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BLの丘
淋しい夜に泣く声 73
2009-10-31-Sat  CATEGORY: 淋しい夜
3日目の朝、予想以上に早く目覚めた英人と榛名は、二人とも行ったことのない北部の町に行くことにした。
時間的に大丈夫だからと榛名に太鼓判を押されれば、英人はただ付いて行くだけだ。
榛名の荷物と共に慣れた手付きで英人の荷物の整理をされ、神戸に預けるように伝言を残した榛名はチェックアウトまで済ませて駅舎に急いだ。
ベルギーまで近い街へと連れて行かれのんびりと街並みを散策したあと、もうひとつの街を歩いてパリに戻った。
どちらも古風な街並みで、建造物を見ているだけで英人は湧きあがる何かがあった気がしたくらいだ。
榛名も初めての場所だというだけに、二人で盛り上がる感動があって英人は心を躍らせた。

英人だけではすんなりといかない移動の手続きも榛名が一緒であればスムーズで、予定時間通りにパリにある空港に戻った。
移動する電車の中で、空港に辿り着かなければいいのに…と何度も英人は思った。
一緒に居る時間に、忘れていたが離れなければならない時がすぐそこに迫っている。
何もかも理解して大きく羽ばたけるはずだったのに、いざその瞬間が来たら、とてつもなく脅えている自分がいた。
隣に座った榛名の指にそっと自分の指先を絡ませてみる。
嫌がることもなく、むしろ榛名も同じ気持ちだったのか、力強く指同士を絡めて握り返してくれた。

空港に辿り着けば、すでに着いていた神戸が英人と榛名を迎えてくれた。
神戸と榛名がパリで出会うのは今が初めてだった。
「あと一週間、宜しく頼む」
榛名から告げられた言葉は神戸でも意外だったようで、下手に出る榛名に神戸の方が戸惑っていた。

「らしくないね…」
昔からの榛名を知れば、そんな台詞もこぼれてしまうのか…。
伏せ目がちに頷いた神戸は、預かっていた英人のチケットなどを榛名に手渡し、搭乗に関する手続きを榛名に任せてきた。
英人は過去に一度海外旅行をしたことがあるとは言っても、無知のどん底みたいなもので、ここまでだって神戸におんぶされてきたようなものだ。
「出発までには戻ってきてよね」
他のスタッフと待ち合わせているから…と神戸は二人を置いてカフェへと吸い込まれていった。

英人は一瞬焦ってしまった。
神戸がいなければ自分はどの飛行機に乗ったら良いのかだって分からない。こんなところで放置されたら、それこそ榛名と一緒に日本に帰る手続きを取ってほしいと泣きつきそうだった。
榛名は気にした様子もなく、英人を連れると航空会社のカウンターに向かい、流暢な英語で全ての手続きを終えてしまったようだ。
「疲れただろう。少し休もう」
英人の搭乗に関しては何一つ告げられないまま、そう言って榛名はファーストクラス利用客専用のラウンジに英人を連れ込んだ。
英人は面食らっていたが、榛名がカウンターの女性と何かを話していても理解できるはずもなく黙りこむしかない。

ロビーなどよりもずっと静かな空間。ゆったりとしたソファが幾つも置かれていて、ドリンクや軽食のサービスまである。
ちょっとしたパーティションで仕切られたところに榛名が腰を下ろしたので、英人はテーブルを挟んで前に座るべきか隣に座ってもいいのかと視線を彷徨わせた。
クイと顎で横の席を示されると、英人は安心したように隣に座った。たとえテーブル一つの距離でも離れていたくなかった。

