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BLの丘
木漏れ日 21
2013-08-20-Tue  CATEGORY: 木漏れ日
瀬見は、それぞれの膝の上に乗って、喉をくすぐられたり頭を撫でられて目を閉じている仔猫を見ながら、八竜の言うことに、「そうかな?」と首を傾げた。
「別に違和感はないんじゃないの?」
「毛色のイメージがそう見せるのかな。藤里くんの黒髪サラサラ感がクロ助(すけ)だと思ったんだけど」
「にぃっ。『クロ助』じゃないってっ」
鳥海がビターに指を引っかかれながら反論した。
世話を丸投げした八竜は、自分勝手な飼育を始めているわけで、呼び名も自己流で堂々と発言している。
「まぁ確かにバニーちゃんみたく可愛げのかけらもない鳥海だけどなぁ」
「だから、人が誤解するような名前で呼ばないでよっ」
些細な喧嘩はいつものことで、それだけで普段の状況が垣間見えてきて瀬見は苦笑いを浮かべた。
八竜が人前で、故意的にからかっているのだとは容易に判断できるところだった。
可愛がっているのを素直に表現できない行動に匹敵する。
呼び名もわざとそう振る舞って弟の意識を向けさせて楽しんでいるだけだ。
たぶん、弟たちがいないところでは真面目に対応しているはずだとは、過去の付き合いで知れている。
それを口外するような瀬見でもなかったが。

白神がバニラのまっさらな喉元を爪で掻いた。
「バニラ、今日は『プレミアムねこまんま』買ってきてあげたからね」
「そう!もう半分こしなくてもいいよ。でもあれ、高いから食べられるのは週に一回だけだけど」
「『半分こ』?」
瀬見が不思議そうに話に口を挟んだ。
それを八竜が引き継いで、過去の出来事を小馬鹿にした口調で語る。
…もうっ、にぃってばそんなこと、わざわざ言わなくてもいいのにっ…。
鳥海は途端に羞恥心に襲われた。
だが瀬見は「あたりまえのことをしただけじゃんね」と鳥海の肩を持ってくれた。
八竜の言い方が間違えていると言わんばかりで、すかさず鳥海の"ご機嫌ボルテージ"は上昇した。

それから思いたったように、首輪をつけてあげようと騒ぎだす。
一応興味はあったらしく、八竜もどれだと動きを見守っていたが、同じものが出てきては、「双子じゃあるまいし…」と呆れていた。
なんでもかんでも、いちいち貶してくる性格はどうにかならないものだろうか。
「にぃには関係ないじゃんっ」
「そうだよ。兄弟ペアも素敵じゃん」
瀬見が同意してくれれば、ますます気分が良くなっていく。
さすがに瀬見も加勢してくれば頭ごなしに否定してくることもなく、フンと口を噤んだ。
やっぱり瀬見は自分の味方だと嬉しくなった。

首輪は赤地で金色の小さな鈴と、重なるように片方には『B』、もう一方に『V』のチャームがついている。
首元で二つが揺れ動くデザインだった。
「なんで文字は違ってるの」と不思議がる八竜に、鳥海は勝ち誇った喜びを表した。
「『vanilla』と『bitter』だ、バカにぃっ」
「おまえな~っ」
こんなふうに言い負かせた過去があっただろうか。
普段とは違って鳥海は万遍の笑みに包まれる。
兄弟喧嘩はさておき、開封を手伝った瀬見は真面目な顔をしながら、うーん、と唸って問題点を見つけていた。
「もしかしてこの子たちには、このチャームはまだ早いんじゃないかな?身体の大きさからいっても…」
チャームは鈴とほぼ同じ大きさだったが、仔猫である胴体と並べてみれば確かにふたつあって邪魔そうである。
いや、気を取られる、といったほうか。
抱かれているからいいが、二匹の仔猫の目は物体を追いかけていた。
売り場では鳥海たちに任せた瀬見も、実物(仔猫)を前にしては考えたようだ。
ふざけずに真面目に取り合ってくれる人に兄とは違う感動を覚えながら、鳥海と白神は顔を見合わせた。
『可愛い~っ』と一番に見惚れて、一致して選択した商品だっただけに、出鼻から挫かれた感は否めない。
その不安を拭うように「でも」と瀬見は続けた。
冷静な態度の意見に耳を傾ける。
「取り外し可能だから、もう少し大きくなったら付けてあげたら?」
デザインだけを優先して購入した鳥海たちには、そんな細かな配慮まで気が回っていなかった。
かゆいところに手が届く存在は、余計に尊敬できる者へと確立された。
瀬見は鳥海が抱いていたビターに手を伸ばしてきては、一度首輪の装着をしてくれる。
続いて床に下ろしてみても、初めての感触が気になるのか、ビターは前足で首元を掻いている。
ビターにしてみたら、重さも苦痛になるかもしれない。
「やっぱ、邪魔かも…」
鳥海が様子を見て判断を下すと、瀬見は「みたいだね」と理解を評価して、クスリ笑って、器用な動きでチャームをスッと外してしまった。
促される結果だったとしても、自分で決断できたことは素直に受け入れられる。
瀬見の手が鳥海の開いた掌に寄って、チャームをしっかりと乗せた。
「はい。小さいから失くさないで」
人の手なんてまじまじと見ることなんて滅多になかったけれど…。
チャームが小さかったせいか、それとも改めて見せられた瀬見の手が、思っていた以上に骨ばって大きかったことに気付いたせいか、一瞬ドキリと心臓が高鳴る。
誰かと接触するときに意識してみたことなどなかった鳥海は、心のざわめきに動揺もした。
瀬見は気にした様子もなく、次の首輪を手にしては、先にチャームを外してテーブルの上に置いてから、白神の抱くバニラに付けてやっていた。

