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BLの丘
木漏れ日 39
2013-09-04-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
それからの時間はずっとふたりきりだった。
一緒に乗るものもあれば、鳥海一人で「いってらっしゃい」と言われるものもある。
一人で乗り場の列に並ぶことに抵抗はないから、鳥海はアトラクションを楽しむ。
恐怖心を隠すこともなく、正直に伝えてくる瀬見を見ていると、繕う必要がないとつくづく思わされた。
その全てが普段通りにいていいのだと教えてくれて、居心地の良さをまた感じた。

「次、あれ乗る」
「はいはい。俺は下にいるよ」
「うん。じゃあ行ってくる」
撥ねあがるくらいの元気さで鳥海が口にすると、ニコニコとした表情で頭をぐりぐりされてから、鳥海は列に向かった。
目の前に大きな男がいる。
チラリと見られたのは分かったが、少しすると、「一人なの?」と声をかけられた。
順番待ちの時間に知らない者同士、話をすることは良くあるけれど。
「うん…」
正直に答えたら、「一緒に乗らない?」と腕を掴まれた。
…なに、コイツ…。
思わずムッとして振り払おうとするのと同時に、「鳥海っ」と瀬見の声が届く。
パッと振り返ると、近づいてきた瀬見が、掴まれた男を一睨みしてから、いつもと変わらない表情で鳥海に向き合ってくる。
「え?瀬見さん、乗るの?」
鳥海が不思議そうに見上げると、「いや…」と返事がある。
「荷物、預かっておくよ。落としたら大変だろ?」
手を差し出されて、携帯品を寄こせという態度に出られた。
これまでも無事に済んできたのだから、今更確率は低いと思われるのだが、万が一を考えたら、それもそうか…と素直に手渡す。
「出口にいるから」
それもいつもと同じセリフで、鳥海が頷くより早く、スッと引き寄せられて額に唇がくっついた。
…なんか、人前でされると照れくさいんですけど…。
俄かに赤くなる鳥海を置いて、すぐに瀬見は離れていく。
たぶん、一連の動きを全て見ていた男と目が合うと、「あ、いたんだ…」と妙に納得された。
親しげに話しかけてきた男も、それ以上鳥海に何かを言ってくることもなく、鳥海は純粋に楽しんで瀬見のもとに戻った。

そんなことを繰り返し、陽が暮れかかってくると、あちこちからライトアップされたアトラクションが現れる。
昼間とは違った雰囲気で、一際高く輝いた観覧車が否応にも視界に飛び込んできた。
そういえば、藤里が乗りたがっていたっけ…と頭を過った。
「瀬見さん、観覧車、乗る?」
鳥海が尋ねると、少し不思議そうな顔をされた。
「おや、珍しい。絶叫系しか興味ないと思っていたのに」
「そんなこと、ないもん。ただ、藤里が乗りたいって言ってたな…と思いだして…」
鳥海が説明すると、瀬見は「あぁ」と納得していた。
「まぁ、乗っているだろうね。藤里くん、積極的だから問題ないだろうけど」
瀬見の言い方が何故か気になって首を傾げる。
そして思い当たった。
「もしかして、藤里の気持ち、知ってたの?」
キョトンと問えば、小さく肩を竦められることで肯定の返事をされた。
全てに合点がいった気分だ。
だからわざと藤里と八竜を一緒にするよう、仕組んだのだと。
「瀬見さんって結構策士?」
「コラコラ。人をそういうふうに言うんじゃありません」
クスクスと笑いながら、拳が軽くコツンと鳥海の額に当たった。
…なんだ、知ってたんだ…。

「あの二人、うまくいくかな…」
今更、兄を取られる…という思いはなく、純粋に藤里の幸せを願っていた。
都合の良いように藤里を扱っている八竜は、どんな気持ちで藤里を見ていたのだろう。
ポツリとした発言に、瀬見が「たぶんね」と、またくしゃくしゃと鳥海の頭を撫でた。
触れてきてくれる人のぬくもりが、酷く温かかった。
思ってはいなくても、取り残されるような淋しさが、知らずに沸いていたような気持ちだ。
「八竜は、さ。今までの藤里くんを見ていて、あたりまえだと胡坐をかいているタイプだね。会社にも似たようなヤツ、いるけど、無意識に『自分のもの』って決めつけているんだよ。あーゆータイプは、横から掻っ攫われた時に、自分の気持ちに気付くんだ」
言っている意味が良く分からなかったが、それも瀬見は理解したようで話を続けた。
「藤里くんは自分の気持ちをしっかり持っているから、ブレるようなことはないだろうしね。落ちついて見ていられる」
「会社の人は違うの?」
鳥海が問うと、苦笑いで答えられた。
「まぁね。どっちも意識していないってとこかな」
「ふぅん…」
大人では、なにかと駆け引きとかあるんだろうか…。
考えてしまう鳥海の思考を振り切るように、瀬見は鳥海の背中を押した。
「では、魅惑の国、観覧車に我々も行くとしますか」
「なに、それ~」
ふざけられたことに、鳥海は意味がわからない、と不貞腐れた。

