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BLの丘
木漏れ日 9
2013-08-11-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
白神が泊まりにくることはすんなりと受け入れられた。
目が届く範囲にいることは何ら問題がない。
白神は「同じ屋根の下で寝られる」と喜んでいたが、それもどうなのだろう…。

そうはいっても、肝心の週末、八竜は「飲み会だ」と言って出かけていた。
玄関ですれ違いざまに、「あ、エクレアちゃん」と声をかけられて、それだけで喜んでいた白神はご機嫌だ。

「ねぇねぇ、僕たちも行ってみない?」
母親に夕食の用意をさせるのを後ろめたく思ったのか、後をつけたかったのかは定かではないけれど…。きっと後者だろう。
その行き先が『若美庵』だったから快く鳥海も応じられた。
夜のあの店の雰囲気は憧れの的だったから。

『若美庵』は和の趣をかまえた店で、カウンター席と小上がりの席が見えるように並んでいる。
鳥海と白神が顔を出せば、宴会席に整えられたところから声がかかってくる。
最初に気付いたのは八竜の同級生で、鳥海も面識がある人だった。
「おー、鳥海じゃん。何、こっち来いよ」
気さくに声をかけてくれるのは昔からで、人懐っこい鳥海はすんなりと入っていけた。
白神にも向けられる視線も同様で、気持ち良く受け入れてくれる。
「なぁ、奢られておこうぜ」とは、鳥海の囁きだった。
この時点で財布の心配をしなくていい現実を知って心が躍る。

突然の参加に反対する人間がいないのは、八竜の人柄もある。
「おまえら、明日の朝、早いんじゃないの?」
一応牽制するように咎めてきたのはもちろん八竜で、深入りさせない心配りが含まれていた。
その話題もみんなの中に広まっていく。
「どっか行くの?」「いいねぇ、学生は」などなど。
最初は戸惑いがあった白神も徐々に馴染み、隅っこに座っていた存在はやがて人の輪の中に溶け込んでいく。
「可愛い、可愛い」と頭を撫でられているが、見た目とは裏腹に結構キツイんだぞ…とは飲み込まれた。

遅れて登場した瀬見に、自然と顔が向いた。
「悪い、遅くなった」
「よぉ、仕事、お疲れだな」
やはり労いの言葉がこぼれるのは、同じ立場にあるからで、黙って成り行きを見守ってしまう。
場を一通り見まわした瀬見は、鳥海がいることに少し驚いていたようだ。
視線があっては、ドキンと胸が高鳴って、酔ってはいないのに身体が熱くなる感覚を覚えた。
同級生の誰に声をかけられるのとは違った風が流れる。
「あれ、鳥海くんも来ていたの?」
鳥海の名前を覚えていてもらえたのかとは、また驚きだった。
「金魚のフンだ、金魚のフン」
「八竜、それ、ひでぇよ。こんな可愛いどころ、ふたり揃えるって俺たちじゃ無理なんだからさぁ」
「昔は八竜の方が連れまわしていたのになぁ」
八竜のセリフにすかさず同級生同士の突っ込みが入っている。
苦々しいやりとりはいつものことで、重宝される存在は昔からだった。
それはある意味、この中にいれば不安はない、安堵感を植え付けられていのだけれど。

席は入れ替わり立ち替わりで、気付けば白神は鳥海の手を離れて八竜の隣にいる。
立場上、お酌を続けていた鳥海は、瀬見に「そんなことしなくていいよ」と大人しく座らせられた。
「八竜に連れて来られたわけじゃないよね?」
遅れてきた瀬見は事の流れを問うてくる。
そんなんじゃなくて、友達とご飯食べに来ただけだと伝えれば、仲間内の親しみから加えさせられたいきさつを理解してくれたようだ。
先程までの中断された話題に戻されて翌日の予定を瀬見に知られた。
「海に行くんだ。いいなぁ」
単なるつぶやきなのだろうが、「今度一緒に行く?」と発言できたのは社交辞令に慣れた世界観か…。
他の人には発せられることはなかったのに…。

