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BLの丘
月あかり 13
2013-10-02-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
しばらくの間、由利がこちらの住まいに戻ってこられなくなることに腹を立てていた由良の機嫌の悪さを、由良の希望通り、由利とふたりきりで外出させることでご機嫌を取りたかったようだ。
どんなに短い時間でも、『出かけさせてやった』心の大らかさを高畠と羽後は見せてやりたかったようだが、あっという間の呼び戻しの声と、由良の思惑通りに物事が進んでいない事態に、由良の不機嫌さは増幅されただけだった。
羽後が以前勤めていた支店が、こちらにはある。
鳥海をそこに入社させてしまえば、転勤の心配もない、瀬見も安泰な生活が送れるようになる。
由良と由利の一部の感情を除いて、みんながみんな幸せになれる設計図ができあがっていた。
きっと、由良にとって、会社内での、少なくとも瀬見からの待遇は良くなるはずだ。
面倒な仕事も代わりにやってくれるだろう…と、図々しいことを思っていたかどうかはともかく…。
鳥海の担当企業がうまく合えば、社内で姿を見かける日がやってくるかもしれない。
いつか、羽後が双子の前に姿を現したように…。

その話に、鳥海は驚き、また現実味のある話に目を輝かせたが、そうは問屋が卸さない。
現実問題は瀬見も理解できるから、甘くはないと胸に言い聞かせるが、やはりこちらも一縷の望みが芽生えた。
羽後はあからさまに額に手を当てて、盛大なため息を吐いた。
由良の無茶ぶりはいつものことだが、さすがにこればかりは個人でどうにか出来る問題ではない。
だがそれを口にしたところで、由利の話題を引っ張り出され、蜂の巣をつついたような騒ぎで収集がつかなくなるのが目に見えた。
実際、羽後はほとんど独断で、由利を自分の補助社員として入社させてしまった過去を持つ。
辞令と同時に巧妙な根回しをし、中途採用枠に引っかけて他の社員の同意を得た上で、堂々と採用に踏み切った。
由利には半年弱の無職期間があったが、そんなものはこの先の人生を考えたら僅かな期間だ。
実際由利がついて回ることは少なく、ほとんどはデスクワークに従事している。
現場に追われて手が回らない雑務処理を担ってくれる存在は、他の社員からも重宝された。
もちろん、由良に対して電話口で語られるようなものではなく、「とにかく呼び戻せ」と高畠に指示し、高畠が「新庄が大量のご飯を買ってきてくれたから」とエサで釣った。
全員が揃わないとご飯にならない状況に、まずは由利が帰ろうと言いだすだろう。

電話を切っては、高畠もまたため息だ。
そう遠くに行っていないようで、戻ってくるのはすぐらしく、そこはホッとできるところではあるが…。
羽後が瀬見と鳥海に釘を刺してくる。
「言っておくけれど、裏口入社みたいな後ろ暗いことに手は貸さないよ」
向こうではともかく、こちらでの影響力は皆無と言える。
"目の上のたんこぶ"がうじゃうじゃいたのだ…。
それでもこれまでの付き合いがあるから、口添えくらいはできるかもしれないが、鳥海という人物を良く知らない以上、自分の進退にも関わってきそうな問題は避けたいのが本音だ。
そのことは瀬見も鳥海も充分なほど理解できたし、寧ろ当然のことだと思う。
ふたりとも、まずは鳥海自身を色眼鏡なしで評価してもらいたい。

