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BLの丘
木漏れ日 32
2013-08-29-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
これといって瀬見に連絡が取れずに日々が過ぎた。
真剣に水上バイクの免許を取ろうという思いがなかったせいか。
必ず繋がっている瀬見と八竜の交友関係に怖気づいていたのか。
白神に言われて瀬見が自分に対してどう思うのかと気になるところはあるけれど。
どうしても拭えないのは、『八竜の弟』ということ。
自分だけが深読みしすぎて、でも瀬見は、親切心のひとつで接してきてくれたのではないのかと…。
誰かに触れ合う姿をいっぱい見たわけではないけれど、誰にだって優しい瀬見なのだとは、短い時間だって悟ることができた。
自惚れてしまうことが怖い。

家に遊びに来るたびに、白神は猫の世話もするし、八竜とも会話を交わす。
積極的に「バニラ、良い子でした?」と問えば、「あぁ、まぁ、そうじゃねぇ?」とあまりにもそっけなく曖昧な返事が聞かれ。
傍からみていたら、白神の思いを知るからこそ、冷た過ぎではないかと何か言いたくなる。
同じように瀬見に振る舞われたなら、自分は耐えられるのか…。
どうしたって重ねてしまう。
だけど白神にしてみたら、言葉をかえしてくれた、たったそれだけが喜びになっていた。
夜の晩酌に付き合えば、「藤里くん、あれとって」と小間使いのように指示され。
鳥海が見ているところは、気の毒以外のなにものでもない。
自分がいままで使われてきたことを思うと、解放されたところはあるかもしれないけれど。
まるで下僕のようになる白神には喜べなかった。
「藤里~。そんなの、にぃにやらせろよ」
「あ、でも僕、近くにいたし」
「座ったら片足も動かさない鳥海に、爪の垢でも飲ませてやりたいセリフだなぁ」
…根がはえたにぃに言われることか…。

悪態三昧の日常が通りすぎたけれど、何故か幸せそうに過ごす白神を見たら、あれこれ言うのはおかしいのかな、という気分にさせられる。
猫を飼った時もそうだった。
…一人では淋しい。誰か、かまって。僕が相手してあげる…。
そのオーラが全開で降り注がれていた。
なぜか、仔猫になりたかったのは、もしかして白神自身ではなかったのかとよぎるほど。

照れが襲うのか、白神も度重なるように八竜に次の『デート』は提案できないでいるようだった。
仕事のことも気遣っているのが分かるし、次の課題に向けて自分たちも忙しくなる。
部屋で一緒に勉強していたとき、鳴く猫に帰宅した八竜がさっさとエサを与えて黙らせたのだと知ったのは、階下に降りた時に丸くなって眠っている仔猫を見た時だ。
「もぅ、ビターってば、にぃからエサ、もらうなよ」
「鳥海~。八竜さんは僕たちに勉強させてくれたんだよ」
白神はいつも八竜を褒めることしかしない。
鳥海の愚痴は、自分のものを取られるような嫉妬だったのか。
普段であればつれない態度の八竜が、猫に対して優しいところを見せた。
意外だからこそ、特別な何かが掠める。
猫を奪われそうな危機感なのか。それとも本当は自分を護ってきてくれた"兄"を失うのではないかという不安…。
誰かに優しい兄は重々承知していたのに、どこか腑に落ちない思いがはびこる。

