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BLの丘
淋しい夜に泣く声 76
2009-11-03-Tue  CATEGORY: 淋しい夜
空いた一日を美術館で過ごすことにした。
せっかくガイドが来てくれたのに悪い気がしたのだが、いくつかあるので寧ろ効率良く済むと言ってもらえてホッとする。
今日のガイドは良く話をする30代後半の日本人女性だった。途中でうるさいと思ったくらいとにかく話し続けていた。
美術館の中では声をひそめて説明をしてくれるものの、英語やフランス語のようにBGMになるわけでもなく、理解できてしまう言葉だけに耳がそちらに向いてしまう。
英人は集中して見たいから黙っていてくれと頼んだくらいだった。
美術館ばかりに籠って外の観光はしなくていいのかと尋ねられ、明日連れが来るから二人で見ると答えれば、「それならば私も…」とまたガイドをしようとするから丁重にお断りした。
…恋人が来る…って言ってやったほうが良かったのだろうか…。

午後には電車で移動して違う町の美術館にも連れて行ってもらった。さすがにこの移動を考えるとガイドに居てもらって良かったな…と思ったけど。

夕方、夕食にも付き合うと誘われたのだが、それも断ってホテルまで送ってもらった。一人で食事をするのは淋しい気がしたが、ホテルの中のレストランであれば安全だ…という意識もある。
ホテル暮らしを長くしていたこともあったせいか、トラブルが起きた時はスタッフに声をかければ良いと榛名から教えられていたし、スタッフも何かと気遣ってくれる。言葉の壁があるにしても…。

ロビーに入っていくと、きちんと身なりを整えた年配のフロントマネージャーに呼び止められた。何事かと耳を傾けてみれば、英語で話し始める。どうやら部屋が変わったと言いたいらしい。
それでは荷物はどうなったのだと聞きたかったのだが、言葉がうまく伝わらないようで、とにかくこの場で待ってくれとフロントデスクに連れて行かれた。
どこかに電話をかけ、相手に何かを話し掛け、その受話器を渡された。目の前で会話をしたって意味が伝わらないのに電話などではもっと理解できない。
何と切り出したら良いのか分からず、それでも「Hello.」と声をかけると「Bonsoir」と返ってきた。
流暢な外国語はともかく、電話越しの声のトーンは良く知っているものだ。だって何度も聞いたから…。

どういうこと?とフロントマネージャーの顔を見上げてしまった。いや、それよりも尋ねるべきは電話の相手だ。
「ち、しろ…?」
『ご名答。スィートルームに部屋を変えてもらったから荷物を全部移動して』
大した会話を交わすこともなく、またマネージャーに換わるよう言われて、受話器を戻した。英人はもっと声が聞きたいのに…と切らないでと目で訴えたがあっけなく置かれてしまった。
部屋に戻ったら絶対に電話をかけてやろうと思った。旅行中こっちから電話をしたことはないが、日本への電話のかけ方くらい習っている。
こんな中途半端な会話で終了にされたら明日まで我慢なんてできそうにない。

フロントマネージャーはボーイを3人も一緒に行くよう指示を出し英人に従わせた。どれだけ急いで部屋を開けさせたいのだろう。
部屋に置いてあった荷物はすぐにしまえるものだけをスーツケースに入れ、ハンガーにかけられた服などはそのままの姿で運ばれてしまった。最後に忘れ物はないかと残った一人のボーイと確認をさせられて、最上階のスィートルームへと連れられた。
さっきまで使っていた部屋だって充分広いと思うのに、榛名は何が気に入らなかったのだろう。パリでは文句の一つも言わなかったのに…。

部屋に入って英人は横に広がる廊下があることにまず驚いた。部屋はその先のドアになるらしいが、廊下越しに見えるドアだって4つはある。どこのドアを開けたら良いのかも英人は分からなかった。
とりあえず目の前にあった部屋に入ってみた。小さなソファセットと奥に続くツインのベッドルームが見える。隣の部屋に移れば全体がアンティークな家具で揃えられていた。10人は座れそうな豪華なソファとリビングセットがあって、大きな窓の向こうには夕闇に染まる海岸が見渡せる。広々とした静かな空間を英人は進んでみた。年代物を思わせるテーブルなどが配置されたダイニングルームや、パソコンの置かれたワーキングルームへと続き、中央辺りには大理石で造られた広いバスルーム。大きなバスタブがあってここからも海は見えた。一番奥がキングサイズのベッドルームだった。
先に運ばれていた服はその部屋のクローゼットの中にすでにかけられている。
ホテルの建物が歴史を感じさせるモダンな造りで最上階と言っても10階くらいだったはずだ。外観に合わせたフランス貴族を思わせる内装は『ゴージャス』という言葉がピッタリだった。
これまで居た部屋とは全く異なった居住空間。

カタッと寝室のテラスから物音がして、英人はビクッとした。闇の中から浮き上がるように人が出てくる。
恐怖に声も出なかったが、そこに居るのが榛名だと分かった時、英人は大きな瞳を目一杯見開いた。