「飛行機に乗るんじゃないの?」
ようやく小さな声で尋ねてみれば、それこそ意味が分からないという感じで榛名がキョトンとする。
「もちろん。だがまだ時間がある。それとももうゲートに向かいたかったか?」
榛名は「そんなに俺と早く別れたかったのか?」と言いたげに英人の唇に親指を這わせた。
こんなわざとらしい仕草を取られたら、場所などわきまえずに榛名に抱きついてしまいそうだ。
英人は空港内のシステムなどは理解していなかったから、搭乗の手続きを取ったら榛名と別れるのだと思っていた。
神戸も立ち消えてしまった現在、飛行機に乗るまでの場所に誰が案内してくれるというのか…。
榛名の質問にぷるぷると首を振った。
「違うけど…。だって、俺、何も分かんないんだよ」
不安を表せばクスリと笑われる。
「大丈夫だ。ちゃんと案内してやる。数字くらいは読めるだろう?」
小馬鹿にされたような返事をもらっては不貞腐れるしかない。
「出発までまだ1時間はある。それにどうしても一人が不安だと言うなら係員でも付けさせる」
人目につかないのをいいことに、榛名は英人の頭を胸に引き寄せた。
迷子の子供かよ…と内心で口をとがらせた英人はそれ以上榛名に何も言えなくなった。

たった一時間という時間はあっという間に過ぎる。何を話したのかも英人は思い出せないくらい、榛名の掌の温度を感じて声を聞いた。
パーティションに隠れているのをいいことに、幾度か音を立てないキスを交わした。
いつ人に見つかるかもしれない緊張感がまた更なる興奮を煽る。

国内を移動する英人の搭乗口までは榛名は来ることができなかった。
榛名と共に来られる最後のゲートの前で英人に必要な物を一つずつ説明されて手渡される。とりあえずこの全てを手放すことなく言われた番号のゲートラウンジまで辿り着ければ神戸に出会えるはずだと告げられた。どうしても分からなかったらこれを身近にいる誰かに渡せと、フランス語で書かれたメモを渡された。意味など分かるはずもない。
どこまで頼りないと思われているのか、榛名に心配をかけたくなかった英人は力強く頷くしかなかった。

「またすぐに逢える」
こんな場所でも榛名に抱き締められて、英人は戸惑い、だけど嬉しくて、名残惜しさを抱えながらも最後のゲートをくぐった。
姿が見えなくなるまで榛名はそこに居てくれた。間もなく、榛名もこの地を離れる…。その時間を考えれば、英人は進まなければいけなかった。

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コメント

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こんにちは、名無しです。
コメント | URL | 2009-10-31-Sat 13:06 [編集]
う、ら、や、ましい~
私も榛名のような恋人ができたらって、
想像してしまいました。
暖かくて、英人を愛している榛名はやっぱかっこいいっす!!
か、かわいいいぞ英人~
コメント甲斐 | URL | 2009-10-31-Sat 14:23 [編集]
ええそうです、迷子の子供ですって。
パパの手をしっかり握って離したくないかーいーお子ちゃまなヒーくんです。
まるで、このまま何年もあえなくなる別離に震えるかのように怯える心持です。
こんなんじゃあ、心配でパパは日本に帰れませんよね。
神戸さん宜しく頼むよ。
Re: こんにちは、名無しです。
コメントきえ | URL | 2009-10-31-Sat 16:35 [編集]
名無し様
こんにちは。

> う、ら、や、ましい~
> 私も榛名のような恋人ができたらって、
> 想像してしまいました。
> 暖かくて、英人を愛している榛名はやっぱかっこいいっす!!

榛名をかっこいい、言っていただきまして誠にありがとうございます。
周りには冷たいけど、英人に関してだけはピンク色の世界を繰り広げます。

いい加減にしろよ…と私は毎度つっ込みが入っていますが…(汗)

名無し様にもぜひぴんく色の世界が訪れますように。

コメントありがとうございました。
Re: か、かわいいいぞ英人~
コメントきえ | URL | 2009-10-31-Sat 16:53 [編集]
甲斐様

こんにちは。

> ええそうです、迷子の子供ですって。
> パパの手をしっかり握って離したくないかーいーお子ちゃまなヒーくんです。

私の頭の中で、話がこんがらりはじめました。
どうしても3歳児の英人が抜けない…
パロディで書いちゃおうか…みたいな状況です。

> まるで、このまま何年もあえなくなる別離に震えるかのように怯える心持です。
> こんなんじゃあ、心配でパパは日本に帰れませんよね。

現在英人視点なのでパパ(千城)の心情を書けないのがなんとも残念な気がしますが…。

心を強く持って再会の時を待っていただきたいものです。

コメントありがとうございました。
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