FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
意外な展開 8
2013-07-31-Wed  CATEGORY: 珍客
大騒ぎになった。
当然といえば当然のことなのだが…。
湯沢が日本で写真展を開くということだけで話題性が高まったのに、それが息子との共演となれば、更なる騒動を呼びこんできた。
…いや、湯沢に子供がいたことは、すでに知られた話だったのだし、離婚したことも、海外に生活拠点を移し、寡黙な状況で暮らしていたことも知る人は知っていた。
だが、本人に対しての情報はそれとなく手に入れていても、残された家族に対しての興味がなかった証拠で、英人になど関心も向けられていなかったのだ。
蓋を開けてみれば、最近注目をされ始めていた画家が『息子』だったのだというのだから、飛びつかないわけがなかった。
業界は一様に興奮し、誌はこぞって特集を組みたがったし、取材を申し込む社もキリがない。
知識がなくても、二人の見目に惹かれたところがあって、一番の話題にされた。
もともと英人はその容姿から、話題に出されることも多かったが、親子共々…となれば喰いつく人間も膨れ上がる。
ワイドショーも、少ない情報をこじつけて、予想して、また期待を寄せて、日々世の中を騒がせてくれる。
英人の母親の実家である『暮田家』までカメラの目は向けられたが、大きな権力が全てを踏みつぶした。
そこは『地域』に根付いた暮らしを守るものもあったのだろう。
口を閉ざしてくれたのは、やはり孫である英人の幸せを願っていたからかもしれない。

『臭いものに蓋はできない』とは、まさに神戸が説いたとおりだった。
どれだけ止めようとしても、人の口は開き続ける。

「最低限の情報だけ開示すればいい」と神戸は言い放ち、『榛名』の力をもって、囲ってしまった。
そう、この時点でバックに『榛名』があることを伝えたのだ。
特定の業界内では、弟子入りしたり、師匠の名を継いだりとは良く聞く話。
孤児となった英人の才能を見かねて『榛名』がバックアップした…とは現代の話で、今となっては英人が『榛名』の姓を名乗っていることも、何ら不思議に思われなかった。
『親子で和解した』と、書き立てる人もいたが、真相は明らかにされていない。

「カメラマンの姿を撮影するのは苦痛だ」というスタッフの嘆かわしいセリフをものともせず、神戸は作品の一部を載せたパンフレットを作製した。
当然、英人と湯沢の紹介文付きだ。
中心に折り込む形の、四つ折りの紙は、見開きの両側にそれぞれ、英人と湯沢の写真と簡単なプロフィールを載せていた。
「履歴書に貼る写真を撮られる気分だ…」と湯沢はぼやいていたが、仕上がった完成度に、また自分のことを差し引いて評価を下していた。
たった一枚の紙なのに、旅に発つ前のワクワク感を植えて行ってくれる。
自分の目で見ろ、と促しているものであり、最低限の情報は、より興味を誘ってくれた。
美術に興味のない人ですら、『異空間』を味わう、また『素になれる』、無のささやきがある。

一枚の絵から、そして、一枚の写真から、自分と重ねて想いを馳せる人は少なくない。

数多くあるうちの中から、たった一枚でいい。共感できるものを見つけてくれたら、嬉しい。
それは英人も湯沢も違わない思いだった。

しかし、『絆創膏』と冗談めかしたタイトルを打った展示場に、初めて足を踏み入れた英人は、ただ瞠目していた。
開場前の確認を求められてのことだったが、この寸前になって意見を言う気など最初からなかった。
神戸に一任していたから、作品の展示数も、配置も英人はいつもと変わらない心境でいた。
明日には一般公開となる。
お膳立てのような記者会見の場すら持たせなかったのは、秘密主義の神戸の策ならではなのだろう。
英人が興味を挙げるとしたら湯沢の作品だっただろうか。
こちらも最後まで秘密にされたのだ。
展示方も斬新だった。
見て回るだけの空間だけでなく、壁に凹凸をつけて、見方を変えていく。
英人の絵の合間に、湯沢が映した空や、英人の作品と関連付ける小物をピントをズラした形で彩っていく。
絵では単なるイメージが、写真を添えられることで現実化していく。
何もかもが身近にあるから、共感することも多い。

どこまでも見守ってくれた存在は、まさに、どんな傷も治してくれる『絆創膏』なのかもしれない。

一瞬、英人の作品を飾り立てるだけの脇役かと思われても、最後のコーナーを曲がった先は、湯沢の写真で溢れていた。
朝日の前、陽だまりの中で欠伸をする野良猫の表情を映したものだったり、暑い日差しの中、木陰に入って涼をとる老婆の様子だったり…。
"変わらない"日常がそこにある。
特別など何も望まない姿が、映し出されているようだった。
湯沢が長年求めて、憧れた世界なのだろう。
人のぬくもりが伝わってくる作品の数々に、涙がこぼれそうになる。

最後、出口付近に、一際大きく引き伸ばされた写真には目を見張った。
英人も千城も全く意識していなかった。
どこかの海辺で、腰を下ろした二人が、寄りそうように身を預けている。
千城は今にも額にくちづけそうな位置で、英人は安堵の表情を浮かべて"幸せ"という空間にいた。
街灯などほとんどない暗闇の中で、綺麗なほど浮かび上がった姿はフラッシュを使ったものだ。
ここまで、はっきりと、その姿を晒していたのか…。

日の目を見ることのなかったものだ。
あの時、…異国の地で湯沢と再会してしまった時、千城は何の迷いもなく、「今撮影したものを消せ」と憤った。
『父』と教えられなかったら、どんな権力を使っても、消滅させたことだろう。
いかに自分たちが幸福の中にいるのかを知らされぬまま…。