肌にまとわりつくような、暑い夏が過ぎようとしていた。
湿度はなりをひそめて、カラリとした風が心地よく感じる。
夏の間、目一杯遊んだのだなと分かるほど、肌を焦がした森吉と能代に出会った。
学食で一人明太子スパゲティと野菜サンドを食べていた時。
白神は教授に呼ばれたとかで「待っていて」と言われたけれど、空腹には勝てない。
遅れてきても一緒に食べられるように、野菜サンドがあったのに…。
目の前に座りこんだ能代の手に奪われた。
…君たち、トレーに乗った冷やしたぬきうどんと大盛りのカレーライスは誰の胃袋のためにあるの?…。
質問をする間もなく、豪快に口を開けた能代が、サンドイッチを頬張りながら「藤里は?」と問うてくる。
「教授のとこ」と愛想もなく告げると、何か納得したように、「あいつのレポート、高評価だったってな」と予想外の言葉が発された。
「え?」
「何?お前らいっつもひっついているのに知らないの?電科(理工学部電子科)の中じゃ、けっこうな噂になっているっていうのに」
呆れたようなセリフは能代のものだ。
あっという間に咀嚼された物体がある。
「…」
「あいつ、院に進むか就職するかで悩むんだろ?」
森吉も話題に出してくるとは、自分たちがそろそろそんなことにも目を向けなければならないお年頃だからだ。
同じ歳の間でも、深刻な話題としてあちこちで上がってくる。
羨ましがるやつ、妬むやつ、純粋に尊敬する奴。
色々な分野に分かれていく。
人のことは、あくまでも人のこと。
でもいつも隣にいた人が、飛びぬけていたのだと聞かされたら、心中は穏やかではない。
つい、昨日まで、どうしたらダブルデートが実践できるかと、浮いた話ばかりしていたというのに…。
その奥で何があったのか、そばにいただけに、出しぬかれた悔しさがあった。
「五城目は家、継ぐの?」
続けられた森吉の問いに、自分が糸の切れた凧だと思わされる。
どうだって良かった実家。八竜がいるからと甘えた。
自分は好きなことができる、と。
では、その好きなものってなんなのだろう。

何も目標など見えていない現実が足元をすくう波のように襲いかかってきた。


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.・゜゜・(/□\*)・゜゜・ドォシテ…。
頑張って書く…明日の分…(←いつものことすぎて、この脳みそ、誰かと交換してほしい。手元、怪しいのかな…)
あと毎度のことながら、省略名とか学術的なことは私の想像ですので深く突っ込まないでね。
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コメント

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うっ、どうして~また…(p▽q)ヾ( ̄Ω ̄;)…きえちん、ド・ド…ドンマイ
コメントけいったん | URL | 2013-08-30-Fri 09:36 [編集]
ヤッテしまったのね。。。
もしかして アレか!?
ヤッテはいけないと 思えば思う程 シテしまう→[太字ドツボのスパイラル
??
ガンバレ、きえちん♪ メゲルナ、きえちん♪(*^_^*)ρシャカシャカ


正体不明の胸モヤモヤを抱えているの鳥海と違って 藤里は 八竜へのアピール活動を頑張っているようですね。
八竜も 徐々に 遠慮の壁が無くなって 良い感じじゃないの!

しかし 藤里って 結構 賢い子だったんだねー
何か目標(←それが 恋愛だとしても)がある人は、ヤル気がハンパないわぁ~


ここ数日 夜は涼しかったので 昨晩もエアコン無しで就寝したんだけど、
あまりの暑さに 5時過ぎに目が覚めてしまいました。
エアコンのリモコンに表示されている温度を見れば、29度だって!!
8時には もう既に31度でした…(;´Д`) =3 ハゥー、グッタリ…
けいったんさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-30-Fri 12:57 [編集]
なんでなんでしょうね~…(;_;)
他の物事に追われて慌てるのが悪いみたいです。
で、手元が狂うのか。
最後の確認をきちんとしないうちに、ポチって押しちゃうとupされていたりしてね…。

こんなところでも揺るがない白神でしたね~。
八竜の気持ちはまたそのうち飛び出してくると思いますけれど。

それに対して鳥海のこのウロウロモヤモヤしたものはなんなんだか…。
後先考えないで突っ走る性格の表れなんですかねぇ。
どんどん差が開いていきそうです。
でも鳥海ちゃん、一人じゃないからね~。

こちらも暑いですね。
台風も接近しているようだし皆さまお気をつけくださいね。
コメントありがとうございました。
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