毛色のせいか、白いバニラには赤い首輪がとても映えて見えた。
ビターだって似合わないわけではない。金色の鈴が輝いている。
しかし妙な悔しさが湧いた。
知らずに懐いた仔猫の存在に特別な感情はなかったが、ここにきて、それぞれを比較されたような劣等感となって表れた。
きっと常々兄の影となっていた過去が、無意識のうちに自分と重ねてしまったのだろう。
誰も鳥海と藤里を比べてなどいないのに、寄って来た猫が自分たちに見えて敗北感を味あわせる。
あれほど高揚していた気分が一気にしぼんでいく。
無邪気に「バニラ~、お揃いだよ~」と並べてくる藤里が憎らしく見えてしまうほど。
いつもなら一緒になってはしゃぐところなのに、ビターを抱え直した鳥海は俯く。
機嫌の良さは半減、どころか急降下だ。
「…やっぱ、べつのがいいよ…」
ポツリとつぶやかれるセリフに空気が冷えるのが分かる。
「鳥海?」
「鳥海くん?」
怪訝な声が届くが、視線を上げる気にはなれなかった。
「テメーなぁ、自分で買ってきたモンだろうがっ。猫に付けるヤツなんざ、なんだっていいだろ」
「にぃってば、ウルサイっ」
突然の変化は八竜も口を出してきたが、いつも従わされてきた鳥海は意固地になっていくばかりだ。
少しは譲歩しようかと残っていた少ない気持ちも綺麗に弾け散った。
兄まで藤里の味方をした…、そうにしか受け取れない。
瀬見が逡巡した仕草を見せ、視線だけで八竜を制している。
理解するところがあるのか、八竜は少しだけ顔を歪ませるにとどまった。
卑屈になった時の鳥海の性格を知る八竜は、これまでと同じように「勝手にしろ」と投げ出す形をとったが、それは結果的に鳥海の好きにさせることだった過去を、鳥海本人が気付くことはなかった。
「鳥海~、なんで~?お揃いで可愛いのに~」
「なんでもっ。オレ、違うの、買ってくる」
首輪を外そうとして、掌にあった小さなチャームがコロンと落ちた。
ビターは興味を示してはすぐ鳥海から離れようとする。同じ動きをバニラもとった。
…せっかく、瀬見がつけてくれたのに…。
『せっかく』…。
その思いが全身を流れて複雑な感情を生みだす。
仔猫の行動を全員で追って、瀬見は二匹の間で触られるチャームを拾い上げた。
大きな手から鳥海の視線が外れない。
鳥海を擁護する言動をとってくれた瀬見は、鳥海に湧いた気持ちを聞いたら、やっぱり呆れるのだろうか。
感情の起伏が激しい子供だと罵るのだろうか…。
ようやく見つけた、『自分の味方』だと思ったのに…。
急速に心が淋しさを訴えだした。
一度喜びを味わった直後だから余計だった。
困ったように悩む瀬見の落ちつきが追い打ちをかけてくる。

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