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BLの丘
緑の中の吐息 12
2013-06-13-Thu  CATEGORY: 吐息
雨はまだやみそうにない。
徐々に雲が厚みを増し、間もなく夕方になろうというのに、すっかり周りは暗くなり始めている。
美琴は身体をひねって瑛佑からのくちづけに答えていたが、吹きこんでくる風に、身体を震わせた。
瑛佑と触れあっている部分は熱を感じるのに、無防備な場所が布地を通り越して肌身に沁みてくる。
唇を離した瑛佑が、「寒い?」と覗きこみながら、再び抱く力を強くする。
先程まで動き回っていた瑛佑とは、体の温まり方も違っているのだろうか。
転がり落ちてからずっと、美琴はされるがままになっていた。
蹴飛ばして空いた出入り口を塞ぎたいところだが、ただでさえそこからしか明かりが入ってこないため、この時間帯でも薄暗い。
雨に当たらないだけでも恵まれているのだと思いたいが、人とは一つの安堵に包まれると、次から次へと快適性を求めてしまうのか…。

「いえ…、大丈夫、です…」
こんな事態になったのは誰のせいだ…と、美琴は自分を責めている。
何事にも先手を打つ性分だったのに、今日ばかりは童心に返ってしまったところがあったようで、また自分が計画を立てた手前、行動力を見せたかった見栄が働いて悪循環を引き起こした。
瑛佑にこれ以上の負担はかけたくない。
背中をさすってくれる手があったり、語りかけてくれることで気を紛らわせてくれたり…。
「足は?痛みがひどくなったりしていない?」
「へ、平気、です。…ひねっただけだと思いますので…」
「怪我、甘く見るのは良くないよ。…とりあえず…」
瑛佑はまた頭を回転させているようだった。

立ち上がると脱ぎっぱなしになっていたジャンパーを掴んでくる。
ただ、それは美琴のではなく瑛佑のものだったが。
「瑛佑?」
「美琴さんのよりも濡れていないと思うんだ。合羽のおかげもあったけれど、美琴さんが雨よけになってくれていたからさ」
ずっとおぶっていたから、瑛佑の背中はほとんど濡れなかったのだという。
それを言えば美琴もリュックに覆われていたようなものなのだが。
素材自体に撥水加工が施されているのと、途中で美琴を下ろすこともできなくなる事態に備えて瑛佑も雨合羽を身に着けていたことが幸いした。
急いでいるからこそ、立ち止まることのロスを前もって回避していた。
美琴に着せようとするのを、咄嗟に拒んでしまう。
「それでしたら私のでも…。この後瑛佑だって体が冷えてくるのでは…」
「美琴さんの、だいぶ汚れちゃってる。それに俺、お子ちゃまで体温高いから問題ないよ」
急斜面を転がり落ちたのだから汚れがあって当然で、確かに普段なら差し出されても遠慮してしまう物体に化していたが、背に腹は代えられない状況だった。
瑛佑がザッとでも拭いてくれたおかげで、ここにたどり着いた時よりも綺麗にされている。
こんな時に、何をバカなことを…と美琴が咎めたくなるジョーク混じりで答えてくれたが、手を休めることなく袖を通されてしまった。
ぶかぶかのサイズの服を体に纏わせては、体格の違いをまた見せつけられているようだ。
それと同時に、包まれてふわりと漂った瑛佑の匂いが鼻腔をくすぐった。
生活の一部となってしまった香りは、酷く美琴を安息に導くものでもあった。

今度は対面で座った瑛佑は、美琴の体を引き寄せると、太腿を跨らせて腰を下ろさせた。
「足、伸ばしていいから。…あ、余っていたタオルがあるから、それでも足にかけておくか」
肌を覆うものは一枚でも多い方がいいと。
前合わせのファスナーを閉じずに、ジャンパーの中に手を入れては、美琴の背中に腕をまわして抱き寄せる。
胸やお腹から瑛佑の体温を感じ背をさすられた。
美琴では大きすぎる服でも、ふたり一緒に入ることは不可能だ。
せめて瑛佑も空気に触れる部分を少なくさせてあげたいと、余っていた前身ごろを引っ張ってみたのだが、微かに肩を覆ってくれる程度にしかならなかった。

