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待っていたから 7
2013-10-27-Sun  CATEGORY: 待っていたから
 食事が終わってしばらくしてから、香春たちは自室へと引き上げた。嘉穂はいつもと変わらない態度で香春に接してくれるが、香春の胸には魚の骨が刺さったようにチクチクと痛みを届け続けた。
 我が儘を言ってしまったのではないだろうか…。香春の感情だけを押し付けてしまって、本心は嫌がられているのではないかと考えこんでしまう。
 嘉穂は感情表現が豊かなほうだが、肝心な部分を押し込めてしまうところがある。それは親を亡くしてから顕著に表れてきた。我慢するということを自然に学んできている。人に対して気遣いができるのも、そんな家庭事情が大きく関係している。
「香春、このマンガ、もうすぐ続きが発売だっけ?」
 部屋に入った嘉穂は、隅に追いやられた小さいテーブルの前に寄り、上に乗っていたマンガ本を手にした。6畳しかない部屋には、ベッドと勉強机、カラーボックスが二つ横に並んでいる。今は嘉穂が泊まるための布団がベッドの横に敷いてあるため、文字通り足の踏み場もない。
 嘉穂は布団の上に胡坐をかいて座る。
「うん。来週だったかな」
「また買うの?」
 嘉穂が見上げてくるので香春も隣に腰を下ろした。
「うん。これ、好きだもん」
 答えると途端にパァっと顔をほころばせた嘉穂がいた。
「ほんとっ?! じゃあ読み終わったら貸してよ」
「いいよ」
 マンガ本を買い続けるのは、嘉穂も好きだと知っているからで、ここでも一つの繋がりを持っていたい思いが溢れていた。
 嘉穂は必ず自分に借りに来てくれる…。だからやめるわけにはいかなかったのだ。

 香春は嘉穂がこのままマンガ本の読み返しに耽ってしまうのかと思った。そうなったら話しかけるのも憚られる。ほんの僅かの間だけ行動を追ったが、嘉穂はパラパラと本をめくっただけで閉じては布団の上に置いた。
「読まないの?」
「え? 別に後で借りるのでもいいし…。あ、持っていっちゃだめ?」
 伺うように見られては香春は首を横に振る。そんなこと、一度だって言ったことなどないのに。
「そんなことないよっ。いつでも嘉穂くんの好きな時に…っ」
「サンキュっ」
 香春に手を伸ばしてきては、香春の頭を撫でてくれる。大きな手が触れてくる感触が気持ちいい。燻る香春の気持ちを浄化してくれるようだ。
 少し顔を赤らめながら、尚もずっとこうしていたいという欲求に見舞われた。嘉穂が本当に求めるものとは何なのだろう。
 香春が去っていく手を名残惜しそうに見つめてしまうと、嘉穂が困ったように笑った。それから明らかに分かる故意的な動きで視線をどこかに彷徨わせる。その動きに抑えこんでいた不安が喉からこぼれた。
「嘉穂くん? どうしたの? 僕、へんなこと、言っちゃったりした?」
 すぐに嘉穂の視線は戻ってきたが、やはり戸惑いは見てとれる。
「そんなこと、べつに…。香春は何も言っていないじゃん」
「だって…」
 ぎこちない雰囲気に居たたまれなくなる。もっと何でも口にできた間柄だったはずなのに、少しずつ溝が広がっていくような錯覚が漂った。香春が一番恐怖とするものだ。
 香春が俯いてしまうと、また嘉穂の手が差し伸べられた。
「『だって』って何が? 俺のほうが何か言っちゃったから香春が気にするの?」
「そんなことないよっ」
 伸びてきた手は香春の手を包んでくれる。直に触れてくる肌の温もりに、ドクンと心臓が跳ねた。
 こんなふうに触るには期待したい思いが膨れ上がってくる。
「香春…」
 嘉穂は何か言いたげに一度言葉を飲みこんでから優しい眼差しを向けてくる。
 手はまた髪を梳いて、頬に触れた。
 小さい頃から何度も繰り返された、香春を宥める手段だった。香春が何かに脅える表情を見せた時、何かに気づいたように嘉穂は体に触れて守ってきてくれた。
 ぎこちなさを感じるのは嘉穂もなのだろうか。
 手の動きがいつも以上に滑らかではない動きをたどる。

