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BLの丘
珍客の訪れ 9
2013-07-10-Wed  CATEGORY: 珍客
一緒に同じ家の中に帰れたことは、那智に酷く安堵をもたらしたようだった。
出先で耳にした「事故にあった」という連絡は、那智を苛み続けていた。
どれだけ説明されて保障されても、実際に久志に触れるまで、本当の安心感には出会えなかった。
体当たりをしても余裕で受け止めてくれる頑丈さがなくなるかもしれないと、一瞬でも思ってしまった時の心許なさは言葉にすることができず、述べようがない。
同じ空間にいられることが、一つの奇跡であると深く刻まれる…。

バスルームまで大人しく付いていったのは、不安定な体でまた次の傷を作ってもらいたくなかったのもある。
自分がついていながら、新たな局面を迎えるなど、絶対に避けたいことだった。
だけど本当のところはなんだったのだろう…。
いつものようにお互い憎まれ口を挟みながら、それでも希望する方向へと動いていく。
久志の手で那智の体を洗ってもらうことはたびたびあることだが、逆のパターンには出会ったことがない。
こんなことでもなければ激しく抵抗しているだろうが、どこかネジが吹っ飛んでいたのは、強張っていた感情から解放された事情も絡んでいるのだろうか。
自分の目で確かめること。
身に纏うものが何もなくなる場所は、無防備な所でもあった。
そして信じられる証拠がある気がした。
久志の大きな体を前にして、完全に気が緩んだのは、手荒く扱っても動じなかったからだ。
今までと同じものが存在している、変わらないもの。
シャワーを勢いよくかけても、頭をぐしゃぐしゃとかき回しても、平然としているし、どこかしら”構ってくれて嬉しい”雰囲気が伝わってくる。
人があれほど心配していたのに…っ!
胸に湧いたのは翻弄された悔しさか、落ち着いたことに対しての嬉しさか。
言いようのない熱いものが心臓を鷲掴みにしてくれて声が出なくなった。
久志のことなんかどうでもいいのだと言ってやりたいのに…っ。
視界が潤んで霞んでしまう。
こんな姿は見せたくないと、久志が振り向かないように、今まで以上に乱暴にシャワーの湯を当てれば、那智の動揺に勘だけで気付くのか、巨体がこちらを向いた。

「那智?」
「バカっ!!こっち向くなっ!!」
「那智っ」
驚いた久志の表情が那智を捕らえて、逃れようと体は反抗するのに、あっさりと腕を掴まれる。
見られたくないものを見られた気分で背けた顔も晒して、体ごと引き寄せられ久志の膝の上に転がった。
いとも簡単に抱きすくめてしまう力は、本当に怪我人なのだろうか。
シャワーヘッドが床の上を転がって跳ねた。
那智が濡れることなんて、それこそどうでもいいように、硬い胸板から久志の濡れた体の水滴を那智の服が吸い込んだ。
「那智…」
体のどこかに負担をかけてしまうかもしれない。そう脳裏が警鐘を鳴らすのに、今は久志の腕の中に居られることが喜びになっていた。
何も変わらない…。
那智の太腿と同じくらいの二の腕も硬い胸板も、見慣れて触り慣れた感触を那智に届けてくる。
強がりたい言葉が渦巻くのに、一つも喉を通ってこない。
一度崩壊してしまった堤防は早々修復されず、那智は押し寄せる感情のまま、「ヒサのばかっ!」と一言発するのが精一杯になっている。
次々と溢れてくる涙をぬぐうことも忘れて、久志の肌の温かさを実感した。
何を言おうとするのか分かっているのだろう、久志の腕の力は緩まなかった。
「あぁ、悪かったよ…」
小さな子供をあやすかのように頬をくっつけて背中を撫でてくれる。
久志がここにいるのだと、強く分からせてくれた。

「こんな大げさなことになると思っていなかったんだ。那智には言う気じゃなかったんだけど…」
「もっと悪いっ!!」
隠し事をされて、後で知らされた時の虚しさとはどれほどのものになるというのだろう。
そんなことも教えてもらえない、頼りにならない存在なのだろうか。
「悪かったよ…」
久志はもう一度同じ言葉を繰り返して、自分の浅はかな考えを改めていた。
心配をかけたと思っていても、ここまで那智が感情を高ぶらせるとは予想外だったようだ。
自分から連絡をせず、黒川経由で耳に入れたことも、不安を増殖させた理由の一つだった。

