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BLの丘
木漏れ日 29
2013-08-27-Tue  CATEGORY: 木漏れ日
肺に何かが送り込まれた。
「鳥海っ!!」
鼓膜に聞きなれた声が響く。
「…っ!…ゲボッ!!」
水を吐きだすのと脳が覚醒するのがほぼ同時だった。
「鳥海っ?!」
瞼を上げると、自分を覗き込んでいる幾つかの顔が見える。
八竜は心配げに見下ろしていて、瀬見は硬い表情だ。白神は泣き崩れている。
他に民宿のおじさんとおばさんの顔と雄物川たちも集まっていた。
「気がついた?」
「こっの、バカヤローっ!!」
「鳥海~っ、鳥海~っっ!!」
瀬見の安堵したような声とは対照的に、八竜は怒鳴り、白神はわぁわぁと泣きじゃくった。
怒鳴っても、八竜も泣きそうだった。
自分が砂浜の上に寝かされているのだと、ようやく気付く。
全身が冷たいのはずぶ濡れになっているからで、同じように瀬見もひと泳ぎしてきたかのように濡れたままでいた。

「とにかく病院へ。車出してやるから」
おじさんが動き出す。
すでに連絡がつけられている所は、近所にある病院だった。
八竜に着替えを持ってくるよう頼んで、鳥海は瀬見に抱きあげられた。
何が起こったのかさっぱり分からない鳥海は、呆然とされるがままになる。
一緒に着いていこうとする白神を、瀬見は雄物川たちに預けて、「大丈夫だから」と宥めた。
バスタオルと毛布に包まれて、車に揺られること、数分。
瀬見は状況を医師に説明し、検査をされた鳥海は「異常なし」と太鼓判を押された。
誰からも安堵の息がこぼれおちた。
波にさらわれておぼれたのだと教えられた。
暗黒の海に引きずられるように飲まれたのを思い出す。
見えた小さな灯りが、命綱のようだった。
…そうか…、あれがあったから、居場所が分かりやすかったんだ…。
追いかけた瀬見がすぐに発見してくれたから、大事に至らなかったのだとも伝えられた。
あまりの叫び声に、誰もが飛び出して来たらしい。
悪いことをしたな…という意識が働いていたけど。

診察室の一角を借りて、鳥海は着替えを済ませる。別室で瀬見も身支度を整えてきた。
ずっと付きっきりだった八竜が、もう何度目か分からないため息を吐いた。
「おまえ、瀬見に謝っとけよ。命の恩人だって忘れるな」
「八竜、そんなおおげさな…」
「言うわっ。ほんっとに、もう…、ったく…」
言葉が出てこないのは、八竜もこみあげてるものがあるからだろう。
ぷぅと唇を尖らせたら、容赦なく後頭部を叩かれた。
鳥海にはまだ事の重大性がピンとこないでいた。
何が起きたのかの説明を求めると、瀬見は「いいから、いいから」と誤魔化してしまう。
「藤里くんも待っているから早く帰ろうか。鳥海くんも今日はゆっくり休んで」
歩ける?と気遣われ、また抱き上げられそうになる手を押しとどめる。
「大丈夫」
「そこは素直に甘えてもらいところだけどね」
クスクスと笑みを浮かべられて、もしかして瀬見の親切心を蔑ろにしてしまったのかと少しだけ後悔した。
瀬見は気にした様子もなく、いつもどおりに接してくれる。

帰りはタクシーで民宿まで戻った。
誰もが安心した表情で迎えてくれる中、白神だけがまだ涙に濡れていた。
「鳥海~」
泣いて抱きつかれて、思わず「ごめんな」と漏れると、「そんなのっ、こっちのセリフだよっ。良かった~。鳥海、ホント良かった~」と、また大粒の滴がこぼれた。
促されるまま、すぐに部屋に入った。
敷かれた布団の上に、ごろんと横になる。
全身から力が抜けていった。
身体がダルいと訴えてくる。
白神は一緒に横になってきた。
抱きしめられて、泣き続ける白神の背中に手をまわしてあやした。
「鳥海~」
「もう、大丈夫だってぇ」
「ごめんね、ごめんね。僕が変なこと言いださなければ…」
八竜の気を惹きたくて、我が儘を言った結果が、こんなことになるとは…と後悔の嵐だ。
連れていったのは鳥海なのに。

八竜と瀬見は、心配をかけたことと、報告もあって隣の部屋に向かっていった。
白神とふたりきりにされて、色々と語り合う。
「鳥海が波に飲まれちゃったあと、すぐ瀬見さんが飛び込んでいったんだよ。それで引きあげてきてくれて、人工呼吸したんだ」
「え?人工呼吸?」
「うん。心臓マッサージとか、そういうの?すっごい冷静で驚いちゃった」
「そうだったんだ…」
落ちついていたというのは、瀬見の性格を表しているようだった。
人間性がそんなところにも出るのだろう。
しっかりした人なのだな、と改めて思う。
あの時、肺に何かが送り込まれたと思ったのは、瀬見からの酸素だったのだ。
八竜が『命の恩人』だというのも頷ける。
いい友達をもってくれたものだ、と嬉しくなった。
良い友達、といえば、白神もそうだろう。
自分のために泣いてくれる人。

