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BLの丘
月あかり 7
2013-09-26-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
瀬見が静かに由良を諭したこともあり、皆の視線は羽後に向けられることになった。
「はぁ…」とひとつ、息を吐いてから羽後は由利と由良を愛おしそうに見つめた。
「嘘をついた、とか、騙した、なんてことをしたつもりはない。ただ、あの時、『転勤することになった』と言っただけで、会社が決めた辞令っていうニュアンスを残したままのほうが自然な気がしたんだ」
「「???」」
目を瞬かせる双子を見ては、高畠も首を傾げた。
本当は黙って聞くところなのだろうが、そこは由良と由利という大事なものを背負っている関係がある。
由良のことを思っても、回りくどい言い方が焦らせているのかもしれない。
「会社が決めた?フツーそうだろ。……、え? 辞令…って、故意的だったってこと?」
話を反芻すれば、思いあたることも浮かぶのか。
高畠はハッとしたように過去を振り返っているようだった。
鳥海たちでは分からない奥の深いものなのだと知れれば、聞いてしまって良いのかとも頭を過るが、今更立ち上がることもできないし、話を聞きたいのは瀬見も…のようだから、大人しく座り続ける。
高畠から質問、というより確認を受けては、羽後は少しだけ首を傾けて口端を上げた。
「事情により、支社間の異動を希望すれば、受理される場合もある」

必ずしも…ではなくても、過去にもそんなことは幾例もあったのだと言葉に含められていた。
そこからの羽後は隠すこともなく、いたって真面目な表情で状況説明を始めた。
こんなことでもなければ、ずっと胸の内にしまって語られることはなかったのかもしれない。

たまたま、別の支社では上のポストに着けるチャンスがあったこと。
自分が持つ資格と技術、知識量に自負するもがあったからこそ、当時の羽後は満足もしていなかった。
一つでも上の役職を目指したい向上心は誰にだって湧くものだ。
だけど、場所によっては"目の上のたんこぶ"がゴロゴロしている場合もある。
他社への転職の話も来ていた時で、羽後はその話を利用した。
人材流出を避けたい会社側の危機感はすでに耳にしている。
拍車をかけたのは由利と由良の存在で、羽後にしてみたら、こちらも"目の上のたんこぶ"がすぐそばに鎮座していたわけだ。
由利に会社をやめさせてでも連れて行く。
すなわち、由利の視界から由良を外すことで、自分に向ける眼差しの濃さが変化する。
半分以上は私欲のためだった。
そのために新天地でのポストを確約させた。
ふたりで暮らしていけるだけの基盤を整えた上で、由利と由良を説得した…。

「あの頃の由利は、どうしたって真っ先に由良を頼るクセが抜けなかったんだ。まぁ、今でも根底にあるのは変わらないけれど。それに由良は何を差し置いても由利を優先させる。その関係性を変えたかった。由良にも自分の感情をもっと出してほしかったからな。由利の存在があることで、想いを押し留めるのは歓迎できないだろ」
な?と見た先は由良と高畠で…。
自分たちのことだけではなく、周りにも配慮を怠らなかった心遣いが素直に吐露された。
羽後も、このことがあったから、詳細を語りたくなかったのかもしれない。

「ユーリは一番大事なのっ。手の込んだことしてくれてっ」
「分かっているよ…」
「おまえなんかいなくったって…っ」
「これが一番いいと思ったんだ…」
もうとっくに、羽後は由良が誰を想うのかを知っていたから、半分は"協力"の意味もあったのだろうか。
「ユーリぃぃぃ」
強がる由良を高畠はまた由利から奪い取ろうとして失敗していた。
「由良っ」
声を上げても、固く閉じた二枚貝は開きそうになかった。
今日は、余計に離れたがらないだろうな…と、諦めた感じと、やっぱり容認しているのがうかがえる。
由良に嬉しさ、悔しさが混在するのは、由利を任せられると改めて感じられたからと、自分のことまで心配かけてしまった不甲斐なさか。
上に立つ人間とは視野が広いのだと、こちらにも感心させられる。

