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BLの丘
緑の中の吐息 11
2013-06-12-Wed  CATEGORY: 吐息
瑛佑の過去を振り返った話が登場します。
こちらの話を読まれてから進まれるのが分かりやすかと思います。→桜の季節
美琴と瑛佑の出会いはこちらから→夢のような吐息

*****

瑛佑は過去の話をあまりしたがらない。
美琴を気遣うきっかけとなった理由など、気持ちを伝える時に、彼の過ごした時代を教えてくれた。
別にどんな人とどんな付き合いがあったからといって、それを今更責めるのは間違った話だし、過去のことと割り切って話を聞けるくらいの余裕は持ち合わせている、と自負する。
わざわざ伝えなくてもいいことを、瑛佑が故意的に美琴に語ったのは、当時の美琴にあまりにも切羽詰まったものを見出してしまったからなのか。
最初は同情だったかもしれないが、それからは徐々に『愛』というものを育ててきた。
改めて瑛佑に教えられて、人並みに"自分を晒す"ようになってきた。
美琴が『瑛佑の過去』を気にかけたのは興味本位のことでしかなく、またそれも誤魔化してしまっても構わないはずなのに、瑛佑に口を割る決意をさせたのは、全ては美琴の不安を払拭するため。
隠し事などせず、やましいことは何もないと正直に伝えようとする素直さ。
同時に、瑛佑の過去も美琴の過去も、共有できる『話題』になっていく。

瑛佑の足の間にスポンと収まった美琴の体が、また強く抱きしめられた。
冷たい空気の中、密着した背中からぬくもりが冷えた身体と心を温めてくれているようだ。
湿った髪を梳かれながら、美琴は厚い胸板に頬を押し付けられ、奥から響いてくる心音を耳にした。
「俺が体の弱い人と出会ったことがある話はしたでしょ?」
やはりそこに繋がる話だったのか…と、美琴は漠然と感じた勘に納得し、だけど不思議と落ち着いている自分にも気付いていた。
瑛佑の話の腰を折る気もなく、頷くだけに留めて先を促す。
何を聞いても動じないと見せることは、自然と培われた美琴のプライドの一つなのだろうが。
嫌な話はさっさと済ませたい。そんな感情も見え隠れしながら、だけど瑛佑は曖昧にすることはしなかった。
「大学生の時でさ。俺があまりにもその人にひっついているものだから、『他の人たちと同じように、もっと遊んでこい』って散々言われて…。サークルでも何でも参加しろってね。まぁ、その人も何年も大学にいるような人だったから、学生がどんな過ごし方をしているのか、見聞きしてきたところはあったし」
自分のために、大切な時間を犠牲にされるのは忍びない…。
瑛佑よりも年上だからこそ、美琴にも理解できる部分はあった。
共通の話題を持てる人たちがいるのなら、そちらを優先させてあげたい、と。
視野を広げていくためにも、重要で貴重な時間だと、過ぎてきた人は自分と重ねる。
「俺も我が儘だったのかな。その人と一緒だったらいいってなんとか丸めこんで。…ま、『俺の時代』の中に溶け込ませるのに都合良かったって言っちゃえばそれまで…か。んで、また入ったのが、同好会っていうかなんていうか。やりたい時にしたいことをする、っていうところで」
夏はマリンスポーツ、冬はスキーなど『学生らしく』遊んだそうだ。
バーベキューをしたり、突然テニス大会やボーリング大会を開いてみたり、青春を謳歌したのだろう。
瑛佑を通じて、その人もこれまでにない大学生活を楽しんでいる風景が自然と瞼の裏に浮かんだ。
「渚さん(兄)は、まだ比較的体が丈夫なほうだったからね。それに雰囲気的に、ただついてくるだけのやつもいてさ、参加はしやすかったんだと思う」

万全を期して望んだ屋外などでは、予想もしなかったトラブルに遭遇することも多々あったようだ。
事前に医師との相談の上で決定し、瑛佑も『共に生きる』意味で、指導は受けていても、不用意な出来事に困惑や焦りの中で冷静に判断をするのは難しいこと。
どれだけ周りの人に助けられたか…と苦笑を浮かべていた。
そんな中で知った数々の知恵が、今の瑛佑の中で生かされている。
単に『聞いただけ』のことなら、脳の中から自然消滅していてもおかしくない。
『実践』したからこそ、体験として残っているのだ。

「道具の一つ、買いに出れば何だって揃う時代じゃん。だけどさ、いかに少ない『物』をどうやって使いこなしていくか、そんなのも教えられたね。あの人がいなかったら、知らなかったことっていうのもたくさんある」
落ちていく声を聞きながら、瑛佑の手際の良さにも納得がいったと、美琴は自分に言い聞かせた。
誰だって色々な経験を積んで、今の自分を確立させている。
誰に出会ったからといって、無駄になることなど何もないだろう。
「良い方たちに出会ってこられたのですね」
嫌味でもなんでもなく、素直にこぼれた言葉だった。
出会えたことの偶然や奇跡を大事にしたい。
瑛佑の過ごした日々と関わった人々ごと、丸ごと美琴のものとして受け入れたいとまた強く思う。
それは、瑛佑が美琴の全てを容認してくれている事実を美琴自身も知っているから、お互い様のことなのだと思う。
過去も現在も未来も、すべてを『共有』するために…。

体に絡みつく手に美琴は自分の手を重ねた。
…今はこうして、美琴のそばにいてくれる…。

「美琴さん、手ぇ冷たいよ」
互いの指を合わせ、掴んで、首筋に落ちた唇がうなじを辿り、顎先に触れる。
顔を上げれば瑛佑の息使いが掠める。

もうこの話は終わりだと、ふたりとも思っていた。
自然と重なるくちびるに、漏らした吐息の中で、美琴は話してくれたことに感謝していた。

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コメント

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渚さん
コメントけいったん | URL | 2013-06-12-Wed 13:54 [編集]
瑛佑の 桜色に彩られた思い出の中 今も 忘れられない人

過去も 共有出来る程 互いに 信じ合い愛し合ってるんだね♪

羨ましい~ウミュゥゥ!! o(≧~≦)o


 
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