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待っていたから 3
2013-10-23-Wed  CATEGORY: 待っていたから
 嘉穂は一度自宅に帰って着替えてくる。
 香春の家の前で「じゃあ、またね」と見送った。走って帰る後ろ姿を見ていると、慌てているようで心配にもなるが、逆にすぐに戻ってきてくれると思えて心が躍った。
 玄関を入り、母親に嘉穂の家の状況を伝えると、やはりすでに連絡は届いていたようだ。
「香春、今日の夕ご飯、お好み焼きでもする?」
「いいけど…。嘉穂くん、それだけじゃ足りないと思うよ」
 体格が違えば食欲も違う。香春は比較的小食なほうだが、嘉穂はといえば底なしの胃袋を持っているような旺盛さがある。少なからず食費がかかってくることに、筑穂はいくらかの食費を母親に渡していたようだが、母親は「塾代」だと言って受け取りを渋っていた。筑穂と福智が家庭教師さながらに勉強を教えてくれるので、これまで香春と嘉穂は塾通いはしていない。だけど、それもこの夏までだと、どちらの家庭も思っているところがある。
 受験を前にして、教えるにも限界がある、のと、筑穂たちだって仕事があるのだから、いつまでも頼ってはいられない。
 現実問題は如実に香春たちに降り注いでくる。進学する学校は、一緒になれるのだろうか…。

 母親の提案に香春が首を傾げると、承知済みの母親は「焼きそばもあるし。あ、冷凍ご飯がたまってきちゃったからそばめしでも作っちゃうか」と色々と思考を巡らせ始めた。この家は、バクバクと気持ち良く消化してくれる人間がいないので、母親もやりがいがないらしい。嘉穂と穂波がやってきた頃は、いろんな意味で腕をふるってくれたものだ。
 最近は…、香春がやりたがるのが分かるのか、香春でもできる料理に挑戦させてくれるようになった。
 お好み焼きや焼きそばだったら、テーブルの上にホットプレートを出してきて、嘉穂と一緒に作れるところも利点だ。
 香春が作ったものを、「美味しい」と言って食べてくれることは何よりも嬉しい。
 嘉穂が兄たちだけではなく、香春にも目を向けてほしい願いもあって、嘉穂のためにと花嫁修業(?)を今から始めていた。レパートリーも随分増えた。
 鞍手家と津屋崎家で一緒に食事をすることもあって、そのたびに香春は嘉穂の好きな味を知っていく。母親と筑穂が密に連絡を取ってくれて、香春でも作りやすいように母親がアレンジしてくれたりもしていた。知らずのうちに香春は、津屋崎家の味を受け継ぐのだと息巻いていた。

 香春が母親の提案に頷くと、「じゃあ下準備だけしてしまいましょうかね」と野菜やら肉やらと材料の確認に向かっていった。
 嘉穂が着替えたり、宿泊の準備をしたりしても、30分もかからずに戻ってくるのは知れている。
 香春も制服を脱いで部屋着になってくると、すかさず「香春~。お風呂沸かしちゃってぇ」と声がかかった。
 部活後、埃まみれになっているだろうし、夕飯までの時間を有意義に使わせようとは母親なりの気遣いでもある。少しでもやることができたなら、空腹も気がまぎれるだろう。
 香春が浴室の準備をし、キッチンに戻っては母親の横に並ぶ。母親は香春が何をしたいのか、すでに理解していたからスッと場所を空けてくれる。
「まずキャベツ、千切りにしちゃって」
 四分の一に切ったキャベツの塊と『簡単千切り器』を渡されて、香春も慣れたようにスライスし始めた。
 こうして母親から色々と料理を教えてもらっている。嘉穂が食べてくれると思えるから、香春も俄然やる気になれた。

