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BLの丘
珍客の訪れ 番外の番外(しかも その1)
2013-07-13-Sat  CATEGORY: 珍客
日生(ひなせ)が和紀に連れられて家を出たのはお昼ご飯を食べる前のことだった。
今日は和紀も講義が午前中だけで終わるので、家で一緒にごはんを食べようとは、出ていく時から聞いていた。
それが、途中で周防からかかってきた電話で、予定が変わった。
清音の話では、周防が取引先の人物とお昼を共にするはずだったのだが、相手側の体調がすぐれないという緊急事態に、キャンセルになったそうだ。
そこで周防は、予約自体を取り消してしまうのも憚られて、また清音の手をあかせる気遣いもあって、和紀と日生を呼び出したのだ。
外食の席に清音がついて回ることはまずないと言っていい。
“子守り”がなくなれば自由時間にしてあげられる。

「ひな~ぁ。親父とご飯になっちゃったけどいいよな?」
和紀は帰宅するなり、日生を抱き上げて確認を求めてきた。
すでに聞いた話で、外食は嫌いではなかったし、素直に頷く。
清音が昼ごはんの用意をしていないのも知っていたから、残されたらごはんを食べられないという危機感もあった。
少し早いけれど、会社内で探検ごっこをしようと促されて、その端で清音がタクシーの迎えを電話で頼んでいた。

玄関まで見送りに来た清音は、いつもの外出用のトートバッグを手にしていた。
「和紀さん、日生さんの着替えと麦茶を用意しておきましたから」
和紀はそれを見て、しばし考えてから「今日はいいよ」と断った。
「ごはん食べに行くだけだし。麦茶ならどこでも買えるじゃん」
せっかく用意してくれたことに対して申し訳なさは募ったが、極力荷物は少なくして出掛けたい和紀の心理が言葉となって表れた。
確かに大きな荷物である。
若い和紀が持って歩きたい品でないのも理解できる。
それでも…と清音が悩む仕草を見せるのを視界に入れては、強い態度で拒絶するのも悪く思えて、会社に置かせてもらえばいいや、と手に取った。
日生はその中におやつが入っていることも知っていたが、和紀が嫌がるのなら、「持っていって」とも言えない。
だから渋々でも和紀がバッグを持ち上げてくれて心が躍ったのだ。

玄関を出ると室内とは違ったじっとりとした空気が肌を撫でた。
「相っ変わらず、あちーなーぁ」
和紀はぼやき、さすがにこの暑さの中で日生を抱っこしようとする気は起きなかったのか、手を繋がれるにとどまられた。
マンションのエントランス前にタクシーが横付けされて待っていてくれて、自家用車でない車に乗るのも久し振りだと、日生は楽しんでいた。
家の中にいることが多い日生にとって、出掛けられること自体が嬉しかったのだ。

車窓から見える風景にも目を奪われる。
今日は良いお天気なのに、傘をさしている人が多いな、と漠然と思っていた。
そして外を行き交う人々は一様にどこか不機嫌そうにも見える。
周防の会社はビルの中にあり、大人があちこちにひしめいていて気後れしてしまう。
心に湧く不安が自然と和紀を握る手に表れてしまって、ニコリと笑われた。
「ひな、誰も怖くないよ。お兄ちゃんがずっとそばにいてあげるからね」
和紀がそばにいてくれれば、何も恐れることはない。コクンと頷き返し、やがて周防がいるのだという部屋に入った。
周防は日生を笑顔で出迎えてくれたが、和紀が『鬼ごっこ』を提案すると、あからさまに嫌な顔を見せた。
「おまえは会社をなんだと思っているんだ…」
呆れたため息付きで、静かに日生に「こういう大人になるなよ」と訴えてくる。
もちろん冗談であるのだけれど。
「この部屋にいていいから」と周防は言ってくれたが、「飽きる」と答えたのは和紀だ。
「ひな、前の広場に噴水があったよね。あっち行って遊んでこようか」
周防の仕事が一段落するまで、もうしばらくの時間がかかってしまうのだとは日生でも分かることだった。
邪魔をするようなことをして、うっとおしがられるのも、迷惑に思われるのも嫌だ。
和紀が「外に遊びに行こう」と言うのなら、それに従う。外で遊ぶのも嫌いではない。
「親父、荷物置いていくからな」
「あぁ」
きちんと管理しておいて、と言いおいて、日生は和紀に手をひかれて、ビルを後にした。