羽後は自分たちの話を終息させると、また鳥海に向き合ってきた。
「会社に"使われる"印象が強いかもしれないけれど、ひとつ意識を変えて"使ってやる"と思えてきたら、モチベーションも変わってくるんじゃないかな。自分が得た知識は全て自分の財産になる。でも、どう転ぶとしても、その後、もうこの仕事にはつきたくないって思うような職場に出会わないようにするのが大事かな」
その職種だけでなく、働く意欲そのものを喪失させるようなことがないように…。
企業選びとは重要なのだな、と改めて教えられたと思う鳥海だった。

黙って話を聞いていた藤里が「あれ?」と声を上げる。
「もしかして、由良さんがお兄さん…なの?」
後から来た藤里と八竜には、双子だとしか伝えていなかったっけ…と全員が思った。
気付いたことに対して由良は「そうだけど」と答え、高畠が「良く分かるなぁ」と感心し、瀬見は静かに微笑んでいる。
藤里の性格も知るから、何故行きついたのかも理解しているようだ。
「うーん、なんとなく…。八竜さんも同じようなとこ、あるもん…」
「同じとこ?」
さすがに八竜もこんな発言をされるとは思っていなかったのだろう。藤里をマジマジと見ては問うている。
鳥海だって、どこが同じなのか、さっぱり分からない。
藤里は言おうかどうしようか悩んでいる風だ。
瀬見が何か言うかと伺ったが、こちらも首を竦めるだけで終わってしまった。だけどこの動作は絶対承知している。
羽後がクスクスと笑って…、理解はしているが、やっぱり発言は控えたいのか。
待てない鳥海は藤里の腕を揺すった。
「なになに~?」
「あ、いや…。っていうか、双子でもそういうの、あるんだ…」
「「「そういうの???」」」
双子に鳥海の声が被さった。
羽後は由利の頭を撫でる。
「長兄長女の性…なのかな。新庄さんもお兄さんだろ」
「「えーっ?!新庄さんってお兄ちゃんだったのっ?!」」
そのことは、同僚でも知らなかったのか、前の三人のほうが驚いていた。…が直後には、高畠だけが納得の表情に変わった。
鳥海は、わざわざ"おにいちゃん"って言いなおすか…?と変なところに、再度驚かされている。

鳥海はすでに知っていたが、それはまた、八竜とも"同じ"の意味が、余計に難解なものになった。
瀬見をみれば、気にしなくていいと誤魔化されようとしている。
こうなったら頼れるのは藤里しかいない。
「とーりーぃ」
「えーと…、なんていうか…、素直に思ってること言わないっていうか…。さっき、羽後さんが『感情を抑える』みたいなこと言ってたから、あ、それかぁ、て気付いて…」
藤里も漠然と感じていたが、はっきりと言葉にされて実感したところがあったらしい。

…感情を抑える???…
これには益々鳥海は首を傾げてしまった。
言いたい放題じゃないか。
普段の生活を振り返って、どこにそんな控え目さがあったのだと不思議がる。

八竜は苦虫をつぶしたような苦笑を浮かべていたけれど。
羽後が「藤里くんは?」と尋ねると「一人っ子」と答えて、また羽後は「なるほどね」と一人腑に落ちた顔をした。
眉間に皺を寄せた由良を感じては高畠が、「あー、もういいよ、この話はっ」と無理矢理切り上げようとしている。
またギューギューと抱き合った双子で、由良は「ユーリっ、今日は一緒に寝るんだよっ」と言い聞かせ始めた。
どことなく自棄になっている由良のような気がする。
気持ちは素直に表現するのだと言うかのような態度。

瀬見の唇がスッと鳥海の耳元に近づいた。
「鳥海は俺と一緒だからね」
誰にも聞こえないような小さな内緒話。
なんのこと?と一瞬不思議がった鳥海だが、直後にはボンっと顔に火がつく。
…そ、そんなの、今更…。

クスクス笑っている瀬見に、半分はからかいもあるのだと気付いて、瀬見の腕をパンパン叩いてみる。
束の間でも堅苦しくなった空気はいつのまにか消えていた。
優しく見守ってくれる態度は、彼処から醸し出されているが…。
みんなが見せる態度と、唯一八竜だけが違うと思うのに。
難しいことを考える余裕までもが無くなってしまった。

