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BLの丘
木漏れ日 5
2013-08-09-Fri  CATEGORY: 木漏れ日
大学の敷地内で友人の白神藤里(しらかみ とうり)に出会った。
選択する講義が似たりよったりで、何かと顔を合わせて自然と仲良くなっていった人だ。
入学式に「おまえ、高校生?」とあからさまに問われて、「人のこと言えないっ」と文句をぶつけた。
鳥海を『高校生』と言うなら、白神は『中学生』だろ、と。
どっちもどっちだ、と言い放った周りの目は無視することにする。
漆黒のサラサラとしたストレートの髪はクセにもならなそうで少しだけ憧れる。
癖っ毛の鳥海は毎朝寝ぐせに苦労させられていたからだった。
その話をしたとき、「何?直していたの?わざと跳ねらせていたのかと思った」と言われて脱力した。
歯に衣着せぬ物言いは清々しいほどで、親しくなっていくのに時間はかからなかった。
遠方から来た白神が知らないことも多く、地元っ子の鳥海があれこれと世話を焼いたことも関係する。
「この辺は物騒だから近寄らない方がいいよ」と教えたのは、自分と似たような容姿があったからだろう。
ふっくらとした唇は黙っているときに吸いつきたくなる…とは、誰に聞いた話だったか…。
逆に口を開いたら辛辣だと敬遠もされていた。
鳥海にとって、隠し事をしなくていい点で信頼をおけるものになっていたのだけれど。

「鳥海~っ。この前のノートみせてよ」
「サボったのおまえだろっ。落第しろ、留年っ」
「そんなこと言わないでさぁ。僕、鳥海だけが頼りだって知ってるだろ?」
おだてられていい気になるのは現金な証拠だ。
無碍にできないのは、きっと白神の仕草にもある。
兄しかいなかった鳥海にとって、弟ができた気分でもあった。
どうにも放っておけないのだ。
世話好き…なのは、血筋なのだろうか…と時々父兄と重ね合わせる時がある。
「で、何があったの?サボるなんて珍しいじゃん」
学業において真面目な態度で接していることも知っていたから、半分心配していたとは素直には言わない。
しかし言いたいことが分かる白神は肩をすくめてみせた。
「さぼったわけじゃないの。大家さんちの飼い猫に仔猫が生まれてさ。それ、見せてもらってたら傷だらけになっちゃったの」
じゃれて遊んでいて"怪我をした"と発言する思考はいかがなものなのだろう…。
目立った筋肉のない細腕に見える引っかき傷は確かに痛々しいが、状況は"サボり"だろうと悪態をつきたくなった。
悪びれていないところに邪気がない。
「『若美庵』のランチで手を打ってやろう」
「ダメっ。あそこ高いから。ねぇ、僕、仕送りのビンボー学生だって分かってる?」
「だからランチにしてあげたんじゃん」
一駅先にある和食亭は、夜は大人の雰囲気を醸し出した"敷居の高いところ"の印象があったが、昼間であれば気軽に入れるたたずまいで、ちょっとした"背伸び"感を味あわせてくれる。
交換条件にはもってこいだとかけひきを試みるが、あっさりと却下された。
「鳥海が食べたがっていた新作…、どこのだっけ?」
それが何なのか、コンビニのデザートだと分かることも伝わって、差がありすぎじゃねぇ?と恨めしく思うものの、奢ってくれるだけありがたいか…と考えられるところは、やはり鳥海の人の良さなのだろう。
「三個」
「二個だよぉ。半分こして食べ比べしようね」
結局は自分も食べたいんじゃん…とは、何故か飲み込まれてしまう。
何故デザートを買うことに戸惑いを覚えるのか鳥海には理解できなかったが、白神が食べたい時、いつも付き合わされている鳥海は文句もない。
白神に言わせるところ、"恥ずかしい"らしいが、その神経も謎のままだ。

その日の帰り、忘れられないうちに、と近所のコンビニに向かった。
『絶品大きなシュークリーム』と『本格抹茶あんみつ』を買い込んで白神のアパートに寄り道する。
一人暮らしの白神の部屋は7.5畳のワンルームで、小さなキッチンとユニットバスがあった。
家がすぐ近くにありながら、外泊させてもらったことも数度あるアパートは、鳥海の両親も良く知っていた。
それもこれも、地域に密着した、表には出ない裏情報が不動産屋と電気屋で交わされた結果である。
口が堅いのは商売上なのか、信頼関係があるからなのか…。
どちらにせよ、守られているのだとは鳥海は気付くことがない。

上がり込んだ部屋に、鼻腔を掠めた匂いがあって、鳥海は眉間を寄せた。
これまで感じたことがない香りは、だけどとても馴染みがあった。
『煙』…。
「藤里、おまえ、煙草吸った?」
素朴な疑問はすんなりと喉からこぼれた。
二人とも喫煙者ではない。嫌煙者でもなかった。
自分が訪れるように、他の友人が訪れても何の問題もないはずなのに、これまでの付き合いから身近にいる喫煙者が思い出せない。
「え?…吸わないよ、そんなの…」
一瞬だけ見えた動揺を、鳥海は見逃さなかった。
…なんだろう、この焦燥…。
ずっと同じような存在だったのに、気付かないうちに"大人の階段"を昇られているような錯覚。
ふと過ったのは、"サボり"は真実なのだろうかという、疾しい疑惑。

思考を襲ったのは、"置いていかれる"焦りに間違いない。
何より、刺激した香りは『兄』と同じもので、余計に"大人"を浮かばせていた。

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コメント

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ん?
コメントちー | URL | 2013-08-09-Fri 03:13 [編集]
あら?
また、気になる子が出てきたよ・・・

黒髪の可愛い子が(笑)

きえちん、私の頭の中フル稼働してるんだけど。
藤里くんのお相手ってまさか?
で、あーなってこうなる?
それとも、こうなってこうなってこう?
また、明日か・・・待ちきれない

Re: ん?
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-09-Fri 10:49 [編集]
ちーさま こんにちは~

> あら?
> また、気になる子が出てきたよ・・・
>
> 黒髪の可愛い子が(笑)

出てきちゃった(゚∀゚)
だってこれだけの登場人物じゃ淋しいでしょ~♪
鳥海だって友達の一人くらいほしいよね。

> きえちん、私の頭の中フル稼働してるんだけど。
> 藤里くんのお相手ってまさか?

Σ (゚∀゚;)?!
き、気付かれているっぽい…(汗)
…いや、やっぱりあっちにしとこうかな…。(←言われてどっちにしようか悩み中に変更された)

> また、明日か・・・待ちきれない

このシリーズ、何気に受け子ちゃん、天然だからね。
がんばって書くから気長に待っててね~ヽ(゚∀゚)ノ
いっこはストックあるからもう一個書けたらまた昨日みたいにするかも(?!)
コメントありがとうございました。
ドッチ?キョロ(∇ ̄ )(  ̄ ∇)キョロ?ドッチ
コメントけいったん | URL | 2013-08-09-Fri 17:20 [編集]
黒髪だから S氏?
同じ匂いの煙草だから H氏?

どちらでも きえちんが思う通りにして頂ければ OK♪(○ゝз・)b⌒☆

でも S氏なら この話しは進展しないもんねー
なら S氏は 元彼かな?

まぁ どちらにしても 世間は 狭いって事ですよね!
(。・ω・)))゚ω゚;(((・ω・。)狭い~~...byebye☆
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