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BLの丘
木漏れ日 46
2013-09-08-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
瀬見の車に乗せられると、鳥海はあっという間に睡魔に襲われた。
ただでさえ、眠くて眠くてたまらなかったのに、「寝てていいよ」と許しが下りたのだから安心して瞼を下ろすことができる。
クスッと瀬見が笑うのが分かった。
伸びてきた手が、やっぱり安心した様子で髪を撫でる。
「鳥海…」
呼びかけられる声がとても安堵したように深く聞こえた…。


脳が覚醒すると、そばに人のぬくもりがあることに気付く。
瞼を上げる気もおきず、もう一度寝ようと寝返りをうった。
…また藤里か…。
いつも一緒に寝る人が脳裏をよぎり、少しの隙間を開けようと身を捩ると、逆に腹の前に腕がからみついて、グッと寄せられる。
「…?」
こんなふうに抱きつかれたことは、最近なかった。
…いや、最近は鳥海の部屋ではなくて、八竜の部屋に泊まっていた藤里ではなかったっけ…?
それに引き寄せる力が圧倒的に違う。
「鳥海…」
聞こえた声も藤里のものではなくて、疑問と共にパッと目を開けた。
背後から抱いていた人は瀬見で、鳥海は状況が全く理解できなかった。
「な、んで…?」
「二日酔いになっていない?」
優しく問われる。
確か、森吉に呼ばれて飲みに出かけたはずなのに…。
そういえば迎えにきてもらったっけ…と、おぼろげな記憶が横切っていった。
どういうこと?と瞳だけで問い掛けると、理解した瀬見が自宅に連れ帰ったのだと教えてくれた。
ここは、瀬見が生活する空間なのだと。
「鳥海、すぐ寝ちゃうから、外で飲ませるのは心配だよ」
抱きこまれて、額に唇が当てられる。
恋人のような雰囲気に飲み込まれそうになって、ハッとこのまま流されるのは良くないと思いとどまった。
瀬見の懐の中に入れるような嬉しさはあるのに、反面で森吉がとっていた態度がどうしても頭から離れないためだ。
瀬見に優しくされればされるほど、勘違いは続いてしまうだろう。

「鳥海?」
逃げを打ったことに、不思議そうな顔が見えて、起きあがろうとしては、その動きも止められた。
「せ、瀬見さん…、オレ…」
戸惑いを瀬見は感じとるのか、順を追ってくる。
「いきなり、こんなことをしちゃダメか…。鳥海がそばにいると思うとつい先走りたくなるな…」
自重したつぶやきが漏れた。
それこそ、どういうこと?という疑問に見舞われる。

瀬見の腕の力で体を返され、真正面から向かい合う形になった。
大きな掌が髪を梳く。寝起きできっといつも見ている以上に、絡まってぐちゃぐちゃだろうな…と恥ずかしくなった。
瞼を伏せると、その上にも指が這わせられた。
「鳥海のことが好きなんだ。前から可愛い子だなとは思っていたけれど、それでも八竜のことがあったから、きっと鳥海にとって俺は、『兄の友人』という目でしか見られていないんだろうと思ってた。でも会うたび、やることすることが素直で、どうしたって目がいく。俺って頼られているところがあるのかなって思い始めたら、余計に気になって僅かでも期待を持つようになった。自分だけのものにしたくてたまらなくなったんだ。キスをして、嫌がられたらどうしようと不安になりながら、でも鳥海が答えてくれた時、同じことを他人にされるのを想像したら胸が痛む。正直、こんなふうに思わされたのは初めてのことだったんだよ」
どこか辛そうな苦笑を浮かべた。
いつだって自信があって、余裕がある人だと思っていたのに…。
瀬見が燻っていた思いを吐きだしてくると、瀬見にも苦悩があったのかと人間らしさを見せられた気分になれた。
なんと答えたらいいのかと、まだ頭の整理がつかない鳥海が黙ってしまうと、瀬見はまた言葉を続ける。
「キスもしたいし、抱きしめてもいたい。誰からも守って大事にして、今のままの鳥海でいてくれるように努めたい。願いでもあるんだ。変に気を使うことなく、素直な気持ちを俺にぶつけてほしいっていう…」