手を繋いで歩けることが嬉しかった。
瀬見はいつも自分のそばにいてくれるのだという安心感が広がる。
鳥海の味方で、頼りがいがあって、不安を何一つ持たせない。
八竜をけちょんけちょんに言ってくれるし、鳥海のほうが優位だと教えてくれる。
心の中がほんわりとする。

観覧車の中から見る景色もまた、綺麗だ。
遠くに夕焼け空が広がっていて、そこからグラデーションを奏でるように、反対側に闇夜を携えている。
神秘的なもの…。
高くなるにつれ、向かいに座っていた瀬見が、鳥海の隣に移動してきた。
僅かな揺れに驚くと、大丈夫、と背を撫でられる。
前髪をかきあげられて、なんだか、こんな雰囲気は以前にも味わったことがある、とよぎった。
大きな手が鳥海の頬を撫でて、親指の腹が唇の上をさすった。
言葉を発してはいけないのだという、空気。
そっと近づいてくる瀬見の顔を瞼に焼いて、重ねられる唇の感触を感じた。

海で、森吉にされたことと同じだと気付くまでにどれほどの時間を要しただろう。
歯列を撫でる舌先。飛び込んでくる舌が、鳥海の弱点を探すように動いた。
それは、これくらい誰にでも平気でできる瀬見を見た気がした。
「あ…」
「鳥海…」
僅かな隙間で名前を呼ばれると、ジンとした電流が体をかけぬけた。
同時に悲しさが巡った。

そう、瀬見は誰にだって同じことをするのだろう。
そして、森吉と同じように、その後は平然と過ごすのだろう。
何故に悔しいのか。
他と同じに扱われること。
初めて鳥海は、胸に宿るものが、恋だと知った。


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お気付きの方、いらっしゃいますか。
3日分かけたので、本日お昼にもう一話upします。
いつもお付き合いくださいまして、感謝感激です。
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コメント

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さてさて
コメントちー | URL | 2013-09-04-Wed 05:11 [編集]
やっと、気が付いた仔猫ちゃん①の鳥海くん。
そりゃね、悲しくもなりますわ。
瀬見ちゃん、キスくらい平気です。
しかも、観覧車も恋が芽生えるわね。
観覧車ってさあ、なんでキスしちゃうんだろうね。
教えて、リア充のさえさん(笑)

会社の?意識してない二人・・・
マムちゃんとあっちゃんかな?
あっちゃん、にぃと同じタイプだったっけ?
ふふふっ。推理は楽しいなあ。

にぃと藤里くんは心配なしっφ(..)


ち「さえさん、急にいなくなるからあ」
さ「ごめんごめん(ゴミ拾いよりデートでしょ)」
ち「じゃ、ひなちゃんを見ててね!」
さ「え、どこ行くの?」
ち「成くんとー、佳史さんのデート見に行くの」
さ「え?デート?」
ち「うん、じゃね。また、後でー」

その頃の師匠。

し「瀬見の時は、失敗したから今度こそ!」

おーばーけ~(て、言うのか?)

さ「成、大丈夫か?」
な「うん、全然怖くない(もっと、怖い事された)」
の「ぎゃー」
よ「うわ?」

し「お愛想で怖がるなぁぁぁ!」

ち「し、師匠・・・(ToT)」

師匠の頑張る姿を小さく収めたちーでした。
Re: さてさて
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-04-Wed 08:49 [編集]
ちーさま おはようございます。

> やっと、気が付いた仔猫ちゃん①の鳥海くん。
> そりゃね、悲しくもなりますわ。
> 瀬見ちゃん、キスくらい平気です。

ですね~。
瀬見、軽すぎた態度で…。
鳥海だって不信感が浮かんじゃうよね。

> 会社の?意識してない二人・・・
> ふふふっ。推理は楽しいなあ。

いっぱい妄想していてください。
そのうち答えが出てきます。
初めて読みの方にも伝わるように書きたいのだけれど…。
難しいなぁ。
どうしても前置きが前提で飛び出してしまう。

> その頃の師匠。
>
> し「瀬見の時は、失敗したから今度こそ!」
>
> おーばーけ~(て、言うのか?)

師匠、がんばってるのね~。そしてまだおばけやってるんだ(笑)

> さ「成、大丈夫か?」
> な「うん、全然怖くない(もっと、怖い事された)」(←言うかっ?!)
> の「ぎゃー」(一応驚いているんだね)
> よ「うわ?」(死体とか血とか見慣れてるもんね)
>
> し「お愛想で怖がるなぁぁぁ!」
>
> ち「し、師匠・・・(ToT)」
>
> 師匠の頑張る姿を小さく収めたちーでした。

いつもいつも楽しい話題、ありがとー♪
また来てね♪
コメントありがとうございました。
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