかも更に長居をさせることになってしまった。
 香春は内心で舌打ちしながらも、豪快に食べてくれる嘉穂に笑顔を向ける。
「今日はいつもより、たまご、多めにしてみたんだよ」
「茹で卵がほんのりあったかい。それに大きい。これ、香春が作ったんだろ?」
「そうっ! 分かる?」
 嘉穂に言い当てられて、嬉しくて声が弾んだ。だけど急いで作ったので味が良くなかったのかと不安にもなった。
 たが嘉穂は香春を安心させるようにクスッと笑った。
「分かるよ。香春のお母さんが作るのって、もっと混ぜ混ぜ状態になってるじゃん」
 母親との違いをすんなりと口にされて、やはり出来具合が良くなかったのかと落ち込むと嘉穂は言葉を続けた。
「俺、こっちの方が好きだな。ゴロゴロ感があって食べごたえがあるっていうか。なんか、たくさん食べられている気がしてくる」
『好き』と言われては、それだけで舞いあがれる。嘉穂が褒めてくれることは何でも嬉しい。
「えへへ」と笑っては、きちんと頭の中に嘉穂の好みがインプットされた。
 ゴロゴロ感は急いでいたからと、単純に上手く潰せなかったからなのだが、その感じが良いと言われたなら、不器用なことも棚に上げられた。

香春は八女に視線をやり、またふふんっと笑う。母親の料理と違いが分かるほど、嘉穂は鞍手家に精通しているのだ。おまえの入り込む隙間はない。堂々とした自慢だった。
「八女くん、もう宿題、終わったんだから帰れば? あ、嘉穂くん、マンガ本忘れてきちゃった。またうちに来る?」
 別にマンガ本を読みたいと頼まれていたわけではないが、八女がここに居座るつもりなら、嘉穂を連れ去るのが得策だと思いついた。
 暗に八女に対して、勝手な行動をとってくれたおかげで、嘉穂のペースが乱れたのだと責める。いや、早く来てくれたおかげで、ヤキモキする時間がさっさと終わったと感謝するべきだろうか。起こされた恨みは確かにあるが。
 香春が八女に声をかけると、こちらも露骨に可愛く拗ねた態度をとり、「僕、追い出されちゃうの?」と嘉穂を伺い見た。そんな言い方をしたら、心優しい嘉穂が何かと声をかけるのはすぐに知れてくる。これ以上の長居はお断りしたい香春だ。
『追い出す』とは随分酷い言い方じゃないか? これでは香春が悪者になってしまうと頭を巡らせた。
 とりあえず、そんなことはないと嘉穂に伝えるべきだろう。
「誰も『追い出す』なんて言っていないじゃない。嘉穂くんはどうしたいの?」
 嘉穂の気持ちを確かめる意味もあって、香春は嘉穂の腕を掴んで尋ねた。もちろん、この手を離す気がないことが伝われば一番良いのだけれど。
 嘉穂は八女に向けた視線を香春に戻してくる。困ったように一度上を見上げた。何かを考えているのが分かって、即答されないことに香春は悲しくもなっていた。
「うー、んと…。どうするかな。家に居ると兄貴が勉強しろってうるさいし…」
 その返事にすかさず香春は飛びついた。
「じゃあ僕んちに来ていればいいじゃない。ちくちゃんだってきっとやることがあるよ。今日お休みだもん。いつも仕事で疲れているんだしさ」
 家にいたらやることが増えるだけだと嘉穂を促した。こちらは八女に対して津屋崎家は大変なのだと訴えるものでもある。
 それなのに八女は自分に都合が良いように解釈した。
「僕のうちでもいいよ。行き慣れた鞍手くんちじゃつまらないでしょ。たまには遊びに来てよ」
 八女も嘉穂の腕を掴むものだから、払いのけてやりたくなった。
 何が『つまらない』だ、と香春は眉間に皺が寄ってしまう。小さい時から嘉穂の好きなものばかりが集まった家なのだ。居心地が良いに決まっているから、毎日のように寄ってくれるはずだった。