タクシーを降りた時はすぐに建物に入ってしまったせいか、あまり気付かなかったが、昼間のアスファルトの上に出てみると、肌を刺すような強烈な紫外線が降り注いでくる。
上からだけでなく、足元からも炎に包まれているような錯覚に襲われた。
少し歩いただけなのに、体中が汗でびっしょりと濡れた。
だから噴水に辿り着いた時には、水の冷たさに「わぁっ」とはしゃいだ声が上がってしまったのだ。
大人の人は縁に腰かけて、足湯…ならぬ、足水状態で涼んでいる人もいる。
噴水として現れた水は少しの距離ではあるが、石の道を流れて地下へと消えていった。
日生は他の子供にも混じって、噴水の水の中に入っていった。
陽にあたる全ての場所が熱い。もう噴水の水が漂うところ以外には出たくない思いも混じって長いこと噴水の中にいた。
ただ服をびしょびしょに濡らしてはいけないのだと頭が働き、他の子に比べたら控え目な濡れ方だったのだが。
濡れても、熱風のおかげですぐに乾いてしまう。

やがて和紀の携帯電話が鳴り、周防の仕事のケリがついたことを教えてくれる。
「ひな。親父、終わったって。美味しいもの、食べにいこー」
和紀に声をかけられて、周防を待たせてもいけないと慌てて水場から上がった。
その途端にむうぅぅとした熱気に囲まれた気がした。
はしゃいで疲れてもいたし、動いて喉も乾いていたが、荷物は周防の部屋だと思いなおして、少しなら我慢しようと思った。
近くの移動販売車でかき氷が売られているのも見えたが、これからご飯を食べにいくのに、欲しいとも言えなかった。

かき氷
写真はさえちゃんが撮ってきてくれました。お持ち帰り・転載などはお断りいたします。

何より早くこの暑さから逃れたかったのだが、日生の歩調に合わせて歩いてくれる和紀をけしかけるわけにもいかない。
なんだか頭がクラクラする…と感じた直後には、目の前が真っ暗になった。
突然日生の歩みが止まったことに、和紀も怪訝な表情を浮かべる。
「ひな?」
「あ…」
会社までもうすぐのはずだった。
…あと少し…。
分かってはいても、体が自由に動かない。
天と地の位置さえはっきりとしない。
「ひなっ?!」
全身から力が抜ける。その体がふわっと浮いて、和紀に抱きあげられたのだと、そこまでは分かったけれど…。

ちょうど周防もこちらに向かっていた時だったのか。
「ひなっ?!どうし…っ?!…お、親父っ、ひながっ!!」
悲鳴に近い和紀の声と、バタバタと走り寄ってくる足音を最後に、日生の意識は途切れた。

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リク頂きました~♪
日生視点…とのことだったのですが、状況説明で終わっている…(>_<;)

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コメント

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えー
コメントちー | URL | 2013-07-13-Sat 20:32 [編集]
リクエスト、しても良かったのかあ。
佳史さんの暑い熱い夜を(笑)

いや、ひなちゃんのが需要が高いからね。
私も、嬉しいし。ひなちゃん大好き。
ひなちゃん、お水って言えなかったんだね。
我慢しようって、思ったんだね。

若いお兄ちゃんに気がつけよなんて言うのは酷だよね。
わからないもんねぇ。
いきなり、ひなちゃんが倒れたらビックリだわ。
うん。パパが近くに来てくれていて良かったあ。

ひなのにっき

きょう、お兄ちゃんとお父さんとおひるご飯を食べにいきました。
いくときに、きよねさんがおやつの入ったカバンをお兄ちゃんに持っていってと言ったのに、お兄ちゃんがことわったので少し悲しかったけど、さいごにはもってくれてうれしかったです。
お外はあつくてビックリしたけど、タクシーに乗ったのでずしかったです。
お父さんのかいしゃには、しらない人がたくさんいてすこしこわかったけど、お兄ちゃんがてをつないでくれたからよかったです。
それから、お外にいってふんすいであそんでかえるところだったんだけど。ぼく、どうやっておうちにかえったかわからないです。



師匠。大好きな佳史さんの一夜を邪魔するなんて。
こっそり、こっそり、するだけですから(笑)
ありがとうございます。
コメントすぎもと | URL | 2013-07-13-Sat 22:35 [編集]
リクエストに応えて頂き、ありがとうございます。
とっても、とっても、とってーーーーーーも、嬉しいです\(^o^)/

久しぶりにひなちゃんに会えて、やっぱ好きだなーと再認識してます。
続き、楽しみにしています。
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