…告白…なんだろう。
こんな状況に出会ったことがない鳥海は、数少ない夏の経験を振り返っていた。
森吉にも似たようなことは言われたかもしれない。
でも"夏"が終わってみれば、森吉が他の人間にも言っていたのだと教えられた。
瀬見は、…瀬見も、一定の期間が過ぎれば、掌を返すのか。
また別の獲物に目を向けていくのか…。
「瀬見さん…」
鳥海はまっすぐに瀬見の目を見た。
「ん?」
「オレ…、オレも瀬見さんのことは好きだよ。なんだろう…。オレが思っていることを叶えてくれるっていうか。一緒にいて楽しいし、嫌な気分になることもないし。うん、最初は瀬見さんみたいな人がお兄さんだったら良かったのに、て思ってた」
瀬見の顔が少し歪む。
鳥海は慎重に言葉を選んだ。
「でも、やっぱりなんか違うんだ。藤里がにぃと一緒にいるのを見ていて、あんなふうに自慢したいって羨ましくて。…って、にぃのこと、どこも褒められないけど。遊園地、一緒に行けたことは、本当に嬉しかったんだ。何回も思い出したくらい…」
「鳥海…」
「これを"好き"っていうの?…けど、昨日、森吉に呼ばれて、そこにいたある人のこと、『ちょっと遊んだら付きまとわれてウザくなった』って言ってて。オレも同じように思われちゃうのかな…って考えたら…」
「鳥海」
何かを振りかえるような表情をされて、瀬見の心のどこかにはやはり似た感情があったのかと想像すると、こちらも胸が痛くなる。
「あんなにぃだけど、瀬見さんとは友達でいてもらいたいし、せっかくの楽しかった思い出を、嫌なものにしたくないんだ…」
瀬見の手が、ぎゅっと鳥海を抱え直す。
小さいため息のあと、「ごめん…」と耳元でつぶやかれた。
瀬見に髪を梳かれて、背を撫でられて…。
瀬見の腕の中が、こんなに安心できるものなのに…と改めて思わされる。
森吉と同じで、きっとこの人は手に入らない。
謝られた言葉が、その証拠だろう。

…帰ろう…。
鳥海はそう思って、瀬見の胸を手のひらで押した。

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コメント

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┛)"0"(┗ オーマイゴーッド!!
コメントけいったん | URL | 2013-09-08-Sun 16:10 [編集]
八竜にぃ、藤里に論され 知った鳥海の気持ち…
今頃か~い!(ーωー♯)オイッ!と思うけど 瀬見に連絡してくれたから プラマイ0(ゼロ)で 無しとしましょう(笑)

あのまま 森吉に喰われちゃってたら 後悔では済まされない事になってたよ~!!
間一髪で 間に合ったねー。良かったね、瀬見♪
鳥海も 良かったね♪(o^-^o) …ほんと 良かったね…これで 瀬見と鳥海が…(´;д;`)ウッ と、少々 口惜しい気持ちもありますが(苦笑)

此処まで来ちゃったら 何が何でも お二人さんには 幸せになって貰わねば!(*´・ω-)b ネッ!

一昨日より 倦怠感と頭痛に襲われ 風邪かと思い 熱を計れば 平熱の不思議(*。*) オヨ?
昨日も ボ~と過ごして どうにか ユルユルながら復活しました。
このぐずついた天候のせいか…?
皆様も お体に気をつけて 過ごされますように♪( *・ω・)*_ _))ペコリン



師匠!
コメントちー | URL | 2013-09-08-Sun 21:05 [編集]
師匠まで体調悪いの?
こんな陽気だもんねえ。
張り切ってお化けやったしね、海のパトロールしたし、
ごみ拾い・・・は、私達がしたか。
早く良くなりますように。

優秀な外科医にして、内科医。時々精神科の先生が必要なのは瀬見ちゃんだったりしてね。
鳥海くんに必要なのは、瀬見ちゃんを信じる気持ちかな?まあ、あのデカイのが先走ってやってくれたのが悪いんだけどねぇ。

にぃ、出番だ!頑張れ、にぃ。

「八竜にぃ、八竜にぃ。鳥海がねえ、瀬見さんを信用できないみたいなんだけど」
「まあ、仕方ないよ。瀬見には鳥海は任せられない」
「八竜にぃ、鳥海が可哀想じゃん!」
「エクレアちゃん、もう寝ようぜ?な?」
「僕、鳥海と寝る!鳥海、泣いてるもん、きっと」

なんて、会話があったら楽しいのに。
Re: 師匠!
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-09-Mon 16:26 [編集]
ちーさま こんにちは~。

> こんな陽気だもんねえ。
> 早く良くなりますように。

本当です。気温差も激しいからついていけなかったりしますよね。
皆様もどうかお体にきをつけてください。

> 優秀な外科医にして、内科医。時々精神科の先生が必要なのは瀬見ちゃんだったりしてね。
> 鳥海くんに必要なのは、瀬見ちゃんを信じる気持ちかな?まあ、あのデカイのが先走ってやってくれたのが悪いんだけどねぇ。

あのデカイのがね(笑)
おかげで瀬見も自分が発言した"横から掻っ攫われて…"状態になっているようです。

> 「八竜にぃ、八竜にぃ。鳥海がねえ、瀬見さんを信用できないみたいなんだけど」
> 「まあ、仕方ないよ。瀬見には鳥海は任せられない」
> 「八竜にぃ、鳥海が可哀想じゃん!」
> 「エクレアちゃん、もう寝ようぜ?な?」
> 「僕、鳥海と寝る!鳥海、泣いてるもん、きっと」
>
> なんて、会話があったら楽しいのに。

あぁ、エクレアちゃんって呼んでたね。
すっかり忘れていたわ。
淋しがる鳥海の気持ちは藤里のほうが気付いていたか。
とりあえず、瀬見に連絡しろって怒鳴ったのは藤里で、逆らえなかった模様…。
それだけでこの家庭の状況が見えてくる(^_^;)
コメントありがとうございました。
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