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BLの丘
木漏れ日 22
2013-08-21-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
瀬見が、拾ったチャームを先にテーブルの上に置いてあった『V』の隣に並べた。
「鳥海くんは色が気に入らなかったのかな。実際に付けてみないと分からないものだもの。ビターって何色が合うんだろうね」
あくまでも瀬見は客観的に物事を見ている。
白神の意見を優先にもしないし、八竜に従わせることもしない。まずは鳥海がどう思っているのかを引き出そうとした。
問い詰めるような口調もしない。
もしかして瀬見は何故鳥海が気に入らないと態度に出したのか、その理由まで分かっているのだろうか。
黙ったまま何も答えられないでいる鳥海を責めるわけでもなく、瀬見の手が二匹の猫を両手に掬いあげて自分の懐に抱いた。
「柔らかい。ちっちゃいね。…あー、こら、引っかきっこ、するんじゃないの」
双方前足を伸ばしては互いの顔をめがけて、パンチを食らわせている。
動くたびにいままで聞こえることのなかった、チリンチリンという鈴の音が響いた。
しばしその動きに目を奪われ誰からも言葉が発されない中、瀬見が続けて話す。
「もしかしてビターの方が負けん気が強い?俺も八竜と同じで目の錯覚にやられてるのかな。色からして男らしく見えちゃうっていうか。…あぁ、この首輪がアクセントになって渋みが増した感じに見えているだけ?」
誰に問うているのか、ひとりごとにも聞こえなくない言葉は、ダイレクトに鳥海の胸に響いてきた。
単純に、色が映えるか映えないかだけを基準に似合わないと思っていたことを、瀬見はきちんと理由をつけて意見を述べてくる。
それがどう人の心に聞こえるかはまた思考の違いだが、少なくとも今発されたものは、そうか、と納得させる内容が含まれている。
そして『見た目だけ』で判断する自分自身を、本当はいけないことだけど、と理解し責めた上で、だけど正直な感想として誤魔化さない。

「うん…」
何に対してなのか、鳥海は曖昧な返事をした。
すかさず白神が瀬見に同意してくる。
「強い…かな。けどどっちかっていうと優しいかも。先に何か仕掛けるのはバニラで後に続くけど、なんていうか、見守ってるって感じ?取っ組み合いになる時もバニラが手を出してからで、ちょっと遊ぶと飽きるのか、やっぱバニラから離れていくし、それ以上ビターは何もしないし」
「へぇ」
「それは『飽きる』っていうより『負かされている』んだろ。負けん気が強いから"受けて立ってやろう"根性なんじゃなくて?」
八竜に突かれて、こちらも見識の違いを気づかされる。
物事の捉え方とは人それぞれだ。
白神にしてみたらバニラ目線の『遊んでもらった』感覚で、八竜はビター寄りの『勝負してやった』なのだから聞いていると面白いと思ってしまう。
そんなふうに猫の本質を語られると、外見だけを気にした自分が、すごくちっぽけに感じられる鳥海だった。
確かに瀬見の言う通りで、「凛々しい感じ」と言われたら嫌な気は起こらない。
むしろ、褒められた印象のほうが強くて、先程までの消沈した気分が一気に晴れ渡ってくる。
自分は何て単純なんだろう、と思わなくもないが、素直に受け入れられるのだから不思議だ。

瀬見が引き離した猫を、鳥海と白神に手渡してきた。
「鳥海くん、新しいの買いに行くなら、車、出してあげるよ。…っと、もうすぐご飯ができちゃうかな」
台所の様子を伺いながら、時間なら余っているから、と鳥海の気持ちを汲んでくれた。
首輪をつけるのなら、早い方がいいでしょ、とは、鳥海の曖昧になっている決断をはっきりさせることに繋がった。
「そんな、また、なんて…。瀬見さんに悪いよ」
言い訳でしかなかったのだけれど…。
言いだした手前、今更やっぱりこれでいいと言いなおすのも憚られて、瀬見に二度手間をかけさせたくないと断りが入る。
瀬見の返事が聞こえる前に八竜がため息交じりの声を上げた。
「だーから、最初っからそれにしろって言っただろうが。どうしても嫌だっていうなら、あとで兄ちゃんが買ってきてやるよ」
「にぃが買ってきたものなんか、絶対にいらないっ」
つまりは、このまま変えられることなく付け続けるということで…。
鳥海の気持ちをダイレクトに表に出すこともなく、うまく誘導して解決してしまった大人のやり取りの裏側など、もちろん鳥海も白神も知らぬ世界に追いやられた。
そしてこの話は終了となる。