「元気にしていたか?」
幽霊ではない、と言いたげに、榛名が茶目っ気たっぷりに声をかけてくる。長袖のホワイトシャツは胸元が少し肌蹴ていて、気温の温かさを物語っているようだ。夕風を浴びていたらしい。
「う…そ…」
突然のことに英人は嬉しいとか懐かしいとか思うよりも疑問だらけで呆然としてしまった。一体いつからここに居たと言うのだろうか…。
心臓がバクバクと動き始める。目頭が熱くなって、知らぬ間に頬が濡れた。身体の血液は瞼に集まってしまったようだ。
「ほら、おいで」と言うように榛名が両手を差し出してくると、英人は崩れるように榛名の胸に飛び込んだ。
温かな胸に強く抱きいれられ、思いっきり榛名の匂いを吸い込む。体温に触れた時、これは現実で夢ではないのだと実感した。一週間ぶりに感じる榛名の身体。ずっと我慢していた想い。抱きしめてもらえることの感激。
「逢いたかった…」
榛名の声が染みるように耳元に吹きかけられた。

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どちらさまかしら。一気読みしてくださった方がいたようですね。うちは一話が長いから御苦労されたと思います。ありがとうございました。
そして他の皆様にも、普段お礼も書けずにすみません。
ブログを開設して丸4カ月が経過。よくここまで続けられたなぁ…と思っております。
妄想をただ羅列するだけで感情のへったくれもない文章にお付き合いいただきましてとても感謝しております。
遠まわしに書いているようで申し訳ないのですが、あともうちょっと、あと一山で英人も少しは大きくなれると思います。
すみません。ちょっと今日酔っ払ってて、なんだか感無量的にいろいろと……zzz
ちゃんと書かれているのか、これ。


↓こっちだけでいいですからどうかポチッとしていってくださいナ…m(__)m
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コメント

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し・あ・わ・せ
コメント甲斐 | URL | 2009-11-03-Tue 15:19 [編集]
開設して丸4カ月なんですね。
淋しい声が始まって少ししてからの読者なのでまだあまり長くはありませんが、1回が長く読みごたえがあるせいか1年くらい嵌っているような気がします。
毎日更新なのに、こんなに長くかけるなんてすごい!と毎日感激しつつ拝読しています。
これからも、ずーっと楽しみにしていますから、続けてくださるとうれしいです。

さて、千城さんたらこっそりスケジュール早めたんですね。
野崎さんに無理言って(っていうか仕事押し付けて?)出てきたのでしょうか。まあ、彼にはその尻拭いで休暇返上の罰くらいじゃあ安いモンですけど・・・。
サプライズに言葉もなくすくらいに感極まった英人君。今夜も明日も存分にかわいがってもらってくださいな。
明日の観光の予定は・・・ベッドの中ってことって。
Re: し・あ・わ・せ
コメントきえ | URL | 2009-11-03-Tue 15:40 [編集]
甲斐様

こんにちは。
うろうろしていたら甲斐様を発見っ!!

> 開設して丸4カ月なんですね。
> 淋しい声が始まって少ししてからの読者なのでまだあまり長くはありませんが、1回が長く読みごたえがあるせいか1年くらい嵌っているような気がします。

はい。6月末(もう7月)から気まぐれで始めたお話のコーナーです。
一話が長いなーって最近思います。

> 毎日更新なのに、こんなに長くかけるなんてすごい!と毎日感激しつつ拝読しています。
> これからも、ずーっと楽しみにしていますから、続けてくださるとうれしいです。
ありがとうございます。
訪れていただける皆様に支えられて、こんなところまでたどりつきました。

> さて、千城さんたらこっそりスケジュール早めたんですね。
> 野崎さんに無理言って(っていうか仕事押し付けて?)出てきたのでしょうか。まあ、彼にはその尻拭いで休暇返上の罰くらいじゃあ安いモンですけど・・・。
> サプライズに言葉もなくすくらいに感極まった英人君。今夜も明日も存分にかわいがってもらってくださいな。
> 明日の観光の予定は・・・ベッドの中ってことって。
野崎にはかなり無茶を行ったようですね。
きっと逐一神戸からご報告の電話でもいただいて、たった一日でも空けるのを嫌がったのでしょう。
えぇ。可愛がられます。ヒーくんは。
ちーはヒーの中を観光です。(////)テレテレ

コメントありがとうございます。またお越しください。
コメントきえ | URL | 2009-11-03-Tue 18:46 [編集]
MO様

こんばんは。いつもお越しいただきありがとうございます。

>千城、こんなサプライズを用意するなんて、やりますね~!英人との再会を、どんなに心待ちにしていたのかが、伺えますね。やっぱり二人一緒のシーンを読めると嬉しいので、更新を楽しみに待ってます。いつも ありがとうございます。

待ち切れなかったのか驚かせたかったのか…。
私も二人一緒のところを書くとホクホクとします。(最近寒いし…)

こちらこそいつも来ていただいて感謝です。
ありがとうございました。
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