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BLの丘
木漏れ日 30
2013-08-28-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
浜辺

次の日も天気は良かった。
お昼過ぎには出発するというので、残りの時間を楽しもうと鳥海と白神は我先に…と砂浜に飛び出していったのだが。
海に入っても、八竜と瀬見がほぼ付きっきりの状態でいる。
ライフジャケットを脱ぐなとしつこいほど言われて、海に潜る時には10メートルほどのロープの端を巻きつけられ、まぁ、白神はこれ幸いと積極的にバディ役を八竜に強請っていたからいいのだけど。
…散歩に連れて行かれる犬かっつうの…。

必然的に鳥海は瀬見と過ごすことになり、その泳ぎの美しさに見とれてしまった。
森吉や能代も綺麗な泳ぎ方をするとは思ったが、彼らはどこかダイナミックな印象だった。
瀬見はなんというか…、優雅なのだ。水の中に溶け込んでいるというか…。
瀬見いわく、「真剣にやっていなかった」水泳部に在籍していたことがあって、大学時代は八竜に言わせるところの"遊びを満喫していた"状況だったそうで、その時にスキューバーやジェットの免許を取り、バイトのためにライフセーバーの講習を受けたのだとか。
自分とは全く違う生きざまに「すごいね~」の言葉しか出てこない。
目を丸くして感動していれば、瀬見は照れ笑いなのかはにかんだ笑みを見せた。
いろいろなことを学んでいるからこそ、この落ちつきが培われたのだろう。
ふたりきりにされたことで瀬見との会話の時間がとても充実できた。
知らなかったことがたくさん知れていく。
何を聞いても瀬見は嫌がらずに答えてくれるし、気を悪くしないようにと鳥海のことも聞いてくれる。
一方的に鳥海が話している時も適度に相打ちをいれて真剣に耳を傾けてくれた。
八竜とは雲泥の差だ。

泳ぎながら触れた手は森吉とは全く違っていて、この大きなぬくもりに包まれていたいという思いが芽生えた。
何につけ、安心することに変わりはない。
瀬見が醸し出す安心感は鳥海のなかに深く染み込んでくる。

あれこれ制約がつくのは、昨日の今日では仕方がないことだと理解しつつも、全開で遊べないことには不満も少々漏れた。
瀬見は「トラウマにならなかったのは良かったことだ」と安堵の息をついて笑ってくれた。
「コイツには学習能力っていうものがないのかね…」
無防備に遊びを堪能する鳥海に向かって、八竜は今まで以上に盛大なため息を吐きだして呆れていたが。

あたりまえだが、おじさんの船に乗せてもらって漁についていく、という話は帳消しになった。
勝手に話をつけたことを八竜に知られれば、また激怒されて、今度こんなことをしたら海水浴は禁止だ、と相変わらずの報告を義務付けられる。
白神だけが、「八竜さんって本当に優しい人」と勘違いしていた。

家に帰ると、すでに連絡を受けていた両親からも説教を浴びることになった。
でもやっぱり、無事に帰ってきて安心しているところは大きい。
瀬見と白神には迷惑をかけたから、と母親が料理の腕をふるって夕食になる。
持ち帰った魚の匂いが気になるのか、バニラとビターはミャーミャーと鳴いてうるさくて、抱いていないとどこに飛びつくかわかったものではない。
そしてお刺身を分け与えてあげれば、咥えてどこかに行こうとするのだから、「ここで食べなさい」と躾けが始まった。
「まぁ、鳥海に育てられたんじゃ、将来に期待はできないな」とは、八竜の嫌味である。
白神だけが「僕、頑張りますっ」と張り切っていた。
事故の話だけは出なかったが、瀬見がどれだけ優秀な人間であるのかを両親にもコンコンと聞かせて、瀬見は、「いえいえ…」と謙遜していたけれど、八竜にはないどっしりとした態度は、鳥海の中で大きくなっていくばかりだった。
その瀬見は、翌日仕事があるから、と遅くならないうちに帰るという。
「瀬見さんって一人暮らしなの?」
鳥海が問うと「そうだよ」と簡単に住所を教えてくれる。
ジェットの免許を取ろうかと相談したら、やっぱり八竜に猛反対されて、だけど瀬見は、知識として入れておくのはいいことじゃないかと鳥海の意思を汲んでくれた。
やっぱり絶対に瀬見は鳥海の味方だ。
「俺が取得した時のテキストが残っていたかな。後で探しておいてやるよ」
「瀬見~、あまり鳥海をそそのかさないでくれ」
「にぃ~ぃっ」
「鳥海、取るの~?じゃあ僕もがんばろうかな」
「やめとけ、やめとけ。ひっくりかえって、海に投げ出されるのが関の山だ」
八竜が止めることには大人しく従おうとするのか、白神は「は~い」と頷いている。
根本的な理由は鳥海を制止するためだろう。
そんな妨害には屈さないと鳥海は意思を固め始める。
瀬見がいてくれたら壁なんかないように思えてくるのだった。
帰り際、瀬見は鳥海の頭を撫でてくれた。
その流れで、大きな掌でそっと頬を包んで、でもその手はすぐに離れてしまったけれど。
指先から肌の温かさが伝わってくる。
「何か心配事があったら言っておいで」
トラウマを心配することなのかと思うが、もっと違う意味をもって語りかけてくれることらしい。
この人はどこまで懐が大きい人なのだろうかと信用度は増していくばかりだ。
「うん…」
鳥海が頷くと、いつもどおりの笑顔を見せて去っていった。
鳥海の手に、連絡先が記された一枚の紙を残して。

