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BLの丘
木漏れ日 57
2013-09-18-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
瀬見が母親に促されてテーブルの前に寄るものの、きちんと足を折ったことにただならぬ緊張感が漂った。
鳥海にも隣に座るよう、目で促されたようで大人しく並んだ。
この様子には母親も居住いを正し、持っていたお盆を脇に置いている。
八竜も無駄口をたたくことをやめた。
瀬見は今まで見たことのない、真剣な表情で皆を見回し、硬質な声音を響かせた。
「鳥海くんとのお付き合いをお許しいただきたく、ご挨拶に伺いました」
その場にいた全員が驚きに包まれ、それぞれに付加された感情は『喜怒哀楽』のどれかがあるようだ。
鳥海は突然のことに瀬見を凝視し、母親は「まぁ」と目を見開いた。
藤里は持っていた猫じゃらしを放り投げ、バニラとビターが賑やかに鈴音を響かせて走っていく。
八竜は全身で盛大なため息をついた。
瀬見が両手をついて「宜しくお願い致します」と頭を下げたことには、「瀬見さんっ?!」とその肩に手をかけて揺すぶってしまった。
まさかこんな話になるとは…。
突然の事態に大きな動揺と、真剣に考えてくれていることに対しての嬉しさが混在した。
恥ずかしさももちろんあったけれど。
躊躇いの一つもない瀬見の姿は清々しく凛々しいほどで、いつもの瀬見よりも一回りも二回りも大きく見せていた。
人と成りとはこういったところに出るのだろうか…。

先に母親が口を開く。
「瀬見くん、顔を上げてもらえないかしら。顔も見ずに話をするわけにはいかないわ」
そう言って、立ち上がると台所に向かい、全ての火を止めたようだ。
すぐに戻ってくる。
驚きつつ、楽しんだ感じを隠しもしない母親の態度にも呆気にとられながら、その動きを追った。
母親の目はチラっと鳥海を見るものの、また身を起こした瀬見に向き直る。
「それで?鳥海となんですって?」
聞こえなかったわけではあるまいし、改めて尋ねるのはきちんと確認したいからだろう。
鳥海は二度も瀬見に言わせてしまうことを悪いと思いながらも、瀬見はよどみなく繰り返した。
当然といった態度ある。
またこれも、鳥海を縮こまらせてしまう。
全ての責任を瀬見に押し付けているようだ。
母親は一つ、息を吐きだしてから、一瞬考える仕草を見せたものの、「そうねぇ…」とつぶやいた。
口調はいたって明るい。
「こういうのは本人同士の問題でもあるし、周りがダメって言ったって、駆け落ちしちゃう人はしちゃうんだしね。それに鳥海は男の子だからあまり心配はしていないけれど」
瀬見の性格も知ったところがあるから、口やかましく何かを言う気はないらしい。
しかしながら釘を刺しておきたいところはあるようだ。
全員が黙って言葉の続きを聞く。

「鳥海はね、まだ学生なのよ。恋愛ごとにうつつ抜かして卒業できませんでした、なんてことは困るの。ただでさえ応用が利きづらい性格で、のめり込んだら周りの言うことなんて耳を向けないし。瀬見くんのことだから世間で騒がれるような、足を踏み外させるようなことはさせないと思うけれど、あともう少し待ってもらおうかな」
遠回しに反対されているようで、これには鳥海も驚きに見舞われた。
過去に行動を咎められたことは多々あったが、きちんとした理由を述べられた上でで、基本的には鳥海の好きに過ごさせてくれたものだ。
今の口調を聞いていても、瀬見を拒絶している雰囲気はない。
「お、お母さん…?」
口を挟もうとする鳥海を母親は視線だけで制止してくる。
瀬見は素直に頷いていた。
「ごもっともな御意見だと思います」
「瀬見さんっ?!」
またも、身を引かれるような発言には、これっきりにされるのかと不安が過る。
藤里も口を出したいようだが、さすがにここは五城目家の問題で、八竜も黙っているところに何も言ってこない。
向けられる眼差しは鳥海以上に心配そうだった。
瀬見は鳥海をいつもと同じ優しい眼差しで見つめてから、母親に視線を戻した。
…なんだって、そんなに落ちついていられるの…?

「優先するべきものが何なのか、見失わせるようなことはさせません。年上として、差し出がましいようですが、相談等にも乗れる存在でありたいと思っています」
「ホントかよ。おまえが言っても真実味がありゃしねぇ」
「八竜っ、あんたは黙っていなさいっ」
ピシャリと言われて苦虫を潰した表情を見せてからそっぽを向いた。
"あんたが出る幕じゃない"と厳しく言われては、母親に逆らえないのは誰もが同じだ。
「信頼を得られるよう努力し続ける所存でおります。鳥海くんにもそのあたりのことはお話しました。時が来るまで待つ、と先に言ったのは私のほうですから、覚悟はできています」
もし、今反対されたとしても…。
どっしりと構えた話し方は、確立された大人なのだと鳥海に再び憧憬の念を抱かせた。
自分の身近にはいなかった人種のようでもある。

瀬見の言葉を漏らさず聞いては、母親も安堵の息をついたようだ。
「それさえ守ってもらえれば、この子だって遊び盛りの学生だもの。いろいろとやりたいことはあるでしょうしね。ヘタに抑えつけて反発された時のほうが面倒だわ」
母親はあっけらかんと言い放ってくれた。
反対する気など最初からなかったと言わんばかりだ。
「それに鳥海がどんな仕事に就くかもまだ分からないし、その時になってから改めて今後の自分たちの在り方を決めるのでも遅くないでしょ。道筋が見えた頃、どうするのかを教えてくれればいいから。早まってお互いを束縛し合う必要はないでしょう?それが『もう少し待って』っていうことなの」
足枷だけは作りたくない。
それも親心なのだろうか。

