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待っていたから 5
2013-10-25-Fri  CATEGORY: 待っていたから
 気まずさを抱えたのは自分だけだったのか、香春がリビングに戻っても嘉穂の態度は、香春にも母親への接し方も変わらない。
 ダイニングテーブルの上にはすでにホットプレートが用意されていて、あとは流して焼けばいいだけになっている。
 香春が入っていくとリビングに座っていた嘉穂が早速立ち上がってくる。それを見て母親も香春に声をかけた。
「香春、焼きそば、こっちで作っちゃうからね。あとで乗せるなり混ぜるなりすればいいでしょ」
「混ぜる…って、粉に混ぜるの?」
 母親の提案が分からずキョトンと問い返せば、「馬鹿言っているんじゃないわよ」と呆れらた。焼き上がったお好み焼きと一緒に…ということらしい。
 狭いホットプレートでいっぺんに作業をするのは無理がある。しかし胃袋は待ってくれない。特に食べっぷりの良い嘉穂を前にしたら、作っている時間よりも明らかに消化時間のほうが早い。
 ダイニングテーブルに嘉穂と並んで座る。
「香春が焼いてくれるって言うから待ってたんだ」
 嘉穂がにっこりと笑ってくれれば、それだけで先程までの鬱々とした気分が吹っ飛んでいく。
 香春にとって、嘉穂のためにできることがある、というのが何よりもやる気にさせてくれた。
 その心境も読んでくる母親だから、何事にも協力してくれて、料理に関しても次々と教えてくれるところがある。

 ワイワイと言いながら香春と嘉穂、ふたりで楽しい夕食時間を送っている時、リビングテーブルに置きっぱなしだった嘉穂の携帯電話が鳴った。流れるメロディから筑穂でも穂波でもないようで、嘉穂は首を傾げる。(パパはまだ帰宅していません。)
 一度席を立った嘉穂は相手を確かめた上で、そこで話し始めた。その姿を香春は黙ったままじっと見つめてしまう。口調と相手の呼び名から嘉穂のクラスメイトだと判断することができる。
「あぁ、ジョウ?……えー、今、香春んちにいるんだけど…」
 嘉穂が呼んだ相手は、昨年香春とも同級生だった人物だ。今年は香春は離れてしまったが、八女上陽(やめ じょうよう)は今年も嘉穂と同じクラスになっている。
 彼は入学したころは香春より少し大きいくらいだったが、さすがに成長期というのか、徐々に香春とは違った体格を纏い始めた。それでも童顔は相変わらずだったし、学年全体から見たら小柄な部類に入る。
『可愛い』ともてはやす人もいるくらいで、何かあればすぐに嘉穂を頼る光景はちょくちょく目にした。
 学校も終わったこんな時間に何の用だろうか…。嘉穂の人付き合いの良さを考慮すれば、別段不思議がることでもないのだが、香春としてはおもしろい出来事のはずがない。
 聞き洩らさないようにと耳はダンボになるし、視線は嘉穂の仕草をひとつも見逃さないように凝視してしまう。
「香春の家にいる」と堂々と発言してくれるところにささやかな安堵を覚え、また逆に邪魔をするなと嫉妬心も湧いてくる。
 嘉穂が困ったように言葉を濁らせるのが余計に気になるところだった。
「……わかんない…。……、そうだけど…。……無理だってぇ」
 途切れ途切れに聞こえてくる会話は何を話しているのだろう。八女の声が聞こえないので断片的な嘉穂の返事から想像するしかないのだが、どうにも嘉穂にとって歓迎できない内容に聞こえた。嘉穂の手が頭をポリポリとかく。この動きをする時は、本当に困っている時だ。堂々とした立ち振る舞いが多い分、目につく仕草でもある。
「嘉穂くん?」
 思わず香春が声をあげてしまえば、嘉穂がこちらを向いて、ちょっと待っててと言うように片手を上げて見せた。
「とにかく、明日でいいだろ?」
 その答え方にまた香春は目を大きく開けてしまう。
 明日、とは休日だ。今夜、香春の家に泊まっていくことになれば、当然のように明日も嘉穂と一緒に過ごせる淡い期待がはびこっていた。一週間、学校の、教室という厚い壁に阻まれた香春は、ろくに嘉穂と接触していない。休みの日くらい、溜まっていたアレコレの会話をしたい。公園に一緒に遊びに行くのだっていい。ボール蹴りはすぐにバテちゃうかもしれないが、元気に走り回る嘉穂を見ているだけだっていい。
 そうやってようやくやってきた休日に夢を抱いていたのに、たった一言で膨らんでいた風船は破られていく心境だった。
「か…」
 もう一度呼びかけようとした声は、「ああ、分かったよっ」と投げやりになる嘉穂の声にかき消された。
 もちろんそれが香春に向けられたものではないことぐらい判断はつくが、どういう形であれ、八女の要求に応える結果となったことだけは確かだ。