「……、あ、あのさ。今日のプリント、明日貸してよ」
 嘉穂は開きかけた口を閉じ、話題を反らしてしまった。それもあまりにもわざとらしいくらいに。
 温もりも遠ざかっていく。
 嘉穂が求めるものが、八女のために使われるのだと知れると、素直に頷けるものにならなかった。回答プリントを嘉穂に見せるのは一向に構わなかったが、何のために必要とするのかが分かるだけに貸したくない。
 だからといってそう答えれば嘉穂は余計に香春を嫌ってしまいそうな気がする。
「プリント…。うん…。…明日、八女くんと勉強するの?」
 はぐらかされた話にも一応答えるしかない。誤魔化されて曖昧にされたくない先程の話題をもう一度振り返りたかったが、故意的にそらしたと分かるから更に抉るのは得策とは思えなかった。
 嘉穂はまた困った表情を浮かべた。
「そう…。一緒に勉強するっていうほどじゃないだろうけど。また福智さんに聞くのもなんだし…」
 答えプリントを見せて納得させようとするのか、煩わしい問題に時間をかけたくない態度が掠めた気がした。
 福智と筑穂が絡んでくれば、嫌でも長居させることになるから、それを避けたいように感じられて落ち込んだ気分はちょっとだけ浮上した。
 どんなことであれ、いてもたってもいられなくなるのは香春だ。すぐに嘉穂の腕に飛びつく。
「じゃあ、僕も行く。僕も復習する」
 自分のプリントなのだから、行方を追うのは当然の資格があっていいはずだ。
 後をついてまわることに嘉穂にうっとおしがられるかと思ったが、嘉穂はすぐに「いいよ」と応じてくれた。
 僅かだがホッと胸を撫で下ろす。
 だけど終始、嘉穂はよそよそしい態度を持ち続けていた。これだけは近日でも感じることはなかった…。
 突然、一体何が…?
 当たり障りのない話をして、そろそろ寝ようかと部屋の明かりを落とした。
 本当は昔のように一緒の布団で寝たかったが、シングルベッドに二人はきついだろうし、それは床に敷かれた布団でも同じことだった。
 もちろん、言いだせることではなかったけれど…。
 そばにいるのに、なんだか遠い…。
 もう泊まりに来てくれないのではないか…。不安は一晩中、香春を苛んでくれた。

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コメント

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拍手コメさま
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-27-Sun 06:11 [編集]
おはようございます。

> 思わず息を詰めてしまった(笑) 大人の階段登る♪って簡単じゃないよね(//∀//)

なかなか簡単にはいかないですねぇ。
色々考えちゃう思春期。
(でも子供っぽさが全然書けない私は自己嫌悪にも陥っているんですけど…)
息を詰めず、肩の力を抜いて読んでくださいね(笑)
コメントありがとうございました。
ソコノ(#`・ω・´)σ君達ッッ!!!
コメントけいったん | URL | 2013-10-27-Sun 08:55 [編集]
青少年諸君!
恋に 勉強に 色んな事に 悩み 足掻き ぶち当たって 躓いて 大人へと成長して行くがいい!
それが 愛する人を支え 守ることにも なるんだから♪ヾ(  ̄▽)ゞオホホホホホ
…私にも そんな時があったわ…(* = =) トオイメ。o 0


香春の纏う空気が微妙に変わったのを 嘉穂も 感じ取ったのかしら?
嘉穂の挙動不審さは…

2人の このジレジレな雰囲気が いいですね!
もう 肘で脇腹を ツンツンしたくなっちゃうわ~♪

さて 香春が気に病んでる相手 八女上陽は、どんな子なでしょう?
3人での お勉強会の様子が 楽しみだわ♪
ネェネェ、ここ教えて♪(* ・ω・) ノ"(`・ω・´)ヾ(・ω・* ) ネェネェ、これは どうするの?


Re: ソコノ(#`・ω・´)σ君達ッッ!!!
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-27-Sun 14:27 [編集]
けいったんさま こんにちは~。

> 青少年諸君!
> 恋に 勉強に 色んな事に 悩み 足掻き ぶち当たって 躓いて 大人へと成長して行くがいい!
> それが 愛する人を支え 守ることにも なるんだから♪ヾ(  ̄▽)ゞオホホホホホ
> …私にも そんな時があったわ…(* = =) トオイメ。o 0

今は何事も成長期ですからね。
色々なことを学んでほしいものです。
それこそ恋も学問も。
大人の意見はよく聞きましょう(゚∀゚)

> 香春の纏う空気が微妙に変わったのを 嘉穂も 感じ取ったのかしら?
> 嘉穂の挙動不審さは…

嘉穂も何かを思っちゃっているようです。
そのうち出てくるでしょう(←)

> 2人の このジレジレな雰囲気が いいですね!
> もう 肘で脇腹を ツンツンしたくなっちゃうわ~♪
>
> さて 香春が気に病んでる相手 八女上陽は、どんな子なでしょう?
> 3人での お勉強会の様子が 楽しみだわ♪
> ネェネェ、ここ教えて♪(* ・ω・) ノ"(`・ω・´)ヾ(・ω・* ) ネェネェ、これは どうするの?

まだまだ学生様ですから。
ズイズイとは進んでいけないのですね。
とりあえず、お勉強しておこうか。
ジレッ隊ですがもう少しお付き合いくださいm(__)m
コメントありがとうございました。
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