やがて瀬見は、「鳥海は飲むとすぐ眠くなっちゃうから」と早目に鳥海を立たせようとする。

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瀬見も『素直な気持ち』と態度に出したつもりなんだろうけれどね…。
画一的な性格と表現されて差別化を図ったって根っからのものは体に染みついちゃってるよね。『お兄ちゃん』。

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トラックバック0 コメント8
コメント

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そう言えば…(o'ω'o)?
コメントけいったん | URL | 2013-09-26-Thu 18:18 [編集]
羽後 雄和視点からの話しは 無かったのでは?
だから 今回の話しで あの時 雄和が どんな考えがあったのかを知れて 良かったです。
由利を恋人に得て 男として 頑張らなきゃと 強く思ったのも在るかもしれませんね!
あっ、 由利視点の話しも 由良に圧されて 無かったよねー(笑)

由良、八竜、そして 瀬見たちって 藤里が言うように 似てるのかな~?
『感情を抑え込む』って~!
瀬見は まだしも 由良は…(´Д`) =3 ハゥー

市「若美さんも 長兄だよね!」
若「あー 俺は姉が居るから ちょっと違うかな?」
市「オレには 抑え込まないで 全て見せてね♪」
若「俺は いつだって 市には 色々と全部 むき出しだろ ( ̄ー ̄)ニヤリ」
市「そ・そうだよね(*..) ポッ」

ちーさんの写真と niったんの録音した声で CDでも作って販売しましょうか?
セールスは さえさんと私が 頑張りますよ~♪
きえちんは、また ガッポガッポの ぼろ儲けだよ!( ゚∀゚;)タラー

いっきに涼しくなって 大慌てで 一日中 衣替えをしてました。
でも 来週には この涼しさが引っこんじゃうらいしので 完全移行が出来ないのが 辛いなぁー アッチヲ?ヾ(´;ω;`=´;ω;`)ノ コッチニ?


販売~
コメントさえ | URL | 2013-09-26-Thu 22:21 [編集]
売り子しますよ~♪
CDにはおまけに生写を1枚付けますよ~(*^^*)

今日は仕事時間が12時間…(@_@。
疲れた…。
若美庵で癒してもらわないと…(>_<)
市くん美味しいお酒~♪
大将、上手いつまみ~♪
わーん
コメントちー | URL | 2013-09-27-Fri 04:17 [編集]
たくさん書いたのに消えた。消えたよ・・・・

なので、若美庵にてのみ(笑)

若「刑事さん読んだのに!なぜ、来ないかな?」

そりゃ、成くんとこへ帰ったからです。
お久しぶりなんですー。いろいろ。

市「い、いらっしゃいませ~(あ、男の人達♪)」

男「二人だけど空いてる?」
市「あ、はい!こちらへどうぞ」

ち「し、師匠!」
し「何!」
さ「あ、師匠・・・」
し「だからあ、ナニよ?」
に「あ、あの方は!」

新しいお客様がやってきた。それも、極上の。

男「ほう、なかなか良い店ですね」
男「そうなんですよ。料理も雰囲気も最高ですよね?」
男「何がおすすめかな?」
市「今日は、新鮮なお魚が手に入りましたのでお造りですね。」
男「よし、三隅さん好き嫌いはあります?」

師匠の耳がピクリと動く。

「三隅さん?」

思ってもみないひなパパの登場。
そして、同伴の男は?

まだまだ続く・・・
Re: そう言えば…(o'ω'o)?
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-27-Fri 07:21 [編集]
けいったんさま おはようございます。

> 羽後 雄和視点からの話しは 無かったのでは?
> だから 今回の話しで あの時 雄和が どんな考えがあったのかを知れて 良かったです。
> 由利を恋人に得て 男として 頑張らなきゃと 強く思ったのも在るかもしれませんね!
> あっ、 由利視点の話しも 由良に圧されて 無かったよねー(笑)

以前は背後状況は書いていませんでしたからね~。
とにかく話を進めることに追われていたので、雄和視点も由利視点もありませんでした(笑)
当時はこんなこと微塵も思っていなかったけど、今回、こんな展開もありかなってくっつけてみた(←)