八竜ががらりと話題を変える。
「あー、そうだよ、メシ~。母さん、まだなの~?あと、つまみとビールもぉ」
自分では動こうとしない問いに、すぐに白神が反応した。
「あっ、僕、持ってきてあげます」
バニラを手放して立ちあがった。
猫を可愛がるより、八竜に優先順位が置かれた態度は立派というべきか…。
「うるっさいわね。昼間っからゴロゴロ、ゴロゴロ、まったく邪魔ったらありゃしない。あ~あ、私も『休み』っていう日が欲しいもんだわぁ」
特大の嫌味が降り注がれる。
五城目家の男は、余程のことがない限り家事というものはしない。それは、やってくれる人、がいるからで、毎日変化がなかった出来ごとの一つでもあった。
ここで息子ふたりが言い訳をさせてもらうとしたなら、「『あんたたちがやったほうが、時間も手間もかかるから』やらせてくれない」…になる。
すっかり住人になってしまった白神が缶ビールと、出来上がったらしい料理を運んできた。
微かに漂っていた料理の匂いがはっきりと香ってくる。
自然と動きすぎた午前中の疲れが出て、空腹感が増した。
「ごはん、もうすぐできますよ」
そして運び係に変わる白神を見ると、瀬見の手前もあって、自分も動いたほうがいいのかと、普段では湧かない焦りが浮かんだ。
たぶん、いいところを見せたい見栄だ。
「おぅ、藤里くん、サンキュー」
根が生えた八竜は白神を褒めて、更なる動きを期待し、やっぱり都合良くコキ使っている。
そうなるとこちらも比較されるようで動き出すのだ。
「瀬見さんも飲むの?」
「いやいや、俺、運転あるし」
「あ、でも取り皿…」
"おもてなし"をする意味で立ちあがると、台所から次々と手にされる。
瀬見を家に入れた時に、母親が準備していたものは確実に作り進められていたようだ。
「あら~、鳥海がこんなことするなんて、珍しいわね~」
母親のはっきりとした大声は筒抜けだ。
…だから、お母さん、一言余計なんだけど…。
言われなきゃ動かない普段を、露呈しなくていいと、ふくれっ面になった。

二匹の仔猫が後を追いかけようとするのを瀬見が抱き上げて押さえててくれる。
足元をウロウロする物体は踏みつけそうで怖いのを分かってくれている。
「助かったよ…」
ボソッと吐かれた八竜の声は瀬見にしか届いていない。
半ば照れを纏わせた表情に、瀬見はクスリと笑顔で答えて首を傾ける。
それだけで会話は成り立っていた。
鳥海と白神の仲にヒビを入れずに済んだことは、兄としてもホッとできた。
些細なことでもお互いの間にわだかまりとなることは多い。
そんな思いを味あわせなくて済んだと。
「ペットは飼い主に似るっていうけど、この子たちはあの二人に似ていくのかもね」
瀬見に言われて八竜は苦笑いだ。
「あぁ。ビターなんて鳥海にそっくりのところがあるよ。気が強いし人のいうことは聞かないし危険は顧みないし」
小声での会話は、ガタガタと動く人たちには届いていないだろう。
八竜がきちんと『ビター』と呼んだことも想像通りだったが、瀬見はあえて口にすることはしなかった。
それだけで、蔑ろにせずきちんと見守っている兄を感じとるのは容易かった。
何を言っても心の奥底では誰よりも気に掛けているのが感じられる。
良く見ているからこそ、気付ける証拠だった。

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コメント

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私の側に居るのは 瀬見では無く 蝉だけ(´。_。`)ゞぅぅぅ…
コメントけいったん | URL | 2013-08-21-Wed 09:23 [編集]
八竜の言い方もあるけれど、
兄弟だと 遠慮もなく すぐ反抗的になる気持ちも
やはり 赤の他人の瀬見から言われると 素直に聞ける心があるって事ですよね!

それに 瀬見の話し方が ねー
鳥海の気持ちを酌みながら 本人に考えさせ 納得させる、
その 話の持って行き方が お上手ったらありゃしない♪ウマイウマイ "ハ(^▽^*) パチパチ♪

これでまた 鳥海の中での 瀬見の好感度がアップしたはず!
このまま ズンズン急上昇して その結果 憧れが 恋に 
そして 赤の他人から恋人に~~~♡

って、そんなに さっさと上手く行くはずないかぁーエヘヘ(*´・∀・`*)ゞ


ぷぷっ
コメントちー | URL | 2013-08-21-Wed 10:40 [編集]
師匠、上手いこと言ってるなあ。

毎日、暑いっすね。

鳥海くん、ちょっとスネ夫くん。
良くも悪くも弟だね。
うんうん。

首輪とかね、同じのが良いよ。色ちがいでも。
まあ、それは鳥海くんもわかってるハズ。
もしかしたら、にぃを取られてしまうって焦りもどこかにあったのかもしれないし、瀬見ちゃんが気になってたからかもしれないけどね。

さてさて、鳥海くんと藤里くん。
どっちが早く昇格できるかな?

みなさま こんにちは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-21-Wed 15:09 [編集]
いつものごとく、まとめレス、お許しください。

八竜ね、悪い人じゃないんですよ。
言い方は悪いけど、あちこちに鳥海を思うものをちりばめていて。
憎まれ役やっているんです。
そういうの、分かっちゃうんだね、瀬見ってば。

瀬見は強引に何かを推し進めたりしないですよね。
嫌味もなく、あれこれと進められるのは人柄の表れでしょう。

鯉が合いに~(違う、恋が愛に~)発展するのはいつのことやら。

鳥海はにぃをとられるような危機感はないと思いますけれど、
でもやっぱり自分のそばについてくれていた人の意識が向けられるのは嬉しくないでしょうね。
自分に安定した存在があったなら別でしょうが。
片方だけが幸せになったら、またひねくれちゃいそうだよ。
そのまえに、瀬見、がんばって~。

みーんーみーん鳴いて引き寄せるのだっ。

コメントありがとうございました。

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