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BLの丘
木漏れ日 2
2013-08-08-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
すみません、またやってもぉたようで…。
足踏みされた方、本当にごめんなさい。



立ち止まっているわけにもいかず、流れにそって彼と一緒に外に出る。
「あのっ」
他の客の迷惑にならない端に寄ったところで、彼は店員から返却されたカードを差し出してきた。
使いきった八竜からの駄賃は廃棄してくれとお願いしてきたので、こちらは残高があるはずだ。
「?」
意味が分からずに鳥海が見上げると、「あげるよ」とにっこり微笑まれた。
目鼻立ちの通った爽やかな笑顔は一瞬人を惹きつける。休日だと思わせる容姿に堅苦しさは見られない。
「え?で、でも…? あっ、っていうか、それより払ってもらっちゃって…っ。あのっ、うち、すぐそこなんですっ。にぃ、いるから、…あ、兄貴いるからお金もらってくるんでっ」
いくらなんでも見知らぬ人におごってもらうわけにはいかないと、咄嗟に鳥海は差し出された手を押し返し、今後を考えた。
『知らない人に付いて行ったり、物をもらってはいけません』とは、幼い頃から耳にタコができるほど聞かされた言葉だった。
親の仕事柄、近所でも鳥海は比較的顔が知られている。
学校帰り、『五城目電気の息子だろ?おじちゃん、お父さんのところに行くから、一緒に乗せていってあげるよ』と声をかけられ車に乗せられそうになったことは幾度あっただろう。
『お宅の子供が食べた品が実は…』と詐欺まがいの事件に巻き込まれたこともある。
食べてしまったものを吐きだすわけにもいかないと、母親は、今回だけは…と渋々財布を開いた。
近所づきあいのこともあったから、何かと理由をつけて(それは『先日ジュースをもらったから』とか『いつも息子が世話になっているので』とか些細なことで)格安で請け負っていた家計が裕福なわけがなかった。
父親はとにかく情に深い人である。
相手の身元がはっきりとしていれば、急な呼び出しにだって対応してしまう。
『洗濯機の調子が悪い』と行ってみた先で、原因が水道にあると判明してはそちらの修理までして、請求書には、専門職ではないのでどれくらいかな、と結局は部品代だけ書きこんでいた。
近所に親しんだ『五城目電気の息子』は、親と同じように誰からも好かれていたので、やはり誰からも声をかけられる。
外でバカなことはできない、と悟ったのも少年時代だった。

鳥海が「少し待っててください」というのを、目の前の男は「いいよ、そんなの」と相手にもしてくれない。
それどころか、持てあましていたQuoカードを鳥海の買い物袋に滑らせてきたのだ。
「あっ!」
「俺、こういうの持ってても、つい使い忘れちゃうんだ。後片付け代だと思ってもらっておいて」
「そんなっ、困りますっ。ホント、うち、すぐなんですっ。あ、じゃあ、これ、丸ごともらって500円返すから…っ」
「だからいいって」
クスクス笑っては、話を流されてしまう。
だけどどうにも鳥海の中では納得ができなかった。
場所が近所のコンビニだけに、『鳥海がトラブった件』が家人の耳に入るのも時間の問題である。
それこそ『近所に親しんだ家族』はどこでも平気で世間話を繰り広げてしまうのだから、店員との会話など日常茶飯事だ。
「良くないですっ。あーっ、もう、にぃ、出てくるかな~? …っ、やっぱオレ行ったほうが早いよ~ぉ」
すっかり寛いでいた八竜が衣服を身につけているか、と頭を過れば、どれが一番相手を待たせずに済むかと身体が動きだそうとする。

店内へと出入りする人を横目に、この人も忙しいのだろうかと慌てた。
足止めを食らわせているのは鳥海で、鳥海が去ってしまえば戻ってくるのも待たずに消え去っていそうだ。
「あの、急いでいるんですよね…?」
打って変わって神妙な態度に出た鳥海に、男は益々笑みを深める。
「うん…って言ってもいいけど、そんな状況だったら君を置いて帰ってたよ」
どこまでも崩れない態度は、雑談に付き合っている時点で真実なのだろう。
事実、彼は微塵もそんな素振りを見せずにいる。

