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BLの丘
月あかり 2
2013-09-21-Sat  CATEGORY: 木漏れ日
作務衣を着たお兄さんが一人ずつおしぼりを手渡してくれる。
その後、先に注文したビールのジョッキとお通しが運ばれてきて、他に幾つかお薦め料理を注文した。
今日のお通しはサツマイモの甘辛ポテトだった。細切りの揚げたサツマイモが茶色い照りを纏って、瀬見と二人分が一皿で出てきたから量が多く感じられる。
まずは乾杯とカチンと軽くジョッキを合わせて喉を潤す。
「瀬見さんて、どうして今の会社に入ったの?」
単刀直入に尋ねた鳥海に、瀬見は突然どうしたのかと首を傾げたが、話を聞いてくれた。
まだ知らないことが多い自分たちの間に、質問を繰り返されるとは、興味を持たれている対象なのだと深く感じることができる。
「どうして…、…たまたまかな。…正直希望職じゃなかったんだけどね」
苦笑いはあまり晒したくない内容だからなのか…。
意としない職場だと聞いては、鳥海の方が「えっ?」と驚いた。
普段から見ていても、嫌々勤めている雰囲気はなかったから、てっきり最初から狙っていたジャンルだと思っていたのに違ったのか…。
「何になりたかったの?」
「なりたかった…か。そういうものでもなかったけれど、うーん。商社っていうか、貿易関係に就きたかったところはあった。ことごとく落ちまくったけど」
いかに就職活動が大変だったか、そんなことを言いはしないが、瀬見ですら難関な砦があったとは想像ができない。
今の会社は『かろうじて引っかかった』ところだそうだ。
チラッと瀬見の背後、カウンター席に座った人たちの背中を見てしまう。
少なくともあそこの3人は同じ会社に就職したわけで、では彼らはどんないきさつがあったのだろう。
「でもまぁ、仕事してみれば色々と知っていくところもあるしね。向いているか向いていないかはやってみないと分からないものだから、今となっては良かったかなと思ってるよ」
理想を掲げて、憧れて、現実に突き当たって挫折する人もいる。
必ずしも希望通りの職場でなくても、充実感を得られる可能性は大きい。
「そっか…」
でもやっぱり職種にはこだわってくる。
鳥海には、機械を弄っていたいという願望があった。
それが、ビルの中を張り巡らせるような大規模なものなのか、机の上でできる作業であるかは曖昧だが。

将来を考えてくる頃、とは瀬見も理解していて、鳥海に向かう態度は真剣だ。
「鳥海の場合、技術職だからね。今持っている資格とか知識とか、生かせる場所はたくさんあるんじゃないかな」
「それくらいしか取り柄がないけどね」
「それが強みじゃない?俺なんか何もないから苦戦したんだと思うけど」
「瀬見さんって学部、どこだったの?」
「外語。なんでそっちに行ったのかは俺でも不明」
鳥海が目をパチパチとさせると、クククッと肩を揺すって笑いだした。
誰も彼もが目標を持って進路を決めているわけではないわけで…。
だけど鳥海にしてみたら、進学先に感心させられた。
鳥海では間違っても選ばない学部で、果敢に臨んだ瀬見をすごいと思ってしまう。
語学については丸投げした過去がよぎっていった。
英語塾に通わされた小学生時代は、青い目の先生が怖くて、1カ月の月謝代しか支払われなかった。
それが原因かどうかは分からないが、英語の成績は散々だったのだ。
「すごい…。ねぇねぇ、何ヶ国語話せるの?」
「あのねぇ…。何ヶ国語って、どんな秀才だよ…」
「え?ちがうの?そういうところだと思ってた…」
「留学は盛んだったし、勉強熱心で話せる人は確かにいるけどさぁ」
自分は違うのだと、情けなさを露呈するようで瀬見は肩をすくめるばかりだ。
スペイン語を専攻したものの、それも中途半端で終わっているとのことで、今では脳内に欠片も残っていないとか。
でも「"こんにちは"は?」と聞けば「Buenas tardes(ブエナスタルデス)」、「ありがとう」「Gracias(グラシアス)」と答えてくれるのだから、全部忘れちゃったわけではないのだろう。
「挨拶なんて『Hola(オラ)』って言っておけばいいんだよ」
大らかに構える精神は細かいことを気にしていなかった。
もうちょっと神経質なのかと思ったのに…。
今日は意外な瀬見を見せられている、と鳥海はますます興味津々になっていった。