 そうこうするうちに玄関のチャイムが鳴って、嘉穂が来たことを知らせてくれる。
 調理道具を放って、真っ先に香春は出迎えた。
「おじゃましまーす」
 筑穂は嘉穂のことを、挨拶ができない、と良く嘆くが、いつも見ている香春は、そんなことはないと声を大にして言いたい。
 今日も家中に響くような大きな声を上げて、奥から母親が「いらっしゃーい」と返事をした。
「嘉穂くん、今日はお好み焼きなんだって」
「わーぁ。香春んちのお好み焼きって、ふわふわしてて、俺、好きっ」
 ご飯の話をすれば途端に輝きだす嘉穂の顔があって、香春も思わず嬉しくなった。
「今ね、キャベツ切っていたところなの」
「香春が?指、切るんじゃね?」
「もうっ。そんなドジなことしないよっ」
 からかわれては不貞腐れて、また宥めるように嘉穂の大きな手が香春の頭上を撫でた。昔からのさりげない仕草も、今の香春では一つ一つが大事に思える。嘉穂は決してスキンシップが激しいほうではない。友達を小突いたりはするが、敏感な部分には触れてこようとはしない。頬や髪に手を伸ばすのは、知る限り香春だけのはずだ。
 嘉穂が持ったいつものバッグを目にしては、詰まっているであろう着替えなどがあることに安堵する。

 リビングに顔を出し、キッチンにいる母親とも挨拶を交わす。母親は腰を落ちつける前にバスルームを促した。
「嘉穂くん、お風呂沸いているから入ってきちゃって。まだごはんは準備段階なのよ」
「え、でも…。…香春は?」
 声に答えてから隣に立つ香春を見下ろしてくる。来た早々、人の家の風呂場を使うのは抵抗があるのだろうか。もう何度も繰り返されてきた"日常"であるのに…。
「僕、…まだだけど…」
「じゃあ、俺、香春の後でいいよ。先になんて…」
 見渡せば一番風呂になってしまうことになるのは嫌でも知れること。いつの頃からか、嘉穂はこうして周りを気遣うようにもなっていた。ちょっと前なら意識することもなく飛び込んでいたというのに…。
 些細なことで、少しずつ開いていく距離感を感じてしまい、昔のままではいられないと現実として教えられているようだ。それはチクチクと香春を苛んでくるものになった。
 嘉穂が遠慮するのを母親が口を挟んでくる。
「一緒に入っちゃいなさい、って言いたいところだけど、さすがにもう狭いわよね。嘉穂くん、うちのパパより大きいもの…」
 母親の何気ない『一緒に』という言葉にドキリとしたのは香春だけだろうか。
 小さい頃から一緒の入浴も何度も繰り返されてきた。母親にとっても嘉穂の体は見慣れたものになるのかもしれないくらい。
 もちろん小学の高学年になってからは、親の前で平気で裸になるようなことはなくなっていたけれど。男兄弟の嘉穂はちょっとだけ"恥らい"というものが鈍いらしい。
 香春も意識し始めたのは中学校に上がってからだ。色々な意味でどんどんと成長していく。意識するということも改めて知り始める。
「別に俺は構わないけど…」
 嘉穂のあっけらかんとした言葉に心臓を跳ねあがらせたのはもちろん香春だった。
 幼い頃から繰り返された行動に、嘉穂には羞恥心というものは存在しないのだろうか。香春一人が、特別な目で、またいやらしさも混じらせて嘉穂を見ているようで、それが知られたら軽蔑されそうな危機感も襲ってくる。
 少しずつ何かが変わり始めている自分たち…。
「ぼ、僕…」
 やっぱり狭いよ、とか、ご飯の支度が途中で…とか、いろいろと言い訳が脳内を巡るが声になるには至らない。
「嘉穂くんがいいなら香春も入っちゃいなさい」
 すかさず母親は嘉穂の同意が得られたのなら躊躇することもなく香春にたたみかけた。男同士、母親にしてみたら、いつまでも変わらない二人なのだろうが…。
 キッチンでは香春がどいた分のスペースを悠々と動き回っている母親がいて、香春が戻っても邪魔になるだけだと悟れる。母親にしてみれば、嘉穂と一緒にバスルームへ追い出せる都合の良い展開となっていた。
 決定事項となってしまい、また嘉穂からも「じゃ、行こ」と腕を掴まれて廊下に出るよう視線を向けられたら抗うことなど出来るはずがなかった。
 香春は着替えを取るために、嘉穂は香春の部屋に荷物を置くために、揃って階段を昇りだす。
 意識したら余計に気になりだす。それこそ、この前まで普通に接していられたはずなのに…。
 香春は必死で心臓のバクバク音を鎮めようと努力していた。

