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BLの丘
木漏れ日 6
2013-08-09-Fri  CATEGORY: 木漏れ日
煙草の匂い一つが何だ、と問われたらそれまでだ。
鳥海も身近に八竜がいるため、意識しなくても移り香が身を包むことがある。
それが他人にどう感じられるかは深く考えたこともなかった。
白神にとっても同じことで、これまで鳥海が気付かなかっただけで、どこかで浴びていたのかもしれない、と思うことはできた。
だけど『部屋の中』という、白神が一人暮らしする環境だからこそ、今までとの違いが胸に引っかかるのだ。
聞いてもいいのだろうか…。
躊躇いはあるものの、疑問は正直に鳥海の口からこぼれおちる。
「なんか、臭い…。前と違う感じがする」
「『臭い』ってひどい。掃除はしているよ」
「そーいう意味じゃなくてさ。えーと、なんだろう。なんか違うんだよ」
漠然とした感覚は具体的な言葉にはならなくてもどかしさも浮かんだ。
理系で過ごした鳥海は自他共に認めてボキャブラリーが少ない。…それも言い訳なのだけれど。
この話題に食いつく鳥海に、やはり思い当たるところがあるのか、白神は誤魔化しきれないとため息をひとつ吐いていた。

座ることを促されて、部屋の中央にある小さなテーブル脇に胡坐をかく。
もしかして、何か相談ごとでもあったのだろうか…。
デザートをエサにされたのか、誰もいない話しやすい空間に誘われた過程を振り返った。
白神はテーブルの上にシュークリームとあんみつを出すと、飲み物として作り置かれていた麦茶の冷水筒とグラスを持ってくる。
角を挟んで隣に座った白神は、鳥海と視線を合わせたあとで、そっと俯いた。
「鳥海って変なところでカンがいいよね」
「変なところ、は余計っ」
「それって何?天性の勘なの?」
「別に。なんとなく分かることだろ」
「ま、鳥海のいいところ、なのかな」
「お褒めに預かり光栄です」
フフフと笑われて、話をあやふやにしたいのかと過った。
でもなんと切り出したらいいのか探っている雰囲気も感じることができる。
誰だってうまく説明したいと思うものだし、同じような性格だから心の葛藤も理解できて待てた。
「まぁ、今更鳥海に隠し事する気、ないけど」
「『猫』の話が嘘だったら『贅沢プリン』と『濃厚ガトーショコラ』追加」
「絶対に嘘じゃないって言っておく」
ちょっとムッとした顔で白神は言いきった。
単に、これ以上奢りたくない財布事情なのだろうか…。

とにかく食べちゃおうと取り出されたシュークリームと抹茶あんみつを、半分こにしようとする。
鳥海だったら一人で平らげることも可能な量なのだが、白神にはいっぺんに消化できないそうで、食べ比べができる点で重宝されていた。
デザートを食べられた時点で燻っていた問題が霞むのは、白神に真剣に向き合っていない証拠か…。
「どっち先に食べるの?」と白神に聞かれて鳥海は「シュークリーム」と即答する。
掌ほどの大きさもある特大シュークリームはずっしりとした重さがあった。
こんな時は当然先に口をつけていいものだろうと、鳥海は手渡されたシュークリームに大きな口を開けてかぶりついた。
たっぷりとしたクリームが口の端からこぼれそうになって、慌てて指で口に戻し入れた。
「あっ、ずるいっ。鳥海、一口目、大きすぎだよっ」
手を伸ばしてきた白神に食べかけのシュークリームを渡す。
口いっぱいに広がる甘さをじっくり咀嚼する目の前で、今度は白神がパクリと食いつく。
減り具合を確かめてはもうちょっと…と二口目を頬張ろうとする白神を寸でで止める。
「ダメだよっ、一口ずつっていうルールだろっ」
こうやって『半分こ』ずつ分け合ってきたのだ、鳥海と白神は…。
いつの間にか作られたルールは多少の諍いは招いても、終わってみれば"食べ物の恨みは恐ろしい"事態を呼びこんだりしてこなかった。
お互いにどれほどで満足できるかの線引きがきちんと出来ている。
「皮はいいからクリーム食べたい」と白神に強請られて、渋々ながらも鳥海は食べる割合を変えた。
間違ってもクリームだけを吸い上げてしまう、などといった意地悪な食べ方はしない。
黙っていても、鳥海から食べ始めたのに最後の一口は必ず鳥海に譲ってくれるところも、暗黙の了解だった。
最後は残り少ないクリームがまとわりついただけのものだったけれど…。

