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BLの丘
淋しい夜に泣く声 79
2009-11-05-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
次の日はベッドの中で過ごした。
ホテルのスタッフに何と思われているのだろうと気になったが、榛名に「気にしなくていい」と言われればそれに従う。
どうせ聞いたところで言葉は理解できっこない。
起き上がりたくないだるい身体を更に攻め続けてくる榛名に逆らいようもなく、空いた一週間分の愛撫をこれでもかと受けた。
自分も望んでいるのだからそれもたちが悪いのか…。

夜景を眺めながら海岸を歩き、夕食に出掛ける。この地で榛名と初めて出かける『観光』だった。
地元でも有名だと言うシーフードレストランで食事を済ませた後、波音が聞こえる海岸に腰を下ろした。
ちらほらとカップルが見えて、そちらにも視線が行ってしまうと、榛名に「よそみをするな」と引き寄せられる。
どうしたって違和感のある自分たちに、堂々とした榛名の態度はとても嬉しかった。

突然何かの光が走った。
びくっとした英人と「No!!」と叫ぶ榛名の声。
何事かと訳が分からずに榛名の胸に抱き寄せられて動きが止まる。
「I'm sorry. 」
短い謝罪の声が遠くから聞こえてきた。

年の頃50代くらいだろうか。壮年の男がいた。大きなレンズのついたカメラを携えて観光客のようだ。先程の光がフラッシュであったのだとようやく理解できる。
自分たちと同じような人種に榛名が訝しげに声を上げた。
「日本人か?」
発音を聞いただけで榛名は判断できるのか、英人でも分かる言葉を発した。

「すまない。昔の知り合いにとても良く似ていて…」
榛名が日本語を話せば少し驚いたように男は詫びてきたが、英人から視線を外さなかった。何か懐かしいものでも見るように追いかけられる。
それが分かって榛名は英人をより一層抱きこんだ。

「写真を撮ったんだろう?消してくれ。それが出来なければフィルムを渡せ」
年配の人間を相手にしても決して動じない。榛名の慇懃無礼とも取れる態度に英人のほうが冷や汗をかいた。
たった一枚の写真に何があるというのか…。
「もういい、帰る」
全てを水に流そうと立ち上がりかけた英人を、こんな程度では済ませられないと言いたそうな榛名が追い掛けた。
「英人…」

榛名が呼び掛けた声に、男がひどく反応した。
「『ヒデト』…?英人だって…?……あぁ…そんな…」
過去を振り返る顔がそこにあった。

これには榛名も英人も立ち止まった。
一瞬たりとて視線を外そうとしない男に英人の足元から這い上がってくるような恐怖があった。

…知っている…。この男を知っている…。

英人の長い睫毛は閉じられることはなく、ひたすら男の姿を追った。
すぐそばにいる榛名の存在すら、この瞬間に消えた。

…父親だ…

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