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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2013-10-23-Wed 07:48 [編集]
おはようございます。

> むふ(*/ω\*)何故か私が照れる

いきなりお風呂♪
今まで何度一緒に入ったか分からないくらいなのに、改めて意識しちゃうんだね。
覗き見の心境でしょうか(笑)

いつもポチパチありがとうございます。
エラーメッセージが出てしまったとのことですが…。
たまに機嫌悪くなっちゃうんですかね。
スネた子供だと思って放置してください。無視していいですよ。
また次の時で…。
お手数おかけいたしますm(__)m
コメントありがとうございました。
(/||| ̄▽)/ゲッ!!!電源を…
コメントけいったん | URL | 2013-10-23-Wed 11:08 [編集]
後 残す所 「送信」だけだったのに 電源OFしてしまい 凹み中の けいったんです。゚(*ノДノ)゚。わ~ん

香春ママに 『一緒に』と言われ ドギマギしている香春が 可愛い♪
では スンナリ「OK!」を出した 嘉穂は どうなのかな?

この2人が 一緒に お風呂に入ると聞いても ドキドキもなく 微笑ましいと思ってしまうのは、「まだまだ お子ちゃまだね♪」と 親目線で 見てしまうからでしょうか?(*≧∇≦*)ブヒャ!!!

言動から 嘉穂、好き、好き~♡オーラが 丸見えの香春より もしかして 嘉穂の方が あ~んな事や こ~んな事を 想像してたりしてね♪
~♨~ヤッタネ♪ v(* ̄▽ ̄*)〃▽〃) キャ♪~♨~お風呂
Re: (/||| ̄▽)/ゲッ!!!電源を…
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-23-Wed 13:44 [編集]
けいったんさま こんにちは。

> 後 残す所 「送信」だけだったのに 電源OFしてしまい 凹み中の けいったんです。゚(*ノДノ)゚。わ~ん

オーマイガッ。
それなのにまた書きこんでくださってありがたいかぎりです。

> 香春ママに 『一緒に』と言われ ドギマギしている香春が 可愛い♪
> では スンナリ「OK!」を出した 嘉穂は どうなのかな?

何を考えているのでしょうか。
まぁ、何も考えていないような気もしなくないですけれど。
でなきゃ、すんなり、とは言わないような…。

> この2人が 一緒に お風呂に入ると聞いても ドキドキもなく 微笑ましいと思ってしまうのは、「まだまだ お子ちゃまだね♪」と 親目線で 見てしまうからでしょうか?(*≧∇≦*)ブヒャ!!!

やっぱりまだ"延長線"なんでしょうね。
ここにママが加わっても違和感ないのでは?(←)

> 言動から 嘉穂、好き、好き~♡オーラが 丸見えの香春より もしかして 嘉穂の方が あ~んな事や こ~んな事を 想像してたりしてね♪
> ~♨~ヤッタネ♪ v(* ̄▽ ̄*)〃▽〃) キャ♪~♨~お風呂

あくまでも香春視点なので、まだ見えてこない部分がありますが、読者様たち皆さま想像力が豊かなので当たるかもしれませんよ。
さぁ、楽しいお風呂~♪
…になるかしら。
コメントありがとうございました。
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