しばらくすると、双子が帰宅した。
「「ただいま~」」と声を揃えてリビングに飛び込んできて、鳥海たちに軽く会釈程度の挨拶をする。
何を確認するわけでもなく、黙ってふたりは洗面所に消えていき、手洗いを済ませて戻ってきてはほぼ同時にラグの上に並んでペタンと尻をついた。
一連の動きが鏡に映っているようで、一緒に動くところが不思議な光景でもあり、だが、しっくりとなじんでしまうものでもあった。
長方形のリビングテーブルを囲むように、鳥海と瀬見もソファを下りた。
両側を鳥海たちと双子が占めているのだから、高畠と羽後が両端に座ることになるだろう。
高畠が大きな烏龍茶のペットボトルとグラス、瀬見が購入してきた食品を次々とテーブルの上に出し始める。
「さすがにこのテーブルじゃ狭いか…」
「萩生と雄和さん、椅子持ってきてテーブル代わりに使えば?少しの物は乗せられるでしょ」
すかさず由良がダイニングに放置されている椅子を指さす。
「後ろを向いて食えと?」
「別に話に参加しなくていいんだから、どっち向いてたっていいじゃん」
由良の視線はすでに食品に向けられており、色鮮やかな料理を嬉しそうに眺めていた。
これだけ多くの料理が揃うことは、鳥海の家でも滅多にあることではない。
思わず鳥海のお腹も鳴ってしまう。
しかめっ面をした高畠を無視して、瀬見から一人ずつ『手まり寿司セット』を受け取り、由良は由利に「狭いから一つずつ食べればいいよね。…萩生、持ってて」と有無を言わせず、一人分を持たせた。
先程高畠が、『付いて行ったら文句を言われ、無視され、荷物持ちにされる』と言っていた光景を目の当たりにさせられて、鳥海はまた改めて気の毒に思ってしまう。
結局は羽後が小物入れにしている円筒形のバケツを二つ置き、どこから出してきたのか1m四方ほどの透明のアクリル板をその上に乗せて、簡易テーブルを作った。
手をついたりすることはできないが、とりあえず物を置くくらいのことは可能だ。
「羽後さんってホント、手際がいいんですね」
瀬見が褒めても、「そんなところで感心するなよ…」と肩を竦めていた。
羽後がリビングテーブルの端に座り、強引に並べられた簡易テーブルを前に、由良の隣に高畠も落ちついて、ようやく食事会が始まる。

話題は当然のことながら鳥海の就職活動の話で、羽後が管轄が違うのだと説明すれば、由良はまたもや突拍子もないことを言いだす。
「じゃあ、あっちで雄和さんに採用してもらって、一定期間の後、こっちに異動願い、出せばいいじゃん。一年や二年くらいって割り切って、覚悟決めるとかさ」
由良は事も無げに言い放ってくれる。
「それでユーリが戻ってくるときに、鳥海くんも一緒に来れば?預かった以上、ちゃんと面倒みないとさ」
「誰が預かるかっ」
忌々しげに羽後が吐き捨てた。
由良は名案だと思っているようだが、鳥海にしてみたら一番避けたい提案でもある。
思うことは瀬見も同じようで、「いくらなんでも…。必ず異動願いが受け入れられるわけじゃないだろ」と羽後の肩をもってくれた。
こればかりは確約はできない。
地味に自分の足で動いていくしかない。…って当たり前のことなのだが。

あまりにも口うるさく由良が鳥海を推すので、羽後が渋々、鳥海の現状を確認するのと試問をしてきた。
鳥海にしてみたら世間話の延長だったが、簡単な面接状態だったと後に瀬見が教えてくれた。
水を差す事態になるので、誰も口を挟むことなく、聞き耳を立てていた。
まぁ、半分以上は機械関連の用語が飛び交ったため、黙るしかなかったようだ。
由利と由良は早々に興味を失い、仕草と眼差しだけで会話を成り立たせ、別の話を交わしている。
高畠と瀬見も時々視線を合わせるが、互いに両手を上に向けて肩を竦め、口を閉ざし続けた。
その世間話の一部に、鳥海の過去の体験談が語られた時、あまりにも分かり易い、稚拙な言葉に変わったことで、想像も簡単にできたものがあった。
「オレ、小学生の時に、自分の部屋に電話線が欲しくて、壁に穴をあけて引っ張って来てお母さんにすっごい怒られたことならある…」
この時は電気工事の話をしていたのだが、もちろん鳥海に実務経験なんてあるはずがなかった。
ただ、思い出したことがポロッと漏れたのだ。
「電話線?なんで?」
素朴な疑問は羽後だけではなく、全員の興味を誘う。
「部屋でインターネット、したかったの。あの頃はまだ…」
「あぁ…」
時代の移り変わりは激しい。
あっという間にワイヤレスが広まり、どこでも接続が可能になったが、鳥海が最初に目にしたものは有線だったのだ。
技術革新はまだまだ続いていく。
羽後はすぐさま理解し、次の質問に移る。
「でも壁に穴…って、良く場所が判断できたね」
「うん…。お父さんがお客さんちに行って、コンコンって壁叩いて音の違いで決めてたの、見てたし。屋根裏に潜れば分配できるし…」
「小学生の時だよね?」
「そう。ほら、体がちっちゃいから手を伸ばすんじゃなくて、入っていけるじゃん」
鳥海はニコッと笑って見せたが、全員が胸の内で「そこじゃないだろっ」とツッコミを入れていた。
羽後は、「体で覚える、ってお兄さんが言ってたっけ…」と昨夜の会話を振り返っていた。
納得した表情ではあったが、考えこむように顎に手を当てた羽後を見ては、余計なことを口走ったか、と心配になった。
後先考えずに突っ走るのは、鳥海の"得意技"だった。

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コメント

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☁ 曇り…ドヨ━━━(||゚ω゚||)━━━ン
コメントけいったん | URL | 2013-10-02-Wed 11:17 [編集]
瀬見との関係で 広がる鳥海の世界
自営業の家で育った彼には 知らない事ばかりでしょうね。

瀬見、双子絡みで 羽後も それなりに親身に相談に乗ってくれるから
抱えている不安が ひとつ一つ消えて行ってくれるでしょ!


