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BLの丘
緑の中の吐息 15
2013-06-16-Sun  CATEGORY: 吐息
いつの間にか眠ってしまったようだ。
瑛佑の心音と息遣いを聞いているうちに、雨のことは気にならなくなった。
昼間の『ハイキング』という名の運動も、美琴の体をドロドロに疲れさせていた。
得られる安心感は緊張の一つも持たせない。
美琴が目を覚ますと、瑛佑と視線があって、自分だけが眠っていたのかと焦った。
「え、瑛佑…」
「おはよう。良く眠れた?」
覗きこんでくる瞳は少しばかりの疲労を伺わせる。
まさか、一睡もせずに美琴を抱きしめたままでいたのだろうか。
慌てて上体を起こそうとしても瑛佑の腕がまとわりついた状態では身動きが取れないといっていい。
美琴の掠れた声は、寝慣れない環境のせいか、喘ぎ過ぎたせいか…。

まだ薄暗い。
差し込んでくる光りは太陽から直接注がれるものではない。
「何時…?」
額に、唇にとくちづけを落とされる中で、確認したいことを尋ねると、腕時計をかざした瑛佑が時刻を教えてくれる。
「三時半過ぎ。今の季節は陽が昇るのも早いからな…」
白じんできた世界にスッと視線を走らせてから、また美琴の容体を伺ってきた。
「だるい、とか、痛い、とかない?雨はやんでるよ。ただ、道の状態が分からないけど」
昨夜遅くまで雨は降り続いていた。
"置き土産"は美琴たちを無事帰してくれるのだろうか。
このまま降らなければいいが…と、寝起きの頭がボーっと帰り道のことを考える。

大して動かすことのなかった身体だったのに、思い出したように節々の痛みを訴えだした。
抱かれた次の日に気だるさを覚えることはいつものことだったが、それとはまた違う鈍痛は、怪我をしていると思い出させてくれる。
昨日はまだ事故直後で身体が緊張の中にあり、神経が麻痺していたのかもしれない。
顔をしかめたことで、瑛佑は無事でないことを悟ったのか、体を起して頭からつま先まで視線だけを這わせた。
「熱はないと思ったんだけれど…」
いつもと同じ体温だ…と瑛佑は豪語したものの、どこか不安が漂うのだろうか。
抱き心地で判断されるのもどうかと思うのだが…。

「もう少し明るくなったら出ましょうか。昨日のように、朝早い方と顔を合わせたくありませんし」
寝起きの脳を回転させながら、これからのことを考える。
入山に関しては時間規制があるわけでもなく、手軽な『散歩』と捉える人たちの動きは、美琴たちの行動とは異なる。
天候のことを差し引いたとしても、誰が来てもおかしくない場所であることに変わりはなかった。
どちらにしても瑛佑に背負われて下山することは必至で、どれだけ美琴が「大丈夫」を連呼したところで、瑛佑が美琴の足を地につけさせないことも容易に想像できる。
美琴がつぶやくと、瑛佑も思いだしたように「あぁ…」と声を上げた。
「そういえば、『朝が綺麗』とかナントカ言ってたね。…おぉっ、ってことは俺たち、今日一番乗りできてるわけじゃん」
瑛佑は突然はしゃいだが、昨夜から泊まっている状況は果たして『一番乗り』と言えるのだろうか…。
瑛佑は、ぼんやりと明るくなり始めた屋外に視線を向けた。
今日も天気は曇り…といったところだろうか。
「ちょっと外の様子、見てくるよ」
「私も一緒に…」
立ち上がろうとした瑛佑を、引きとめて声をかける。美琴もようやく肘をついて起きあがった。
単純に外の空気を吸いたかっただけなのだが、瑛佑の捉え方は少々違ってしまったようで、クスリと微笑まれる。
「誰も、置いていく、なんて言ってないじゃん」
「そ、そんな意味では…」
「美琴さんが俺と一緒にいたいっていう気持ちは大歓迎だけどね」
半ばからかいを含ませて告げられれば、それも否定したくなったが、もちろん本心ではなく、思わず口籠ってしまう。
それ以上瑛佑は突っ込んでくることもなく、自分だけ靴を履くと美琴の前で膝をつき、「ほら」と子供を抱き上げるように脇の下に手を伸ばしてきて、胸の中に抱きいれた。
そしてひょいっと横抱きにして立ち上がる。
「あ、私も靴…」
「歩けない人が何言ってんの。…あ、雨合羽がシートの代わりくらいになるか」
サンダルをひっかけるような簡単さでは履けない靴を一瞥し、もし外で腰を下ろしたい時のために…と、入口付近で放っておかれた雨合羽の一つと湿ったタオルを美琴に掴ませる。
夜の情事に汚れたタオル類はまた別の山を築いていて、自分の準備の良さをこの時ばかりほど褒めたくなった時はないと内心で思っていた。