瀬見はグビッとまたジョッキを傾けた。鳥海はサツマイモポテトを頬張る。
砂糖醤油の味が絡んでいるのにサクッとした食感がある。
つまみ、というよりもお菓子感覚だ。
「技術系だと俺よりも羽後さんのほうが参考になるんじゃないかな」
「『羽後さん』?」
誰だ?とたずね返すと、視界の端にこちらを見た人物が映った。
チラッと見た程度ですぐに反らされたが、確かに自分たちの会話に反応したと分かる。
小声で話していたつもりでも、いつの間にか普段のトーンになっていたのか、騒がしくない店内では人の会話が聞こえてもおかしくなかった。
瀬見は振り返ることもなく、親指を立てて後方を示し、声をひそめた。
「あそこにいる人。うちの会社の出入り業者だって言っただろ」
「あぁ…」
そのことから今の話になっているのだと改めて振り返る。
先程聞いた名前ですら頭から抜け落ちているとは、いかに営業職が向かないものかと教えられているようだ。
いや、覚える気がないのか…。
第一、感情が顔に出やすい鳥海に、この店のような接客業はまず無理だろう。
家に寄った客に対してだって、小さい頃からの延長線で平気で刺々しい言葉も使う。
客自体も堅苦しさなんて求めていないからいいようなものの…。
鳥海がまたカウンター席に座る4人の背中を眺めると、今度は全員に振り返られて慌てた。
「あ、…ぃや…」
咄嗟に顔の前で両手が振られ、瀬見までもが首を回す。
そうなると向こうとの会話が始まるのもすぐだった。
他の客の手前もあるから大声になることはないけれど。

「何か珍しいものでもあった?」
いたずらっぽく話しかけてきたのは瀬見と最初に話をした男だ。
彼の言いたいことが瀬見には分かるのか、少し肩をすくめる。
「由良たちのことじゃなくてさ。羽後さんの話をしてたの」
これは彼らにとっては予想外だったのだろうか。全員がキョトンとしていた。
注目を集めるのが双子だとすれば、当然その話題だと想像したのだろう。
普段、いかにその体験が多いのかを物語っている。そして、慣れ過ぎている。
まさか他社社員の話題だったとは…。
並んでいる3人の顔が一斉に羽後を見るのも面白い光景だ。
「えーと…。新庄さん、私、何かしましたか?」
年上でありながら低い物腰は、会社関係というものが存在するのだと伝わってくる。
直接繋がる要素が他にないから、仕事内容ではないかと勘繰るのも仕方がないのか、微妙に声音が硬質のものに変わった気がした。
今は担当が代わっていたとしても、自社の客に変わりはない。
瀬見は、こんなところで仕事の話をする気はない、と首を横に振っていた。

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コメント

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へー
コメントちー | URL | 2013-09-21-Sat 05:50 [編集]
瀬見ちゃん、外語大出身φ(..)
意外だなあ、経済とかかと思ってた。
そして、会社落ちまくるっと。
でも、瀬見ちゃんの年代じゃそんなもんだよね。
厳しい就職活動だから。

鳥海くんはどうしたいのかな。
エンジニアになりたいのか、雄和さんみたいにシステムメンテナンスの仕事がしたいのか。
機械に携わっていたいのは自分でわかったね。

次は、羽後さん(そういや、雄和さんは羽後だった)の話を聞くのかな?
そして、案外大人な双子ちゃんなんだよねぇ。
きっと、鳥海くんの話に付き合ってくれるんだろうなあ。


若美庵にて。


可愛い市ヶ谷くんにお料理を注文し、師匠と雑談をしつつ六人を観察していると、ラインが入る。

「あ、にっかたんだ。あ、外にいるみたい」
「入って来るように言って」
「はぁい。すぐ来なさいって師匠が言ってます・・・」

「来ましたぁ」

ハヤッ。にっかたん早いよ。どこにいた?

「ニッチン、まあ、座りなよ」
「何する?ビール?ジュース?」
「それより、ここ良い席ですね♪」
「ビールね、了解。あ、市ヶ谷くーん!」

師匠がサクサクとにっかたんの飲み物を注文。
にっかたんたらあっち見てこっち見てと忙しい。
でも、腐レンジャーたるもの気付かれてはいけない。
あくまでも、女子会ですけど、何か?
的な雰囲気を醸し出し、任務遂行!

続きは師匠でっ。
(師匠、勝手にごめんねー)
おはようございます♡
コメントnichika | URL | 2013-09-21-Sat 06:12 [編集]
ちーさま はや~~ では遠慮なくbeer やばい 美味しい
(リアル この時間 支度中 ゴチソウ様です) またきますね~
師匠 飲み過ぎないでね! 

きえちん 替えたバナーも素敵ですね★
Re: へー
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-21-Sat 08:25 [編集]
ちーさま おはようございます。

> 瀬見ちゃん、外語大出身φ(..)
> 意外だなあ、経済とかかと思ってた。
> そして、会社落ちまくるっと。
> でも、瀬見ちゃんの年代じゃそんなもんだよね。
> 厳しい就職活動だから。

瀬見の過去が少しずつ暴かれていく(笑)
経済っぽいのも分かる気がしますが、そこはあえて外しました。
もうずっと長いこと 就職活動が厳しい時代が続いていますよね。
私なんかの頃がギリギリだった…と良く言われましたよ。
私も第一希望の会社がダメで、でも1年後にその会社が倒産したときには、内心ホッとしましたね。
(入社しなくて良かった…と)