映しだした中の笑顔は、全ての満足を湛えていた。
唯一無二のもの。
相手がいて、そばにいられて、お互いに与えて与えられる喜びが漂う。

英人は振り返って、照れくさそうに笑う湯沢を見つめた。
「もしかしたら、『生きよう』と教えてくれた"原点"かもしれない」
以前にも増して小さく映る身体が、年齢を感じさせる。

英人と出会ったことで、後悔し、巣食うばかりだった心が、救われたのだと…。
この人のために生きようと再び思わせてくれた…と。
そのために、どんな努力も惜しまなかった過去が伺える。
自分の身を隠しても、英人だけは守りたかった親心。

『ライバル』…。
湯沢のその言葉は千城だけに聞こえた。

傷を覆った…。
そのことは確かに今回のコンセプトに合うのかもしれないが、改めて千城とのツーショットを突きつけられては落ちつかない。
全国民に、世界中に広められるのだ。

ただ、それこそが、千城の本当の狙いだったのだけれど…。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ 
ポチっとしていただけると嬉しいです(〃▽〃)

シリアスに突っ込むほど、脇役に逃げたくなる…困った…(/_;)
別宅写真館 更新してきました。→別宅
関連記事
トラックバック0 コメント7
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
-絆創膏-
コメントけいったん | URL | 2013-07-31-Wed 07:17 [編集]
心に 深い傷を負った時 貼れる絆創膏が あれば
ジクジクと 膿を持つ傷が 少しでも 早く 治るのに。。。

英人の絵と 湯沢の写真が 数多く展示されている中で そんな一枚が 見つかれば いいよね♪

暗く沈んだ顔が、笑顔に
冷たく凍えた心が、温かに なるような…

痛ヵッタネ-(。´・ω・)っペタ(θTωT)oァゥ
(o゚Д゚o)マッ!!
コメントけいったん | URL | 2013-07-31-Wed 09:19 [編集]
ちーさん、風邪を引いたの!

私が住んでる大阪は、ずっと暑くて~~!
気温が 30度超えなくても ジメジメ ムシムシだし…( iдi ) ハウー

関東の方は、暑くなったり 肌寒かったりと 体調管理も ままならないようですね。

カメラマン1号のちーさんが欠席なので カメラマン2号のすーさんに 頑張って貰わなきゃ!!
p(*・ω・)qガンバ←ΣΣ( ̄◇ ̄;)!エェー!プレッシャーが…
けいったんさま こんにちは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-07-31-Wed 17:35 [編集]
私も絆創膏がほしい…。

血がうずくの~っっっ(←絶対に違う意味ですね…)
腐は危険です。

ぬくもりの中で成長していってほしいですね。
笑顔って大事だと思います。
笑っていられるだけで、なんだか幸せになれる。

あ、ちーさま、隊長不良ってらしいですよ。
早く元気つけて、アヤシイ写真をとってほしいものです。
佳史でもぶる下げておこうか…。いや、成俊のほうがいいかな。
すーさんっ、どんな危険度を撮影してくれるんだろう (///∇//)

え?
日生初めての飛行機編???
ニューヨークに一緒に飛んじゃうの~~~???

コメントありがとうございました。
ゲホッゲッホッ
コメントちー | URL | 2013-07-31-Wed 19:38 [編集]
ひなちゃんの初海外・・・私も行くー!
佳史さんに成くん・・・?
何、それ~。早く、治さなきゃ。

でもねー、本当長くなるからみなさんは気を付けてね。

カメラマンちー。
妖しい写真の為に頑張ります←仕事してっ。

隊長不良に笑いました。
確かに隊長不良だよねっ。
ちーさま おはようです
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-01-Thu 08:58 [編集]
風邪大丈夫ですか~?
無理しないでね~。

うちのパソコンはとんでもない誤変換をしてくれるので時々困ります。

やっぱり佳史と成には食らい付いてきましたね(笑)
是非是非激写していただきたいです。

☎~
「栗本先生ですか?」
『あれ、成俊君?どうしたの?』
「なんか、光也が風邪っぽいんですけど…」
『佐貫が風邪?鬼の撹乱か?』
「あの~、診察…」
『成俊君を診てくれっていうのなら喜んでいくんだけどねぇ』
「お忙しいみたいですね…」
『日頃の疲れも出ているんだろ。夜遊びしていないで眠るように言っておいて』

背後『え?佐貫が風邪?』
『望が心配することじゃないよ。若い子相手に若ぶって無茶したんだろ』
『裸で寝るなって言っとけば?』

成俊「…くっついてあげてるもん…(←人間湯たんぽ)」

コメントありがとうございました。
きゃー
コメントちー | URL | 2013-08-04-Sun 14:40 [編集]
きえちん、素敵なss ありがとう!
豪華出演!←ちー的に(笑)

ちょっとヤキモチ焼く、佳史さん。
可愛いねえ。

成くんは、いつも可愛いけど←ちーだけ?
成くんが湯タンポになってるの見てみたいなあ。

きえちん、ありがとうね!
Re: きゃー
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-05-Mon 09:18 [編集]
ちーさま こちらにもどうもー。

> きえちん、素敵なss ありがとう!
> 豪華出演!←ちー的に(笑)

はーい、脇役を豪華に(←)登場させてみました~。
たまには大人しく寝ていろ と佳史は思っていることでしょう。
…いや、相手が若いからいいっていうことじゃなくてね…。

> 成くんが湯タンポになってるの見てみたいなあ。

あまり一緒に寝られる時間がないから、ついついくっついていっちゃうんでしょうね。
えぇ、きっと可愛いですよ(←ケッ 勝手にやってろよ byきえ)

> きえちん、ありがとうね!
こちらこそコメントありがとうございました。

トラックバック
TB*URL
<< 2019/08 >>
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.