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陽炎―かげろう― 1
2013-10-08-Tue  CATEGORY: 新しい家族
「和紀(わき)くん」と呼んでいた名前が、「和紀さん」に変わったのは、和紀が中学校に入学した時だった。
 三隅周防(みすみ すおう)は油谷清音(あぶらや きよね)が息子をどう呼ぼうと大して気にしなかった。
 言葉遣いを改めたのは、自分の立場をはっきりと、自分自身と和紀に知らしめるためだと感じとることができたから、清音の意思を汲んで周防は口を閉ざしたのだ。
『親しき仲にも礼儀あり』。
 清音とは家族のように暮らしてきた。そこにきっちりとした境界線を引いたのは、清音なりのプライドなのだと思う。
 家族のようではあるが、家族ではない。三隅家はあくまでも清音の雇い主になり、主従関係が存在すること。
 清音はそのあたりを、きちんと和紀に教える意味も含めて態度を改めたのだろう。
 そしてまた、将来、和紀が人を雇う人間になることも見据えていたのかもしれない。

 周防と清音が出会ったのは、周防の妻との繋がりにある。
 彼女たちは共に施設で育ってきた。施設で出会い、友達になり、姉妹のように育ち、生みの家族に大事にされなかった共通の"不幸"を背負ってきた。
 それらを"生きていくため"にバネとして弾き飛ばした。どんな時も支え合い、励まし合って生きる姿に、周防が惹かれるのに時間はかからなかった。
 周防の妻よりも年上だった清音は、姉として一番長くそばに居てくれた人だ。
 どちらかと言えば、妻のほうが体が弱かったのだと後から知る。儚げな印象が余計に周防の心を掴み、煽るものとなったのか、結婚を決めた時、躊躇いを持ったのは妻のほうで、背中を押してくれたのが清音だった。
 和紀を身籠ってからの衰弱ぶりは激しく、周防はどこか冷静に、彼女のいない将来を悟っていたのかもしれない。それは確実に和紀にも伝わっていた。
『家族』を求めなければ、彼女はもっと長生きをし、命を縮めるようなことにもならずに済んだのだろうか…。
 苛まれる日々の中、気を病む周防を救ったのはやはり清音だった。本人も片腕をもぎ取られるような苦しみがあっただろうに、残されたまだ幼い子供を目にしては、いつまでも下を向いてばかりではいられないのだと。親は子供を守る義務があるのだと…。
 自分と同じ思いを和紀にはさせたくないのは、経験者だからだ。
 気丈に振る舞う清音に、当時の周防は甘えさせてもらった。ちょうど期限付きのパート勤めが契約期間の満了を迎える時で、職探しをしていた彼女を自分の家で雇った。
 大切にしてきた親友を奪ったのは自分だという思いから、謝罪の意味も込めて、せめて暮らしだけは保証してあげよう…。余計なお世話だが、周防なりの償いだった。
 まだ小学校に上がったばかりの和紀も、清音には懐いていたから、何の問題もなく、自然と家の中に溶け込んできてくれた。
 住む場所を隣に置いたのも、本当は清音の安否を気遣いたかったからだと振り返る。父一人子一人の状況で、「万が一の時のために」と説き伏せた。繋がりをもった人間を、見知らぬところで失いたくなかった思いは強い。妻の存在が消えれば、自然と疎遠になっていく人であることを誰よりも感じとっていたから…。


 朝食の準備がされたダイニングテーブルに着き、周防は清音が淹れてくれたお茶をすする。遅れて寝起きの和紀が顔を洗っただけの格好で姿を現した。成長途中にある彼は、幼さが抜けて、徐々に『男』へと変貌を遂げ始めている。母親の面影を宿すが、周防と親子であることもはっきりと認識させる容姿をしていた。
 顔を合わせる時間が少ないから、せめて食事だけは一緒に、と提案したのは周防で、まだ親が恋しかった和紀は素直に従ってきた。
 中学に上がって崩れてきてもよさそうなところ、清音の存在がそれを許さないのだろう。
 母親ではないから、我が儘を口に出しづらい。和紀の人に対する思いやりの表れでもあった。
 今年の春、和紀は二年生に進級した。
「おはよう。和紀、進路についての面談の予定がそろそろだっただろう?」
 時間に限りがあるから、肝心な要件から話を進める。
 清音はキッチンで無言のまま雑用を片付けている。口を出してくることはないが、聞き耳を立てているのは確かで、だからといって卑しい感情で聞いているわけではない。周防達から意見を求められた時に答えられるようにする意味と、家を預かる者として、住人の手を煩わせないための配慮があった。一度でも内容を耳にしておけば、後ほどの対応にも余裕が持てる。周防たちも、繰り返し説明する手間が省ける。
 和紀の通う学校は、中学、高校、大学と受験ではない簡単なテストで進学することができた。しかし大学においては他の学校を受験する人が大半で、その準備として高校から離れていく人は少なくない。
 春の時点で、年間の大まかなスケジュールはすでに父兄に知らされていたので、周防は記憶していたそこから和紀に再度確認をとったのだ。
 会社社長という役職はそれなりに日程が埋まっている。周防も、できるだけ周りに迷惑がかからないよう、心しておきたかった。
「あぁ、最初のテストが終わった後。でも俺、このまま上(高校)に行っちゃうから、別に父さん、来なくてもいいよ。話すことないし」
 和紀は面倒くさそうに答える。他校を希望する家庭なら話しあうこともあるだろうが、選択肢が決まっている和紀にしてみたら、わざわざ親と先生が意思の疎通を図らなくてもいいだろうと思えることだった。話してみたところで、10分もせずにお開きになるのであれば、そのために時間を割くことが無駄に思えて仕方ない。
「そういうわけにもいかないだろう。先生だって親に言いたいことの一つや二つ、あるだろうし」
「文書で済むんじゃないの?どうしてもだったら清音さんに頼むよ。仕事を休むほどのことじゃないんだから」
 和紀は周防を気遣う。周防は清音を気遣った。これまでにも清音に学校行事を頼んだことはあった。家族でもないのだから頼むこと自体がおかしな話なのだが、母親になりたかった(のではないかと思われる)清音は、いつだって快く引き受けてきてくれた。それでも深入りしすぎないようにと自分を保っていた姿を知るから、周防はできるだけ避けてきてもいた。
 清音がこだわるのは、和紀にとって母親は一人しかいない、という意識を持ち続けさせるためもあると考えられた。
「和紀の進路を清音さんに頼むのは筋違いな話じゃないか。短くて済むのなら、こちらとしても大歓迎だ」
 周防の喜びに和紀は諦めたように首を竦めてみせた。
 本心から嫌がっているわけではないが、小さな反抗期のようなものは、親をうっとおしく感じる時があってもおかしくない。目立って非行に走るわけではないし、周防も小さなことは目を瞑って流してしまう。
 チラッと見えた清音は、淋しそうな、それでいて安堵したような表情を浮かべていた。ホッと肩から力が抜けるのを感じたが、もちろんそのことを口にするなどとはしない。
 一番身近にいる人で、しかし決して混じろうとしない生活はこうして時を重ねていった。

