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BLの丘
木漏れ日 18
2013-08-17-Sat  CATEGORY: 木漏れ日
新鮮な刺身を前にして、父親と八竜の酒も進んでいた。
鳥海ではまずしない白神のお酌もあって、父親など上機嫌である。
「藤里くんはエライなぁ。こんなに若いのに将来のことも考えていて~」
「僕もおとうさんみたいに、誰からも頼られる技師になりたいです~」
「本当にいい子だなぁ。うちにもこんなに素直な息子が欲しかったよ。いまからうちの息子になるか?」
「はいっ、もちろんっ」
…いらなねぇよ…。
苦虫をつぶした表情で、思わず鳥海と八竜の視線があってしまう。
こんなところだけは兄弟の息があう。
親を褒めなければ、息子も褒めないだろう、ここんちは…。

母親が傍らで洗濯物の選別をしていた。
スポーツバッグに入れっぱなしの状態で放置してあったので、見かねたようだ。
どうせまともに処理もしていないのだろうと、生地の痛みも心配されて、早速洗濯機の準備をしている。
「鳥海~っ、あんた、機械が入ってるじゃないっ。塩水でダメになっちゃうでしょ」
何かと思えば、能代にコピーしてもらった写真のデータが入ったフラッシュメモリだ。
能代はダイビングと共に写真撮影も趣味としていたようで、小型のパソコンも持ち込んでいた。備品もいろいろとあって、借りてきたのだ。
USBメモリの一つや二つは持ち運ぶのに邪魔ではないのか、また、今回は森吉の車での移動だったこともあって予備を用意していた。
「あ、写真だ。すごいんだよ。水中でもカメラ撮影しちゃうの」
小さい物体を受け取りながら身に起こった出来事を報告する。
昨日のジェットスキーも楽しかったし、今日のダイビングも面白かったと、白神と意気揚々と話をすれば、是非その"旅行記"を見たいと乗りだしてくる。
「じゃあちょっと待ってて。パソコン持ってくるから。あっ、テレビに繋げちゃえばみんなで見られるか」
普段はあまり使われることのない電気コードの塊を引っ張り出してくる。
仕事柄もあるのか、いたる所に何かと部品が転がっている五城目家だった。

「おかあさんも見たい」という要望があって、全員が揃って上映会が始まった。
鳥海がこうして誰かに撮られたものを欲しがるのは、もしかして成長記録が少ないせいかと脳裏を過った。
長男の八竜の写真は山ほどあるのに、次男である鳥海は家族写真くらいしか残っているものがない。
特に八竜が生まれたばかりのころは、昼寝をしているところ、ハイハイをしているところなど、コマ送りのようにあるのに、鳥海がアルバムに登場したのはお宮参りの時だった。
仕事が忙しかったんだ、と父親に言われて、稼ぐのに必死だったのか、と思うことができても、関心が薄れていたことは否めないだろう。
次男坊なんてそんな扱いだ。

能代の撮影の腕はなかなかのものだった。
いつの間に撮られていたのだろうと思うものもあって、遠くから眺められている風景は、映画のスターにでもなった気分にさせてくれる。
スライドショーの機能を使って順に映した。
「水中カメラみたいな本格的なものはなかったのにね」
白神がウェットスーツにくっつけられるような小型の物を所持していたと教えてくれて、手軽だからこそ、すぐに扱えたのかと納得もさせられる。
スナップ写真として見るには充分だ。

「あら、鳥海ってば、バイクにも乗ったの?」
「森吉が免許もってたから乗せてもらえたの」
「女の子ひっかけていそうな野郎だったな」
写真は森吉の後ろに乗せてもらっている風景に切り替わる。
これも遠方から撮られていたから、能代が記念の一つとして撮っておいてくれたものだろう。
こんな感じで乗っていたのか…と鳥海も改めて自分を見つめてしまった。
八竜の感想には苦笑も浮かぶ。
実際、あの手の速さと雰囲気づくりは手本とすることができるかもしれない。
もちろん、その餌食になっていたことは黙るが…。
黙っていたが、次の瞬間映し出されたものには全員が動きを止めた。
水上バイクの上で、抱き合っている人がいる。唇はくっついている。
森吉の両足が揃ってこちらを向いているとは、運転している時ではないと物語っていた。
「「Σ (゚Д゚;)?!」」
「あ、鳥海、"秘密のデート"に行っちゃった時のだ」
白神の淡々とした解説は余計に空気を冷えさせた。
…絶対にそれも誤解を生むからって~っ!!…
それより能代に対して筋違いな文句が嫌というほど浮かんだ。
さっさと消してくれればいいものを…っ。自分の脳内の記憶媒体で保存するというのにっ。