> 鳥海くんはどうしたいのかな。
> エンジニアになりたいのか、雄和さんみたいにシステムメンテナンスの仕事がしたいのか。
> 機械に携わっていたいのは自分でわかったね。

漠然としていたものがはっきりと見えてくる頃でしょうか。
鳥海は機械に囲まれて成長してきましたからね。身近なんだと思います。
また、分かるから楽しくもあるのかも。

> 次は、羽後さん(そういや、雄和さんは羽後だった)の話を聞くのかな?
> そして、案外大人な双子ちゃんなんだよねぇ。
> きっと、鳥海くんの話に付き合ってくれるんだろうなあ。

みんな意外と大人ですからね。
社会で揉まれていることもあるし。
たぶん一番冷静に人の生きざまを観察しているのが若美兄ちゃんだろうけど(← 寡黙な人)

> 若美庵にて。

特等席にご案内されたようで(笑)
そしていつ呼ばれるかと電柱の影で待っていた人も入ってきました~。
楽しい痔好し(ちがう、女子・じょし)会の始まりですね。
テーマはなんでしょう。ふぇち? 盗撮術?
腐レンジャーのみなさん、飲み過ぎないでね~。
コメントありがとうございました。
Re: おはようございます♡
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-21-Sat 08:28 [編集]
にっちんさま おはようです。

> ちーさま はや~~ では遠慮なくbeer やばい 美味しい
> (リアル この時間 支度中 ゴチソウ様です) またきますね~
> 師匠 飲み過ぎないでね! 
>
> きえちん 替えたバナーも素敵ですね★

朝の忙しい時間に、こんなところに来てもらって恐縮です。
きえちんも朝からがんばったよ~。
別宅につぶやいてきたとこです。

バナー、夜バージョンらしくなったかしら。
褒められて舞い上がっております(照)
コメントありがとうございました。
 ̄【若】【美】´ω`*)ノえへ♪【庵】 ̄(長くなって ごめんなさい┏○))ペコ)
コメントけいったん | URL | 2013-09-21-Sat 11:12 [編集]
逸る気持ちを抑え 若美庵の暖簾をくぐる。
「「「「いらっしゃい!」」」」と、 威勢の良い声で迎えられて 案内されたのは 特等席とも言える場所

いまだ キラキラ目で 不気味な笑みをたたえる ちーさん、
そして こちらも キラキラ目で 頬を紅潮させ遅れて合流した niったんと、3人で 目にも鮮やかで美味しい食事と お酒を 次々 口にし 気分は 益々 上々に!

「あ~でもない」、「こ~でもない」と 当たり障りのない話しをしながらも 目と耳は 確実に違う方向に行ってる訳で…(恥笑)

鳥海と瀬見の話しに 隠す事も忘れ いちいち 頷いて相槌をうったり 肩を跳ねらせたりする2人には どうしたものかと…
まぁ 私も そうなんだけどねー(苦笑)

でも!
ちーさん、そのバッグから はみ出てるカメラ(←望遠レンズ装着のままだから 収納しきれてない(笑))に 無意識に 手が ジワジワ行ってるし!!
niったんは、テーブルの下(←膝の上にメモ帳とペンを置いてる)で ゴソゴソしてるし!!

さっきから 若美にぃにと 市ヶ谷くんが こっちを 冷たい目で見ながら 何やら ヒソヒソ話しているんですけど~~∑(; ̄□ ̄Å アセアセ



若美『市(←市ヶ谷の愛称) どうした?真っ青だけど 気分が悪いのか?』
市ヶ谷「大将、あの席から 邪まな空気が漂って来て 頭がクラクラするんですけど」
『ん? あの席って…?』
「ぇぇ…あそこ…」
『…市、後もう少しの辛抱だ… ガンバレ…』
「大将…、若美さん、頑張れば ご褒美くれるの?」
『ふふ、もちろん。 後で じっくりな♪』

イケメン'sとお酒で 酔っぱらってるバカな腐女子は その会話を聞き逃したのであった。チャンチャン♪
 
Re:  ̄【若】【美】´ω`*)ノえへ♪【庵】 ̄(長くなって ごめんなさい┏○))ペコ)
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-21-Sat 12:17 [編集]
けいったんさま こんにちは~。
長いの、大歓迎です。
あとで、これらをまとめて記事にしちゃおうかと考えている現在です。
『腐女子会』とでもタイトル付けようかな(笑)

> イケメン'sとお酒で 酔っぱらってるバカな腐女子は その会話を聞き逃したのであった。チャンチャン♪

えー、聞き逃しちゃったの~???
若美からのご褒美ってなんだろう。刺身船盛りとかかな。
だったら男体盛…ピシッ! (*ー"ー)ノ☆)゚ロ゚)ノ グハッ!!
……きっと市くんのイチモツちゃんを可愛がってくれるご褒美だよね。
「今日は一日良く頑張ったな( ^)oヾ(^^*)ナデナデ」

カメラとメモ帳、つぶさに観察しててくださいね~。

コメントありがとうございました。
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