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陽炎―かげろう― 5
2013-10-12-Sat  CATEGORY: 新しい家族
 和紀と日生の関係は膠着状態が続いたが、最初に日生を手に入れた真庭奈義(まにわ なぎ)が介入したことで一転する。
 日生は彼の元から周防に引き取られて三隅家に渡った。その時に日生が背負っていた借金は、周防がすべて支払い終えているが、日生に知らされることはなかった。
 どこで日生についての噂を手に入れたのか、取り戻そうとしたことが転機につながった。奈義とすれば完全に裏目に出た形だ。ヤクザながら汚い手はいくらだって使ってくるが、騙しきれなかったのは奈義の甘さというか、お頭(つむ)の弱さというか…。放っておけない脆さも含んだ人間だった。
 奈義とは友人だったが、息子たちまで関わらせたくないと、周防は厳しく言い詰める。奈義の影響力は無限大だ。噂一つで潰されかねない。
 日生を使って稼ぎたかったのか、それとも単に手に入れたかったのか…。
 周防は自分が目にした子供をずっと気にかけ続ける性格だ。日生を間に挟むことで周防との繋がりを強くしたかったのかもしれないが、そう思考が回ること自体がどこまで単純で馬鹿なのだろうと思わせるだけになる。
 日生自ら奈義の元に戻ると声を上げるように、と差し向けた言葉も、周防と和紀の手で捻り潰された。そして和紀は日生を完全に囲い込んだ。
『恩があると思うなら和紀のために尽くせ』…という言葉を使って…。

 どんな形であれ、再び和紀が日生に目を向けたことを日生自身が喜んでいるのを周防は感じとり、酷いと分かりながら安堵していた。
 今現在日生が抱く思いとは、過去にあったふれあいの延長で、『守ってもらえる』と無意識に働く安心感なのだろう。
 心の隙間を埋めるように、これまでもずっと周防は日生との会話を怠らなかった。端々に和紀が何故に日生に冷たく当たるのか、その言い訳も含めて…。それは専ら仕事の話になってしまったが。
 そのことが、少なからず功を奏してくれればいい。日生の受け止め方が和らいでくれたら…と願いをこめた。
 和紀は相変わらず、皆の前で一定の距離を置いた態度を取り続ける。時々垣間見える愛情の溢れ方を目の当たりにしては、また周防と清音も顔を合わせるのだった。
 表向きだけかもしれないが、その一瞬に、昔の穏やかな空気が流れるのを肌で感じて、二人も明るい声を上げる。

 日生が和紀に見合うようにと大学への進学を薦め、入学を済ませると、心なしか肩の荷が少しだけ下りたような気がした。少なからず、日生の意思で…と感じられる部分があったからだ。日生から和紀に寄りそっていってもらえたならと願わずにはいられないことだった。
 堅苦しい空気の中でも順調に進んでいると安堵するのも束の間、またもや奈義の登場で事態は暗転した。
 奈義と日生の接触は、学校内に良からぬ噂を蔓延させ、日生は休学に追いこまれた。行く手を阻まれる行為に対する苛立ちといったら半端なものではない。周防は奈義に掴みかかり、二度と和紀と日生に関わらないようにと灸を据えた。
 和紀と日生を守るために、自分はどんな手段も使うだろう、と周防は内心で息巻く。たとえ自分の身を滅ぼしたとしても…。

 ある日の夜、周防はまた清音と話をする時間をとった。日生が成長してしまってからは、夜の時間まで拘束はしていない。日生を自立させる意味もあったから、できることはできるだけ日生にやってもらおうと相談した結果だ。日生も人を頼らずに過ごせることは負担を減らせていると思えたから励めるのだろう。
 周防と清音の話し合いの場所はいつもダイニングテーブルだった。
「日生を会社に連れていくことにしたから」
 話を切り出した周防に、清音は少々驚きを見せる。
「会社…ですか…」
「家で勉強をさせていてもいいが、結果を見せる場所がない。気分転換も必要だろう。いつ復学するかも分からないから、その前に少しずつ社内を見せておこうと思ってね」
 驚いても周防の真意を知れば清音は納得する。
 会社とは、いつか日生が身を置く場所になる。そのために何が必要になるのか、体で感じさせるのは悪いことではない。
「そうですね。実際に働く現場を見せたら、また意欲が湧くかもしれませんし…」
「清音さんも少しのんびりとしてください。ずっと我が家のことにかかりきりにさせてしまった…」
 もちろん辞めさせる意味はない。子育てを終えた主婦が自分の趣味にいそしむように、好きに過ごしてほしいと周防なりの言葉だった。
 日生は今や、家事一つできない子供ではなくなっている。朝から晩までの動きは、清音と共に過ごしたから身に付いているものでもあった。
 学問に本格的に向き合わないのなら、日生にも時間ができる。
 周防が穏やかな笑みを浮かべると清音もコロコロと笑顔で返す。意味を取り違えることはない。
「そんな。充分好き勝手に過ごさせてもらっていますよ。…でも日生さんがこちらにいらっしゃらないのならつまらなくなってしまいますね。……そうだわ。英会話教室にでも通おうかしら」
「英会話? どうせなら旅行にでも行ってくればいいのに」
 英会話なんて、幼い日生と一緒にDVDを見ていた時代があるのだから理解している部分もあるだろうと首を傾げれば、やっぱり笑い飛ばされた。
「日生さんの頭脳と私のピーマン並みの脳を一緒にしないでくださいな。覚えられる量は違いすぎるんですよ」
「空洞が大きいほど詰め込める量がたくさんあると思うけれどね」
「ピーマンの肉詰めですか? 私の場合、肉汁が流れ切ってスカスカな状態でしょうね」
 良い味など残せない…。
 そんな冗談を言い合う。日頃悩まされる問題から僅かでも離れられる雑談で、こちらも気分転換をはかっていた。
 きっと周防の気遣いを感じとる部分もあるのだろう。清音は次々と新しいカルチャー教室に興味を示し、時間を有効に使っていく。その姿を見れば、拘束し続けた清音に対して恩返しができている気になれた。

