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BLの丘
木漏れ日 56
2013-09-17-Tue  CATEGORY: 木漏れ日
啼きすぎて声が枯れたあと、もう一度シャワーで洗ってもらって、抱きかかえられて鳥海はリビングに戻った。
ソファに一人、横にされる。
体を見られることの羞恥心が、どこか麻痺してしまっていた。
すっぽんぽんのままで、平気で部屋の中をうろつけそうだ。
もちろんしないけど。
なにより倦怠感が体中を占めつくしていて、指一本動かすのが億劫なのだから…。

寝室の奥の扉、ウォークインクローゼットの中から鳥海でも着られそうなTシャツとハーフパンツを着せてくれた。
瀬見は後片付けに…と動いていた。
瀬見ではハーフパンツかもしれないが、鳥海が身につけるとふくらはぎまで見事に隠れてくれた。
寝室は、空気の入れ替えだと言って窓が全開になっている。
部屋の中央でもあるここは、どこにいても姿が確認できて安心するようだ。
「うるさいかもしれないけれど…」と言う瀬見は、洗濯機を回した後、食事の用意に取りかかっている。
時間はもうお昼を過ぎた。
料理ができるのかと視線だけで驚きを表せば、「そりゃ、一人暮らししていたら多少はね」と暮らしぶりを教えてくれた。
「鳥海のお母さんみたいなことはできないから期待はしないでよ」
ニコニコと笑いながら釘を刺してくる。
…そこは、会社で働く人と、家にいるだけの人間の違いではないだろうか…と鳥海は内心で思っていたりもした。

家の中に人の気配があることに慣れていた鳥海はあまり気にしたことがなかったが、ここに一人残されたら不安になる気持ちも湧いていた。
そんなのだから藤里も猫を飼いたがったり、鳥海の家に遊びに来たがったりするのだろうか。
事実、鳥海は生まれてこの方、一人にされたことがないのだ。
玄関の鍵だって持たされたのは高校に入った頃か…。
実際使ったことは片手で数えられるだろうというくらいで、どこにしまったのか忘れたことの方が多い。
誰が家に来ても、誰の家に行っても、すんなりと溶け込んできた。
瀬見はどうなのだろう。
何事も飄々とこなす人に見えるが、自分のテリトリーに入られることに抵抗はないのだろうか。
それ以前に、ここにどれだけの人が出入りしたのかということも過ったが、今更口にしたところで変えようもない過去をほじるのはいけないことだと思う。
すでにバレた鳥海の過去の人付き合いを、瀬見だって何も言ってこないのだから自分もそれに倣うべきだと判断した。
今となって森吉のことをあれこれ言われたって返せる言葉なんてない。

瀬見のこの家は鳥海の家からはかなり離れる。
大学までは通える範囲内でも、ここまでは無理だと言いたくなる距離があった。
大学からならともかく。
瀬見の実家が、離れているとはいえ、まだ鳥海の家に近いことを考えると、ここでの一人暮らしは当然のような気もしてくる。
まあ、無理すれば出来なくはないのだろうが。
今後を考えると、藤里と八竜のように、頻繁に顔を合わせられないことも見えてくる。
それは淋しさでもあり、憧れでもあるのか…。
とはいえ、家の中であのふたりはこれといって以前と態度が変わらないのだから、鳥海が気にかけることもほとんどなかった。