新しく店内から出てきた男に、どちらともなく視線を走らせた。
少し足元がふらついた男は、先程鳥海の尻を撫でた酔っ払いだと気付いたせいだ。
相手も分かったようにこちらを見てくる。
またニヤリと笑われて、思わず身体が飛び退けようとする。
「あんたの尻、締まりが良さそうだよなぁ。へへへ、こんな昼間っからホテルかぁ?」
卑猥なセリフを吐かれることに、どっちが"こんな時間から"だよっと、頭に血が上りそうになった。
それを男に止められる。
「放っておけばいい。ほら、早く帰って」
促された言葉を逆手に取ることができた咄嗟の判断は、後々自分を褒めてやりたいと思うことになる。
親父が「なんだ、ふられてるのか?」と自分たちに絡んできたことも追い打ちをかけた。
「早く行こっ」
彼の腕を掴んで、歩きだした。
もちろん、自分ちの方向へ。
付いていくことがダメなら連れて帰るのは許されるだろう…とこちらも訳の分からない思考が掠めていった。
男は突然のことに目を瞬かせていたが、大人しく鳥海の動きに従ってくれる。
本当に時間には追われているわけではないようだ。
酔っ払いは追ってくることはないし、鳥海はすぐに見えた看板を指す。
「ほらほらっ、あそこっ。『五城目電気』ってあるでしょ」
同じように視線を向けてくれる男をまた仰ぎ見る。
「五城目?」
何か考えている眼差しが見えたが、とにかく返金を急ぎたい鳥海には、怪しいものではないですと伝えられたことに満足を得ていた。

逃げられないように腕は離さず、少々急ぎ足で進む後ろをついてきてくれる。
半分は諦めの境地でもいるのだろうか。
家に着いては、仕事場用の玄関ではなく自宅側に押し入る。
「にぃ~っ!!お金たんなかったよ~っ!!」
「あぁぁっ?!」
のどかな住宅街に響くいつもの声は、客人がいるとは思っていない証拠だった。
「でさぁ、変わりに払ってくれた人がいて~」
そこまで伝えただけで、ドタバタとこちらに向かってくる慌ただしさが走った。
すぐにも姿を現した八竜はきちんと服を着ていた。
「てめーっ、俺はちゃんと金渡した…って…っ?ええっ?!瀬見っ?!」
顔を合わせた途端に八竜の声は驚愕に変化して目を見開いた。
文句は連れ込んだ人間によってかき消されたらしい。

「『五城目』っていうから、まさかと思ったら、八竜の家だったのか…」
驚きは彼も同じだったようだ。
瀬見(せみ)、と呼ばれた男は、鳥海と八竜を見比べていた。
…へっ?!知り合いなの?!
こちらも双方に顔を巡らせる。
人付き合いの良さは、兄にも言えることだったけれど…。
「どうしたんだよ、おまえ…」
状況が把握できない八竜は、束の間の無言を生みだしていた。

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コメント

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おお!!!
コメントnichika | URL | 2013-08-07-Wed 19:49 [編集]
あの双子にでた方ですよね~~~~
ウフ この方にも 素敵なCP成立になるのかしら♡~~♡
なにはともあれ 楽しみです==
にっちん こんばんわー
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-07-Wed 20:43 [編集]
痴漢つながり… はい、そのままですっ。

キーワード出しておいたからわかりやすかったかな。
それ以外にもヒントはあったんだけどね(目次というとこに)

過去の連中がうまくまとまったから こいつらにも幸せを…と思いました。
単にコメ欄にあった読者様からの  絶対に恋人いるよね~っっ
という意見に刺激されただけでした。

どんな話になるかは分かりませんがお楽しみいただければと思います。
あまり過去作とは交わらせたくないけど(この話だけでたのしんでいただけるような…)
でも、影で分かるような、さりげなさも盛り込んでいけたらいいかな。

いつもいつも読んでくれてありがとーーーー
コメント感謝です。
あーっ
コメントちー | URL | 2013-08-07-Wed 21:13 [編集]
せみちゃん!瀬見ちゃんじゃないのー!
懐かしいなあ。

そうか、瀬見ちゃんの彼氏が出来るまでの話ね。
にゃー、楽しみ~。
でも、瀬見ちゃんたらハギーんとこの若い子たら仕込んだんだよねー。
まあ、あっちゃんとくっついてくれたけど。
(若美兄ちゃんは覚えてるのに、何故弟の名前が出ない?)

じゃ、あの場面も出てくるかな?
楽しみにしてよっと。

・・・あん時の子と違うとか・・・
アリだったりするのかな?
わかったわかった
コメントちー | URL | 2013-08-07-Wed 21:25 [編集]
マムちゃんこと真室くんでした。
あっちゃんのカワイコちゃん。

良かった、思い出せて。
細胞、死ぬとこだったぁ!

明日が楽しみだあ・・・
あ、その2が明日のはずだったから明後日?
えー、やだあ!
横レスです~
コメントnichika | URL | 2013-08-07-Wed 21:56 [編集]
ちーさまの好きなCPの 隠れキャラですね

もう きえちん 新作ですってば! 影の部分とか 読み味あわせてくださいね
今日からまた猛暑日 水分補給&ミネラル補給+BL補給して
みんな様のりこえましょう?
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