母親がまとめてしまえば全員が納得する。
まだしばらくの間は、これまでと同じように過ごしていけばいいだけで、恋人と思うか否かは気持ち次第だ。
そこまで踏み込んではこない。
お互いにいつでも逃げ道を用意している。

「はぁぁ…。なんでよりによって瀬見なんだかなぁ…」
八竜は物事の終結を見たように、完全な諦めの口調で、グラスに残っていたビールを飲み干していた。
苦々しい…とは飲み物に対しての感想ではないだろう。
そういえば瀬見が、八竜にダメ出しをくらったと言っていたっけと思い出す。
瀬見にとっても一番のネックは八竜だったかもしれない。
頭ごなしに『ダメダメ』を言うのは八竜の十八番だ。
そういう意味では母親を味方につける算段でいたのは瀬見の狙い通りといったところか…。
「八竜さんてば~ぁ」
藤里が腕を掴んで揺すぶっては、宥めに入っている。
八竜が何を思うのか、藤里の反応に、その頭上をポンポンと叩いて、こちらもヨシヨシといった感じだ。
藤里がどんな気持ちでいるのかも理解しているのだから、それを尊重してやろうというのだろう。
自分の感情はさておき…。
…押し付けがましいやつだ…。

「ありがとうございます」
瀬見は笑みを浮かべたものの、気を引き締めたと言うように真顔に戻って、再度深々と頭を下げた。
ホッと胸を撫で下ろしたのは鳥海と藤里だった。
藤里が万遍の笑みで飛びついて来た。
「鳥海~、鳥海~、良かったね~っ」
勢いよく抱きつかれて、自分のことのように喜んでくれる。
他人を蔑ろにしない、藤里らしい反応に、鳥海も益々気を許していくことができた。
素直に表現してくることは、喧嘩しても悪意がないのが知れて、逆恨みもしないし卑屈になることもない。
変に取り繕う必要がなく、言いたいことを言い合える。
自分に馴染んでいく存在とは、なんて居心地が良いものなのだろうか。
鳥海だけでなく、八竜にとってもかけがえのない人としてこの家に馴染んでくる。
鳥海と藤里が抱き合ってきゃあきゃあやっていると、母親はさっさと台所に戻っていった。
八竜と瀬見は何か語りたいことがあるようだったが、視線を合わせただけで終わってしまった。
こちらの二人は視線で物事が把握できるようだ。
いつか、鳥海と瀬見も、また、鳥海と藤里もこんなふうになれるのだろうか。

緊張はあっという間に霧散していく。
この日ばかりは八竜に酒を勧められて断わらなかった。
影には母親の「泊まっていけばいいじゃない」と鶴の一言があったからなのだが。
隠れて何かをされるよりは、目の届くところにいてくれたほうが安心するのも分かるけれど…。
こうも簡単に公認の立場にされると返って居たたまれなくなるのは何故だろう。
八竜の服を借りた瀬見を見ても、全然似合わなくて、今更ながらに兄としてのセンスにがっくりとさせられたものだ。

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60話とか言いながら、次回、最終回に出来そうだヽ(゚∀゚)ノ
(ボソ)強引に…。
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コメント

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流石ぁ
コメントちー | URL | 2013-09-18-Wed 05:26 [編集]
おかーさん!このお母さんなら絶対むやみに反対しないと思ったあ。
で、にぃも無駄な抵抗(笑)
本当にしてた、にぃ。まあ、自分だって藤里くんとくっついてるんだからね。仕方ないよね。
でも。可愛い弟だからこそ反対したいんだよね。
私は、そんなにぃが好きだ(笑)

そうだ、激甘旦那選手権。
エントリーされる人が増えてるのは気のせい?
今回もまた新たに加わる予感。

きえちん、餃子食べに行ったんだねー。
良いなあ。
きえちんの旦那様もエントリーしとく?
Re: 流石ぁ
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-18-Wed 08:47 [編集]
ちーさま おはようございます。

> おかーさん!このお母さんなら絶対むやみに反対しないと思ったあ。
> で、にぃも無駄な抵抗(笑)
> 本当にしてた、にぃ。まあ、自分だって藤里くんとくっついてるんだからね。仕方ないよね。
> でも。可愛い弟だからこそ反対したいんだよね。
> 私は、そんなにぃが好きだ(笑)

太っ腹なお母さん!!
息子の幸せに親は一々口を出さない模様。
そぉっ!!
にぃは最後の悪あがきを試みるのでした。
あえなく撃沈しましたね(笑)
いいんだよ、君には藤里がいるんだからさ。

> そうだ、激甘旦那選手権。
> エントリーされる人が増えてるのは気のせい?
> 今回もまた新たに加わる予感。

加わりましたね~。
スイート大国になっております。
『丘』のてっぺんで 愛でも叫んでもらいましょうか(笑)
選手権の優勝者は誰でしょう。
『このシチュエーションの場合、攻め君はどのようにして受けちゃんのご機嫌をとるか』みたいなクイズ(クイズ???)やったら、真っ先に自分の体験談が語られることでしょうね。

> きえちん、餃子食べに行ったんだねー。

粗大ゴミは、本日無事に出荷されました(^_^)/バイバーイ
あ、別宅、記事書いてきたよ~。

コメントありがとうございました。
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