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BLの丘
木漏れ日 8
2013-08-11-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
夕方家に帰るとリビングの座卓で八竜と父親が仕事の続きらしき会話をしていた。
テーブルの上に何冊かのカタログと用紙を広げ、かたわらにはビールの缶と枝豆があってそれらをつまみながら"仕事"をしているようだ。
家の続きになっている事務所兼作業場で仕事をするのが日常だが、自宅でもこうやって"残業"をすることはよくあった。
「にぃ、藤里に会ったんだって~?」
「とおり?」
八竜のとなりに座りこんで、早速目の前の枝豆に手をのばすと、父親との会話は中断される。
仕事中だろうがおかまいなく話しかけるのはここが自宅だからだろう。
八竜も疑問には耳を傾けてきた。
「とうり。白神藤里だよ。三丁目の…」
おおまかな地図と賃貸屋の名前を出せば、すぐ頭に浮かんだようだ。
「あぁ、エクレアちゃんか。同じ学部だっけ?」
「そう。たまに泊まりにいったりとかしたじゃん」
「友達だったのか…。あの子、でも何も言っていなかったぞ」
近所付き合いの中では飛び出す人物名がなかったので、鳥海とも親しいとは思っていなかったらしい。
八竜にとっても記憶がないくらい影の薄い存在だったのか、と分かると、気の毒になってしまう。
接客商売という点では八竜も記憶力は良いほうだった。
とはいえ、接点があれば…の話で、大部分は"仕事"で繋がっているのだろう。
藤里のほうからも鳥海の名前を出されなかったことで結びついていない。
「『ありがとうございました』だって」
「ああ。そう言えば仔猫の貰い手、探してくれって頼まれてたっけ」
修理ついでに世間話に火が付き、情報があちこちとびかうのもいつものことだ。
頭に浮かぶ話題も次から次へと変わっていく。
思い出した話には父親も参加してきたし、会話はどんどんと仕事のことから離れていった。

やがて母親にしかられてテーブルの上が片付き、夕食の時間へと流れ込んでいった。

「脈なしだ」とあっさり白神に告げると、「えぇ~っ」とあからさまに唇を尖らせてきたのは翌日のこと。
今日の昼食は学食でカレーライスを頬張る。
剝れられたって藤里の顔も名前も覚えていなかったヤツにどうしろというのだ。
それ以前に兄に関わるのはやめておいたほうがいい、と忠告をしてあげたいくらいだった。
「なんでだよ。にぃのどこがいいの?ぜーったいやめておいたほうがいいって」
「八竜さん、鳥海みたいで落ち着くんだもん」
…それは自分のことも褒められているのだろうか…。
サラッと言われることには言葉も詰まってしまう。
似たようなものであるのに隔てられるのは、年齢差があるからかと過った。
「わからねぇ…。口やかましいだけだよ、にぃなんて。すぐこき使うし」
「鳥海だから甘えてるだけじゃん。いいなぁ。『○○して』ってお願いされるの」
「こっちが頼んでも言い訳つけて逃げられるし」
「鳥海に経験を積ませてくれてるんでしょ」
「汗くさいし」
「何事も一生懸命に取り組む証拠じゃない」
見事に変換される思考には絶句するしかない。
良くもここまであがめられるものだ…。
恋は盲目とは良く言ったものだ…と変に感心してしまう。
がっくりと力が抜けている時に、白神は「ねぇねぇ、もしかして八竜さん取られるのが悔しいの?」と訳の分からないことをのたまわった。
…熨斗つけて送ってやりたい…。

仲が良い兄弟だとは昔から言われたが、鳥海にしてみたら実感がない。
しょっちゅう喧嘩していたし、泣かされたことも一度や二度ではなく、近所の前で恥をかかされたこともある。
理路整然と物事をとらえて二の句も告げられなかった。
上を、先を行く人間だと、知らずに教え込まれていた力関係は覆ることがない。
それが"悔しさ"というのなら、そうなのかもしれないが、白神の言う『取られる』とは明らかに違うだろう。
背中を見て育ってきた事情があったとしても…。