 それぞれが自分の時間を持ち、しかしながらきちんと繋がっている絆を感じとる日が流れていく。
 朝は当たり前のように清音が全員を見送り出してくれたし、帰宅すれば埃一つないような家に出迎えられる。清音の姿はなくとも、端々に存在感は漂ってくる。
 たまに清音は友達と一泊、二泊程度の旅行に出かけた。行きの荷物よりも帰りの荷物のほうが多いのは誰にでも言えることだが、持ち込まれる土産の量に全員が絶句する。
「だってねぇ。見るごとに日生さんに似合いそうとか、和紀さんの口に合いそうとか思っちゃうんですよ。ご飯もとても美味しくてね。みなさんで食べたかったわぁ」
「それって清音さん、自分で全然楽しんでいないんじゃないの?」
 和紀がもらった土産を手に問えば、日生も「どこが見どころだったの?」と続き、清音は「えーとですね…」と考える仕草を見せて呆れさせた。
 楽しい声が響けば全員から笑顔がこぼれた。悩みなど吹き飛ばしてしまう明るさが家中に溢れる。
 なかなか進展しない家庭事情がこの瞬間だけは吹き飛んでいた。

 燻り続ける和紀を知る。見えない愛情に不安を抱く日生がいる。
 ふたりの間にある薄くて大きな壁が崩壊した時、家に流れる風も変わった。明らかに分かる、『昔の風景』はまた微笑ましさを運んできた。
 穏やかな時間は誰しも愛し愛される権利があることを伝える。誰よりも、脅えることなく過ごして良いと日生に伝わってほしかった。全ては和紀に直結していくことだから…。
 周防と清音が努力した結果が報われたと思えた時で、影ながら和紀と日生の幸せを喜んだものだった。
「そろそろ隠居生活の準備でもするかなぁ」
「ですから早すぎですよ。まだまだ三隅さんにはがんばってもらわないと。和紀さんはいつだって日生さんのことで手いっぱいになりますからね」
 清音が揶揄すれば周防も頷き、苦笑に変わる。嬉しさを滲ませた"にがわらい"だ。
「たまには清音さんと慰安旅行にでも行くか…」
 これまでの労いとして、またこれからも継続されそうな苦労を思い浮かべては、お互いに行使できる権利だろうと周防が提案すると清音はただ笑って見せただけだ。
 本気か冗談か…。
 清音はその気持ちだけで充分ありがたいと感謝していた。 周防がいなければ味わうことのないドキドキハラハラとした人生を送ってこられた。ドラマの中に自分が居られたことはかけがえのない思い出として胸に刻まれる。
 和紀と日生の幸せな顔を見ては、背負った十字架の重みが消えていった。 

 だけど幸せは長くは続かなかった…。

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次回最終話になります。
あ、そうだ。すでにコメント欄をお読みの方はご存知かと思いますが、こんなのも書いてあるので宜しければ楽しんでください。→
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コメント

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拍手コメ う様
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-12-Sat 07:19 [編集]
おはようございます。

> えっ 長く続かないの(・・;) HappyEndが いいなぁ

このお話はあくまでも番外…みたいなものなので…。
う様のご期待、裏切りっぱなしになるかもしれませんね。
日生も全然出てこないし。
ハピエンと言われればハピエン…のはず。
日生はまたどこかでひょっこり出てくると思いますので、その時に期待してくださいね。
コメントありがとうございました。
今日も よく働いたよ、私!\( ̄゜ ̄)/どたぁ..
コメントけいったん | URL | 2013-10-12-Sat 19:50 [編集]
日生と 和紀の関係が まだ ぎこちなかった頃で
あの時は、日生も 和紀も 誰にも 胸の内に抱える悩みを打ち明けられずに 苦しんでいたんだものねー

そんな2人を 周防さまと清音さんは、口をはさむ事も無く 温かく見守り続けていたとは 知らなかったな

日生と和紀の将来の兆しが 見え出し、 この 細やかな穏やかで幸せな時間は、永遠に続くと思っていたのに…
時間は 時に優しく、時に残酷なもの…゚.+:。(。・ω-)(-ω・。)ネー゚.+:。

Re: 今日も よく働いたよ、私!\( ̄゜ ̄)/どたぁ..
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-12-Sat 21:17 [編集]
けいったんさま こんばんは~。
そしてお疲れ様です。

> 日生と 和紀の関係が まだ ぎこちなかった頃で
> あの時は、日生も 和紀も 誰にも 胸の内に抱える悩みを打ち明けられずに 苦しんでいたんだものねー
>
> そんな2人を 周防さまと清音さんは、口をはさむ事も無く 温かく見守り続けていたとは 知らなかったな

和紀と日生のどちらも気持ちをどうして良いのかわからない時でしたね。
和紀が強引に三隅家に縛りつけたところがあったし。
そこから溝がどんどんと深まってしまって…。
和紀もいい大人だったから、周防たちは口出ししなかったんだと思います。
余計なことして和紀のプライドを傷つけるようなことしたくないしねぇ。

> 日生と和紀の将来の兆しが 見え出し、 この 細やかな穏やかで幸せな時間は、永遠に続くと思っていたのに…
> 時間は 時に優しく、時に残酷なもの…゚.+:。(。・ω-)(-ω・。)ネー゚.+:。

大人である人たちは、漠然とでも感じていたことかもしれませんが。
確実に忍び寄ってくるものは誰しも持っていますね。

コメントありがとうございました。
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