グズグズと泣く那智は、今更にして恥ずかしさもあったが顔をあげた。
いつまでもこうしているわけにはいかない状況も理解している。
久志が真っ赤になった目を覗きこみ、「もう心配かけないようにするから」とつぶやいた。
決して確実な約束にならないのは、聞いてしまった会社の話から納得もしている。
だけどそれは、この世に生を持っている者の全てに当てはまる。
那智はまた鼻をすすってから、「信じられるか…」と反論した。
言葉の裏の意味を、やっぱり久志は汲み取って、「信じてくれるまで那智から離れないよ」と囁いた。
ずっとそばにいるからと。
濡れてしまった耳朶を食み、低音の声を送りこんでくる。
那智の後頭部を手のひらで押さえられ唇を塞がれた。
啄ばむ優しいくちづけを落とされる。
こればかりは、逃げる気も逆らう気も起きずに素直に従う那智だった。

「那智も濡れちゃったから、一緒に浴びていっちゃおう」
しんみりとした雰囲気は、強引に脱がせようとする久志の手のひらの力によって、あっという間に蹴散らされた。
那智が涙をこぼすという珍しい光景の中、那智の居心地の悪さをさりげなくはぐらかしてくれるものでもあったけれど。
久志の有り余った体力と健康体であることを脱いだ体で証明しなくてもいいんだけど…、と那智は内心でごちる。
特上寿司はまだお預けになるらしい…。
疲れた精神は久志の行動を止める気が起きなかった。
…いや、このまま甘えてしまいたかったのは那智のほうだったのかもしれない。
那智はコツンと額を肩に乗せた。
久志の肩の荷が下りる日はやってこないだろう…。

…ざまぁみろ。
今日一番の悪態は久志の耳に届くことはなかった。

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コメント

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ざまぁみろ...(▼∀▼)ニヤリッ♪
コメントけいったん | URL | 2013-07-10-Wed 08:28 [編集]
「↑」って 誰が 悪態をついた言葉ななかなぁ~
黒川、中條、佳史先生、それとも 那智?…と、当て嵌まる人が 多すぎて~(o^^o)ふふっ♪

怪我した当日に この後の激しい運動は、どうなの!(笑)
佳史先生に ちーさんから チクって貰わなきゃ♪

あっそれから ちーさん、
ヒサのイチモツ写真の件ですが、撮って欲しいじゃなくて もう 撮れてるってことだよ!!
モザイク入れなきゃ 販売不可だねー
それとも 高値で売っちゃおうか…ケ―ッ((Θ∀Θメ))ケッケッケッ

いやん
コメントちー | URL | 2013-07-10-Wed 09:22 [編集]
おはようございます。

なっちゃん、ヒサがいないとダメなんだもんね。
ヒサがもし違う人を見たり、どっかに行っちゃったら悲しくてどうにかなっちゃうね。
でも、ツンデレなっちゃんだから言えない。
お口より、身体のが正直でした。
変わらないヒサに抱かれて安心したかなあ?
お風呂場でエッチは・・・どうなの?
佳史さんに聞いてみよっ。

師匠。
撮れてないから!そんなモザイクかけなきゃ売れないの。撮れてないのっ!
可愛いなっちゃんと上半身裸のヒサ、これだけだからあ。ゼーハーゼーハー。

あれ?あれあれあれ?
注文来ちゃった。仕方ない、出すか←
明日は、二人の合体写真もあるかもね♪

師匠、待合室に何を買う?
こんにちは
コメントきえちん | URL | 2013-07-10-Wed 16:12 [編集]
今日も暑いですね~。

ざまあみろって ヒサの肩の荷なんかおろしてやらない那智のつぶやきです
ずっとつきまとう気でいることでしょう。
安静にと言ったセンセの言うことはちゃんと聞いてもらいたいものですが(笑)

那智が素直にならないので、体は正直に調教されたんでしょうね。
佳史はそういうところわかっていたのかしら。

写真はモザイク
きえちんも文にモザイクかけたいなぁ。
…え!?注文きたの!?

今日は外泊ですが夜中はあるからね(*⌒▽⌒*)

皆さんコメントありがとうございました。
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