瀬見は冷凍庫に常備していたという味の違う冷凍パスタをチンして、他に茹でキャベツとツナのサラダと手羽先を焼いてくれた。
リビングにあるテーブルに運んで、鳥海の隣に腰を下ろした。
寝ていた鳥海もラグの上で、ソファに背を預ける。
「どれから食べたい?」
「別にチンだけでも良かったのに…」
「余っていたものだからいいんだよ。最初から作っているわけじゃないし」
味の染みた手羽先は、先週末に仕込んで、この一週間は冷凍庫に入っていたのだという。
…冷凍庫フル活用は、うちのお母さんと変わらないのか…。
鳥海はいつも自分のアイス置き場を確保するために冷凍庫を開けっ放しにして、母親に怒られる現実に出会う。
無駄に冷凍して…といつも思っていたが、瀬見の手にかかると、『努力』と意識改革させられるのだから不思議だ。
自分で食べられる、というのに、瀬見はフォークの先に丸めたパスタを鳥海の口に運んでくれるし、手羽先も食べやすいように解してくれる。
疲れきった体には、確かにありがたいサービスだったが…。
やっぱり"五城目家"の男とは、この程度なのだろうか…と脳内で八竜と比べてしまっていた。
手羽先を解しては指先でつまんで鳥海の口の中に入れてくる。
その手で残りの身を骨ごとしゃぶっては、綺麗に骨だけが出てくる。
鳥海は身を綺麗に剥がせないことばかりだったから感動の目で見てしまった。
「すごっ」
瀬見は、そう?と首を傾げながら、次の手羽先を手にして、「俺はこうやって…」とやり方を教えてくれる。
骨つきをしゃぶらせてくれたけれど、それまでの手順は自分でやっていないのだから記憶に残っているだろうか…。
鳥海の口に触れた指を瀬見は自分の口で舐めて綺麗にしていた。

午後はゴロゴロと過ごして、夕方瀬見が車で鳥海を家に送ってくれた。
なんだか後ろめたい気分にもなるんだけれど…。
不安が分かるのか、瀬見は頭上を大きな手で撫でてくれる。
「鳥海はいつもどおりにしていればいいよ」
…その"いつもどおり"ができそうにないから、困っているのに…っ。
悩んだところで、瀬見が笑って落ちつかせてくれるから、どこかで開き直れたのかもしれない。

家に帰ると、母親はいつものように台所にいた。
父は近所の集まりに出かけて行っているらしい。
藤里は猫を構っていて、その隣で八竜が早い晩酌の時間を迎えていた。
「た、だいま…」
「お邪魔します」
鳥海に続いて瀬見も上がり込んでくる。
母親が声だけで、「瀬見くん、いつも鳥海が迷惑かけて悪いわね~」と感謝の意を表してくる。
夕食を食べていけと言われて、こちらも断る気はないようだ。
居間に入れば、万遍の笑みでいる藤里とは対照的に、八竜はどことなく機嫌が悪い。
「だ~れが外泊していいっつった?迎えに行けって言っただけだろ」
「八竜さ~ん」
「それに鳥海、おまえ、なんだ、その格好はっ。それ、瀬見の服だろっ」
洗濯物は完全乾燥までいかずに、鳥海は瀬見の服を借りて帰ってきた。
伸縮性のある服は、瀬見にはピッタリでも鳥海が着れば大きな緩みが出来上がる。
居たたまれなさはあるものの、瀬見は全く動じていなかった。
「うちの方が近かったんだよ。鳥海もすぐ眠りたいって言うし、早く横にさせてやりたいだろ」
「僕だって八竜さんの服、良く借りるじゃない」
瀬見と藤里に同時に発言されて珍しく黙った八竜だ。
へぇ…と鳥海は驚き半分感心半分で光景を見守ってしまう。
今まで八竜の意見がこの家にはびこっていたのに、このふたりには通用していない。
毅然とした態度に、今までの自分は何だったのだろう…と思わされるが…。

お茶を運んできた母親が、瀬見に寛ぐよう促しながら八竜に向かった。
「なーに言ってるの。あんただって昨日、藤里くんちに泊まったくせに」
母親の強烈な一言に、ますます八竜は身を小さくし、藤里は俄かに顔を赤らめた。
藤里の部屋がどんな状態かは鳥海の方が良く知る。
そして行きつくところに辿りついた。
自分が体験してみて分かることだ。