二人してそんな話をしている時に、通りかかった森吉鷹巣(もりよし たかす)が足を止めてくる。
浅黒く焼けた肌は健康的で、短く刈りあげた頭髪も爽やかさを醸し出していた。
ダイビングが趣味とは本人から直接聞いたことがあった。
「あ、おまえら、週末空いてねぇ?海小屋、貸切で予約したのはいいけど、欠員が出ちゃってさ。一人単価が高くつくから、誰か探しているんだよね」
それこそ、誰かれ構わず声をかけているといった状態らしく、切羽詰まった状況に焦りも浮かんでいるようだ。
丸ごとキャンセルになれば、それはそれで懐が痛むのだとは察しがつく。
特にスケジュールがあるわけでもなく、バーベキューしたり海にもぐったりと好き勝手に遊んで、ワイワイと交流を図るのだろう。
こういった誘いはこれまでも良くあることで、その時々のメンバーと予算で参加したりしなかったりした。
人付き合いがあるから気さくに声もかけてもらえている。
「週末?うーん、オレ別にどっちでもいいけど」
「鳥海、行く?だったら僕も行こうかな」
鳥海の返事に藤里の声がかぶさってくれば、森吉が途端にニカッと笑顔を浮かべた。
「マジっ?!感謝~っ。何台かで分乗でいくんだけど、じゃあ俺の車、五城目んちに迎えに行ってやるよ」
そそくさと脳内で席の割り当てが変更されているのか、約束をとりつけられた。
流れ的に白神の家も回ってもらってもかまわないのだが…と言い淀んでいると、「じゃあ僕、鳥海の家に前の晩、泊まっているね」と集合場所が決定されていた。
無邪気な声に反論できないのは鳥海も森吉も一緒である。

一人暮らしの白神にとって、寝泊まりする場所はどこでもいいのだろうか…。
小さい頃からあれこれと制約を付けられていた鳥海にはどことなく羨ましいと思える部分でもあった。
外泊する場合には、必ず行き先と友人名を確かめられていたし、どんなことがあったのかと会話の中で引き出されていた。
つじつまが合わないことがあれば執拗に確認された。
大事にされた…とは聞こえはいいが、うっとおしかったのも確かかもしれない。
…藤里が一緒なら、何も言われないだろう…、とは、長年の間で培ってきた、自由を得るための手段だ。
自分の目的を果たすために、鳥海はいろいろと策を巡らせてきた。
信用できる人間をそばに置くこと。
一番のポイントである。

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コメント

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何だか
コメントちー | URL | 2013-08-11-Sun 01:35 [編集]
このエセ双子が可愛くて可愛くて仕方なくなってきた。

私も、そのお泊まり会に参加したいわ。
え?勿論監視役ですよ?
ねえ、腐レンジャーの皆様(笑)
さあ、夏の海に行きますわよ!
あ、その前に藤里くんがにぃに気に入られるように祈らなくちゃね。

ち「師匠、今度は海の家のオバチャンにならないと!」
し「えー、折角の夏休みなのに?」
ち「でもさあ、瀬見ちゃん来るかもだし・・・」
ni 「 もしかしたら、ひなちゃん一家も!」
さ「日焼け対策はバッチリよ」
す「カメラもバッチリ」

き「ホホホ。また、お金が入る~」
~~☀~~((o(´;゚;Å;゚;`i|i)o)) 紫外線は 強敵だわ。。。
コメントけいったん | URL | 2013-08-11-Sun 09:42 [編集]
ちーさん、今度の腐レンジャーの出動先は、海なの~~!
今日の新聞では「日本列島炎暑」と書いてあるくらいの時に~~!

瀬見っちが、来るかもしれないの!?
σ( ̄、 ̄*)ん~~ …(〃▽〃)。o ○…
えーい、分かった!
歌舞伎役者が 負けるくらいの白塗りで 行かせて貰います("`д´)ゞ ラジャ!!

でも 瀬見っちが来なかったら 
ちーさん!その時は スペシャルな生写真を撮って 私に頂戴ね♪(。ゝ艸・)


みなさん こんにちは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-11-Sun 10:11 [編集]
熱いですね~。暑過ぎですよね~。
みなさん、倒れていませんか~???

もう、40度ってなんだよ…という感じでぐったりです。

そんな中、鳥海たちは海に行くようです。
お誘いがかかりましたね。
青い海、白い肌、ピンクの○○(←) 楽しそうだねぇ。
え?!瀬見?!
/(゚×゚)\ 瀬見は行かないよ…(ボソ)
だってお友達の中には入らないもん…。

そろそろ話を進めないと何話になっちゃうことやら…。
スピンオフの方が話が長くなっていっちゃうよぉ(T▽T)

コメントありがとうございました。
コメントnichika | URL | 2013-08-11-Sun 12:58 [編集]
(´ー`A;) アセアセ  止まらない  BQお外で食べるの楽しいよね
パラソル用意 なぜか「かき氷やってます」ノレン  なんか商売気っが

けいったんさんに負けじと 全身白塗りして~~ ←貞子になってるよ!!!  彡(-ω-;)彡ヒューヒュー
にっちん こんにちは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-11-Sun 13:37 [編集]
バーベキューお外でやるのはいいけど、自分たちも黒焦げになっちゃうよ(;_;)

> けいったんさんに負けじと 全身白塗りして~~ ←貞子になってるよ!!!  彡(-ω-;)彡ヒューヒュー

貞子(爆)
肝だめしで涼しくなるかなぁ
誰が誰だか分からない塗りっぷりで~~。

腐レンジャー『『『\(\◇ ̄ )ヘン~(  ̄▽/)ゝシン!!! 』』』
きえ「私は手を加えなくても地で『化け物』だからなぁ…」

コメントありがとうございました。
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