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BLの丘
月あかり 14
2013-10-03-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
羽後が鳥海に興味を示したことを教えてくれたのは由利だった。
「雄和さんが気に入るなんて珍しいね」
ニコニコとしながら発言する由利は、最初の頃と羽後の反応が違っていることに気づいたようだ。
由利いわく、楽しそうに話している、とのことで、確かに今まで羽後は一歩下がった位置で静観している印象が強かったと過った。
鳥海は失礼がなかったことに安心して、ホッ吐息をもらした。
逆に瀬見はピクリと体を強張らせる。
羽後は由利の頭上をポンポンと軽く撫でて、「面白い子だなって思っただけだよ」と笑顔で宥める。
いや、別に由利は拗ねているわけでもないのだから、言い訳する必要はないのだが、羽後には何か思うところがあったのだろうか。
すかさず由良が「鳥海くん、見た目の面に騙されないようにね。ホント、あくどいんだから、この人っ」と、用意周到に物事を執り行う性格の男を睨みつけていた。
昨夜も何やら難しいことを言っていたから、由良にしてみたら、言い足りない恨みごとも含まれるのだろう。
どこまでも悪人に落としていく。
それでも受け入れるしかない現実を理解している今、ただ言いたい嫌味なのだと気付かされたから、鳥海はとりあえず頷くにとどめた。
羽後は、もうこの件ばかりは、何を言っても百倍返しでチクチク刺されると承知しているのか、苦笑いでかわしている。
反論しなければやがて不満も煙にまかれるだろうか。

「鳥海くん、連絡先、聞いておいてもいいかな」
喚く由良を無視して、羽後が鳥海に確認を取ると、答えたのは瀬見だった。
「何でですか?」
少しキツめの口調は、硬さを含んでいる。
鳥海は、知り合えた人と情報交換をするのは日常茶飯事だったから違和感がなかったのだが、瀬見の反応を見て驚いた。
何より、瀬見もすでにここに集まる人と面識があるのだから、咎められることではないだろうに。
瀬見が猜疑の目を向けることを、羽後が苦笑で制する。
「そんなに警戒しなくても。いや、ちょっと、もしうちの会社、受ける気があるなら、こっちから資料、送ってやろうと思って。実際に決断を下すのは管轄部署だから、まぁ、とりあえず候補の一つにでも入れておく?」
この先、幾社も資料請求をしたり、調べたりすることは増えるだろう。
一つくらい、その手間を省いてやってもいい。そんな感覚の羽後だったようだ。
思ってもみない、嬉しい申し出に二つ返事で頷く。
羽後の方から、自社を薦められるとは、ひょっとしたら脈があるのかもしれない。
すでに話を聞いていた分、親近感も非常に湧いていた。
羽後がタブレット端末を取り出してくれば、後は話が早い。
見やすい画面に表示された内容を確認し、ついでに、と鳥海は触ってもいいかを尋ね、地図を表示させると、「ここ、オレんち」とマークを付けた。
羽後は鳥海の自宅情報まで閲覧しているわけで、『五城目電気』は瞬く間に羽後の知れるところとなった。
画面が見られない瀬見は状況を把握できず、眉間に皺を寄せた状態で、羽後に肩を並べていく鳥海を見つめ固まっている。
高畠がククッと笑いながら、「新庄、おまえ、こぇーよ」と茶化した。
普段見慣れない表情には由良も少々引く。
だから安全安心なところで働いてもらわないと…と羽後をつっつきたくなる由良だった。

そうは言われても、嬉々とした表情の鳥海を見せられては面白いわけがなかった。
羽後もすっかり面倒見の良い上司の顔になっている(ようにしか見えない瀬見だった)。
何が何でもあっちの支社の面接試験だけは避けようと内心で企んでいる瀬見の心情は露知らず。
鳥海はひたすら感心したように、「すんごいなぁ…」と何かをいじっているようだ。
周りの連中が、勝手に触らせていいのかと訝しがるが、羽後の監視下では問題がないのだろう。
それよりもよどみない動きを、まさに実践で確認しているといったところか。

