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BLの丘
月あかり 1
2013-09-20-Fri  CATEGORY: 木漏れ日
『木漏れ日』からのSSです。
相変わらずあちこちの登場人物が出ます。




若美庵の暖簾をくぐると、「いらっしゃいませ」と小気味良い声がかけられる。
カウンター席の奥にある厨房は客席から良く見えて、調理人の存在が直に伝わってくる。
直接客の顔を見て、近い距離で会話をしたいからと、この店を開店させたとは誰に聞いた話だったか。
この店の主人はがっしりとした体格に、優しさと厳しさを兼ね備えた、30代半ばの男性だった。
清潔感あふれる白いコックコートが人目を惹く。
絶対的に見守ってくれる雰囲気は、貫録というものに繋がるのだろうか。
店内はそう広いわけでもない。
カウンター席と、テーブル席、小上がりの座敷がある。
作務衣を着た接客係はアルバイトのようだが、笑顔が魅惑的で、応対されても気持ちがいい。
学生身分の鳥海では価格から夜の訪問はあまりない。精々ランチタイムがいいところなのだが、瀬見と付き合うようになってから少々敷居の高そうな場所も増えた。
鳥海としてはちょっと背伸びをしている感じがあって、優越感に浸れるところがいい。
だからといって奢ってもらうのは抵抗があるが、瀬見にはいつも「俺の顔を潰さないでくれ」と言われて素直に従う。

店員の掛け声にカウンター席に座っていた男が振り返った。
4人が並んで座っている中、一番手前にいた短髪で体躯の良い男だった。
瀬見とも八竜ともあまり歳は変わらないと思われる。
振り返った顔を見ては、その男と瀬見が同時に視線を交わして、「あれっ?」と声を上げた。
「新庄じゃん」
「来てたのか…」
二人の声に、並んでいた人物が一斉にこちらを向いた。
真ん中にいた二人は同じ顔。最奥にこの中では一番の年長者だと分かる切れ長の目の男がいた。
週末、休日である日に、誰もが私服でのんびり過ごしている。
髪型も整えられていなくて、いつも見ている八竜や瀬見となんら変わらない青年だった。
広くない店内は数歩も進めばすぐに近寄ることができる。
…知り合いなのかな…。
鳥海は首をかしげつつも、大人しく瀬見の後に続いた。
地域付き合いが濃い五城目家では、こんなことは日常茶飯事だったから、特に不思議に思うこともなかった。
「「新庄さんだ~」」
絶対に双子だと分かる中心の人物が同時に瀬見を確認する。
さらに奥側にいた双子の一人が「お久し振りです」と続けた。
年長者の男は会釈をする程度におさえている。
瀬見は人好きのする笑みをたたえて、その声に返していた。
「久し振り。本荘くん、こっちに来ていたんだ」
すごく親しい、という雰囲気ではない。
同じ顔にしか見えないのに、瀬見にはきちんと違いが分かっているようで、迷いなく発言していた。

言っては悪いが、混雑しているわけでもないのに、わざわざカウンター席を選んでいたことが鳥海には理解できなかった。
確かに料理人の姿が見えるけれど、4人集まれば小上がりの座敷席のほうがお互いの会話が近い気がする。
実際正面に顔があるのだから、話しやすいだろうに。

瀬見は時間をおかずに彼らを紹介してくれた。
手前から、同期の人間高畠(たかはた)、隣が同僚であり高畠の恋人の由良(ゆら)、双子の片割れが由利(ゆり)で、最奥の年長者が由利の恋人の羽後(うご)だとのことだ。
また瀬見が「この子は鳥海クン」と紹介すると、高畠が一瞬キョトンとしつつ、「へぇ」と納得した表情で二人を見比べてきた。
その視線を追って、「萩生(はぎお)?」と訝しそうに覗きこんできた由良に、「あぁ…」とどこか曖昧な返事をしていた。
高畠の「うまくいったんだ…」とポツリ呟かれた言葉は誰に向けられたものだったのだろうか。