所で 最近の由良姫の傍若無人ぶりには 目に余る感じがする私(←少々 ドン引き気味です(笑))
σ(・ω・*)んと… これも 由良特有の 甘えの表現なのかな?
いくら 愛しい由良とはいえ、毎日 辛抱強く相手している 湯田川には 頭が下がる思いです。
アンタは エライよ!(◎`・ω・´)σ (〃_ 〃)ゞ いやぁ そう言われると ポリポリ

関東方面に 台風が来ているとの事ですが、きえちんの所は 大丈夫ですか?
私の方は 雨は降ってないけど 真黒な曇天模様です
昨晩から 少し蒸し暑さが戻って 10月だと言うのに 家では(半袖)Tシャツを まだ着ています。
夜 わずかに聞こえていた虫の声も 昨晩は まったく聞こえなかったし、
虫も 涼しいのが いいのかな?シーン…~(´-ω-`:)~キコエナイ…
Re: ☁ 曇り…ドヨ━━━(||゚ω゚||)━━━ン
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-02-Wed 16:12 [編集]
けいったんさま こんにちは~。

> 瀬見との関係で 広がる鳥海の世界
> 自営業の家で育った彼には 知らない事ばかりでしょうね。
>
> 瀬見、双子絡みで 羽後も それなりに親身に相談に乗ってくれるから
> 抱えている不安が ひとつ一つ消えて行ってくれるでしょ!

自営業で育った鳥海は、ある意味世間知らずな子なのかもしれませんね。
あのにぃがいたから、アルバイトらしいこともしなかっただろうし。
したバイトっていうのが、壁に穴をあけることだった?!

> 所で 最近の由良姫の傍若無人ぶりには 目に余る感じがする私(←少々 ドン引き気味です(笑))
> σ(・ω・*)んと… これも 由良特有の 甘えの表現なのかな?

甘えている…というよりは、羽後から引き離したい嫉妬のようです。
もちろん理解ある下僕なので、由良の好きにさせていますけれどね。
萩生だけでは埋めきることができない淋しさっていうのを、悔しいけれど分かっちゃっているんだなぁ。
あくまでも由利がいる時限定でしょうから。
普段はそんなことないと思いますよ~(きっと)

> 関東方面に 台風が来ているとの事ですが、きえちんの所は 大丈夫ですか?

今日、大阪名古屋あたりは蒸し暑いみたいですね。
うちの方は午前中は雲に覆われておりましたが、昼頃から秋晴れのお天気になってきましたよ。
台風が接近…というのは、もっと海側のようです。(我が家は内陸)

コメントありがとうございました。
まだまだ続く若美庵
コメントちー | URL | 2013-10-05-Sat 21:14 [編集]
閉店だと言われても帰らなかった腐レンジャー。
妹ちゃんも一緒に大騒ぎ。

若「イチ、諦めよう。アイツ等座敷にでも寝かそう」
市「風邪引いちゃうんじゃ?」
若「引くか!行くぞ!」

若美兄ちゃんと市ヶ谷くんはお店の二階の住居へ帰って行った。
オールも辞さずと話続けていたレンジャー達だったが、寄る年波には勝てず(さえさん、にっかたんごめん)
座敷に上がりこみ、座卓をたたみ寝る場所をこさえ座蒲団を布団にしてお休みなさい。

うつらうつらとしてたその時。何やら物音が・・・
な、何?オバケ?

『やだ、ダメだってば』
『ゴニョゴニョ』
『ダメ~、若・・・』

どうやら、お二人さんも←大事
大人な時間に突入した模様。
隣を見ればにっかたんが録音中。
私?私は・・・ねえ?

さてさて、いくらになるかなあ。
イヒヒ。
地主にいくらかやれば・・・
にっかたんの音声とセットでー、そんでー。
若美兄ちゃんとイチの何とかな声を子守唄に、ぐっすり眠る腐レンジャー達でした。
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