屋外に通じるドア(?)が開けっ放しだったとしても、外に出ればまた違った爽やかな空気が肌身を包む。
水分を充分に含んだ空気は身も心も浄化してくれるような清々しさがあった。
一瞬、霧かと思ったが、白く煙った程度のものは靄(もや)だろう。
雨上がりの鮮やかな緑色をつけた山々を薄いカーテンが覆っているようだった。
深呼吸をしたくなる、そんな気持ちにさせてくれて、美琴も瑛佑も新鮮な空気を肺の奥まで吸い込んだ。
太陽が昇ってくれば気温も変わり、風景も刻一刻と変化していく。
今しか見られない『一瞬の出来事』は、生きている自分たちにも当てはまるような、漠然とした思考が脳裏をよぎっていった。

少し歩いては、さすがに昨夜の雨の後ということか、足場は悪いようだ。
ただ、まだ人が歩いていない場所なだけに、踏み荒らされていないことが救いになっている。
「美琴さん、その辺に敷いて。ケツさえ、乗ればいいから。あぁぁ、チョー気持ちいいっ」
小屋から少し離れた場所の草が生えたところで瑛佑が前かがみになり、美琴の手にしていた雨合羽を下ろすよう指示してくる。
この光景を目の当たりにしては、すぐに小屋の中に戻ろうという気など霧散していくというものだ。
風もない穏やかな空気の流れが感じられる。朝もやは見るものの心を無にしてくれた。
瑛佑は美琴を抱きかかえたまま、自分の尻を敷いた上に下ろした。
抱きしめられたままでは、どうにも居心地が悪い…。
それは完全に"屋外"だからだろうか。
「え、えぃすけ…、私は隣でも…」
「こんな新鮮な空気が吸える日がくるなんて思ってもいなかったよ。美琴さんに感謝だね」
美琴のいうことなど全く聞く耳を持っておらず、それどころか逃げられないのをいいことに、くちづけの嵐を落としていく始末だった。
朝からこれだけテンションが上げられたことは、まぁ、悪いことではないのだろうが…。

徐々に明るくなっていく光景を目の当たりにしながら、自然に囲まれたちっぽけな自分たちを思って、まぁいいか…と美琴も口うるさいことは言わないことにした。
気分が良いままで過ごしたいのは、誰もが同じ…。

そろそろ帰ろうか

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写真はクリックすると大きくなります。久し振りに別宅更新してきました。
またなんか、ダラダラと書いている気がしなくもなく…(汗)
感謝祭(←いろいろ名称が変わっている気が…)までには終わる予定でいますので。
あともうひと頑張り。無事に終わらせたいと思います。
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コメント

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そこに 山があるから…(^・ω・^).....ンニュニュ?
コメントけいったん | URL | 2013-06-16-Sun 10:29 [編集]
雨も止み 靄る山の向うから射す朝日は、夕陽と違って 厳かで 輝く未来を示すように見え 思いますね。
きっと…美琴と瑛佑のこれからも♪

私、何しろ 山に登った経験は 小・中・高時代で 「課外授業」しかなくて~
ただただ 疲れた記憶しか御座いません!
それと お弁当の美味しさと 後に提出するレポートに悩んだことしか…(;*-▽-)ハハノ丶ノヽ

別宅を訪問させて頂きましたが、
きえちんは 此処数年ブーム?の 有名なマチュピチュに 既に行かれていたんですね~ 
テレビでしか見た事が無いけど あそこの場所は 本当に人生観が変わりそう!な気がする…かな?(笑)

6月29日の『感謝祭』(←もう この呼び方で バッチリです♪)には たくさんの人が参加してくれたら いいですね~♪ 嬉しいですね~♪
☆゜.+:。゜(oゝω・o愛)゜.+:。゜☆
えーすけさん
コメントちー | URL | 2013-06-16-Sun 19:59 [編集]
実は、私、えーすけさんの秘かなファンです。
あの!野崎さんをモノにした時はカッコ良かったよねえ。
なのに、園児と絡むと乙要員。
まあ、それはそれで好きだけど。

久々、素敵なえーすけさんを堪能しております。
野崎さんが素直にあまえてるのも良いよね♪
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