口のまわりについたクリームを舌を伸ばしてペロリと舐め上げ、同じように白神も下唇の端に残した白いものがあり、そのままでいるとは気付いていないのかと指先が向けられる。
「おまえ、ここ、ついてる」
親指の腹で掬い取って、汚れた指を自分の口でしゃぶれば、目をパチクリとして驚いている白神が微動だにせず固まってしまった。
「何?」
今更驚かれることでもないと、こちらの方が不思議に思って見つめ返してしまう。
正直、こんなことは人前でも平気で繰り広げてきた鳥海と藤里だったのだから。
「あ…、あぁ、…鳥海のそれって…。あー、そっかぁ、鳥海だぁ」
何やら一人で納得している白神の脳内はまったく見えてこない。
鳥海は眉間の皺を深くした。
それとは対照的に、何故か、へへへと照れ笑いを浮かべられる。
「藤里?」
鳥海の疑問は分かるのだろう、白神はすぐに「違う違う」と両手を胸の前で振った。
間違っても鳥海に対して照れたわけではないと。

「この前、おんなじことされたことがあって、誰だっけ、誰かがよくするよなぁって思いだせなかったんだけど、鳥海だったんだってはっきりしただけ」
「そうなの?」
「うん。鳥海って空気みたいに動くから頭からすっぽり抜け落ちてたんだ」
…そりゃ、意識する対象にまつられていても困りますが…とは胸の声。
更に鳥海以外の人にされたことが甦ったのか、思い出して照れたのも可愛げがあるところだった。
それよりも気にするような相手ができたのか…ということが、先程鳥海が感じた"焦り"なのだと響いた。
恋愛を含んだ話をすることはあっても、ふたりともまだ『夢物語』の一部でしかなかった。
そんな感情を抱いたこと…。

「でもやっぱり兄弟だよね。声のかけかたとか、動きとかが絶妙なタイミングで同じでデジャヴ起こして、その時は『あれ?これ、誰かだぁ』っていつもみたいに安心してされるがままになっていたけど、後で考えたら恥ずかしいことされたなぁと思って…」
首をカクリと横に傾けながらペロッと舌を出した白神の後半の言葉は鼓膜から鼓膜へと通過していった。
意識するってそういうことなのか、ふーん、と納得しかけたものは、急カーブを描いて戻ってくる。

…『やっぱり兄弟』…???

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コメント

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っきゃ
コメントnichika | URL | 2013-08-09-Fri 18:31 [編集]
やっぱり兄弟!!!食いつきますよ==シュークリーム意外にね
え?ぇぇ?でしょうか?


この場を借りて きえちん すみません
今年はありえない天候不順  至らぬ表現ですが 丘のみんな様
穏やかに過ごされていますように。

ふはは
コメントちー | URL | 2013-08-09-Fri 18:37 [編集]
そっちねえ。ふふふ。
いつか、鳥海くんと鉢合わせちゃえ(笑)
そして、クオカードたくさん貰うんだよ。

可愛い子が半分こ。
しかも、シュークリームかあ。
最初に半分にするとかはないのね?
まあ、可愛いから何でも良いや←可愛いもの好き

ところで、村のところだと7があったけどやっぱりないよね?
私、隠れてるのかと探しちゃった(笑)

師匠、瀬見ちゃん来て良かったね。
毎日、楽しみだよ♪
まことに申し訳ございません
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-09-Fri 20:29 [編集]
もう、村から来てくださる方、本当にすみません。

新しく記事かいて、過去記事をupしようとしては、前後がぐちゃぐちゃになって…。
私の未熟なさばき具合でご迷惑をおかけしております。

ちーさま 7はあとで登場するから、いまはいい子で待っててね。
最初から半分こにしないのは、兄の教育があったからです。
双子の次に可愛い、"双子みたいな"同級生として見てあげてください。

にっちん、新しい話として食いついてくれてありがとー。
シュークリームが生む縁談???
この天候不順は心配ですね。
今回もニュースで地名見て、なんだか悪いことした気分になってました。
このシリーズ、西東北地域のお名前だったんですよね…。

さて、次は瀬見はどこで登場するでしょう。
コメントありがとうございました。
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