 両腕を引っ張り合っているところに、筑穂と福智が出てきた。服を着替えていたところからこれから出かけるのだと知れる。
 それは困る、と咄嗟に香春は目を大きく開いた。
「おぉ。何してんの。嘉穂の取り合いか? モテる男はいいねぇ」
 一瞬驚いた表情をした福智も、すぐニマッと笑ってからかってきた。
 そのセリフに香春と八女はどちらからともなく、一度手を離す。一応保護者の前では気を使う。
「福智ってば何言ってんの。うちの家系だよ」
 筑穂が福智をたしなめ、ありえない、と口にする。それに対して福智は反論した。
「だからだろ。ここんちの良さは俺が良く知っている」
「僕もっ。僕も良く知っているよっ」
 香春も福智の言葉に続いて津屋崎家の良さを豪語すると、福智が「あぁ、香春もだな」と同意してくれた。
 福智の意見には百人力になれる。すかさず香春は立ち上がって福智の元に寄った。
 キョトンとしたのは全員だったが、そのまま福智に「ねぇねぇ、ふくちゃん…」と小声で話しかけて居間の外に出す。ドアを開けっ放しにしたのは、聞き耳を立てているであろう人たちのためと、いない間に余計な会話をされてもすぐに聞けるようにだった。
「香春?」
 嘉穂の声が背を追ってきたが、ちょっと待っててと視線で訴えた。
 大人しくついてきてくれた福智に、内緒話がしたいと言うように両手を自分の口の前で筒状にすると、分かってくれた福智が身を屈めてくる。
「あのね。嘉穂くん、うちに連れて行きたいの。だからちくちゃんと出かけないで」
 香春の申し出に福智は「なんで?」とやっぱり小声で問うてきた。
「八女くん、帰らないんだもん…」
 それを言うと、へぇぇと感心した表情を浮かべてから、ニッと笑ってくれた。どうやらそれだけで理解してくれたようだ。
 福智の手がポンと香春の頭上に乗る。
「おまえも苦労性だな。筑穂には内緒だぞ」
 筑穂は何かと鞍手家に気を使うところがあるのを承知しているから、また嘉穂を押し付けるようなことはしたがらないだろう。
 福智はすぐ居間に戻った。
「嘉穂、のんびり寛いでいないで、予習するぞ。今日は一日、三人でお勉強会。嬉しいだろ?」
「えーっ?! 冗談っ」
「は? 福智?」
 疑問に思ったのはもちろん筑穂もだ。
 香春もそうじゃないっと声を上げたくなった。三人で、なんてそれこそ冗談じゃない。
 解放されたと思っていた矢先にそれはない、と嘉穂が奇声をあげ、八女は居座れる理由ができたと喜んだ。
「福智さん、ありがとうございます」
 ご丁寧にも頭まで下げて、福智のご機嫌まで取ろうというのだろうか。
「ジョウ?」
「八女君は真面目だねぇ。やる気のある生徒はいいなぁ」
「いつから先生になったんだよ…」
 筑穂がボソッと呟いたが、影にはやる気がない嘉穂に対して嘆きも含まれていた。嘉穂の刺激になってくれるなら歓迎といったところだろうか。
「やだよ。せっかくの休みなのにぃ」
「ぼ、僕も…」
 嘉穂の言葉に香春も無意識に同意してしまえば、福智は「やる気無い奴は出ていってもいいぞ。俺も嫌だし。八女君だけ特別授業ってことで」と香春に返してくる。
 そこまで言われてハッとした。しっかり逃げ道を用意してくれている。
「嘉穂くん、うちに行っていよう。八女くん、勉強したいんだって。ほら、宿題もわざわざ聞きに来たくらいだし」
 香春は嘉穂に近づいて腕を引っ張った。
 驚いたのは八女だったが、今更後には引けない状況になってしまっている。
 嘉穂は一瞬の躊躇いがあったようだが、香春に急かされて腰を上げた。
「そっか。じゃあ、福智さん、宜しく」
「ちょっと嘉穂ぉ?!」
 筑穂の制止の声もトンネルしていく。チャンスを逃したらどんな小言が待っているのか、良く知る嘉穂だからこそだった。
 ぱぁっと笑った香春の腕を逆に嘉穂が引っ張った。
「さっさと逃げようぜ」
 香春は胸の中で大きな万歳をして、空っぽになったバスケットもその場に置いたまま、気が変わらないうちにと玄関に走り出した。
「嘉穂くんっ」
 八女の切羽詰まった声は、無視することにする。

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コメント

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福ちゃん、ナイス
コメントちー | URL | 2013-10-29-Tue 05:43 [編集]
ふふふ。香春ちゃんの『ふくちゃん』にちょっとニヤニヤ。カッワイイ。
嘉穂は、『福智さん』穂波の影響かしら?
まあ、義理のにぃちゃんだもんね。

福ちゃん、ちくちゃんと『休憩』じゃなかったのかな?
あ、昨日『残業』してたっけね。
八女くんが、福ちゃんに横恋慕(笑)
昨日のきえちんのコメ返で、スゲーな、それ。
良いなあ。そんなんなったら楽しいなぁ。
なんて、思っちゃいました。
秘コメ様、楽しい妄想をありがとうございました。
私の頭んなかはこんな事になってました。