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コメント

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鳥海、いいなぁー(*・ε・*)ムー
コメントけいったん | URL | 2013-08-28-Wed 08:52 [編集]
瀬見の住所も電話番号もメルアドも ゲットだなんて…
私も 欲しいぃ~~~(("o(>ω<)o"))クヤシイー!!

瀬見は 異性の妹が居るから 同性の弟が居る八竜と違って 年下に接する言動が 優しいのかも♪

八竜や 先輩の森吉たちとは、ひと味も二味も違う雰囲気を漂わす 瀬見に 鳥海が 特別な感情を持っても おかしくないよね!
もしかして 白神が ライバルになるかと 心配してたけど、
彼は 八竜に一途だから ひと安心…(´Д`) =3 ホッ

それにしても 鳥海が 瀬見から貰った連絡先を ゲット出来ないものかしら?
住所は、尾行すれば 何とか分かるけど(←でも 鋭い瀬見だから マカレテ 難しいかな?)
Σ(・д・o)ハッ、ソウダ!
ちーさん、望遠で その連絡先を撮って~(人'∀'o) 頼む! 


Re: 鳥海、いいなぁー(*・ε・*)ムー
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-28-Wed 14:13 [編集]
けいったんさま こんにちは~。

> 瀬見は 異性の妹が居るから 同性の弟が居る八竜と違って 年下に接する言動が 優しいのかも♪

兄弟と兄妹の違いですね。
乱暴に扱うことなんてなかったのが、他の人にも出るんでしょう。
それに、歳離れているしね。
一つ年下の妹より、ずっと可愛い存在になるのかもしれません。

> もしかして 白神が ライバルになるかと 心配してたけど、
> 彼は 八竜に一途だから ひと安心…(´Д`) =3 ホッ

どこまでも揺るがない白神です(笑)
たぶんねぇ。八竜が鳥海と違う態度を取ってくれるのが理由なんだと思いますけど。
ほら、八竜ってわざとらしいくらい、鳥海にはボロクソあたるでしょ。
こちらも他の人には優しいと映るのか。

> それにしても 鳥海が 瀬見から貰った連絡先を ゲット出来ないものかしら?
> 住所は、尾行すれば 何とか分かるけど(←でも 鋭い瀬見だから マカレテ 難しいかな?)
> Σ(・д・o)ハッ、ソウダ!
> ちーさん、望遠で その連絡先を撮って~(人'∀'o) 頼む! 

あれは鳥海に渡したものですからね~。
折りたたまれていたら見えないですよね~。
アイツ、何気に秘密主義のような気がしなくもなく…。
> マカレテ (←爆)
変装も見破られてしまいそうですね(笑)
結構鋭い人でしょうから。
大変のんびり進んでいる話で申し訳ないです。

コメントありがとうございました。
ラジャー♪
コメントちー | URL | 2013-08-28-Wed 20:59 [編集]
バニラとビターは、お魚食べるんだねえ。
うちの子はちっとも食べない・・・
カリカリが大好きな良い子です。
でも、お刺身食べる?ニャニャ。食べるの~?
あげるよー♪なんて、やってみたいっす。

鳥海くん、瀬見ちゃんと仲良く出来ると良いね。
何々?この連絡先どうしよう?
とりあえず、おばちゃんに貸してごらん?
悪いようにはしないからぁ。


ち「師匠、瀬見ちゃんの連絡先ゲットっす」
し「え?マジ?」
ち「鳥海くん、素直だから見せてくれた」
し「どうやって・・・?」
ち「企業秘密でぇす」

腐レンジャー、やってやれない事はない。

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