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BLの丘
緑の中の吐息 17
2013-06-18-Tue  CATEGORY: 吐息
美琴が黙ってしまうと、ただの興味本位で尋ねたのではないと、男たちは気付いたようだ。
有名人ならともかく、会社関連の裏方事情など、一般客にはまず興味があるものではない。
内情を知ろうとする姿勢は、爽やかな朝にそぐわない緊張感を張り巡らせてしまう。

だが、考えれば考えるほど謎だった。
仮に噂に上る人物が千城だったとしても、はっきりしないとも言える天気予報の下に、恋人を連れだすだろうか。
美琴が怪我をした今だから、余計に"危険地帯"にノコノコとやってくるとは思えない。
来るとしたら、完全に補修整備され、安全確認がとれた後のことだろう。
美琴がこの地に赴くのに安心感を抱いていたのは、絶対に顔を合わせることがないと確信にも近いものがあったからだった。
千城なら、自分で登るより、ヘリで運んでもらう方が似合っている。

「えー?美琴さんの会社の人、今日来るの?」
「「「会社???」」」
単純なる瑛佑の疑問はしっかり男たちの耳に届いたし、同時に彼らの謎も深められてしまっていた。
思わず頭を抱えたくなりながら、「私は何も聞いておりません」と小声で瑛佑にだけ伝わるように返事をするのだが…。
こればかりは美琴の危惧は瑛佑に伝わらなかったようで、社員の誰かが来ると思っている。
そもそも"社長"自ら来る、という考えが皆無なのが知れてくる。
「社長なら何か知っているんじゃない?…って、あーっ、美琴さん、携帯失くしたままじゃんっ。あ、俺のケータイ使う?連絡取れなくなって困っていたんじゃないの?」
「「「社長っ?!」」」
現在何時であるのかが、すっぽりと抜け落ちているのは、早朝から起きて活動してしまい、体内時計が狂っていることも関係している。
それでも瑛佑の発言は人々にとって爆弾にしかなっていなかった。
ちょっと思考力を働かせれば気付く、千城と美琴とのプライベートなやりとりなどまずあり得ないことや、休日に仕事など持ち込まない千城の性格までも、瑛佑の脳裏にはなかったのか…。
「あんた、一体何モンだい?」
「もしかして見学に来るっていうのはアンタのことか?」
「怪我して迎え、呼ばれたんじゃ…」
どこまでつじつまが合って話された内容なのか、瑛佑まで『関係者』に加えられて、勝手に話を作られている。
美琴はもうこれ以上何も言う気になれなくなった。
今更どう説明をしようが、この人たちの口に戸を立てることはできないだろう。
怪我をした人間がいた、という事実は隠しようもなく、どうあがいてもどこかに報告されることになる。

…だから誰にも会いたくなかったのだ…などと今になって後悔したところで何にもならない。
上役をヤキモキさせたのは自分のせいだとも悟れた。
瑛佑との『ハイキング』のために、念入りすぎるほど情報収集していたのが裏目に出た形だった。
そのことが『榛名』から調査員がやってくる『噂』の元凶になったのだろうとも…。
「美琴さーん、社長に『電話ありません』って言っておいたほうがいいんじゃないの?緊急事態の時、連絡がとれないっていつも愚痴ってたの、美琴さんなんだしさ~。もう社長に文句言えなくなっちゃうよ」
「『社長』よりもエライ人だったんか…」
「こりゃ大変だ。えーと、まず、どこに言えばいいんだ…???」

勝手な誤解をされたまま話はどんどんと大きくなっていき、瑛佑の発言を鵜呑みにされて呆れと諦めが混じる。
出来ることなら何も語らずにこの場を立ち去りたかったが、すでにあとの祭りと言えた。
一つの質問は100にもなって返ってきそうだが、統治する機関に誤解だけは解いていかないと、"組織"に話が向けられることになる。
ここで食い止めておけば、また、プライベートのことだと口止めしていけば、必要外の詮索はされないはずだ。
瑛佑に『社長』を連呼しないよう咎めて、これ以上の発言も控えるよう諭す。
美琴の携帯電話に収められていた膨大な人物のデータは手元から消えてしまっていたが、今必要な人物とはすぐに話をつけることが出来た。
朝から叩き起こされたらしいが、話を聞いては「すぐに行きます」というのを宥めて、おおまかな状況を伝えた。
公私混同しない旨を伝え、『後日改めて』と強調すると、今現在が美琴のプライベート時間だと理解してくれる。
これで向こう側から勝手に話を広げることはないはずだ。
お互いの立場を理解した人間との交渉は、やりやすいものでもあった。