 
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コメント

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清音さんだ
コメントちー | URL | 2013-10-08-Tue 03:59 [編集]
ひなちゃんが無人島に連れていきたい人、ナンバーワン(笑)お兄ちゃんは除くだけど。

清音さんには彼氏がいないのかしら?
と、思ってましたけど。
もしかして、ずっとパパが好きだったのかなあ。
とかね。

このお話で明かされるのでしょうか。
Re: 清音さんだ
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-08-Tue 07:35 [編集]
ちーさま おはようございます。

> ひなちゃんが無人島に連れていきたい人、ナンバーワン(笑)お兄ちゃんは除くだけど。

そう、清音さん(笑)
誰からもひっぱりだこです。

> 清音さんには彼氏がいないのかしら?
> と、思ってましたけど。
> もしかして、ずっとパパが好きだったのかなあ。
> とかね。
>
> このお話で明かされるのでしょうか。

何かが明かされます(←)
いえ、そんな大げさなものじゃないんですけれどね。
裏話的なものです。
私自身、読み返すたびに、頭の中に浮かんだシーンをがありまして、それを文にしちゃおうかなと。
ただ、本当に余談のようなものなので、改めて書くのもどうかと悩んでおりました。
お付き合いいただけると嬉しいです。
コメントありがとうございました。
私、清音で御座います。(o*。_。)oペコリ
コメントけいったん | URL | 2013-10-08-Tue 17:08 [編集]
おこがましいですが、少し 私の話しを聞いて貰えますでしょうか。

彼女と 施設で 姉妹のように過ごしました。

体が弱い彼女が 周防さんに思いを抱いて 悩んでいた時も 
綺麗な花嫁衣装に身を装って 笑顔いっぱいを見r背た時も
和紀さんを生んで  やっと手に入れた家族に 涙した時も
そして…
愛する人と 愛する息子と共に 生きられないと知った時も
最期に 「清音姉ちゃん、一生のお願い」と、薄く微笑んだ時も
いつも 一緒でしたのよ。。。

グスン…お話しは 湿っぽくなって ごめんなさい
私にとっても 彼女の存在は、唯一無二でした。

また 一人ぼっちか…と、虚無に似た感情を抱えた時に
周防さんからの 優しさに溢れた提案が 御座いまして
私なんか…とは思いましたが、有難く その案を受け入れさせて頂きました。

あら、すっかり お茶も冷めて 話しが長くなりましたわね。
まぁ 続きを聞きたいと!?
こんな私の話しを聞いて下さるなんて 宜しいんでしょうか?
ふふふ、皆さん、嬉しい事を仰るのね。

では 続きは また お時間がある時にね♪

腐レンジャー「「「「「ホンマ ええ 話しやなぁ~(泣)」」」」」
ホンマ ええ話しやなぁ=「本当に 良い話しだこと」と、 コテコテの大阪弁では こう言います。(笑)

 
Re: 私、清音で御座います。(o*。_。)oペコリ
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-09-Wed 09:48 [編集]
けいったんさま おはようございます。
清音が登場だ(笑)

> そして…
> 愛する人と 愛する息子と共に 生きられないと知った時も
> 最期に 「清音姉ちゃん、一生のお願い」と、薄く微笑んだ時も
> いつも 一緒でしたのよ。。。

先に読み解かれたので焦りました(冷汗)
さすが読者様たちの素晴らしい妄想!!
清音姉ちゃんに伝えたかったことはやっぱりあったのでしょうね。
ずっと一緒だったから…。

> グスン…お話しは 湿っぽくなって ごめんなさい
> 私にとっても 彼女の存在は、唯一無二でした。

> では 続きは また お時間がある時にね♪

今度は私がお茶を淹れますから、じっくり語ってくださいね~。
続き、楽しみです(え?!楽しんじゃいけない?!)

> 腐レンジャー「「「「「ホンマ ええ 話しやなぁ~(泣)」」」」」
> ホンマ ええ話しやなぁ=「本当に 良い話しだこと」と、 コテコテの大阪弁では こう言います。(笑)

方言(?)ってほっこりするから好きです~。
超萌える~♡
普段元気な腐友さんも今日はハンカチを持って…。
でも清音サン、明るい方ですからね。
吹き飛ばしてくれるでしょう。

コメントありがとうございました。
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