…家の中じゃ、あんな声、あげられないよな…。
いまだもって鳥海が発言しないのは、出てくる声がいつもと違うからで、動かぬ証拠を晒すようなものだったからだ。
瀬見が、「では改めまして…」と膝をついた。

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コメント

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コメントけいったん | URL | 2013-09-17-Tue 09:52 [編集]
鳥海という可愛い恋人を得て 瀬見も とうとう 甘々な男となってしまいました。(笑)
きえちんが仰ってるように きえちん作品の攻め様は、恋人に 羨ましくなるほどの 溺愛ぶりを発揮されますもんねーd(´д`o)ネ♪

瀬見の甲斐甲斐しく動く姿には 彼の内心≪ルン♪ (≧▽≦) ルン♪≫な喜びが これ以上ない位に表れてる~
そんな 嬉しさ100%の瀬見が、膝をついて「改めまして…」とは!
もしかして もしかしての~交際宣言ですかーー!?Σ(゚Д゚ノ)ノオオォッ




キタア
コメントちー | URL | 2013-09-17-Tue 20:19 [編集]
瀬見ちゃん、プロポーズの次は、挨拶?
早いねえ、早いよ。
早すぎる男は嫌われるよ←

さあ、にぃ。反対しなさぁい(笑)
まあ、おかーさんに頭叩かれて終了だろうけどね。
にぃは、藤里くんとお幸せに。
そして、にぃ達は藤里くんとこで愛を育んでるφ(..)

双子ちゃんとモドキーズ

双子「「何々?何か聞きたいことあるの?」」

うと(すげっ、ハモってるっ!)

双子「「何でも聞いて?」」

得意の首かしげ。

うと(か、可愛い)

双子「「じゃあさ、ケーキでも食べてよ、ね?」」

うと「「はい!じゃあさ、半分こしよっ」」

双子(可愛いねえー)

四人でワチャワチャ。

「くそ、可愛い。なんだよ、あれ」
「あー、ペロは止めろって言ってんだろっ」
「やっぱり、うちのが一番可愛いな」
「は?うちだろー?」

影では、下僕と予備軍がこっそり眺めてましたとさ。
だって、心配なんだもん。双子とモドキーズが。
一気に
コメントさえ | URL | 2013-09-17-Tue 21:37 [編集]
突っ走る瀬見ちゃんっ♪
このまま同棲かなぁ~f(^_^;)
ちーちゃん、双子ちゃんとモドキーズ可愛い♪

今朝、会社行く途中でロケ現場に遭遇。
レフ盤が邪魔って思いながら歩いたらキムタクがいた~。
黒くてちっちゃかった。
みなさま こんばんは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-17-Tue 22:36 [編集]
まとめレス お許しください。

ここにきて 急に進みだしました(←)
釣った魚にエサ、やりまくりです。
大きく見える狭い水槽の中で好きに泳がせています(笑)
エサを求めて水面で口をパクパクしていれば、美味しいものが自動的に降ってくることでしょう。

さて、ここまで書いちゃえば、もう次は皆さま お分かりですよね(笑)

けいったんさま
そう、当家の攻め君は溺愛することに喜びを見いだす奴らばっかりです。
似たパターンと言われればそれまで(苦笑)

ちーさま
あなた様の脳内とは…(汗)
うちのパソコンに潜り込んでいませんか?????
にぃの行動といい…双子といい…。
(私は何も言ってないよね???なんでばれてるんだろう…)

さえちゃん
おー、キムタクのロケ現場~。
ちっちゃかったのか(爆)
どんなシーンになったんでしょうね。


今日は 最後のお休みだということで、またお出掛けしてきました。
宇都宮でギョーザ食べるんだって。スタミナつくだろって。
……そぉ???
おかげでニンニク臭くなっている気が…。
帰りにまたお風呂に入ってきたけれど、疲れていたのか、露天風呂でウトウト…。
返って体に負担がかかったかしら…。
この話はまた後で別宅に書きますね~。
今日はもう おやすみなさい です。

みなさま コメントありがとうございました。
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