「『秘密のデート』?」
八竜の低い声が詳細を求めていた。
鳥海はドタバタと機械に近づいては、強制終了させようとパニクる。
「鳥海ね、この時のレースに勝ったの。だから勝者にご褒美でチューしてあげたんじゃない?」
その説明の仕方もどうかと睨みつけるが、見られた今となっては後の祭りだ。
どれだけ濃厚な"チュー"をしていたのかが分からないだけ、救われる。
「藤里っ」
「お…っまえは、昔っから簡単に人を信用しすぎるんだよっ!!無傷で帰ってこられるのが"普通"だと思うなって何回言わせるんだっ。このまま海の中に引きずりこまれて全部剥かれて、そこで放置されて、コイツだけ素知らぬ顔で陸に戻ってる可能性だってあるんだぞっ」
こうやって始まった八竜の説教は、なかなか止まらない現実を何回も繰り返されてきた。
『知らない人についていってはいけません』という教えは、『この人は知っている人だった』という言い訳は聞いてもらえるのだろうか…。
「べ、べつに、何もなかったし…」
「何かあってからじゃ遅いって言ってんだっ!!秘密じゃなくて、堂々としたデートにしろっ。相手、ここに連れてこいっ」
「だから、森吉、そんなんじゃないし…」
「もっと悪いわっ!!自分を安売りするなっ!!羊の皮をかぶった狼がこの世の中、何人いると思ってんだっ」
…それは自分のことでしょうか…と、延々と続きそうな説教にため息が混じる。
そのまま白神によーく聞かせてやりたいセリフだった。
しかし、肝心の白神は、「おにいさんの信念はしっかりしていて立派です」と褒め称えていた。
能代を前にしても惑わされず、揺るがなかった思いは、こんなところでも繋がるのだろうか…。
「…ったく、藤里くんを見習ってしっかりしてもらいたいものだ…」
父親の嘆きに母親の陽気な声が被さった。
「まぁ、男の子だからね。『妊娠させました』って言われないだけいいわ」
「自分で責任もとれないくせにな」
「にぃ~っっっ」
ズタボロに言われるのはいつものことで慣れていたけれど…。
そんな尻軽ではないと声を大にして言いたい。
証拠写真を前でも力説したい。
でもなんだろう。
白神が"安心できる"と八竜を言ったように、鳥海も同学年には感じない"何か"に憧れる差がはっきりした。
もっと違う何か。
森吉にはなかった安堵や落ちつきといったものか…。

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コメント

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乙女か(笑)
コメントちー | URL | 2013-08-17-Sat 11:19 [編集]
鳥海くんは、オトメンなのねえ。
まあ、基本はにぃだから仕方ないか。
でもー、瀬見ちゃんもねぇ。

まあ、仔猫は危険が大好きだから(笑)
ビクビクしながら近づいてくださいっ!
腐レンジャーはいつでも見守ってますからね。


ち「アッツーイ!」
し「あたし、忙しいんだけど?」
さ「まあまあ」
ni 「 待つもまた楽し」
す「お休みいただきます」

腐レンジャーは仲良しです。多分・・・
Re: 乙女か(笑)
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-17-Sat 15:35 [編集]
ちーさま こんにちは。

> 鳥海くんは、オトメンなのねえ。
> まあ、基本はにぃだから仕方ないか。
> でもー、瀬見ちゃんもねぇ。

にぃが可愛がりすぎたので、無意識な鳥海だと思います。
ウザイとかウルサイとか色々思っていながら、手をひっこめられると淋しいんだろうね。
瀬見がまだまだ出てこなくてヤキモキしているでしょうが(笑)
そういう微妙なとこ、あの人なら気付くでしょうね。
(ってここでばらしてどうする…苦)

> まあ、仔猫は危険が大好きだから(笑)
> ビクビクしながら近づいてくださいっ!
> 腐レンジャーはいつでも見守ってますからね。

今、お盆休みですからね。
世間の人は忙しいと思いますよ~。
今年はカレンダーの並びもいいから 海外~♪なんていう人もいるかもね。
指くわえて見ながら、腐レンジャーに遊んでもらっています(喜)
暑いのに、いつもお付き合い、感謝です。
コメントありがとうございました。
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