短い会話を交わしただけで、瀬見と鳥海は座敷の席に落ちついた。
奥に鳥海を座らせ、瀬見は振り返れば彼らの姿が視界に入る上がり口に腰を下ろす。
あくまでも好みなのだが、人数の多いグループがカウンター席で、二人連れの自分たちがテーブルを陣取るのが不思議で仕方ない。
それが分かったのか瀬見が説明してくれた。
「由良と本荘くんは隣に並びたいんだよ。向かいに座らなければいけない高畠と羽後さんの構図になるから、それを避けてあそこの席になったんじゃないかな?」
こういった場合、自然と恋人同士が隣に着くことになるのだろうが、あの4人は少し違うらしい。
兄弟で隣どうしになりたいと思うものだろうか…。
瀬見は苦笑しっぱなしだが。
「本荘くんが遠くにいっちゃったからね。会った時は近くにいたいんだろう」
「そういうものなの?」
「あのふたりに言わせるところ『生まれる前から一緒にいたから引き離されて淋しい』らしいよ」
…全くもって理解不能だ…。
鳥海は思わず眉をひそめてしまう。
また、双子でありながら弟の由利が、瀬見の会社に勤務していたことも教えてくれた。
羽後の転勤で退社したそうで、瀬見の部署に羽後も出入りしていたそうだ。
今でも機械のメンテナンスは同社が入るため、羽後の後任が定期的に訪れるのだという。
つまりは全員がどこかで繋がっているわけだ。

そんな話をしていて「メンテナンス?」と鳥海は気に留めた。
瀬見の仕事が、商品の在庫を管理をする部署だとは聞いたことがある。
今では全てを機械に頼るだけで、一つのコンピューターシステムのダウンが一大事になる現実は鳥海も良く理解していた。
「プログラム自体はまた別の業者だから、羽後さんのところは主に通信機器かな。新しい機械が入ったりとか、取引先が増えた時なんか、そういう設定を依頼しているんだ。社内間のネットワークって言った方が分かりやすい?」
「へぇ…」
瀬見も詳細については曖昧なところが多いらしい。
一つの会社に様々な業者が関わるのだとは漠然と分かっているつもりでも、『組織』というものがイマイチ、ピンとこない鳥海だった。
仕事内容を気にかけるようになったのは、自分がどんな仕事に就きたいのかと考えるようになったからだ。
藤里がすでに院に進むことが決まったような状態なので、あまりのんびりしていられないと、少しばかり焦りも混じってくる。

…そういえば、瀬見とこんな話をしたこともなかったっけ…。

せっかくの食事の席で、仕事の話なんて嫌がられるだけかと思っても、後に取っておくことのできない性格だ。
思ったことは口から流れてしまう。
そもそも瀬見はどんな流れで今の仕事に就いたのだろう。
経験談として聞いてもいいだろうか。

悩ましげな表情を浮かべてしまったのか、「鳥海?」と覗きこまれて、向こうの人達に聞こえないように何故か小声になってしまうのだった。

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【若美庵】
私のイメージはこんな感じです。

若美庵
クリックで大きくなります。手書きだけどね(´∀`;)
縮図等については温かい目で見てください。
お絵描きは大の苦手科目なのです。
(父と妹が絵画コンクールの賞を取ったとか、叔父が設計士だとか、その血はきえちんには流れていない模様)

一応厨房には若美お兄さんと、もう一人、一緒に店を立ち上げた料理人さんがいる設定でした(忘れられているだろうけれど)
あとは接客係りの人が2人…くらいかなぁ。
あまり大きなお店ではないので、人件費もかかるし、最低限の人数で切り盛りしていると思います。
まぁ、満席になることも稀でしょうしね(←)

こんな落書きしていると 「( ・_・)σ゙ツンツン ねぇ、若美にぃのスピンオフは~?」と言われそうで怖いですが、
ありません。(断言)
そんなにシリーズ化してどぉすんのぉぉぉ???と思っておりますので。
(たまに登場するからいい味出しているんだよ、きっと)