確約されたわけではないのに、鳥海は一連の出来事ですっかり第一段階はクリアした気分になっている。
頃合いを見計らって、瀬見が「鳥海、そろそろ帰ろう」と声をかけた。
その瞬間、鳥海が残念そうに睫毛を伏せるのを誰も見逃していない。
鳥海の仕草に思わず、もう少し話させてあげても…と思った人物が何人いたことか。
瀬見は内心で大きな舌打ちをしたし、高畠は笑いをかみ殺した。
ちょうど良いところをとって、羽後が「俺たちもそろそろ支度しないとな」と由利に視線を向けた。
瀬見が鳥海には甘いのを知るから、なし崩しになる前に、きっちりと終了宣言をくだしてくれたものとなる。
この後、羽後と由利が出発するとはすでに聞いた話で、遠方へと帰ることを思えば、長居できるはずもなく、鳥海も素直に礼を述べる。
他人事にしないでいてくれたことに、心から感謝をした。

玄関まで見送りに出てくれた4人に、鳥海は深々と頭を下げ、瀬見も「今日はありがとうございました」と突然の訪問を詫びた。
由利がニコニコと笑顔で「うまくいくといいね」と励ましてくれる。
それから瀬見を見上げて「由良のこと、よろしくお願いします」と委ねた。
口調だけで、由利も瀬見に信頼を置いているのだと伝わってきて、また、双子は離れてしまったけれど、今がいかに幸せな生活を送っているのかも感じられた。
好きな人がそばにいてくれることが何より大きいのだろうとも。
余計に鳥海は瀬見と離れられないと強く思う。

『まずは受ける会社を良く知ること。世間の評価だけで企業を選ばない。それから熱意を伝えること。自分が何をしたいのか、どんな存在になりたいのか、コアな部分がブレていなければ、どんな質問のされ方になっても自分の言葉で答えられるようになる。模擬訓練だ、模擬面接だって講座にまで通ってから来る人もいるけれど、そんなのこっちだって分かっているから意地悪な質問の仕方をしたりするんだ。途中で答えが二転三転するヤツなんて、上辺だけ良く見せようとしているのが丸分かりになってくる。綺麗な言葉がすべてじゃない。そうやってその人の人間性を見極めていく。どこの会社だって同じだよ。良い人材が欲しいから時間をかけて試験や面接をする。時間と経費をかけて執り行われることを甘く見るな』

羽後が語ってくれたことを胸の中でもう一度聞いた。
目指すものがあるから、人は強く、賢くなっていくのだろう。
教えてもらわなければ、相変わらずの適当さで、どうにかなると思っていたかもしれない。
真剣に取り組まなければいけない突破口は見えてこない。
今までとは違う世界が待っているのだと身に沁みさせた。

マンションを出て、瀬見と視線が合う。
昨日も羽後から話を聞いて、別れた後、似た時間が瀬見との間に流れたけれど、昨夜とは違って心に巣食うものがなくなっていた。
どんな態度になっても瀬見の見守ってくれる瞳だけは変わらず、そばにいてくれる。
太陽と違って月は形を変えていくけれど…。
月と同じように瀬見も、鳥海を思うからこそ、変化する。でも元は同じものだ。
喜んでくれることも、嫉妬をされることも。
明るくても暗くても。
一つのものから生みだされる。
「瀬見さん、何か言いたそうだよ」
黙って見守られるだけは嫌と伝えたのは昨日。
ずっと瀬見は口出しすることなく事を静観してくれていた。
瀬見の方が胸の内に溜まっているものがあるのだとなんとなく気付けるようになった。
一度は吐きだした昨夜を経験したから…。
そしてまた瀬見も苦笑いを浮かべた。
本当は晒したくないのかもしれないけれど。
変化する瀬見を嫌うわけではないと、そっと指を絡ませる。
クスッと笑った瀬見が、「家に帰ろう」と鳥海の手を握り返してきた。
瀬見の言いたいことってそれだったのだろうか…。
違うような気がするけれど、今は本音だと受け止めておくことにする。
一緒の家に帰りたい…。本音なのだと。

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ようやく次話で終われそうです。
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コメント

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恋は 瀬見を変えるの巻♪
コメントけいったん | URL | 2013-10-03-Thu 08:36 [編集]
何があっても 少し離れた位置から 冷静に見てた瀬見が、鳥海が絡むと…(苦笑)

たった二度会っただけの 希望する職種が同じの羽後に 信頼し尊敬している姿を見せられれば、嫉妬も独占欲も ハンパなく強くなるよねー
分かる、分かるよ~!(*p゚ェ゚q)ゥン
でもね、瀬見には 鷹揚に寛容に ドーンと構えて欲しいの!
まぁ 恋人関係になって 日も浅いから 仕方がないかも…┐ε-(´・_・`:)┌