「次の休み、いつだっけ」
と、脳内で逡巡されることに、またもや胸が高鳴った。
真剣に捉えてもらえたのは、お世辞でも嬉しい。
会話の流れから紡ぎだされた言葉だと自分を戒めても、素直な表情は全身からあふれ出た。
「瀬見さんたちとも行ってみたいなぁ」
鳥海がつぶやくと、次々と反応した声が届く。
「あ、いいんじゃね?俺らだけより、ずっと"華"あるし」
「八竜に『連れてこい』って言ってもいっつも誤魔化されたしなぁ」
「『にぃ』~?許可ちょーだーい」
兄たちが楽しげに出かけていった風景はすぐにでも浮かぶ。
茶化した声に八竜は苦笑いを浮かべていた。
小中高と共に過ごしてきた連中の言葉はズバズバと切りこんできた。
次々と決まっていく内容は予想外と言っていい。
挙句には「訳のわかんねぇ、サークルに参加させるより、ずっと安全」と吐きだす人までいた。
制約がついた過去をこの場にいる人は知っていた。

酔いが回ると眠くなるのが鳥海だった。
コロンと座布団の上に身を横たえるとあっという間に睡魔が襲った。
次々と進められる酒があったことが大きい。
「ったく、飲みすぎるなっていつも言うのにっ」
「箱入り息子は免疫がないんじゃないの?」
苦々しい八竜の声も夢の奥に消えていく。
だけどこんなになるまで放っておかれたのは、ここにいる人たちに完全に気を許していた証拠でもあった。
「明日、起きられるのかねぇ」
続いた八竜のつぶやきの後に、「行かせたくないんだろ」とは、誰の声なのか…。
「鳥海くん、ちゃんと育っているじゃん」
何かを咎めるような声音は、見つめてくれていた奥深さがある。
「でも泊まりじゃ気が気でないよな」
「え?泊まり?」
「八竜、弟の話、ちゃんと聞いとけよ。藤里君、そう言ってたよ」
八竜の疑問には呆れる声が被さった。今更にして暴露された内容は初耳だと酔いも吹っ飛びそうだった。
一瞬にしてその場が静けさに包まれて八竜の顔色を伺った。
その空気を感じて八竜は眉根を寄せたものの、「まぁいい」とこの話を切り上げてしまった。
成人した弟は自分で判断できないほどバカではない、と言いたげに。

八竜が過保護なほど目を光らせ始めたのは、小学生の鳥海がランドセルを背負っていた低学年の時だ。
中学校に上がった八竜が離れた途端、帰宅時に「飴あげる」と声がかけられた。
ついていった鳥海は、一晩、家に帰らなかった。
街中を大騒ぎに陥れて、近所の繋がりは、不審者をあっという間に割り出してくれた。
「可愛くて、触ってみたかった」…。
犯人は鳥海の知らないところで、そうつぶやいたのだという。

鳥海は監視を嫌っても八竜の神髄は白神には見えていたのだろうか。
大事にされる背後関係。
知らずに感じとれた憧れ。
隠された真実を瀬見は黙って聞いていた。

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みんな忙しくて読んでる暇なんかないよねぇ…と思いながら私は暇なの…とupする。
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コメント

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読んでるよー
コメントちー | URL | 2013-08-11-Sun 18:20 [編集]
読んでるよ、読んでる。うちはお盆先月だから終わっちゃったし。
夏休みも今日で終わり。淋しいなあ。


鳥海くん。忘れてる過去があったのね。
可愛い子は、女の子も男の子も大変。
いつか思い出すのかな?出さなくて良いなあ。
(母親な気分)

そして、若美庵!
マムちゃん兄のお店じゃないの?
したら、可愛いお運びさんもいるはず。
くふふー。

海には、行かないらしい瀬見ちゃん。
若美庵に乱入?
つか、休みの日に、にぃにぃずと行くんでしょ?
合宿には行かなくても、海には行くのねっ。


し「ちーっ!」
ち「ん?なんすか?」
し「瀬見ちゃん、海には行かないってよ?」
ち「若人の集いには行かないだけですって」
し「・・・写真・・・」
ち「鳥海くんと藤里くんでしょう?にぃに、瀬見ちゃんでしょう?にぃの友達も一緒に海だよーん」
し「・・・本当?」


真実は、きえちんの頭の中にあるのだ(笑)
( ゚Д゚)アライヤダ!!
コメントけいったん | URL | 2013-08-11-Sun 19:39 [編集]
若美庵で 集合なの!?
もう バッチリ白塗りしたのに~~(苦笑)

若美兄さん、
お店の前で 真っ白顔の人を見ても 警察には通報しないでね(*≧人≦)タノムッ!!

瀬見っち、鳥海と 本当に お出掛けする気があるの?
( ̄ー ̄)ニヤリ
また 若い男を落として~♪
鳥海は 友達の八竜の弟って事を忘れちゃ ダメだよ!!

ちーさん、イケメン生写真を てんこ盛り撮ってね♪♪(o(゚・^*)ノ^☆
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