あと、なんで『想』の図がないのか…と思う方もいると思いますが、アレはもう、読者様のなかでそれぞれにイメージが出来上がっていると思うのです。
今になって余計なことを書いたら、人それぞれのイメージをぶっ壊すこと間違いなしなので、あえて書きません。
お心のままに想像していただけたら嬉しいです。
(私自身、テキトーに書きすぎて収集つかなくなったとも言う…)

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コメント

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ふふふ
コメントちー | URL | 2013-09-20-Fri 00:39 [編集]
こんばんは。

キタキタこの双子ちゃんと下僕・・・いや、騎士のカップル。
きえちん、私の頭の中覗いた?
会いたかった、会いたかった、会いたかったっ♪

若美お兄ちゃんも来たぁ。
勝手に若美お兄ちゃんの彼氏にしてる子もいるし。
楽しいですね。

鳥海くんは、将来について考えてるとこなんだね。
まだまだ、迷ってて良いと思うなあ。
それに、瀬見ちゃんがいるし、にぃも藤里くんもいるから、たくさん迷って悩んだら良いよね。
しかし。

瀬見ちゃん、ゲロ甘だねえ。
そんなに鳥海くんは可愛いのか?
このちんさん、鳥海くんと藤里くんのイラストも描いてくださらないかしら?
(双子ちゃんのイラスト、ピッタリだったよね?)

リクエスト・・・
実は、Wデート中の双子ちゃんとこれまたWデート中のモドキーズがばったり会ったら?
みたいな事を考えてたんだけど。

何と、きえちんに先を越されたのでこのSS が終わるまでに考えておきます!
成くんと佳史さん以外でね。わかってますぅ。
Re: ふふふ
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-20-Fri 07:53 [編集]
ちーさま おはようです。

> キタキタこの双子ちゃんと下僕・・・いや、騎士のカップル。
> きえちん、私の頭の中覗いた?
> 会いたかった、会いたかった、会いたかったっ♪

そんなに会いたかったのか(爆)
これまでのコメ欄を読んでても頻繁に出てくるから、私のほうが脳内見られているんじゃないかと冷汗でしたよ。
まぁ、ちーさまから刺激もらって、この出会いに繋がったのですが。

> 若美お兄ちゃんも来たぁ。
> 勝手に若美お兄ちゃんの彼氏にしてる子もいるし。
> 楽しいですね。

そこはもう思いっきり妄想してください。
誰も咎めたりしませんから~。
是非ちーさま、脇役の会話を書いていただきたいものです。
名前もつけていいよ(←投げやりじゃないからね)

> しかし。
> 瀬見ちゃん、ゲロ甘だねえ。
> そんなに鳥海くんは可愛いのか?

やっと手に入れた子ですし、にぃの手前もありますし。
競争心があるんじゃないですか?
鳥海って無意識ににぃに甘えていたところがあるからね。
で、八竜もブツブツ言いながら聞いちゃっているし。

瀬見「無意識、っていうのが一番厄介なんだよ…」
八竜「俺は手なずけてきたからな(* ̄ー ̄*)ふふん!!」

> 何と、きえちんに先を越されたのでこのSS が終わるまでに考えておきます!
> 成くんと佳史さん以外でね。わかってますぅ。

Wデートどうしが出会ったら、登場人物は8人か…(また会話だけにしとくか…)

イラストは御厚意なので…。
こちらは念力を送るだけなのです。
このちんもご多忙中のようですし。
由良と由利のイラストには度肝を抜かれましたね~。
イメージ通りで、こちらも脳内見られているんじゃないかと思いましたよ。

SS(←で終わらせたいっ!!)連載中に、どんな妄想されるのかなぁ。
それは私もちょっと楽しみです。
(人にプロット考えてもらえるって、なんて楽チンなんだろうヽ(゚∀゚)ノ)
コメントありがとうございました。
若美庵に GO--♪
コメントけいったん | URL | 2013-09-20-Fri 10:34 [編集]
ちーさんから 突然の集合命令!