問題が解決した…とホッと一息つき、また美琴は瑛佑に背負われて駐車場まで戻ろうとした。
さっさとこの場を後にしたかったが、緊急性がなくなった男たちが、公園まで来られる関係者用の裏方の駐車場から車を出してくれて、歩くことなく一晩放っておかれた車までたどり着くことができた。
「病院まで送ってってやってもいいが…」
「お気づかいありがとうございます。でも本当に大したことありませんので。それより『日帰り温泉施設』があったと思うのですが。一番早くに開店するところがどこかご存知でしょうか」
「温泉っ?!」
瑛佑はまじまじと美琴を見つめてきたが、美琴はあえてその視線を無視していた。
帰りに寄れたら…といくつかピックアップしてあった情報もあったが、営業時間までははっきりしなかった。
昨日からの災難を洗い流す意味もあったし、このまま汚れた状態で何時間も移動したくない。
何より、一番疲れているはずの瑛佑を少しでも休ませてやりたくて、美琴は男性に声をかけていた。
少しでも役に立てることがあるなら…と模索していたらしく、美琴の質問は男性たちにとって歓迎だったようだ。
「あぁっ、あるよっ。ずっと飲まず食わずだったんだろ?風呂入っている間にメシの準備も頼んどいてやるよ」
「いえ、そこまでは…」
「なぁに、一仕事終えた連中の溜まり場になるところだ。ちょっと早く開けてくれって言っときゃいい」
美琴と瑛佑が絶句している間に、見事な連携プレーで連絡が済まされていた。
こうなったら、先導までしてくれる車を追いかけていくしかない。

助手席に乗り込むと、エンジンをかけた瑛佑がフッと笑みを浮かべる。
馬鹿にしているわけではないが、美琴のことを思って浮かべた笑みだと気付けば、「なんですか?」と少々キツイ声が出てしまった。
「いーやーぁ。美琴さんってやっぱ、完璧主義だなぁ、と思って。『温泉施設』がひとつやふたつじゃないこと知ってたんだ。周辺施設まで全部調べつくしているところがさぁ。さすがだなって感心したの」
必要以上に多かったタオル類の持ち物も納得がいった様子だ。
常に代替案まで用意するのは性格上の問題でもある。今回は施設側の事情で立ち寄れなかった場合を考慮して、こっちがダメならあっち…といった感覚で目を通してあった程度のことだった。
知り得る情報が多くて困ることはない。
当然…と思って過ごしてきたことも、瑛佑に改めて言われると、それしきのことが心を和やかにしてくれた。
照れを隠したかった気持ちも湧いて、黙ってしまうが…。

しかしたどり着いたところが、民家がポツポツと建つ集落の中、民宿のような建物であって、二人して黙って顔を見合わせてしまった。

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コメント

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なぁ~んだ そうだったのか!(*^-')b
コメントけいったん | URL | 2013-06-18-Tue 10:17 [編集]
千城の登場~ワクo( ̄▽ ̄o)(o ̄▽ ̄)oワク♪してたのに
美琴たちの事だっだのねー

完璧主義の美琴が 念には念を入れて 丹念に調べたのが、
何所で如何なって 間違い伝わったのか 「会社のエライさんが 調査に!」って なったって事ですね。

しかも 瑛佑の余計なひと言で 社長より偉くなってるし~(*≧m≦*)ププッ

まぁ色々あった「ハイキング」(←にしては 大変だったけどねー)ですが、
最後のシメの温泉では ゆっくり癒して楽しんでね~♪
~~~♨~~v(* ̄▽ ̄*)〃▽〃)~~♨~~~

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