 嘉穂は携帯電話を切り、ふぅぅと大きな息を吐き出してから、香春の隣に戻ってくる。
「どうしたの?」
 疑問を胸にしまうことに耐えられず、即座に聞いてしまえば、嘉穂は肩を竦めた。
「今日のプリント。ジョウのやつ、やり始めたのはいいけど全然分からないから教えろって言ってきたの。俺だって分かんねーっつぅの」
 嘉穂が断っていながら食い下がるのは何故なのだろう。一抹の不安が駆け抜けていく。
 香春のクラスが先にプリントをもらっているのは周知の事実で、聞くのなら自分たちのクラス以外の人間ではないか? 確かに嘉穂の成績を考えれば、理解していると思われてもおかしくないが、確実性を狙ったら答えプリントをもらっている別クラスに頼るべきだろう。
 投げやりになる嘉穂は残っていたお好み焼きをパクリと咀嚼し、追加でテーブルにやってきていたボウルに視線を送っては、「もう一個、焼く?」と香春に聞いてきた。
 いわゆる"おかわり"だ。
 宿題のことは頭から追い払いたいのか、単に先に食欲を満たしたいのか、話題を反らされてはそれ以上の深追いもできなくなる。
 香春は頷いてボウルをたぐりよせ、空いたホットプレートの上に生地を流した。

 楽しかった雰囲気がまたもや陰りを帯びたように感じてしまった。
 嘉穂は八女との話がどんなことになったのか語ろうとはしない。『明日』に何があるというのだろう。またそれを聞いてもいいのだろうか…。
 不安とムッとする思いと、口うるさく尋ねまくって嘉穂にうっとおしがられたくない葛藤が胸の内で燻った。そのため、自然と口が閉じられてしまった。
 空気の微妙な変化に嘉穂だけでなくキッチンにいた母親も気付くのか、香春の代わりに「嘉穂くん、次は明太子入りでもいいかな?」と様子を伺ってきた。
 香春と嘉穂の間には焼きそばが半分になって残っているが、全てを嘉穂にあげたとしても、きっと足りないだろう。母親も心得たもので、二枚目を焼いている今でも『まだ食べる?』とは聞かない。
「あ、っと…、なんでもいいけど…」
 一瞬"遠慮"の文字が脳裏に走ったらしいが、結局は食欲に負けている嘉穂だった。嘉穂の返事を受け取っては、「ほーんと、嘉穂くんが来てくれると冷凍庫が片付いていいわぁ」と呑気な声を上げる。
 何でも混ぜてしまえ、とは主婦の創作意欲の行く末か…。
 母親が空いたボウルを引き取っては、また次の材料を入れてくる。それから「ちょっとお布団の用意、してくるわね」とその場を立ち去ろうとした。
 お風呂にも入った、ご飯も食べた、あとは寝るだけ…と、嘉穂が鞍手家に来れば特に変わることのない"日常"の会話だ。大概は食事を終えた後は、香春の部屋でマンガ本を読んだりして時間を潰す。
 母親も"泊まる"というからには、すでに筑穂の了解済みだと、誰もが思った。
 香春も嘉穂が泊まっていくのだと再確認できた瞬間だった。
 しかし嘉穂はすぐに、「あっ」と声を上げた。
「いや…、俺、やっぱ、今日は帰る…」
 少々言いだしづらそうであるものは母親を制止させる。同時に香春も「えっ?」と嘉穂の横顔を振り返ってしまった。
…帰る…?…どこに…?
 帰る場所なんて一つだけだと、あたりまえのことなのに、それすら疑問に感じてしまうのは、先程の電話で会話していた相手がいたから…。
 香春の隣で嘉穂はまた頭をポリポリとかいていた。