知らずに眠気に襲われてくる。
一日の疲れが一気に押し寄せてきた。
まだまだ話したいことはたくさんあるのに…。
「寝ようか…」
鳥海が白神に問うと、うん、と頷かれた。
その日は手をつないで寝た。
なんだか、安らかな波間に漂うような気分だ。
牙をむく時もあるけれど、穏やかな面ももっている。
今回は限度を越えた行動を起こしてしまったのだと、鳥海は思いなおして、またもう一度深く瀬見に感謝して眠りに落ちた。

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コメント

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はあ
コメントちー | URL | 2013-08-27-Tue 05:58 [編集]
うー、良かった良かった。
鳥海くんが海の魔物に連れて行かれなくて。
瀬見ちゃんに感謝だね。

この二人、まだまだ自分の気持ちがわからないのかな。
焦れったいシリーズ?
ジレジレするのも良いからなあ。

それよか、二人が手を繋いで寝てるなんて。
可愛いくて可愛くて、にぃと瀬見ちゃんが羨ましい。
え?腐レンジャーは見てないのか?
見てますよ、至近距離じゃないけど(笑)

Re: はあ
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-27-Tue 08:01 [編集]
ちーさま おはようございます。

> 瀬見ちゃんに感謝だね。

鳥海に何事もなくてよかったですね(←)
瀬見って何気にすごい人…だったのかもしれません(笑)
由利由良の時もチラッとでたけど、一歩先をいく大人かなぁと想像して、
別枠の人物像で設定してみました(笑)

だけど進み方は…。
とりあえず、起承転結の『起』の部分は過ぎたかな(←え?!)
もう30話になるのに…。
サクサクっと進められるように努力します(笑)

きっと仔猫を間にして、前後を保護者が挟んで川の字になってお休みしたことでしょう。
腐レンジャーは押し入れにでも潜り込んだかしら。
コメントありがとうございました。

> この二人、まだまだ自分の気持ちがわからないのかな。
> 焦れったいシリーズ?
> ジレジレするのも良いからなあ。
>
> それよか、二人が手を繋いで寝てるなんて。
> 可愛いくて可愛くて、にぃと瀬見ちゃんが羨ましい。
> え?腐レンジャーは見てないのか?
> 見てますよ、至近距離じゃないけど(笑)
海の神様の悪戯?
コメントけいったん | URL | 2013-08-27-Tue 09:40 [編集]
悪戯にしては 少々 度を超してますが…
(。-`ω´-)ゞ...ンー
それとも 海の神様は、鳥海を気に入って 引きずり込もうとしたのかな?

人が窮地の時に 颯爽と現れ 救ってくれるなんて!
今回の事で またまた 瀬見の好感度が アップで ますます 素敵♪

明朝の食事時には 料理に詳しい2人組さんや 3人の家族連れにまで 話しが伝わってるでしょうね。

って、ことで…
周防さま:「ひな、海は 怖いから 絶対に 一人で 入っては ダメだよ。」
ひな:「こわいの?」
和紀:「そうそう! ひなは 可愛いから 海の神様が パクっと食べちゃうんだからな!」
ひな:「たべられちゃうの?…」
ひな:「たべらるの いやだぁ~~こわいよ~~うわぁ~~~ん」
和紀:「えっ, ひな!!」
周防さま:「和紀ー お前って やつは…」

その話しを聞いて…
孝朗;「圭吾、僕も 怖い…」
圭吾:「俺が付いてるから 大丈夫だって♪」
孝朗:「絶対に 離れないでね!!」
圭吾:「お、おぉぅ…(やったぁ♪←心の声)」

と、朝から 何やら 騒がしいようですが、腐女子たちは 大喜びだったとさ(o^^o)ふふっ♪
Re: 海の神様の悪戯?
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-27-Tue 11:50 [編集]
けいったんさま こんにちは。

> 悪戯にしては 少々 度を超してますが…

今回も海の魔法はかけられましたね。
ただちょっと危険を孕んでいましたが。
それくらいの刺激だから、鳥海も違いを改めて知るのか。

> 今回の事で またまた 瀬見の好感度が アップで ますます 素敵♪

瀬見ってば、どんどんと良い男になっていくんですかね~。
とりあえず過去のつまみ食いは許してもらうということで。

> 明朝の食事時には 料理に詳しい2人組さんや 3人の家族連れにまで 話しが伝わってるでしょうね。
> と、朝から 何やら 騒がしいようですが、腐女子たちは 大喜びだったとさ(o^^o)ふふっ♪

さすがけいったんさま。
一人にだけ『さま』がついている(笑)
えぇ、話が伝わるのは早いですからね。
食べられちゃう という表現に日生は心底脅えたようです。
でもお兄ちゃんがついているから大丈夫だよ~。
圭吾と孝朗は海に入るというより、食べ物を求めてウロウロしていそうですが。
あ、アワビとか獲りにいっているのか…。
腐女子も楽しんでもらえたなら嬉しいです。
コメントありがとうございました。
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