お家に帰ったら 淋しさに拗ねてる瀬見の介護を 宜しくね、鳥海♪
照れる、けど嬉しい♪(*--)ヾ( ̄▽ ̄*) ヨシヨシ~ナデナデ~♡  
Re: 恋は 瀬見を変えるの巻♪
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-04-Fri 07:54 [編集]
けいったんさま おはようございます。
レス、遅くなりました…。

> 恋は 瀬見を変えるの巻♪

思わず笑いが…(o´艸`o)
本当にそのとおりです。
何に対しても嫉妬の嵐。
鳥海が下心なしに近づいていっているのが分かるから余計に歯がゆいのかしらね。
止めることもできないし。
周りが敏いから助けられてますね。

> でもね、瀬見には 鷹揚に寛容に ドーンと構えて欲しいの!
> まぁ 恋人関係になって 日も浅いから 仕方がないかも…┐ε-(´・_・`:)┌

そのうち余裕も生まれてくるでしょうか。
今はまだまだ知っていくことがたくさんあったりしますからね。

> お家に帰ったら 淋しさに拗ねてる瀬見の介護を 宜しくね、鳥海♪
> 照れる、けど嬉しい♪(*--)ヾ( ̄▽ ̄*) ヨシヨシ~ナデナデ~♡ 

鳥海が瀬見の介護(爆)
うんうん、それが一番良い解決策かも。
意外(?!)と鳥海はオトナなところがあるかもしれませんよ。
下の子って強かだったりするしねぇ。
そう、鳥海って藤里のこと、上から目線で見てたところもあったから。
きっといつも『弟』で、その下がいなかったから、憧れるのかしら。
うまく手懐けるといいね。
コメントありがとうございました。
若美庵にて。最終回(笑)
コメントちー | URL | 2013-10-06-Sun 02:31 [編集]
トントントントンと包丁を使う音がして、ご飯の炊ける良い匂いに嫌でも目が覚める。

「ほら、あんた達。さっさと起きる!」

ちさに「師匠~!」

し「さあさあ、そこ片して。お店も掃除するよ?わかった?」
ちさに「ラジャー♪」

ちゃちゃっと顔を洗いちゃちゃっと化粧をして、お店の前を掃いたり、お店の中を掃除したり、妹ちゃんを起こしたり・・・

し「後は、若美とイチだね。ちー、呼んできて」
ち「やだー、行きたくないよ」
し「じゃ、さえさん」
さ「私も遠慮する」
に「私も嫌ですーぅ」
し「なに、みんな揃って?」

だって、だって、だって、師匠。
夕べはスゴかったんだから。
二人がどんな格好で寝てるのか・・・
恥ずかしくて行けないわ(笑)

そうこうしてるうちに、二人がやって来る。
イチ、色気が・・・
何となくダルそうだし。

「ね、本当にあんなになるんだね」

朝から、腐レンジャーのオカズが(笑)

若「うちのイチで変な妄想したら容赦しませんよ?」


若美兄ちゃんの目がキランと光る。

ちさに「し、しませんとも!」

戻ってきた師匠の美味しい朝御飯をいただきながら、普通の会話を交わしつつもやっぱり妄想している腐レンジャー達なのであった。



ちーさま おつかれさまです
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-06-Sun 10:06 [編集]
おはようございます。
とうとうこちらも完結ですね~(笑)

腐レンジャーは泊まり込んだのか(爆)
そしてあーんな声も、こーんな色気も味わっちゃったんだ。
発つ鳥後を濁さず で、綺麗にお掃除までしてくれました。
(え?!盗聴機と隠しカメラの回収をしているだって?!)

(*゚ロ゚)ハッ!! 一番驚いたのは↓この曲です。

> きみだけにただきみだけに♪

瀬見を書いていた11話。
まさにこの曲が私の頭の中をぐーるぐーるしていたのでした。
なんでバレたのか、ほんとーーーに不思議なんですけれど…。
美少年の次は少年隊だったのか…。

今回もガッポリ稼げそうだ~。
ε= (^□^*) ぷはっ♪

是非また皆様のご活躍を期待します。
楽しい時間でした~。
コメントありがとうございました。
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