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コメント | | 2013-10-25-Fri 09:00 [編集]
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゚+。(ノ`・Д・)ノオォオォ。+゚ ライバル登場ーー!
コメントけいったん | URL | 2013-10-25-Fri 12:13 [編集]
嘉穂の一挙一動に 浮いたり沈んだり…
香春の心は 恋する乙女モードですね♪

今 香春を落ち込ませている お邪魔虫の八女上陽
しかも 嘉穂から 「ジョウ」と呼ばれて 親しさ満載では ありませんか!(。・`ε´・。)ブスゥ
小動物でも 自分とは違ったタイプの上陽に 香春も不安になるよねー

誰にでも優しい嘉穂、特別な存在には 特別な優しさが必要なのに…
ずっと身近に居るから その存在の大切さを 薄っすら おなざりにしてない?

お邪魔虫ジョウが、嘉穂と香春の関係に 良い意味で起爆剤になって欲しいな。
割り込み━━━━∵(゚ε゚(ヽ( ̄▽ ̄)ノ)゚з゚)∵━━━━マス!!!



Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-25-Fri 16:42 [編集]
秘密コメさま こんにちは。
これ、出しちゃって良かったのかな…。

> ☆彡

これだけでした(笑)
星のようにキラキラ感を送ってくれたのでしょうか。
(誰だか分かっていますから大丈夫ですよ~)
いつも読んでくださって嬉しいです。
コメントありがとうございました。
Re: ゚+。(ノ`・Д・)ノオォオォ。+゚ ライバル登場ーー!
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-25-Fri 16:54 [編集]
けいったんさま こんにちは。

> 嘉穂の一挙一動に 浮いたり沈んだり…
> 香春の心は 恋する乙女モードですね♪

香春はオトメンですよ~。
嘉穂次第でどうにでも揺さぶられてしまう…。

> 今 香春を落ち込ませている お邪魔虫の八女上陽
> しかも 嘉穂から 「ジョウ」と呼ばれて 親しさ満載では ありませんか!(。・`ε´・。)ブスゥ
> 小動物でも 自分とは違ったタイプの上陽に 香春も不安になるよねー

ようやく出てきた(笑)
これまでも知ってきたことなのでしょうが、学校内で見ているのとはまた違った印象がありますよね。
さらに嘉穂が困るような我が儘まで言ったようで…。
どんな人なんでしょうかねぇ。

> 誰にでも優しい嘉穂、特別な存在には 特別な優しさが必要なのに…
> ずっと身近に居るから その存在の大切さを 薄っすら おなざりにしてない?
>
> お邪魔虫ジョウが、嘉穂と香春の関係に 良い意味で起爆剤になって欲しいな。
> 割り込み━━━━∵(゚ε゚(ヽ( ̄▽ ̄)ノ)゚з゚)∵━━━━マス!!!

そばに居すぎて感覚が鈍っているんでしょうか。
特別感がたりない香春です。
割りこまれて黙っていない香春でしょうし、嘉穂も事態の雲行きの怪しさに気付くかな。
さあ、どうなるでしょう。
(もてはやされているくらいなら、そいつらに押し付けたい香春だよね)
コメントありがとうございました。
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