> 由良、八竜、そして 瀬見たちって 藤里が言うように 似てるのかな~?
> 『感情を抑え込む』って~!
> 瀬見は まだしも 由良は…(´Д`) =3 ハゥー

由良は…。
相手を選んでいるんでしょう。
強がりのことばっかり言うしね。
一応長男…。同じく育っているのにね…。

> 若「あー 俺は姉が居るから ちょっと違うかな?」

すみませーんっ(汗)
若美は正真正銘のお兄ちゃんです。
真室から見てお姉ちゃんで、若美にとって妹になります。
女性の存在はどうでもいいものね。覚えていなくて当然です。

> ちーさんの写真と niったんの録音した声で CDでも作って販売しましょうか?

CD売れるといいなぁ。
なんだったらダウンロード版も用意するかな。
CDにする必要もないしね 売り子さんには口コミで頑張ってもらおう(経費削減)

気温になかなかついていけませんね。
重ね着で温度調整です。
お疲れがでませんように。
コメントありがとうございました。
Re: 販売~
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-27-Fri 07:32 [編集]
さえさま おはようございます。

> 売り子しますよ~♪
> CDにはおまけに生写を1枚付けますよ~(*^^*)

おー、こちらにも売り子さんが(笑)
お好きな生写真、おひとり様一枚でね。
(人気投票応募用紙でも入れとくか。…もう一枚買えって?!)

> 今日は仕事時間が12時間…(@_@。
> 疲れた…。
> 若美庵で癒してもらわないと…(>_<)
> 市くん美味しいお酒~♪
> 大将、上手いつまみ~♪

さえちゃん、おつかれさま~。
市「はいお待たせしました。大ジョッキ」
若「そろそろ寒くなってきたから鍋でも…」
市「え?今彼氏いないのに?……ぼく、よそってあげるね」
若「…チッ 他のつまみにすれば良かった…」

コメントありがとうございました。
Re: わーん
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-27-Fri 07:48 [編集]
ちーさま おはようございます。
また消えちゃったの…。見られなくて残念です。

> 市「い、いらっしゃいませ~(あ、男の人達♪)」
>
> 男「二人だけど空いてる?」
> 市「あ、はい!こちらへどうぞ」
> 新しいお客様がやってきた。それも、極上の。
>
> 男「ほう、なかなか良い店ですね」
> 男「そうなんですよ。料理も雰囲気も最高ですよね?」
(えぇ。もううるさいのは去ったのでぜひごゆっくり堪能していってね)
> 男「何がおすすめかな?」
> 市「今日は、新鮮なお魚が手に入りましたのでお造りですね。」
> 男「よし、三隅さん好き嫌いはあります?」

> 思ってもみないひなパパの登場。
> そして、同伴の男は?
>
> まだまだ続く・・・

続き~っ。早く続き~。
すっかり読者です(笑)
えー、誰だろ。
佳史パパ?(←登場していないって)
あと夜に暇している人っていたっけ???
この予想外の展開、ワクワクするね~。
いい子で待ってます。
コメントありがとうございました。
市くん優しい~♪
コメントさえ | URL | 2013-09-27-Fri 08:16 [編集]
市くん優しいね~(*^^*)
ついでにふーふーして~♪
あ、大将が睨んでる(-_-#)
でも、新客でそっちいったよ。
こっちの客も撮っておかないとだよ~♪
みんな忙しいよ~(*^^*)
Re: 市くん優しい~♪
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-27-Fri 17:40 [編集]
さえさま こんにちは~。

> ついでにふーふーして~♪
> あ、大将が睨んでる(-_-#)

そりゃそうでしょう(笑)
ふーふーのサービスまではしてくれない模様。
睨まれても、新客が来て気が反らされたから良かったね。
さえちゃん、ここの店はプリンやおまんじゅうを持ち込んでも懐いてはくれなさそうだよ。
店員はみんなといっしょに構い倒すくらい(←)に留めておいてね。
さぁ、腐レンジャーのみなさん、また忙しくなるのでしょうか。
若い輩が去ったら、ロマンスグレーの世界???

コメントありがとうございました。
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