筑穂「はぁ~っ」
千種「どうしたの?今日、ため息ばっかだよ?」
筑穂「実は、福智がぁ・・・アレコレアレコレ」
千種「えー、福智さんに限ってないでしょ?」
筑穂「だって、お肌ピチピチだし、小さいし←可愛いん だよ?俺なんて俺なんて~」
千種「ちくちゃんも可愛いって~」
筑穂「良いな、吉良さんは浮気しないでしょ?」
千種「うん、信じてるけど。でも、吉良ってば仕事は完璧、性格も良いし、格好良いし(なにげにノロケ)ちょっと心配」
筑穂「福智もモテるんだよ(それで悩んでたんじゃ?)」

二人の旦那自慢は延々と続く(笑)
Re: 福ちゃん、ナイス
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-29-Tue 09:17 [編集]
ちーさま おはようございます。

> ふふふ。香春ちゃんの『ふくちゃん』にちょっとニヤニヤ。カッワイイ。
> 嘉穂は、『福智さん』穂波の影響かしら?
> まあ、義理のにぃちゃんだもんね。

名前の呼び方は考えたのですが、これはママの影響です(ってことにした 笑)
ママが「ちくちゃん、ふくちゃん」と呼ぶからそうなったのではないでしょぅか。
ちくちゃん、は小さい頃から聞いていたものだし自分でも言っていたものだし、何の抵抗もないのですが、
ふくちゃん、はどうしようか悩んで、嘉穂と同じように「福智さん」って呼んだらちくちゃんと差があると怒られたとか…???
可愛い子に可愛く呼ばれるのは福智も気分が良いことでしょう。
(嘉穂が呼んでも嬉しくないか)

> 福ちゃん、ちくちゃんと『休憩』じゃなかったのかな?
> あ、昨日『残業』してたっけね。

残業してましたね。
本当は弟二人が帰ってこないことを確認してさっさと家に帰っていたりして(笑)
だから香春ママは帰らせたくなかったのだ(`・ω・´)ノ

> 二人の旦那自慢は延々と続く(笑)

それはきっと、浮羽のパン屋さんで繰り広げられた会話でしょう。
店の隅にあるイートインコーナーで買ったばかりのパンを食べ、コーヒーでも淹れてもらい…。
長話になってまた売上伸ばしてあげて…。
「いい加減、出ていってくれ」と失敗作を大量に持たされて帰っていく…。

千種・筑穂「「これで夕ご飯になるね~~♪♪」」
笑いあって帰路につくのであった。

コメントありがとうございました。
拍手コメさま
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-29-Tue 09:27 [編集]
おはようございます。

> すっげぇ\(^O^)/ 福ちゃんが すごい(笑)

こういう悪だくみはすぐに思いつくんですね~。
自分も何気に虐げられておりますから。
いや、ガキ共にはさっさと帰ってもらおうか、ってほうでしょうか。
自分の家でふたりきり、ゆっくりできるのが一番よいでしょうね。
伊達に"面倒見の良いお兄さん"をしておりません(笑)
コメントありがとうございました。
どうして こうなるの~(゚∀゚ ;)タラー
コメントけいったん | URL | 2013-10-29-Tue 16:23 [編集]
↑と、ジョウは アセアセのオロオロでしょ!

しかし 福智の気の利かしようが、何ともで… フゥ~ε=┐( ̄ω ̄:)┌
合点がいかない筑穂には 後で たっぷりサービスしなくてね♪

福智の御蔭で ジョウを振り切る事が出来て 嘉穂と2人きになったんだから もう少しは 深く仲良くならなくちゃね、香春♪

では 何から しようか?(´・ω・`)モキュ?
Re: どうして こうなるの~(゚∀゚ ;)タラー
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-30-Wed 07:35 [編集]
けいったんさま おはようございます。

> ↑と、ジョウは アセアセのオロオロでしょ!
>
> しかし 福智の気の利かしようが、何ともで… フゥ~ε=┐( ̄ω ̄:)┌
> 合点がいかない筑穂には 後で たっぷりサービスしなくてね♪

ホント、なんでこーなるのー???状態の八女クンです。
こんな簡単に逃げられるとは…。
まだまだツメが甘いな ヾ( ̄▽ ̄; チッチッ
で、福智は筑穂のご機嫌とりにいかないと…。
福智も苦労性ですね(笑)

> 福智の御蔭で ジョウを振り切る事が出来て 嘉穂と2人きになったんだから もう少しは 深く仲良くならなくちゃね、香春♪
>
> では 何から しようか?(´・ω・`)モキュ?

結局、最終的にはどんな時もふたりきりになれちゃうんですね~。
そう仕組まれている両家です。
ん? これ以上深い仲…???

コメントありがとうございました。
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