「ありがと。でも俺、美琴さんがいてくれればいいから。この季節に凍死するようなこともないし。美琴さんがあったかいからそれで充分だよ」
「もう…」
「雨、上がらないかな。今日は野宿になっちゃうかも。…あのさ、明日になってもまだ降り続いているようだったら、その時はもう…」
チラリと外に視線を投げた瑛佑は、確認をとるかのごとく、美琴を見つめてくる。
瑛佑の心情は手に取るように分かる美琴だった。
本当は今すぐにでも救助隊を呼びたい気分なのだろう。
理由は怪我をしている美琴を少しでも早くに医者にみせたいからで、しかしそこを美琴が『大したことはない』と発言した言葉を信じて堪えてくれている。
滑落の衝撃が体内の見えない部分にあることを恐れていた。
美琴自身だったら、相手に二の句を告げさせないまま、自分の判断だけで物事を進めしまうはずだ。
同様のことは過去にもあつた。
瑛佑が大人しく従ってくれたことを振り返れば、どれほどの我が儘を言っているのかと身につまされる。(←参考16)
美琴の性格や今後のことを考慮して、百歩譲って一晩だけは待ってくれる懐の大きさにも改めて感服させらるだけだ。
…『明日の朝になって瑛佑の足を使っても自力での下山が無理と判断できた時、美琴が何を言おうが、瑛佑は救助を依頼する』…。
雨があがっていれば、また背負って戻ることは可能だろう。
問題は雨だった。雨が降る中での移動がどれほど大変なものであるのかを、すでに瑛佑は体験している。
多少なりとも整備された遊歩道だったとしても、瑛佑が足を滑らせる危険を孕んでいるのも確かで、確実な方法で運びたい意思を持っていること。
美琴から『NO』の返事は聞かれない。

どちらにしても今、身動きが取れないのは降り続ける雨を見れば分かることだ。
体力を温存させておく意味も含まれる。
美琴は両腕を瑛佑の首に巻きつけた。
押し倒される力加減を感じるのか、瑛佑は不思議そうに見返しながら仰向けになって寝転んだ。
「美琴さん?」
「横になっていましょう」
美琴が瑛佑に覆いかぶされば、大きなジャンパーが瑛佑の両脇に垂れさがり外気から遮断できる。
『美琴布団』の完成だ。
咄嗟に思いつけた美琴の『応急処置』に、瑛佑は事を理解できたのか、クスリと微笑んで美琴にまたくちづけてくる。
「美琴さん、あったかい…」
自ら取った行動に、羞恥から体がカッとなったせいか、寒さに震えていたものが一瞬でも吹っ飛んでいた。

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コメント

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いい恋人さんだね♪゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚
コメントけいったん | URL | 2013-06-13-Thu 10:06 [編集]
いつだって 何所にいたって 

互いを思い 取る行動は 

優しさと温もりと愛に満ちている

窮地の中で より知れる相手の事 より分かる自分の事

きえちん作品の中の他の恋人さん達の中で 押しやられた感がある 少し控えめな位置の美琴と英佑CPですが、
どうして 他のCPさんに 引けを取らない 中々の恋人さんですよね~♪
☆゜.+:。゜(oゝω・o愛)゜.+:。゜☆

私の住んでいる所は 昨夜は24度、今日の日中は 34度超えの予報です。
いやぁ~朝から 暑いのなんのって~ 真夏だぁ~~
きえちん、そして読者の皆様も くれぐれも 熱中症に気を付けて 無理の無い様に お過ごし下さいませ♪
(^^;;;;;; 汗が 止まらんぞぉ!
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