「えっ、今から集合するの~!?  でも もう遅いし…ブチン!」
と、言いたいだけ言って 問答無用で 電話は切られる(笑)

しかも 集合場所は 若美庵から少し離れた電柱とは…

ゼェゼェ+ハァハァと息を切らしながら駆けつければ 
電柱の陰から キラキラな目で 若美庵を凝視する ちーさん
プルプル震える(←ずっと持ってた疲れ?からか、興奮?の為か)手には しっかり望遠レンズ装備のカメラを握り締めて。

いつもの様に 此処で ずっと待つつもりなのかな?(←私のこころの声)
「ねぇ、今日は 思い切って お店に入ろうよ!」
『えぇ~!!』
「あっ、無理なら 仕方ないけど…」
『入る! 入って つぶさに観察してやる~~(/ ̄□ ̄)。しゃぁぁ~っ!!』
「そ・そうね…(汗)」
『゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚』
と、不気味に笑う ちーさんと 若美庵へ GO--!

その報告は、また明日~♪:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪ 




結局は
コメントちー | URL | 2013-09-20-Fri 14:24 [編集]
師匠と二人、若美庵。
電柱の陰で身なりを整えていざ!

「いらっしゃいませーっ!」

可愛い男の子が出迎えてくれる。

「お二人ですか?」
「はい、二人です」

こちらへどうぞと案内されたのはテーブル席。
なんと、カウンターと座敷が眺められる神席!
嫌がる師匠を引っ張り出した甲斐があった。

「おしぼりどうぞ!」

ありがとうと受け取り名札を盗み見る。

『市ヶ谷』

ふんふん、カワイコちゃんは市ヶ谷くんね。
とりあえずビールの師匠と梅酒お湯割りのちー。
何でも美味しそうだけど・・・

「市ヶ谷くん、何がお勧め?」

師匠が聞いてる。

「えっと、今日はお魚の良いのが入って。若美さ・・・いえ、大将がお造りは特にオススメって」

ふんふん、若美さんと呼んでる。
師匠とちーの心のメモに記録。

「じゃあ、お造りと揚げ出しとー、市ヶ谷くん」
「は?」

いけないいけない、オヤジになってる。
しかも、若美お兄ちゃんこっち見てるし。
心配してるかな?

続きは師匠でっ(笑)
ぐ腐腐 お久しゅう
コメントnichika | URL | 2013-09-20-Fri 19:42 [編集]
そうだね~めでたく終わったことだし とりあえずbeer 一杯~ きえちん お疲れ様です まとめコメですみません

んで なんで電柱にniが抱きついてるか。。。先輩方の酔っ払いを見張るためです(笑)  なんせ大好きな双子ちゃん&ナイト やらね 
おしぼりよりもヨダレ拭きを用意 ォィォィ(;・・)ツ☆
この 掛け合いコメ 好きだゎ 続きが楽しみ v(。・・。)イエッ♪

きえちん ポチバーナーが可愛い 今の季節にぴったりです 
今の季節にピッタリ のぞき窓?が満月に思えた
若見庵 そこそこ広いです いつでもお手伝いに行かせて・・・
o(・ヘ・θキーック!!☆;゚o゚)/  ダレ?お呼びじゃーない

では 電柱へ セミのように貼りついて 「b-エル b-エル。。。」
通行人 (」゚ロ゚) 今年の異常気象のせい へんな鳴き方してるゎ  退散
みなさん 楽しすぎ(o´艸`o)
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-20-Fri 21:07 [編集]
余計なことは書かずに 見守ろうと思いま~す。
集合号令がかかって 電信柱の影から堂々と店内へ~。
ρ(^^ )/◇  ご案内ぃーー♪

今回はすでに店員がいるので、掃除腐さんも出番ないかなぁ。
お客さんとして存分に満喫してくださーい。

きえ「…いまのうちに 生ビール♪ (o ̄▽ ̄)σc□゜゜・. サーバーアワアワ」

にっちん お久しぶりで~す。
電柱の陰に隠れていないで出てきてね~。
にっちんも参加するとみんなに歓迎されるよ(*/∇\*)キャ

月あかり ってタイトルつけた後で、お月見に気付いて、バナー作っては、あぁここにネコがいた~となんとなく関連性を持たせたくなり…。
ただの偶然でしかないんですけどね。
今回はちょっと納得いかなかったので、また新しくします。

みなさま コメントありがとうございました。

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